映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』の概要:フロリダの夏を舞台に、殺人事件の真相を探る一人の青年が見つけた真実とは。マシュー・マコノヒーを筆頭に、実力派俳優たちが闇を抱える大人を怪演。娼婦まがいの淫らな中年女シャーロットを演じたニコール・キッドマンは、各国の映画賞にノミネートされる熱演ぶり。
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』の作品情報
上映時間:107分
ジャンル:サスペンス
監督:リー・ダニエルズ
キャスト:ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジョン・キューザック etc
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』の登場人物(キャスト)
- ジャック・ジェンセン(ザック・エフロン)
- 父の新聞社で新聞配達をする青年。フロリダ大学の水泳部員だったが、不満からプールの水を抜く事件を起こし除籍。5歳の時に母が家を捨てたことがトラウマとなり、女性には奥手。短気で幼稚な面もあるが、根は優しい。
- ウォード・ジェンセン(マシュー・マコノヒー)
- ジャックの兄。マイアミに暮らす新聞記者。人権問題や冤罪の記事を主に扱う。メイドのアニタと共に、母変わりとなって弟を育てた面倒見のいい青年。しかし、弟にも言えない性癖を持つ。
- シャーロット(ニコール・キッドマン)
- ブロンドの中年女。セクシーな服と盛り髪のウィッグを好み、卑猥な手紙が得意。危険な男が好きで、刑務所の囚人に写真と手紙を送り、恋人気分で文通を交わすのが趣味。
- ヒラリー(ジョン・キューザック)
- 保安官殺しの罪で収監されている死刑囚。言動は投げやりで攻撃的。人目を問わず、シャーロットに性的な命令をする非道な男。叔父の家族と共に、湿地帯で暮らしていた。
- ヤードリー(デヴィッド・オイェロウォ)
- ウォードのアシスタント。黒人。自称ロンドン出身。身を立てるためには手段を選ばず、正義より名声を重視する男。
- アニタ(メイシー・グレイ)
- ジェンセン家の元家政婦。二人の子を持つ黒人女性。ウォードとジャックの兄弟からは深く慕われ、特にジャックとは家族のような関係。明るく、ウィットに富み、気も強い。ジェンセン家に新しい女主人が来たことで、家政婦をクビになる。
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』のあらすじ【起】
黒人女性のアニタ・チェスターは、ある小説が出版されたことで、マスコミから注目される存在となっていた。その小説は事実に基づき、アニタは一連の事件の目撃者なのだ。インタビューを受け、彼女は過去を語りだす。事の起こりは、1969年の夏だった。
1969年、フロリダ州モート群の田舎町で、嫌われ者の保安官が刺殺されるという事件が起きた。容疑者は白人のヒラリー。彼はろくな裁判をされることもなく、死刑が確定した。しかし、獄中のヒラリーに婚約者ができ、彼女が真相解明のために動き出す。社会派の新聞記者ウォード・ジェンセンに手紙を出したのだ。殺害事件から、4年の月日が経っていた。
アニタは、ウォードの実家の家政婦だった。ジェンセン家の父は新聞屋を営み、母は蒸発。母親が消えた時、当時高校生のウォードと5歳のジャックの兄弟の世話をするため、アニタが雇われた。今、ウォードはマイアミへ行き、大学を中退したジャックが家業を手伝っている。
ジャックは水泳部で問題を起こし、退屈な新聞配達の日々を送る羽目になっていた。そのため兄の帰宅には喜び、取材の時の運転手役を買って出る。ウォードは、会社からアシスタントのヤードリーを連れてきていた。兄弟の父はインテリぶった黒人のヤードリーが気に食わず、父の恋人も差別主義者だ。家庭内には、居心地の悪い空気が流れた。
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』のあらすじ【承】
特ダネを狙うヤードリーは、早速事件の調査を開始した。依頼人のシャーロットは、けばけばしい格好の40代。彼女の趣味は、刑務所の男たちに手紙を送り、その気にさせることだった。中でも、ヒラリーとのやり取りは格別で、二人はたった数回の文通で婚約していた。ウォードとヤードリーは、この浅はかな依頼人に呆れるが、女性経験のないジャックは一目で魅入られてしまう。
ジャックとシャーロットは刑務所を眺めに行くが、門番に追い返され、ヒラリーの弁護人も協力する気がなさそうだ。さらに、ようやく面会したヒラリー本人が、ウォードたちには目もくれず、シャーロットに卑猥な格好をさせるだけで話にならない。
取材が難航する間も、ジャックはシャーロットとの時間を楽しんでいた。しかし、シャーロットはジャックを子ども扱いし、二人で海に出かけても進展はない。拗ねたジャックが海に入ると、そこでクラゲの大群に襲われてしまった。シャーロットはジャックの傷に尿をかけ、その話はジャックの父の手により美談となって、全国版の新聞記事になる。
