映画『女と男のいる舗道』の概要:強い願望も夢もない女。お金に困り、彼女が選んだのは娼婦になることだった。本当に好きな男を見つけた女は、娼婦として生きていくことを止めようとしていたのだが。ゴダールが贈る、ウィットに富んだ悲劇。
映画『女と男のいる舗道』の作品情報
上映時間:84分
ジャンル:コメディ、ラブストーリー
監督:ジャン=リュック・ゴダール
キャスト:アンナ・カリーナ、サディ・レボ、ブリス・パラン、アンドレ・S・ラバルト etc
映画『女と男のいる舗道』の登場人物(キャスト)
- ナナ(アンナ・カリーナ)
- レコード店でバイトをする女。お金に困り、娼婦となる。舞台女優になりたいと言うが、これといって強い願望や夢を持っていない。ある青年に恋をするが、それに気づいたラウールにヤクザのもとへ連れて行かれる。そして、そこでヤクザに撃たれて死んでしまう。何事にも無感情なように見える。
- イヴェット(G・シュランベルゲル)
- ナナの友人。娼婦で、ナナにラウールを紹介する。ナナと同じような境遇を経て、売春に手を出した女。
- ラウール(サディ・ルボット)
- 売春斡旋業を生業にする男。ナナのヒモになる。他の男に気持ちを持ち始めたナナを、ヤクザに売り払おうとする。悪党で性格も悪い。
- ポール(アンドレ・ラバルト)
- ナナの元夫。ナナと言い争いをする。舞台女優になりたいというナナの夢を真っ向から否定する。
映画『女と男のいる舗道』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『女と男のいる舗道』のあらすじ【起】
パリのカフェ。ナナはポールという男と言い争いをしている。ポールとは同棲していて子供までいる。ナナはそんなポールの実家から飛び出してきたのだった。ポールは未練たっぷりでナナを引きとめようとする。ナナは、出会わなければよかったとポールに言う。舞台女優になることが夢だと語るナナに対し、向いていないとポールは言う。ナナはポールに、口先だけの愛でいつも置き去りにされてきたと文句を言うのだった。
ナナはレコード店で働いている。仕事中、ナナは同僚に2000フラン持っていないかと聞く。さらに、ナナは同僚が読んでいる雑誌が気になり始める。同僚は、文章が素敵なのだと言って朗読を始めるのだった。
ある建物に入ろうとするナナを走って止めに来る女。彼女はナナのアパートの管理人の妻で、家賃を滞納してアパートの鍵を取られていたナナは管理人室にこっそり入って鍵を取ろうしていたのだった。女はそれを止めに来たのだ。同僚に聞いていた2000フランは、家賃のためのものだった。
映画『女と男のいる舗道』のあらすじ【承】
その夜、ナナは「裁かるゝジャンヌ」を観に映画館へと足を運ぶ。ジャンヌ・ダルクが涙を流した瞬間、ナナの目にも涙が浮かぶのだった。
その後、カフェで男と会うナナ。男は、写真をいつ撮ろうかとナナに言う。写真を映画関係者に配るのだと男は言う。
ナナは警察から尋問を受けていた。街で見知らぬ女が落としたお金を盗もうとした疑いで捕まったのだった。
レコード店の仕事だけでは家賃を払うことができなかったナナは、自分の体を売ってお金を得ることを決意する。そして、初めてのお客を迎える。
ナナは街で、友人のイヴェットという女に遭遇する。二人はそのままカフェへと行く。イヴェットは自分の過去を語るが、それはまるでナナの人生と同じで、夫と別れて生活のために娼婦をしているという話だった。イヴェットは、ナナをある人物に紹介する。その男はラウールという名前の男で、売春組織のポン引きだったのだ。
ナナが手紙を書いている。イヴェットにある仕事を紹介されていた。その仕事先に送るための手紙を書いていたのだ。
映画『女と男のいる舗道』のあらすじ【転】
そこへラウールがやって来る。ラウールはナナの後をつけてきたのだった。お金が必要だというナナに、ラウールは仕事を紹介すると言う。
ナナはラウールの斡旋で本格的に娼婦となった。そして、ラウールはナナのヒモにもなった。ナナはラウールに多くのことを質問する。売春の目的、法的なルール、相場や求められるものなど、あらゆることにラウールは答える。例えば妊娠した場合、一般的には堕すものだと思われているが実際は堕さずに田舎に預けるのだとラウールは語る。検診日が唯一の休暇で、毎週末に給料が支払われるという契約でナナは仕事を受けるのだった。そして、ナナは娼婦としてたくさんの男たちと寝るのだった。
ナナはある喫茶店にいたビリヤードをする男が気になり出す。ジュークボックスの音楽を流し、ナナは音楽に合わせて踊り始める。ビリヤードに熱中する男を誘うように踊るナナだが、その男は全くナナに興味を示さず、黙々とビリヤードを続けるのだった。
映画『女と男のいる舗道』の結末・ラスト(ネタバレ)
あるカフェに入るナナ。席に座り、タバコを吸い始める。すると隣に座る男が気になり始め、ナナは男に、ずっと見つめていても良いかと聞く。男は良いと答える。読書をしている男に、なぜ読書をするのかと聞くと、それが仕事なのだと男は答える。
男は哲学者だった。なぜ人間は話をするのかと問うナナ。人は話をしないで生きられるだろうかと逆に問う男は、言葉は愛と同じだからそれは無理だと答える。言葉は意味を伝えるもので、人間を裏切るではないかと言うナナに、人間もまた言葉を裏切るものだと男は答える。考えることと話すことは区別できるものじゃないと男は語るのだった。
ナナの部屋に、ビリヤードに夢中になっていた男がいる。男はエドガー・アラン・ポーの本を朗読している。そして二人は抱き合い、愛を確認し合う。ナナは、一緒に住もうと提案するのだった。
ラウールとその仲間がナナを無理やり車に乗せ、別の売春業者に売り払うと言い出す。ラウールは、客を選り好みするからいけないのだとナナに言う。そしてナナの受け渡しのとき、相手の持ってきた金額が足りないのを知りラウールはナナを連れて帰ろうとする。相手はラウール達に向けて発泡するが、ナナだけがその銃弾を受けてしまうのだった。そして、ラウール達はナナを置いて走り去って行くのだった。
映画『女と男のいる舗道』の感想・評価・レビュー
「虚無感」を感じる何とも言えない複雑な作品でした。今作の主人公ナナは「夢」や「希望」が無く、お金に困り娼婦になります。私もこれと言った夢が無いまま生きてきてしまったので、いつの間にか自分自身を彼女に重ね合わせて鑑賞していました。
彼女の選択が正しいのか、そうで無かったのかは分かりませんが「正しいと思える道」を見つけたのに、そこに辿り着けないのはとても切なく、可哀想に感じました。(女性 30代)
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