この記事では、映画『アルカディア』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『アルカディア』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『アルカディア』の作品情報
上映時間:111分
ジャンル:SF、アクション、ファンタジー
監督:アーロン・ムーアヘッド
キャスト:アーロン・ムーアヘッド、ジャスティン・ベンソン、キャリー・ヘルナンデス、リュー・テンプル etc
映画『アルカディア』の登場人物(キャスト)
- アーロン(アーロン・ムーアヘッド)
- ジャスティンの弟。少年時代をキャンプ・アルカディアにて過ごし、生活に馴染み切っていた。兄には不満ばかりを抱いており、強制的に脱退させられたことを恨んでいる。釣りが得意。
- ジャスティン(ジャスティン・ベンソン)
- アーロンの兄。キャンプ・アルカディアにて少年時代を過ごしたが、異常さを覚えアーロンを連れて脱退する。弟をひたすら心配している現実主義者。
- アナ(キャリー・ヘルナンデス)
- 黒髪の女性でカルト教団、キャンプ・アルカディアにて衣類を作成している。シェーンとは恋人関係にあるが、アーロンに好意を抱いている。
- ハル(テイト・エリントン)
- アルカディアでの仕切り役をしている。アーロンとジャスティンのことも覚えており歓迎してくれるが、戻って来た目的に疑問を抱いている。数学者である方程式を延々、解こうとしている。他にも銃の収集をしている。
- シェーン(シェーン・ブレイディ)
- 手品を極めようとしている男性。普段はアルカディア内にて大麦を育てたりしている。アナとは恋人関係にある。
- ティム(リュー・テンプル)
- 髭面の壮年の男性。キャンプ・アルカディアにて酒作りを主に行っている。独自のビールを生産し、アルカディアの収入源ともなっている。無口。
映画『アルカディア』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『アルカディア』のあらすじ【起】
少年時代をカルト教団アルカディアにて育った兄ジャスティンと弟のアーロン。ある日、2人の前に教団から1本のビデオテープが届く。中にはアルカディアに住む女性アナが終末を知らせるメッセージが映っていたが、それを見たアーロンはアルカディアでの生活を思い出してしまう。
アルカディアから兄弟が脱退したのは今から10年前。当時、教団内で集団自殺をするという噂をジャスティンが聞いたからだった。兄は嫌がる弟を連れて脱退したが、アーロンはそのことを未だに恨んでいる。ジャスティンはそんな弟のことをひたすら心配し長い間見守ってきたが、恨まれ続けながらも心配するのには少し疲れを感じていた。対して、アーロンは兄に不満だらけ。そんな弟の要望で、ジャスティンは教団へ1日だけ戻る決意をするのだった。
荒野の一本道をひたすら車を走らせ、静かな森を抜けた先。アルカディアへ到着した兄弟は、当時からの知り合いハルと挨拶を交わし食事と宿を得る。アーロンが一休みする間、ジャスティンはジョギングへ向かうことにした。一見すると、アルカディアの人々はそれぞれに役割をこなしつつ、穏やかに暮らしている。とてもカルト教団での生活とは思えなかった。
その日の夜、焚火を囲んで談笑。アナはアーロンにアルカディアで生活するための収入は各自でも得ているが、主な収入として壮年の男性ティムが作るビールの売上が大きいと話す。その間、ジャスティンはハルに呼び出され、戻って来た目的を問われる。彼は正直にビデオテープが届いたからだと話した。

映画『アルカディア』のあらすじ【承】
その後、苦闘の時間だと言われ促された場所へ向かう。そこには太いロープが1本あり、丘の上の暗闇から空へと繋がっていた。どういう原理なのか。引っ張れば、引き戻される。アーロンが挑戦し綱引きに勝利したが、ジャスティンは勝つことができなかった。
自然に囲まれ素朴ではあるものの、満たされた生活。アーロンはもう1泊したいと兄に申し出たが、ジャスティンは危機感を覚えている様子。結局、弟に甘い兄は滞在を1泊延長することにした。
翌朝、ハルから借りた銃の試し撃ちを行い、兄弟で釣りを楽しむ。その後は単独でジョギングへ向かったジャスティン。道の途中で目に見えない何者かと遭遇する。それは鼻息か何かで彼を立ち止まらせ、足元に写真を並べ更に1本の木をなぎ倒した。
