この記事では、映画『マルサの女2』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『マルサの女2』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『マルサの女2』の作品情報
上映時間:127分
ジャンル:ヒューマンドラマ、コメディ
監督:伊丹十三
キャスト:宮本信子、津川雅彦、丹波哲郎、大地康雄 etc
映画『マルサの女2』の登場人物(キャスト)
- 板倉亮子(宮本信子)
- 東京国税局査察部の査察官。男に負けない仕事ぶりで、同僚たちからも一目置かれている。トレードマークはボブヘアーとそばかす。非常に勇敢で、暴力にも屈しない。
- 鬼沢鉄平(三國連太郎)
- 宗教法人「天の道」の管長として温厚な善人を演じているが、本業は冷酷無比な地上げ屋の親玉。ヤクザや政治家との繋がりも深く、巧妙な手口で巨額の脱税をしている。
- 花村(津川雅彦)
- 亮子の直属の上司。マルサのプロフェッショナル。
- 三島(益岡徹)
- 涼子のアシスタント。東大法学部出身のキャリアで、大蔵省から派遣されてきた。亮子にしごかれ、マルサの水に馴染んでいく。
- 赤羽キヌ(加藤治子)
- 鬼沢の妻。「天の道」の教祖様。鬼沢が浮気するたびに、高級な毛皮のコートなどを衝動買いする。
- 受口繁子(柴田美保子)
- 教団内でキヌに仕えているが、鬼沢に想いを寄せている。銀座のクラブのホステスもしており、鬼沢の言うことはなんでも聞く。
- 猫田(上田耕一)
- 鬼沢の忠実な側近。教団では幹部として働き、地上げの面では鬼沢とヤクザのパイプ役となる。
- チビ政(不破万作)
- 鬼沢の地上げを手伝うヤクザ。鬼沢と猫田に利用されている。
- 奈々(洞口依子)
- 父親が借金の担保として鬼沢に進呈した。まだ十代の少女だが、鬼沢の愛人となって子供を身ごもる。
- 漆原(中村竹弥)
- 大物政治家。陰の黒幕で、鬼沢たちを利用して私腹を肥やしている。
映画『マルサの女2』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『マルサの女2』のあらすじ【起】
東京湾で地上げ屋の腐乱死体が発見される。殺害された地上げ屋は、都心部のオフィスビル建設に絡む地上げを行なっており、黒幕は大臣や代議士の漆原、さらに銀行頭取といった政財界の大物たちだった。漆原は腹心の代議士・猿渡に、代わりの地上げ屋の手配を命じる。彼らにとって地上げ屋は、使い捨ての小物に過ぎなかった。
宗教法人「天の道」で管長を務める鬼沢鉄平は、毎晩のように悪夢にうなされていた。鬼沢の本業は地上げ屋で、脱税のために教団を立ち上げていた。妻のキヌを教祖に仕立て上げ、鬼沢は信者からのお布施でも大儲けしていた。猿渡は例の地上げを、鬼沢に依頼する。
鬼沢は側近の猫田を動かし、オフィスビル建設予定地近くのプレハブ小屋に大勢のヤクザを集める。その小屋の屋根の上で、マルサの女・板倉亮子は彼らの話を盗聴していた。通称マルサと呼ばれる国税局査察部は、現在鬼沢の内偵調査を進めていた。
猫田はチビ政を社長にして会社を立ち上げる。この会社には、地上げ費用として銀行から200億円が融資されることになっていた。1軒立ち退かせるごとに1千万円の報酬が出ると聞き、ヤクザたちは歓声をあげる。
立ち退きを拒んでいる住民に対して、ヤクザたちの壮絶な嫌がらせが始まる。報道カメラマンの清田は、マスコミを使って鬼沢に対抗しようとするが、プロの鬼沢には敵わない。鬼沢は性欲も旺盛で、父親に身売りされた高校生の奈々を愛人にする。
映画『マルサの女2』のあらすじ【承】
亮子に三島という東大法学部出身のアシスタントがつく。三島は大蔵省のエリート官僚だが、亮子にそんな肩書きは通用しない。いきなり亮子にしごかれる三島を見て、同僚たちは大笑いする。
亮子は三島を引き連れ、鬼沢の内偵調査に向かう。鬼沢が地上げしている日の出食堂に無人のトラックが突っ込んでいくのを目撃し、2人は必死でトラックを止める。マルサの内偵調査は極秘事項なので、亮子は現場検証へ来た警察にもそのことを隠し通す。
