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映画『肉体の門(1964)』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『肉体の門(1964)』の概要:原作は1947年に発表された田村泰次郎の同名小説。この小説は、現在までに5回も映画化されている。本作は1964年公開の鈴木清順監督作品。終戦を迎えた東京で、弱肉強食の世界に放り出された娼婦の姿を通して、生々しい人間の姿を見つめていく。

映画『肉体の門』の作品情報

肉体の門

製作年:1964年
上映時間:90分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:鈴木清順
キャスト:宍戸錠、野川由美子、河西郁子、松尾嘉代 etc

映画『肉体の門』の登場人物(キャスト)

小政のせん(河西都子)
東京の闇市で体を売っている娼婦。廃墟となった雑居ビルを根城にして、仲間の娼婦たちと共同生活してる。グループのリーダー格。腕に関東小政の刺青を入れている。グループには、ジープのお美乃とふうてんのお六がいる。
ボルネオ・マヤ(野川由美子)
進駐軍の兵士に強姦され、生き残るためにおせんのグループに入った。まだ18歳。大好きだった兄は、ボルネオで戦死した。
町子(富永美沙子)
元教師の旦那が戦死し、せんのグループに入った。常に着物を着ており、娼婦に見えない品がある。女は家庭に落ち着くのが幸せだと思っている。
伊吹新太郎(宍戸錠)
元陸軍兵士。金を稼ぐため、進駐軍の基地から物資を盗んだり、強盗を働いて生きている。進駐軍に撃たれ、せんたちの雑居ビルに匿われる。
阿部(野呂圭介)
せんたちが商売する闇市を仕切る吉野一家のヤクザ。兄貴分の石井と新太郎の取引の仲介役をする。

映画『肉体の門』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『肉体の門(1964)』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『肉体の門』のあらすじ【起】

終戦後の東京。空襲で焼け落ちた東京の街には、あちこちでマーケットと呼ばれる闇市が開かれ、身寄りのない女たちは、生き残るために体を売っていた。

18歳のマヤは闇市をふらつき、空腹に耐えきれず芋を盗む。この闇市を仕切る吉野一家の阿部は、マヤに芋を奢ってやり、彼女を進駐軍に売ろうとする。しかしマヤが抵抗したため、公衆の面前で彼女を痛めつける。それを止めてやったのが、ここで娼婦をしている小政のせんだった。

マヤはせんに仕事を紹介して欲しいと頼んでみる。せんはマヤを娼婦仲間に加えてやることにして、根城の雑居ビルへ連れて行く。“男と寝たことがあるか”と聞かれ、マヤは進駐軍に強姦された時のことを思い出す。

せんのグループには“絶対に男とタダで寝ないこと”という厳しい掟があった。もしこの掟を破ったことが判明した場合、その仲間はひどい制裁を受けることになる。

他に生き残る道のないマヤは、娼婦として街角に立つようになる。マヤはすぐにボルネオで戦死した兄の話をするので“ボルネオ・マヤ”と呼ばれていた。

マヤは掟を破った仲間がどんな制裁を受けるかを初めて見る。せんとジープのお美乃、ふうてんのお六は、その女性の髪を切り、素っ裸にして晒し者にする。せんやお美乃やお六は、それを楽しんでいるようだった。一ヶ月ほど前に仲間となった未亡人の町子だけは、彼女たちの野蛮な暴力に眉をしかめる。

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映画『肉体の門』のあらすじ【承】

荒んだ生活の中で、マヤは何もかもを呪ってやろうと決意する。せんたちの仲間になるため、人間らしい心を捨てる。

マヤは、体を売ることも、人に暴力を振るうことも平気になっていく。せんは強くなるために、左腕に刺青を入れていた。

元陸軍兵士の伊吹新太郎は、進駐軍の兵士と揉めて、相手をナイフで刺す。新太郎は逃亡し、進駐軍は必死で彼の行方を探し始める。

せんは新太郎に誘われ、連れ込み宿へ入る。新太郎は追っ手の足音を聞き、急いで窓から逃げ出す。その際、進駐軍の銃弾を受けて怪我をする。銃声を聞いても、せんは平然としていた。