夜はカラオケ大会が行われたが、ジャスティンは昼間にあったことの説明をハルに求めた。だが、彼自身も何が起きているか分からないと言う。その時、空を見上げて驚愕したジャスティン。夜空に月が2つあるのだ。ハルはオーロラのようなものだと言い、この2つの月が昇天へ導くと話す。昇天とは教団用語で死を意味することだと思っていたが、どうやら違うらしい。ハルはジャスティンにアーロンともう1日、滞在して自分で謎の解明をしろと言うのだった。
翌朝、兄弟は湖に釣りへ。そこで互いに体感したことを話し合う。ジャスティンは昨夜、ハルに言われたことを思い出し、湖に浮かぶブイの下へと潜ることにした。すると、彼は異様な光景を目にし、工具箱を手にしてボートへと戻って来る。黒い影の化け物がいると怯えるジャスティン。アーロンは慌ててボートを岸へ戻した。
工具箱の中には石が詰まっており、1本のビデオテープが入っている。ジャスティンはそれを目にし、問答無用で帰ると言い出す。弟は別れの挨拶をしてから去ると言って説得したのだった。
映画『アルカディア』のあらすじ【転】
夕食時、入手したビデオテープを鑑賞。そこには10年前のジャスティンとアーロンが映っていた。ハルはジャスティンを外へ呼び出し脱退した当時のことを許すと言う。ジャスティンがアルカディアから出た後、メディアに向かって教団のことを悪く言ったせいで、ハル達は収入を得るのに苦労したらしい。だが、そこへアーロンが現れアルカディアに残ると言い出し、一同は口論となる。ハルはジャスティンに一人で出て行けと言うのであった。
荷物を持って車へ向かったジャスティンだったが、エンジンがかからない。仕方ないので徒歩で道を進み、小屋を発見する。そこにいた男曰く、ここではどうやら時間がループしているらしい。彼と同様にループへと囚われた者は他にもいるようで時間もそれぞれらしいが、男の場合は3時間だと言う。時間はループしても記憶は残り、繰り返される3時間にうんざりしていた。更にもうじきリセットの時がやってくるらしい。それまでにここから脱出できなければ、ループに囚われ二度と出られないと言う。男から出口を教えてもらうため、彼の頼みを聞き手描きの地図をもらった。
翌朝、喧嘩したにもかかわらず、兄を探さなければと考えるアーロン。広場にいたハルから行き先を示され、ループを仕切る石の塔から先へ出ることにした。道を進みテントを発見した彼は、そこで繰り返される惨劇に驚愕する。テント内にいる男は5分をループし、ひたすら死に続けているのだった。
映画『アルカディア』の結末・ラスト(ネタバレ)
その頃、地図の通りに道を進み、目的の家に到着したジャスティンは、ガンマニアの薬物依存症の男から銃を受け取り彼らの悲劇を目の当たりにする。そして、また始まるのを見てその場を去った。
そうして、更に道を進み新たなループの地域へ。そこには白いトレーラーがあり、アーロンが現れる。住人は出かけているようで、誰もいなかった。
リセットの目安は3つ目の月が満ちる時。合流した兄弟は日暮れに小屋へ到着し、アルカディアまでの地図と銃を交換。そこで、アーロンは兄へ教団に残ることを告げた。ジャスティンは弟の浅慮を諫めようとしたが、意思が固いことを知り諦める。
アルカディアへ戻った兄弟は、集落の長閑な空気が一変していることを察知した。ティムが酒の貯蔵庫の前におり、2人の姿を目にして鍵を開ける。3つ目の月が満ちようとしていた。
貯蔵庫へ向かった兄弟は、そこが実は貯蔵庫ではなく記録を保管する場所であることを知る。そこには1940年代から現在のものまで、映像記録がぎっしりと保管してあるのだった。部屋の真ん中には1台のテレビ。画面には目に見えない存在からの視点で映像が映し出されている。そこには、今まさに広場に並ぶハル達の姿。視点は彼らへと無残にも襲い掛かった。
急いで広場へ向かった兄弟だったが、すでに人影もなく。血に塗れた衣類だけが残されている。愕然とするアーロンを慰めるジャスティン。しかし、ここでリセットが開始。目に見えない存在が時空もろとも、あらゆるものを飲み込み始める。兄弟は慌てて車へ向かうが、やはりエンジンはかからない。そこで、2人は人力で車を押し、エンジンをかけることにした。
車を押しながら本心を語り合う兄弟。何だかんだ言っても、2人は家族。互いに時を重ねていきたいのである。背後に迫る脅威から逃れるため、車のエンジンをかけ境界へ突入。囚われた生き物はそれ以上進めないが、2人はまだ逃れられる。互いに悲鳴を上げながら、境界から無事に外へ脱出。助かったことにただ、茫然とする2人。ガソリンがないことに気付いたが、減るということはこれが現実なのだと、実感できることでもあるのだった。