港町税務署時代の後輩が、教団施設へ入るのを見て、亮子は一緒に中へ入れてもらう。亮子はキヌが購入した高価な品々に目を光らせる。しかし猫田に誘導された信者たちによって、外へ追い出される。
マルサが税務署と一緒に教団施設へ入るということは許されない行為で、亮子は花村からひどく叱られる。罰としてしばらくチームから外されるが、亮子はくじけない。
最後まで立ち退きを拒んでいた大学教授の米田は、鬼沢に破格の金を要求してくる。鬼沢は取引に応じるフリをして米田を銀座のクラブへ連れ出し、自分に言いなりの繁子に美人局をさせる。米田はまんまと鬼沢の罠にはまり、写真を撮られて脅される。これで米田の立ち退きが成立する。
鬼沢は猫田たちを連れて日の出食堂に出向き、部下が無礼なことをしたお詫びだといって人間の手首を見せる。これはよくできた偽物だったが、夫婦は震え上がり、ついに立ち退きに同意する。
立ち退きの手数料として9億円を受け取った鬼沢は、それをチビ政の会社に入金する。漆原は3億円、猿渡は3千万円を手にする。鬼沢は漆原に18億円の脱税方法を伝授し、さらに漆原を喜ばせる。
映画『マルサの女2』のあらすじ【転】
春。自分の子供を身ごもった奈々に、鬼沢は墓を買ってやると約束する。鬼沢はすでに自分の墓も建てており、奈々をそこへ連れていく。キヌは奈々を嫌っており、大金を浪費することで憂さ晴らしをしていた。
ひとりで張り込みを続ける亮子の姿に感銘を受けた三島は、亮子に協力を申し出る。三島は亮子の依頼で、鬼沢の経営するソープに客を装って潜入し、ソープ嬢から売上金を運ぶ女の情報を聞き出す。2人はその女を尾行し、鬼沢の隠し事務所を発見する。さらに宗教法人の申請書類に問題が見つかり、ガサ入れへの突破口が見えてくる。
亮子はさらに調査を進めるため、酒乱の夫から逃れてきた主婦を装って、教団施設に潜入する。そこで巨大な祭壇の向こうに隠し階段があることを突き止める。
そしてついに鬼沢の脱税を暴くためのガサ入れが決行される。鬼殻の身柄は拘束され、教団施設やチビ政の会社、さらに繁子のマンションなどへ一斉に査察官が突入する。祭壇に隠された階段上の部屋からも多くの書類が押収されるが、決定的なものは出なかった。鬼沢は用意周到に脱税しており、部下たちも決して口を割らない。
鬼沢は取り調べでもしぶとく、花村たちも手を焼く。帰宅した鬼沢は、猫田から隠し部屋の書類が押収されたことを聞き、すぐに取り返してこいと激怒する。
映画『マルサの女2』の結末・ラスト(ネタバレ)
猫田は部下のサダオを書類が保管されている国税局の地下の倉庫に侵入させる。侵入に成功したサダオは、書類から2冊の手帳だけを取り出して倉庫から出ようとする。しかし内側から扉を開けるには暗証番号が必要で、サダオは倉庫に閉じ込められる。
翌日。書類を取りに来た亮子は、倉庫でサダオと遭遇する。亮子は命がけでサダオの逃亡を制し、手帳を取り返す。
2冊の手帳のうち1冊は鬼沢の日記で、もう1冊にはバラバラの数字が並んでいた。三島がこの謎を解読し、これが政治家への闇献金を記したものであることがわかる。
花村は猿渡を呼び出し、巧みな話術で猿渡の心情に訴える。猿渡は花村の話術に乗せられ、金を受け取ったことを認めてしまう。漆原は猿渡に激怒し、土下座する猿渡を蹴り倒す。そしてトカゲのシッポ切りに動き出す。
チビ政は何者かに射殺され、国税局で取り調べを受けていた鬼沢は、向かいのビルから殺し屋に狙撃される。狙撃直前に亮子が殺し屋の存在に気づき、鬼沢は命拾いする。自分もただのトカゲのシッポなのだと思い知り、鬼沢は呆然とする。“赤ちゃんが生まれるんでしょう”という亮子の言葉を聞き、鬼沢は亮子にすがりついて咽び泣く。
猫田も死体となって発見され、鬼沢は奈々を連れて自分の墓へ身を隠す。神殿風の墓の内部には、純金の墓石があった。鬼沢は鬼の形相で“取れるもんなら取ってみろ”と言い放つ。
鬼沢が地上げした土地では、オフィスビル建設に向けて地鎮祭が執り行われる。一連の事件の黒幕である漆原や政財界の大物たちは、涼しい顔で高笑いしていた。物陰からその様子を見ていた亮子は、悔しさをにじませる。
