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映画『繕い裁つ人』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『繕い裁つ人』の概要:坂を上った先に「南洋裁店」という仕立屋があった。そこの店主である南市江は、先代からの店を守り、服を繕いながら生活を行っていた。だが、営業マンの藤井が現れ、ブランド化の話を勧められる。

映画『繕い裁つ人』の作品情報

繕い裁つ人

製作年:2014年
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:三島有紀子
キャスト:中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華 etc

映画『繕い裁つ人』の登場人物(キャスト)

南市江(中谷美紀)
「南洋裁店」二代目店主。頑固爺と言われる程、自分の好きな事に力を注ぎとことん拘る人物。先代から受け継いだ店と服をとても大切にしている。
藤井(三浦貴大)
大丸百貨店の営業マン。洋服が好きで市江の技術に惚れ込む。市江にブランド化の話を断られながらも、何度もめげずにアタックする情熱を持っている。
牧葵(片桐はいり)
「南洋裁店」とは長年取引がある。雑貨屋「ナイーフ」の店主。市江が作った服を唯一販売している。
葉子(黒木華)
藤井の妹。子供の頃事故に遭い、車椅子生活を送る。
ゆき(杉咲花)
女子高生。母が「南洋裁店」の常連客で、自身もお客として通う。
泉先生(中尾ミエ)
市江の恩師。夫はすでに他界している。
橋本(伊武雅刀)
「テーラーハシモト」の店主。市江の祖母の志乃と知り合いで、市江の事も知っている。
南広江(余貴美子)
市江の母。

映画『繕い裁つ人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『繕い裁つ人』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『繕い裁つ人』のあらすじ【起】

坂道の上にある一軒家に「南洋裁店」という店があった。そこには、窓からの光を浴びながら、昔ながらのミシンを動かす1人の女性が居た。

藤井は大丸百貨店に勤める営業マンで、上司に南市江の洋服をプレゼンする。市江の服は雑貨屋の「NAIFS(ナイーフ)」という店でしか買えなかったが、即日完売状態だった。その為、ブランド化してネットショップで販売すれば相互利益が見込めた。上司もカタログを見て市江の服を気に入るが、彼女自身も素敵な人なのだろうという言葉には賛同できなかった。藤井から見た市江は、職人気質で頑固爺のような人だった。

藤井が「南洋裁店」を訪れブランド化の話を勧めるが、市江はきっぱりと断る。市江は顔の見えないお客に服を作りたくないと思っており、先代からのミシンで作る事を大切にしていた。

藤井が「南洋裁店」で座っていると、女子高生のゆきが来店する。そして、母のワンピースを自分用に直して欲しいと市江に頼む。ゆきは背が低いのがコンプレックスで、普通の店には頼みにくいのだと恥ずかしそうにしていた。市江はマネキンにワンピースを着せると、大胆にスカートの下から腰の辺りまで鋏を入れた。このワンピースを着たゆきの母はとても綺麗で見惚れる程だったと話し、ゆきにもきっと似合うと伝える。ゆきは笑顔を見せた。

藤井は図書館で、1冊の洋裁の本を読んでいる市江に「ブランドのはじめかた」という本を読むべきだと渡す。市江はそれを断り受け取らなかった。そして、たくさんの服の本を持っている藤井に、そんなにあったら本当に好きな物が分からなくなると言って図書館を出た。

図書館を出た市江と藤井は、高台にあるベンチに座った。そこで、市江は藤井に自身の気持ちを伝える。「NAIFS」に置いている服は先代の祖母のデザインから作ったもので、生活費を稼ぐ為に仕方なく販売していた。店の二代目としては、祖母の服を直し続けるのが役目だと伝える。藤井は変化を恐れているだけだと詰め寄るが、市江は笑顔できっぱりとブランド化の話を断る。

藤井は「NAIFS」の店主の牧に先代の話を聞く。先代の志乃は多くの人から愛された偉大な人物だった。志乃の出棺の際には、町の人達が志乃の作った服を着て見送った。市江は涙を溜めながら、車の助手席でそんな町の人達を見ていた。

藤井は町で、ゆきとボーイフレンドを見かける。ゆきは市江が直したワンピースを着て、幸せそうに笑っていた。

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映画『繕い裁つ人』のあらすじ【承】

仕事が終わり、市江は母の広江から藤井が来ていた事を聞く。市江がそっけない返事をすると、藤井は先代ではなく市江の服を褒めてくれる人だと母から言われる。母は偉大な先代を持った市江の苦労を理解していた。市江は動揺して家を出る。