新太郎はせんたちの根城へ逃げ込んでくる。せんはマヤに焼酎を買ってくるよう命じ、新太郎をかくまってやる。新太郎はたくましい肉体を持つ屈強な男で、女たちは浮き足立つ。せんは傷の手当が済んだらここを出て行くように命じるが、新太郎は従わない。その強さが、逆にせんの女心をくすぐる。

映画『肉体の門』のあらすじ【転】

居候となった新太郎は、王様のように振る舞う。しかしそれがかえって新鮮で、女たちは新太郎に尽くす。マヤは新太郎に兄の面影を感じており、ずっとここにいて欲しいと思うようになる。

せんは阿部から、新太郎の行方を聞かれる。阿部の話によると、新太郎は横浜の米軍基地からごっそり物資を盗み出しており、他の仲間は捕まったが、新太郎と物資だけが行方不明になっていた。阿部はその物資を狙っていた。

しばらく根城に帰っていなかった町子は、新太郎と初めて顔を合わす。新太郎は、町子は他の女とは違うと感じる。

お六は、町子が掟を破って男とタダで寝ていた証拠をつかむ。町子はその男に本気で惚れており、金を受け取っていなかった。

おせんたちは町子を裸にしてロープで縛りあげ、竹の棒で何度も打つ。町子は悲鳴をあげながらも“あなたたちは男を愛したことがないんだ”と反抗していた。それを聞いてマヤはなぜか無性に苛立ち、町子にひどい暴力を振るう。最後は新太郎が止めてやり、町子は仲間から外される。

怪我が良くなると、新太郎は時々街へ出るようになる。そしてあちこちで強盗を働く。そんな新太郎のことをせんは心配し、金が必要なら進駐軍から盗んだ物資を吉野一家へ売るよう勧める。しましマヤだけは、それに反対する。

映画『肉体の門』の結末・ラスト(ネタバレ)

新太郎は物資を売ることに決め、阿部の兄貴分の石井と取引をする。物資はペニシリン200本で、石井は新太郎に金を渡す。ペニシリンは、後日届ける段取りとなる。

飯屋で再会した新太郎と町子は、そのまま男女の関係となる。2人が連れ込み宿へ消えるのを目撃したマヤは、町子を悪魔だと感じる。そして自分も悪魔になるため、教会の神父を誘惑し、強引に関係を持つ。神父はそれを深く後悔していた。

翌日。新太郎は大きな牛を連れて帰ってくる。新太郎はそれを自ら解体し、女たちと宴会を始める。新太郎も女たちもしたたかに酔っ払い、気分が悪くなったマヤは外へ出る。あの牧師が自殺したことを知ったマヤは、荒んだ気持ちで根城へ帰る。ちょうど、おせんが酔った新太郎に迫っていたが、新太郎はおせんを相手にしなかった。

マヤは、酔いつぶれた新太郎を船に運び、自分を抱いて欲しいと懇願する。2人は男女の関係となり、マヤは初めて男を愛する喜びを知る。マヤは人間らしい感情を取り戻すが、それは仲間から外されて生きていけなくなることを意味していた。新太郎はマヤに同情し、“自分と一緒に来る気があるなら後から橋へ来い“と言って出て行く。その一部始終をおせんが見ていた。

おせんは新太郎を吉野一家に売り、吉野一家は慎太郎を裏切って、進駐軍に新太郎の居場所を知らせる。マヤはおせんたちからひどい制裁を受けるが、新太郎のことを考えて耐え抜く。そして橋へ急ぐ。しかし新太郎は進駐軍に射殺され、橋にはすでに誰もいなかった。マヤは呆然と立ち尽くし、汚れた川に浮かんだ国旗を見つめる。

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