映画『マルサの女2』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
前作に続き、権藤寛子の活躍を中心に描かれた続編。今回は宗教法人という、さらに手強く、触れにくい対象に切り込んでいて、社会派サスペンスとしての切れ味がより鋭くなっていました。現実とリンクしていそうな宗教団体の構造、そしてそこに潜む脱税の実態が暴かれていく展開は見応え抜群。皮肉とユーモアが効いたセリフも相変わらずで、伊丹十三監督の世界観がより深化していました。(30代 男性)
前作よりもテンポがよく、コメディ要素が強調されている印象でしたが、その裏にある社会批判はむしろ鋭くなっていて驚きました。宗教法人が税制の抜け穴として利用されている構図は、リアルで背筋が寒くなります。大地真央演じる教祖が圧巻で、笑いながらもゾッとする。寛子の人間的な部分も垣間見える描写が増え、より感情移入できました。(40代 女性)
『マルサの女2』は前作よりも構造が複雑で、テーマも重たく、観る側に思考を求める作りでした。宗教法人という題材にメスを入れたことがまず挑戦的ですし、それをエンタメとして昇華できているのは伊丹監督の手腕。終盤の摘発シーンはまさにカタルシス。権力や金、信仰が絡み合う世界で、正義とは何かを突きつけられる作品でした。(50代 男性)
やっぱり伊丹十三監督の作品は、エンターテインメントでありながら鋭い風刺が効いていて面白い!女性主人公が税務調査で宗教法人に立ち向かうというのが、当時としても革新的だったと思います。セリフ回しやカット割りにも独特のテンポがあって飽きさせませんでした。税の知識がちょっとつくのも、実は地味に嬉しいポイントでした。(20代 女性)
学生時代に初めて見て以来、何度も見返している大好きなシリーズ。今回は特に現代にも通じる内容で、宗教と金の関係性が露骨に描かれていたのが印象深かったです。教団側が国税を小馬鹿にするような態度に対して、権藤が冷静に、時に苛烈に立ち向かっていく姿にスカッとしました。現代の日本にこそ、また観てほしい映画です。(30代 男性)
前作のファンとしては期待以上の出来でした。コメディと社会風刺のバランスが絶妙で、宗教法人を扱う難しいテーマを、わかりやすくかつエンタメとして仕上げているのはさすが。最後の宗教施設へのガサ入れのシーンはドキドキしながら見守っていました。皮肉たっぷりのラストも伊丹作品らしくて最高です。(50代 女性)
『マルサの女2』は、女性が税務官として戦う姿に元気をもらえる映画でした。寛子はかっこよくて聡明で、自分もこんなふうに芯のある人間になりたいと思いました。今回の敵である宗教法人の裏側は不気味だけどリアル。大地真央さんの妖しい演技がすごく効いていて、カリスマ性を見事に表現していたと思います。(20代 女性)
一見コメディ調で軽く見られそうだけど、実はめちゃくちゃ骨太な映画。脱税の仕組みをリアルに描きつつ、それを娯楽として見せる構成がとてもよくできています。教団ビジネスの裏にある闇がだんだん明らかになっていく過程がスリリングで、クライマックスの調査シーンは手に汗握りました。社会派映画としても一級品です。(40代 男性)
宗教法人というタブーに切り込んだ伊丹監督の勇気に拍手です。しかもそれをユーモアたっぷりに描くあたり、本当に天才的だと思います。前作では描かれなかったマルサの裏事情や組織の人間関係にも踏み込んでいて、寛子という人物がより人間味を帯びてきたのも好印象。大人向けの娯楽映画として完成度が高いです。(60代 男性)
今回初めて『マルサの女』シリーズを観ましたが、2からでも十分に楽しめました。宗教団体に対しても容赦なく踏み込む姿勢に衝撃を受けましたし、それを笑いと緊張感で包み込む演出がうまくて、最後まで引き込まれました。社会風刺としても優れているし、堅いテーマをここまでエンタメ化できるのは本当にすごい。(10代 男性)
映画『マルサの女2』を見た人におすすめの映画5選
マルサの女
この映画を一言で表すと?
