この記事では、映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2018年 |
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上映時間 | 115分 |
ジャンル | アニメ ファンタジー ドラマ |
監督 | 岡田麿里 |
キャスト | 石見舞菜香 入野自由 櫻井優輝 茅野愛衣 |
製作国 | 日本 |
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』の登場人物(キャスト)
- マキア(石見舞菜香)
- 長命である別れの一族イオルフ。長老に育てられ、気弱で控えめな性格。ヒビオリという織物を作る名人で、織り目からメッセージを読み取ることができる。金髪で儚く美しい。
- エリアル(大人:入野自由 / 幼少期:櫻井優輝)
- 山賊に襲われたった1人、生き延びた人間の赤子。マキアに拾われ育てられる。マキアを守るために軍へ志願し、別れを決意。優しく母親思いの青年へと成長する。
- レイリア(茅野愛衣)
- イオルフの一族でマキアの幼馴染。大変なお転婆でクリムと恋仲にあったが、メザーテ国に攫われ王子の子を身籠ってしまう。気品があり気丈な性格。金髪で男勝り。
- クリム(梶裕貴)
- イオルフの一族でマキアとレイリアの幼馴染。レイリアと恋仲にあったが、メザーテ国に攫われ何度も救おうと奮闘する。幸せだった頃の記憶に執着している。
- ディタ(日笠陽子)
- エリアルの幼馴染。赤毛の女の子で強気な性格。エリアルに恋心を抱いている。仕事を探してメザーテへやって来た折、エリアルと再会し結婚、出産をする。夫の中にいるマキアの存在をとても気にしている。
- ラング(細谷佳正)
- ミドの長男。エリアルを赤子の頃から知っており、マキアに恋心を抱いている。軍の兵に志願し、後に騎士団長へと昇進する。エリアルの兄貴代わり。
- ミド(佐藤利奈)
- 女手一つでラングと弟を育てる肝っ玉母さん。マキアを助け赤子を育てる手助けをする。
- イゾル(杉田智和)
- メザーテ国の騎士。長い間、レイリアの姿を見守り、イオルフの里を襲ったことを後悔している。良くも悪くも使命に忠実。
- バロウ(平田広明)
- イオルフ族の青年。長老と同じ年齢で、外の世界を放浪している。人間とイオルフの間の子で、イオルフの血を強く引き継いでいるため、長命。布の売買をして生計を立て、何かとマキアを助ける。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のネタバレ・あらすじ(起承転結)
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のあらすじ【起】
儚くも長命であるイオルフの一族は、ヒビオリという織物を織ることで毎日を過ごす。彼ら一族は誰もが金の髪を持ち少年や少女の容貌で時を止め、400年以上もの長い時を生きる。
日々を折り続けることでヒビオリと呼ばれる布は、非常に上質で高く売れる。人間達は彼らを別れの一族と呼んだ。
イオルフの民であるマキナは、幼馴染で男勝りのレイリアとクリムに囲まれ布を織って穏やかに暮らしていた。彼女には身寄りがなく、400年を生きる長老に引き取られ育てられている。長老は人間社会と交わることを極力、控えひっそりと暮らすことを推奨しており、外の世界へ興味を抱くマキナにも日頃から注意を促していた。
そんなある夜、人間の国メザーテ王国より古の龍レナトに乗った兵がイオルフの里を強襲。兵を率いる騎士イゾルの目的は、イオルフの少女を手に入れることだった。里は壊滅させられ龍の暴走によりたった1人、マキナは遠く離れた山の中へ放り出されてしまう。彼女は満身創痍となりながら山をさ迷い歩き、赤ん坊の泣き声を耳にするのだった。
泣き声を辿り山賊に襲われた集落を見つけたマキア。赤ん坊は亡くなった母親に抱かれていたが、そこにはバロウという男がおりマキアに忠告をする。彼は旅の商人でマキアのことを知っており、長老とも旧知の仲らしい。故に、イオルフが人間と関わった末に苦しむことを知っていた。だが、マキアは見捨てることができず、母親の腕から赤ん坊を拾い上げ育てることにするのだった。