映画『アルカディア』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
10年前に脱退したカルト教団へ一時的に帰省した兄弟が、摩訶不思議な現象に遭遇し体感。死の縁に追いやられ、ようやく互いに本心を明かすという話。監督のベンソンとムーアヘッドが主演を務め、違和感のない兄弟を演じている。
中盤からはアルカディアの謎が明かされ、凄惨さを増していく。1回観ただけでは理解できず2回、3回観てようやく謎めいたセリフの意味が理解できるというかなり秀逸な作品。淡々と進むストーリーの中で、不気味な音楽と超自然的な現象に密やかな恐怖を抱く。(MIHOシネマ編集部)
想像力を掻き立てられる、「何か」がおかしい作品です。カルト集団と言われる自給自足の村「アルカディア」。日本にもいまだにこういう村ってありますよね。その村の中に学校や施設があり、そのコミュニティの中で生まれて、成長し、働き、その中の人間と結婚し、子供が生まれ…という私には少し理解が難しい場所で生きている人。この作品の舞台はそんな変わった雰囲気の村です。
その村で起こる不可解な現象や謎。何かがおかしいと感じますが、その何かが分からない展開。最後まで謎がはっきりしませんが、何度も見たくなる作品でした。(女性 30代)
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの引用を用いたオープニングに、知識欲を掻き立てられました。『クトゥルフ神話』についても深く学びたいと思います。なかなか複雑なストーリーで、理解するのに時間がかかりました。原題である『The Endless』がそのまま内容に表れています。題材は秀逸なのですが、中盤からのダラダラとした展開に集中力が切れてしまいました。それと、キャストたちの表情に喜怒哀楽があまり見られない点も少々気がかりでした。(女性 30代)
かつて脱出したカルト集団の元に戻った兄弟という設定が斬新で、最初は不穏ながらもどこか牧歌的な雰囲気に惹かれました。しかし、ループという概念が明かされてからは一気にSF的恐怖が襲ってくる。巨大な“存在”によって生かされ、永遠に同じ時間を繰り返すキャンパーたちの運命があまりに皮肉で切ない。ラストの選択も深い。(30代 男性)
全体的に淡々としているのに、じわじわと恐怖が染み込んでくるような感覚。正体の分からない「存在」の恐ろしさは、姿を見せないことでより強調されていたと思う。特に、無限ループに囚われた人たちが死と再生を繰り返す描写にはゾッとしました。ホラーというより、哲学的なSFスリラーという印象。(20代 女性)
ループ構造を題材にした映画は多いけど、『アルカディア』はそこに信仰と家族というテーマを絡めてきたのが面白かった。弟がこの“ループ地獄”に安心感を見出していたことに、現代社会での若者の不安や依存も感じた。あの空に浮かぶ二つの月の不気味さ、忘れられない。(40代 男性)
怖い映画っていうよりも、切なさが残る映画だった。あのループに囚われた人たちは、永遠に同じ瞬間を繰り返すだけでなく、同じ“死”を何度も体験しなきゃいけないなんて地獄すぎる。兄弟が過去を乗り越えて前に進もうとするラストは救いだった。あと、謎が全て明かされないところも逆に余韻があってよかった。(30代 女性)
正直、最初は退屈に感じたけど、中盤から一気に世界が広がって「え?なにこれ?」と驚きの連続。特に“時間の檻”に囚われた別の人たちを発見していく展開は鳥肌モノ。SF要素が強いけど、感情の描写もしっかりしてて、兄弟の関係にもグッときました。インディーズ映画とは思えない完成度!(10代 男性)
『アルカディア』は、静かで不気味で、美しい。すごく静かに恐怖を突きつけてくるタイプの映画でした。女性として特に印象に残ったのは、同じ時間の中で死を何度も繰り返す女性の姿。永遠に閉じ込められることの絶望感が、感情に響きました。派手さはないけれど、観終わったあと心にずっと残るタイプの映画です。(50代 女性)
これぞ“静かな狂気”。低予算ながら、映像や音響、脚本でここまで人を引き込めるのは本当にすごい。時間のループというギミックと、そこに潜む「見えざる存在」の絶対的な支配が、言いようのない不安を生む。『レック』や『ブレア・ウィッチ』みたいなPOV作品が好きな人にも刺さるはず。(40代 男性)
映画『アルカディア』を見た人におすすめの映画5選
レゾリューション 〜決別の刻〜
この映画を一言で表すと?