「税金は払うもの」…そんな常識を覆す、痛快社会派エンタメ。
どんな話?
国税局査察部、通称「マルサ」の女性査察官・権藤寛子が、悪質な脱税者を追い詰めていく過程を描いた作品。金融や不動産、裏社会が絡むリアルな脱税の手口に切り込んでいくスリリングな展開が魅力。
ここがおすすめ!
『マルサの女2』の前作にあたる本作は、伊丹十三監督の鋭い社会風刺とテンポの良い展開が秀逸。コメディと社会派ドラマの絶妙なバランス、そして大地真央演じる寛子の存在感が際立っています。まずはこちらから観るのもおすすめです。
ミンボーの女
この映画を一言で表すと?
やくざvsホテル弁護士、女ひとりで闘う法のプロの逆襲劇!
どんな話?
ホテルに巣食う暴力団を法的手段で排除しようと奮闘する女性弁護士の物語。依頼主にすら疎まれながらも、自らの信念で暴力に立ち向かう姿が描かれる。実際の反社会勢力対策の参考にもなるようなディテールも。
ここがおすすめ!
伊丹十三監督らしい、社会問題をテーマにしたエンタメ作品。暴力に屈しない知恵と信念、法の力を駆使して戦う女性の姿に拍手したくなる展開です。『マルサの女2』が好きなら、こちらの“女シリーズ”も必見です。
スーパーの女
この映画を一言で表すと?
主婦の目線でスーパー再建!? 笑って泣ける経済ドラマ。
どんな話?
潰れかけのスーパーに、かつての同級生と一人の主婦がタッグを組み、立て直しを図る奮闘記。主婦の視点から見る流通業界の腐敗や合理化への反撃を、ユーモアたっぷりに描いた異色のビジネス映画。
ここがおすすめ!
税や金にまつわるテーマが得意な伊丹監督らしく、日常に潜む経済の不条理を主婦の目線で斬っています。『マルサの女2』同様、社会の裏側を軽妙かつ痛快に描いており、経済の仕組みに興味がある方にピッタリ。
ザ・インサイダー
この映画を一言で表すと?
告発は命懸け——企業とメディアの壮絶な心理戦。
どんな話?
実在のタバコ会社の内部告発者と、彼を報道しようとするジャーナリストの物語。企業の圧力、報道の倫理、個人の良心が交錯し、命がけの戦いが始まる。緊張感あふれる会話劇が展開される社会派サスペンス。
ここがおすすめ!
『マルサの女2』が描く権力構造や個人vs組織の構図に共鳴する作品。社会正義を貫く難しさ、報道の責任、そして内部告発の勇気に胸が震える。アル・パチーノとラッセル・クロウの名演にも注目です。
告発のとき
この映画を一言で表すと?
真実を暴くため、すべてを懸けた父の執念。
どんな話?
イラク帰還兵の息子が軍内で行方不明になったことから、父親が真相を追い求めて調査を始める。軍の中で隠蔽されていた恐ろしい事実に迫る社会派ミステリー。実話を基にした骨太なドラマ。
ここがおすすめ!
『マルサの女2』と同じく、個人が巨大組織に立ち向かう姿が描かれており、社会の暗部に光を当てるストーリーが印象的です。静かに燃える正義の炎が、観る者の心に残る感動作。深く考えさせられる一作です。
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