市江は喫茶店「サンパウロ」の常連客で、ワンホールのチーズケーキを注文すると幸せそうに食べた。店を出た市江は「ブランドのはじめかた」の本を店に置いてきた事に気付く。だが、気にせず帰る事にした。

市江の元に常連客の中田がやって来る。夜会に着るスーツを直しに来たのだ。夜会とはこの町で志乃が始めたもので、1年に1度30歳以上の人が一張羅の服を着て行うパーティーの事だった。

次の日、市江は藤井と共に泉先生の家を訪ねる。インターホンを鳴らしても出なかったが、裏へ回るとガーデニングをしていた。後ろに居た藤井の事を恋人かと揶揄されるが、市江はムッとしながら仕事関係の人だと紹介する。

泉先生の家には学校の卒業生達との写真が飾られていた。その中の一つに市江が写っていた。藤井はよく見ようとするが、市江がさっと現れて写真立てを伏せてしまう。泉先生は市江に家に呼んだ理由を話す。亡くなった主人と初めて会った時に着ていた服を、死に装束に繕い直す為だった。市江は気が早い話だと驚く。

部屋の灯りも灯さずに日が暮れた部屋で、市江は泉先生の話を聞いていた。泉先生は死に装束を頼んだからといって心配はいらない。夫が残した庭を自分が育てて生活を送るのは、最高に幸せな事だと話す。藤井はそんな二人の様子をそっと見ていた。

映画『繕い裁つ人』のあらすじ【転】

夜、市江が泉先生の服を繕うのを、藤井は傍で手伝った。

朝になり、藤井が目を覚ますと服は完成しており、箱に入れられていた。市江は微笑みながら、帰る藤井に感謝の言葉を掛ける。藤井は好きでやった事だと返した。

ゆきは友達2人と一緒に「南洋裁店」を訪れる。夜会の服を置いてある部屋があり、市江が居ない隙に部屋に忍び込む。友達2人は丈が長くてダサいと笑い合った。そこに、藤井が現れ、君達の服じゃないからと諌める。ゆきは帰りながら、友達が「南洋裁店」の悪口を言った事に落ち込む。

藤井は「テーラーハシモト」を訪れる。昔ながらの紳士服の店で、店主の橋本が作業をしていた。橋本は志乃と市江の事を知っていた。藤井は市江のブランド化の話を半ば諦めていたが、それでも行くのは市江のオリジナル作品が見たいからだと話す。だが、橋本は市江が先代の作品を大切にしている気持ちが分かった。

市江は牧と話して藤井を夜会に招待しようとしており、店に藤井が現れた時に声を掛ける。だが、藤井は市江の話を遮り、市江達職人は好きな事だけして、自分のスタイルに合わなかったらすぐに諦めると悲しそうに話す。だが、我に返った藤井は謝罪をすると帰って行く。市江は困惑しながら、ただ黙っていた。

市江が町へ出掛けている時、車の中で仲睦まじそうに話している藤井と女性の姿を見てしまう。市江は動揺しながらその場を離れた。

市江は中田のスーツを仕立て終わる。市江の机には、服の型紙がたくさん置かれていた。それは、中田の体に合わせて毎年調節をしている証だった。

ゆきと友達2人は夜道を抜けて、2014年夜会会場に辿り着く。両親やお爺ちゃんが、普段とは全然違うおしゃれな姿でパーティーを楽しんでいる事に驚く。ゆき達は牧の制止を聞かず、夜会に乱入する。親達が驚く中、市江は丁寧に頭を下げて退出を促した。ゆきの友達は市江に、母のような服を作ってくれと頼む。だが、中田が現れ、服を大切にしない奴に南の服はもったいないと叱る。藤井は中田の話を聞き、市江に変わらなくていいと言うとお礼を言って去って行った。

市江は店に戻るとスケッチブックを広げた。そこには、市江がデザインした数々の服があった。市江は苦しそうに息を吐くと、ミシンをじっと見つめた。

映画『繕い裁つ人』の結末・ラスト(ネタバレ)

市江は泉先生に、死に装束ではなくガーデニング用のエプロンを渡していた。泉先生は呆れながらも、表情は明るかった。そして、藤井が1人で来て、エプロンを褒めていた事を市江に伝える。

市江が牧の元を訪れると、藤井が転勤になった話を聞き驚く。ブランド化が失敗した事が原因かもしれず、市江は動揺しながら帰る。牧は呼び止めると、私も市江のオリジナルの服が見たいと伝える。