母親になる自信がないマキアだったが、近くの村の納屋へ侵入し赤ん坊に山羊の乳を飲ませようとする。そこで家主のミドに発見されるのだった。
ミドは女手一つで2人の男の子を育てる肝っ玉母さんだが、マキアを不憫に思い手助けしてくれる。マキアは子供にエリアルと名付け、髪を染めて布を織り収入を得ながら、エリアルを育てる毎日を送った。
8年後、街へ布を売りに行った際、店の主人からヒビオリを見せられたマキア。そのヒビオリには、メザーテ国の王子とレイリアの結婚を知らせる旨が織り込まれていた。愕然としたマキアだったが、そんな時、ミドの家で飼っていた愛犬が亡くなってしまう。このことで命の儚さを知ったマキア。彼女はエリアルを連れてメザーテ国へ向かうことにするのだった。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のあらすじ【承】
メザーテへ向かう船内でクリムと遭遇し、状況を聞く。メザーテ国の国王は長命であるイオルフの血を欲し、里を強襲したのだと言う。そうして、攫われたレイリアは王子の子を産むよう強要されているのだ。レイリアと恋仲にあったクリムは、強襲されたことで人間を厭うようになり恋人を救い出そうと必死になっていた。
メザーテにてイオルフの生き残りと合流したマキアは、王子の結婚パレードに乗じてレイリアの救出作戦に参加。数年ぶりに幼馴染と再会したマキアだったが、レイリアはすでに王子の子を身籠っていたため、逃亡を拒否。そこへ、騎士イゾルの追手が現れたため、窮地に追いやられるも、通りかかったバロウが助けてくれるのだった。
レイリアの救出に失敗したクリムは酷く落ち込んだが、マキアとエリアルを置いて仲間と共に去ってしまう。
その後、マキアはメザーテにて職探しをしたが、子持ちのためになかなか見つからず。職探しに疲れたマキアは子供に八つ当たりをしてしまう。マキナは息子が織っていた布から彼の心を読み解き、純粋に自分を思ってくれていることを知りエリアルと仲直りするのだった。
それから7年後、マキアは大衆酒場で働き、成長したエリアルも炭鉱で働いていた。マキアの容貌が変わらないため、2人は姉弟と周囲に言っていたが、噂では駆け落ちしてきたなどという話も出回っている。そんなある日、新たに赴任して来た兵士の中にミドの長男ラングがいることを知ったマキア。自宅へ招き積もる話を交わした。そこで、レイリアのその後を聞く。
レイリアは無事に王子の子を出産したらしいが、産まれた子供とは引き離され王宮の一室に軟禁されていると言う。子供は姫だったが、イオルフの血を受け継がなかったらしい。レイリアは軟禁生活に倦み、心の均衡を崩し始めていた。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のあらすじ【転】
同じ頃、年頃となったエリアルとの接し方について悩むマキアは、ラングから愛の告白をされる。だが、彼女はエリアルのことしか頭になく、ラングの申し出を断ってしまう。一方、ラングとの再会に加え、マキアとの関係に思い悩んでいたエリアルは気持ちの折り合いを上手くつけられず、彼女へと酷い言葉を投げつけてしまうのだった。
翌朝、エリアルはラングへと兵士になりたいと言い出す。彼はマキアを守りたいと思いながらも、守れずにいる自分に不足を感じていた。故に彼女の元から去り、独り立ちしようと考えたのである。マキアは彼が進む道を認め、泣きながらも快く送り出すのであった。しかしその後、マキアは自宅から忽然と姿を消してしまう。
メザーテ国は古の龍レナトを何匹も飼い慣らし所持することで、近隣諸国へと脅威を示していたが、それもここ十数年、人間に治せない奇病によりレナトは次々と命を落とし、今や1頭を残すのみとなっていた。
エリアルが軍に入って数年後、ラングは騎士団長へと昇格。マキアの捜索も続けていたが、一向に見つけられず。ここにきてメザーテの敵国がイオルフを手に入れたとの噂も流れていた。
エリアルもまた、かつての幼馴染ディタと再会し結婚。そして、彼女との間にもうじき子供も産まれようとしていた。