不名誉な記事を書かれたジャックは苛立ち、ヤードリーとケンカをしてしまう。その時ジャックは「ニガー」と発言し、ヤードリーだけでなく、アニタのことまで怒らせてしまった。ウォードは弟とヤードリーを引き離すため、ジャックをヒラリーとの面会に連れ出した。
ヒラリーから、ようやく事件時のアリバイを聞き出したウォード。保安官が殺された夜、ヒラリーは彼の叔父とゴルフ場に忍び込み、芝を盗んでいた。ウォードはヤードリーをゴルフ場に向かわせ、ジャックと二人でヒラリーの叔父の元へ話を聞きに行く。
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』のあらすじ【転】
ヒラリーの叔父は、湿地帯の奥地で、大勢の家族と共に暮らしていた。その生活は見るからに貧しく、社会から隔離されていた。彼は芝泥棒を認め、その日は明け方までヒラリーと共にいたと証言。ヒラリーの家は、叔父の家からすぐそこだった。
ジャックは最初に刑務所へ行った時、この叔父を見かけていた。ウォードは、ヒラリーが叔父と口裏合わせをした可能性を考える。
一方で、シャーロットと捜査をしていたヤードリーは、ヒラリーたちの証言を裏付ける証拠を集めていた。しかし、その証拠はどれも曖昧で、ウォードはすぐに信じる事が出来ない。しかも、ジャックがシャーロットを問いただすと、彼女はヤードリーと寝たことを認めた。ヒラリーを無罪にしたいシャーロットと、手柄を上げたいヤードリーの言動に、兄弟は不信感を抱き始める。さらにヤードリーは、会社からの帰社命令に、さっさとマイアミに帰ってしまう。
そんな折に、ジャックの父の再婚話が持ち上がった。兄弟は、アニタを見下す新しい母が嫌いだった。ジャックは兄だけが本当の家族だと考えるが、その兄もまた、弟に対して秘密を抱えていた。ある晩、ウォードがバーで出会った黒人3人にリンチをされて入院したのだが、それはリンチではなく、ゲイでマゾヒストのウォードが自ら望んでされたことだった。
兄を失いかけたジャックは、シャーロットに母の指輪を渡し、一夜を共にする。しかし、シャーロットは彼の一途な愛情に嫌気がさし、結局はジャックを突き放した。さらにジャックは、ヤードリーに対して兄の入院を理由に記事の差し止めを要求するが、彼を思いとどまらせることはできなかった。その上、ヤードリーが記者として仕事を得るため、兄に体を差し出したことを聞かされる。
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』の結末・ラスト(ネタバレ)
冤罪疑惑が世に広まったヒラリーは、知事の恩赦で釈放された。彼はすぐにシャーロットの元へ行くと、レイプまがいの乱暴さで彼女を抱き、沼の家へと連れ帰る。シャーロットは沼での暮らしを泣いて嫌がったが、ヒラリーに抵抗することはできなかった。
退院したウォードは、ヤードリーが見つけてきた証拠がことごとくデタラメだったことを突き止めていた。しかしヤードリーは既にNYへ栄転し、ウォードは酒浸りの自堕落な日々を送るのみだ。
ジャックの父は、再婚相手のご機嫌を取るため、アニタをクビにした。父の結婚式の日、ジャックは披露宴会場の厨房で働くアニタに会いに行く。あまり親しく話すことは許されなかったが、アニタは、新しい母がしまい込んでいたジャック宛の手紙をこっそりと渡してくれた。その手紙は、シャーロットから1ヵ月前に届いたものだった。
シャーロットは、沼での暮らしを心底後悔していた。ヒラリーから愛されてはいると書いてあるものの、結婚式へ行ってジャックに会いたいという。これを見たジャックは会場を飛び出し、弟を止めに来たウォードを巻き込んで、湿地帯へ向かう。
その日、シャーロットは、本当に結婚式へ参加しようと準備していた。しかしヒラリーがそれを許さず、口論となり、シャーロットは殺された。そこへジャックが現れ、彼を挑発する。殺気立ったヒラリーはナイフを持って家を飛び出し、応戦したウォードを殺した。
ジャックは必死で逃げ、沼へ飛び込んだ。ヒラリーは一晩中ボートで沼を見張るが、泳ぎの上手いジャックは一向に見つからない。彼はこっそりと沼を脱出し、兄とシャーロットの遺体を運び出していた。そしてヒラリーは捕まり、死刑になった。保安官殺人事件の真相は、闇のままだ。
ジャックは作家になり、この一連の出来事を書いてアニタに捧げた。しかしアニタの見たところ、彼には二度と、本当の恋など出来そうもなくなっていた。
映画『ペーパーボーイ 真夏の引力』の感想・評価・レビュー
じっとりとした蒸し暑さを放ち息苦しくなる作品。暴力と差別に満ちた60年のアメリカを描き、出てくる登場人物も中々のくせ者だらけ、そして衝撃のラスト。出演者たちの演技力が凄まじく、マシュー・マコノヒー、ザック・エフロン、ジョン・キューザックとかなりの豪華キャストで誰を見ても素晴らしい演技、そして一番光っていたのはニコール・キッドマンです。とてつもなく美しいのにケバく、田舎者っぽい下品な女性、しかしどこか母性を感じさせるシャーロットを演じており、ずっとニコールを目で追ってしまいました。フロリダのむせ返る様な空気感が本当に伝わってきて、良い意味で不快度指数が高い作品で印象に残りました。(女性 30代)
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