市江は「サンパウロ」でチーズケーキを食べる。味が変わったような気がしたが、店員から作り方は創業以来変わっていないと言われる。市江は悲しそうに顔を伏せた。

市江は大丸百貨店のスーツの直しをしている「テーラーハシモト」を訪れる。そこで、藤井が東京に転勤になった事を聞く。しかも、橋本は年齢や収入の面から店を閉めるつもりでいた。市江は止めるが、橋本の意思は固かった。

市江は藤井と車で話していた女性を見かける。女性は車椅子で段差を登り難そうにしていた為、後ろを押してあげる。すると、女性から南市江さんですかと声を掛けられる。その女性は藤井の妹だと自己紹介をした。

藤井の妹の葉子は、子供の頃に事故に遭い引き籠りになった事を話す。そして、母が買ってくれた素敵なワンピースを見て、外へ出掛けるようになった。藤井はそれに影響を受けて、服の道へと進んだのだ。藤井は現在、本当に服が好きなのか確認する為に、一度服を離れて家具売り場で働いていた。市江はそれを聞き、簡単に居場所を変えられるのは羨ましいと話した。

市江は店で作業をしていたが、徐に立ち上がると「テーラーハシモト」に駆け込む。市江は涙ながらに、藤井に簡単に投げ出すなと言われた事を話す。そして、祖母は病気になり、震える手で縫っても糸に乱れはなかった。仕立屋なら引導を渡されるまで投げ出さないで欲しいと訴えた。橋本は黙ってその話を聞いていた。

市江は店に戻ると、夜にも関わらず模様替えを行った。

藤井は結婚式を訪れ、控室に居た葉子は笑顔で迎えた。藤井はウェディングドレスの襟を見て驚く。それは子供の頃、葉子が外へ出るきっかけになったワンピースの襟だった。市江がワンピースを直してウェディングドレスをデザインした事を知り、藤井は驚き立ち尽くした。

その頃、市江は2015年夜会の給仕を行っていた。ゆき達が現れ、牧が追い返そうとする。だが、亡くなった祖父(中田)の服を飾って欲しいと言われ、市江はそれを受け入れる。

葉子達は披露宴を行っていた。ベールに風船が取りつけられる。まるで歩いて棚引いているかのように、美しくベールが広がった。その姿に皆が笑顔になった。

夜会では、中田のスーツの周りに皆が集り、それぞれが中田に思いを馳せた。市江はゆき達に話しかける。一生着たいと思う服を作る事は仕立てる事より難しい事だと話し、祖母以上の仕立屋になりたいと話す。そして、あなた達のドレスを作らせてくれと頼む。

夏、市江は窓の明かりを浴びながら、布を広げて採寸を行う。そして、満足そうに微笑んだ。

映画『繕い裁つ人』の感想・評価・レビュー

原作は漫画家・池辺葵の同名作品。偉大な祖母の志を受け継ぎ大切に守りながらも、自己主張できない主人公の服に対する大切な思いを描いている。
原作の雰囲気を守りつつ、主演の中谷美紀が演じる凛とした演技が素晴らしくマッチしている。一生を添い遂げる服に対する人々の気持ちや思いが作品全体に溢れていて、物を大切にする日本人特有の気持ちの重さにじんとする。古いミシンに向き合う中谷美紀の姿勢の良さが印象的。古きを守りつつ新しい道を模索するのは、伝統を受け継ぐ人々にとっては大きな課題だと思う。現状維持でも繋いではいけるが、常に進み続ける世の中で生き残るのは大変なことだ。今作は人の思い出が詰め込まれた服を中心に新しい自分を見出すことの大切さをしっかりと描いた素晴らしい作品だと思う。(女性 40代)


本作は、神戸を舞台に、祖母から受け継いだ仕立て屋「南洋裁店」の2代目店主と、彼女の服をブランド化したいという百貨店の営業マンをはじめとする、様々な人々との人間模様を描いたヒューマンドラマ作品。
レトロで上品で静寂に包まれたアトリエと、店主の美しい佇まいや所作が美しく魅力的だった。
何よりも、頑固な店主の「着る人に寄り添う」という仕事へのこだわりや誠実さに感銘を受けた。
洋服を作る人や好きな人には是非見て欲しい作品。(女性 20代)


レトロな洋裁店の雰囲気や手の込んだ美しいお洋服に胸をときめかせながら鑑賞していました。正直な感想としては、上手く行き過ぎのストーリーと言うかこんなに美しくまとまることは無いだろうと思うのですが、キャストがとても良いのであまり違和感なく見られた気がします。
中谷美紀の強く、美しく、凛とした女性の姿がすごく好きでした。頑固爺なんて言われていましたが、子供にも丁寧に心のこもった対応をしているのが本当に素敵でした。(女性 30代)

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