その頃、敵国にはクリムがおりメザーテとの間に戦争を起こし、レイリアを救い出そうと考えていた。そうしていよいよ、戦争が勃発。メザーテは激しい攻撃を受けたが、王族はレイリアとその娘を置き去りにし、我先にと避難。
メザーテ軍は敵軍と交戦し、混乱に乗じてマキアはクリムに連れられ城へと向かった。だが、マキアは戦乱の最中、戦うエリアルと遭遇する。
先に城へ到着したクリムはレイリアと再会し、彼女と共に逃げようとしたが、レイリアは彼の申し出をまたも断ってしまう。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』の結末・ラスト(ネタバレ)
産まれたばかりの娘と強制的に引き離されたレイリアは、マキアもクリムも死んだと思い込み、娘の存在だけを心の拠り所として生き永らえてきた。彼女の望みは、子供と再会することだった。レイリアの話を聞いたクリムは、思い詰めて彼女と心中しようとするも、そこへイゾルが現れ彼を銃撃してしまうのだった。
その頃、戦場で遭遇したエリアルの前から逃げ出したマキアは、森を抜けた先の家で産気付いている女性を発見する。彼女がエリアルの赤ん坊を宿していると知ったマキアは、出産の手伝いをすることにした。
一方、城では敵軍との激しい交戦が展開されている。古い体制が破壊される一方で、新たな命が誕生しようとしていた。
そうして夜が明ける頃、ディタは無事にエリアルの子供を出産。マキアはその赤子が必死に指を掴むのを目にし、命の尊さを学ぶ。彼女は負傷したエリアルの元へ向かい、出産が無事に済んだことを報告。マキアは彼と語り合った後、美しい笑顔を残してエリアルの元を去るのである。
メザーテ国は敗戦を期し、クリムの死を認めたマキアはたった1匹残ったレナトに乗って幼馴染を迎えに行くことにした。レイリアはようやく娘との対面を果たし、レナトに乗って現れたマキアの元へ。2人はようやく自由を手にし、古の龍と共にメザーテ国を去って行くのだった。それぞれに過ごした時は彼女らのヒビオリとなり、生きた証である。
数十年後、年老いたエリアルの元を訪れたマキア。彼女は育てた息子を労り、その死を看取った。マキアはエリアルとの出会いにより、悲しいだけの別ればかりではないことを、身を挺して示した。彼女はこれからも、別れを恐れずに人を愛し続けることを胸に誓うのであった。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』の考察・解説(ネタバレ)
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』はなぜ気持ち悪いと思われるのか?
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』が「気持ち悪い」と感じられる理由は、物語の感情的な要素や設定が一部の観客に違和感を与えるからだと考えられます。まず、主人公のマキアは「イオルフ」という不老不死に近い種族の一員で、普通の人間とは異なる時の流れの中で生きています。物語の中で、マキアは赤ん坊のエリアルを引き取り、自ら母親として育てる決意をします。しかし、エリアルは普通の人間なので、成長して大人になる一方で、マキアの容姿は全く変わりません。この点が一部の観客に「気持ち悪さ」を感じさせる要因となっています。
時間の流れが異なる母子の関係は、一般的な親子関係とは異質な感覚を生み出し、マキアとエリアルの関係性が年齢差や見た目の不変性によって、不自然な印象を与えてしまうのです。また、エリアルが成長する過程で、マキアとの関係が母子の枠組みを超越しているかのように描写されることも、一部の観客に違和感を覚えさせる原因となっています。
さらに、映画全体のトーンが感情的に重く、「別れ」や「喪失の悲しみ」といったテーマが物語の中心に据えられているため、観ている間に感情的に圧倒され、「気持ち悪い」あるいは「重苦しい」と感じる人もいるかもしれません。作品自体は深遠なテーマを扱っていますが、その描写方法が一部の観客には過剰に感じられ、そのような評価につながっている可能性があります。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』でラストの一枚絵が意味するものとは?