「『アルカディア』の世界とつながる、“もうひとつの悪夢”」
どんな話?
ドラッグ中毒の親友を立ち直らせるため、山奥の小屋に“監禁”する男。だが次第に周囲で不可解な現象が起こり始める。不気味な映像や音声が彼らに迫り、現実と虚構の境界が崩れていく。
ここがおすすめ!
『アルカディア』と同じ監督コンビによる前日譚的作品で、世界観が繋がっています。謎めいた“存在”や時間の歪み、観察される恐怖など、共通モチーフが満載。『アルカディア』の理解も深まります。
アナイアレイション -全滅領域-
この映画を一言で表すと?
「未知の知性と対峙する、“崩壊する現実”の美しさ」
どんな話?
謎の“シマー”と呼ばれるエリアに突入した女性科学者たち。内部では自然法則が狂い、生命の形すら変容していく。彼女たちは真実を探るが、そこには人智を超えた存在が待ち受けていた。
ここがおすすめ!
神秘的かつ不気味なビジュアルが圧倒的。人間心理、存在意義、自己崩壊と再生といったテーマも『アルカディア』と響き合います。理屈ではなく“感覚”で観るSFが好きな人に刺さるはず。
プリデスティネーション
この映画を一言で表すと?
「タイムパラドックスが生んだ、究極のアイデンティティの迷宮」
どんな話?
時空警察のエージェントが、あるテロリストを追って過去と未来を行き来する。やがて彼の任務は、想像を絶するタイムパラドックスに飲み込まれていく。自己の存在に関わる衝撃の真実とは――。
ここがおすすめ!
複雑な時間構造と、予想を遥かに超える展開が魅力。『アルカディア』のように「時間」に翻弄される人間を描きつつ、哲学的テーマにも踏み込んだ濃厚な一作。観終わった後、誰かと語りたくなる!
コヒーレンス(COHERENCE)
この映画を一言で表すと?
「“たった1晩のホームパーティ”が、無限世界の扉を開く」
どんな話?
流星群が観測された夜、一軒家で開かれたホームパーティ。だが次第に奇妙な出来事が連続し、彼らは“別の自分たち”が存在する世界に気づいていく。全編ワンシチュエーションのSF心理スリラー。
ここがおすすめ!
日常の中に潜む非日常がじわじわと侵食してくる感覚は、『アルカディア』ファンにも響くはず。限られた空間と会話だけでここまで緊張感を生む脚本力が光る。繰り返し観たくなる中毒性も魅力。
マザー!(mother!)
この映画を一言で表すと?
「寓話と悪夢が融合した、“見る者を試す映画”」
どんな話?
静かに暮らしていた夫婦の家に、次々と訪問者が現れる。次第に家の中は混沌と化し、妻の心と世界は崩壊していく。聖書、環境破壊、芸術論などをモチーフにしたダーレン・アロノフスキー監督の問題作。
ここがおすすめ!
一見不条理で不快感すら覚える展開の連続。しかしその背後にある“見えない意思”と“繰り返される破壊と再生”のメタファーは、『アルカディア』に通じる精神性を感じさせます。難解だけど忘れられない一本。
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