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』のラストに登場する一枚絵は、物語のテーマである「別れ」と「時の流れ」を象徴する、非常に重要なシーンだと言えます。この一枚絵には、主人公マキアとエリアルのこれまでの人生が凝縮されて表現されているのです。
最後のシーンでは、年老いたエリアルが息を引き取った後、マキアが彼の側に寄り添う姿が描かれています。エリアルが赤ん坊の頃から老年に至るまでの人生を見守り続けてきたマキアが、彼の死を受け入れ、穏やかな表情を浮かべることで、この物語のテーマである「永遠の別れ」と「時の儚さ」が強調されているのです。
この一枚絵は、マキアがエリアルをどれほど愛し、彼の人生のすべてを見守り続けてきたかを象徴しています。同時に、マキアが自らの永遠の命と、エリアルが限られた時間の中で生きた人生とを対比しつつ、最終的には彼を見送るという母親としての役目を果たしたことをも示唆しているのです。
このシーンには悲しみと美しさが同居しており、観客に「命の儚さ」や「愛と別れの意味」について深く考えさせる、示唆に富んだメッセージが込められていると言えるでしょう。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』に続編はある?
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』には、現時点では続編が存在していません。この作品は、監督・脚本を務めた岡田麿里による完全オリジナルの物語であり、映画としてひとつの完結を迎えているのです。物語の中心には、マキアとエリアルの関係性が据えられており、彼らの時間の流れと共に、エリアルの死によってひとつの区切りが付けられます。
映画のエンディングは、すべての謎が解き明かされたわけではありませんが、感情的なクライマックスとテーマの集約が丁寧に描かれており、続編を必要としない完成度の高い作品となっています。マキアがエリアルを見送った後、彼女がどのように生きていくのかは観客の想像に委ねられていますが、物語全体としては「永遠に生きる者と、限りある命を持つ者の別れ」というテーマが見事に完結しているため、続編を制作する余地はほとんどないと考えられます。
岡田麿里監督にとって、この映画は映画監督としての初めての作品でしたが、続編よりも新たなオリジナル作品に取り組む可能性が高いでしょう。そのため、『さよならの朝に約束の花をかざろう』は単体で完結した物語として、観客の心に深い感銘を与える作品となっているのです。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』でレイリアはその後どうなったのか?
レイリアは、マキアと同じイオルフの種族に属する人物で、物語の中で重要な役割を担っています。彼女は他のイオルフとは異なり、人間の王子との間に子供をもうけました。しかし、王族の家に幽閉され、子供を引き離されてしまい、長い間再会することができませんでした。
物語の後半、レイリアは息子のメドメルと再会を果たしますが、二人の間には深い溝ができていました。彼女は母親としての愛情を抱いていたものの、長い歳月が流れたために、息子にとって彼女はほとんど「他人」のような存在になってしまっていたのです。レイリアはその現実を受け入れざるを得ませんでしたが、それでも母として息子を愛する気持ちを捨て切れずにいました。
最終的に、レイリアはイオルフの故郷に戻る決断をします。彼女はマキアと再会し、イオルフの村で穏やかな生活を送ることになります。息子との再会に一定の満足感を得つつも、二度と一緒に暮らすことができなかったという悲しみを胸に秘めながら、イオルフとしての長い命を受け入れ、静かに過ごしていくのです。
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』はどういう話なのか?
映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、イオルフという長寿で不老不死に近い種族の少女マキアが、人間の赤ん坊エリアルを拾い、我が子として育てる物語です。孤独を抱えながらも母親としてエリアルを大切に育てるマキアですが、人間であるエリアルは時間と共に成長していきます。エリアルが大人になっていく一方で、マキアの容姿は全く変わらないため、二人の間には次第に時間のずれが生じていくのです。
物語の中心には、母親としてのマキアの愛情と、エリアルの成長に伴って変化していく二人の関係性が描かれています。マキアは、エリアルが自立の道を歩み始める中で、自分が永遠に彼を守ることができないという現実を受け入れなければなりません。一方、エリアルもまた、マキアが母親であることを理解しつつ、自分自身の人生を歩み始めるのです。
映画のテーマは「別れ」と「時の流れ」であり、永遠に生きる者と、限りある命を持つ者の間に生まれる愛と悲しみが描かれています。マキアは最期までエリアルを見守り、変わらぬ愛情を注ぎ続けますが、ついには彼の死を受け入れ、母親としての役目を果たすのです。『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、母と子の絆、時の無常、そして人の成長と別れを描いた感動的な物語なのです。
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