映画『白い巨塔』の概要:浪速大学医学部第一外科の助教授・財前五郎は、東教授の退官を控え次期教授への野心を燃やしていた。しかし、財前を嫌う東は他大学からの候補を立てようと画策し、病院内には様々な思惑が入り乱れていく。財前は教授選にのめり込むあまり、患者を蔑ろにするようになり…。
映画『白い巨塔』の作品情報
上映時間:180分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:山本薩夫
キャスト:田宮二郎、東野英治郎、滝沢修、船越英二 etc
映画『白い巨塔』の登場人物(キャスト)
- 財前五郎(田宮二郎)
- 浪速大学医学部第一外科の助教授。医師としての実力は確かだが、自信家で不遜な性格が批判されることも多い。第一外科の次期教授の座を狙い、あらゆる手段で票を集めようとする。
- 里見脩二(田村高廣)
- 浪速大学医学部第一内科の助教授で、財前の同期。科学者気質で検査結果を重視している。受け持っていた患者の手術を財前に頼む。
- 東貞蔵(東野英治郎)
- 浪速大学医学部第一外科の教授。財前を疎ましく思っており、教授選に際し別の候補を擁立する。退任後も医学部への影響力を維持しようと目論んでいる。
- 鵜飼雅行(小沢栄太郎)
- 浪速大学医学部部長、第一内科教授。当初は財前に対する候補を立てたいという東の相談に乗っていたが、浪速大学学長の座をほのめかされ財前派に転じる。
- 船尾厳(滝沢修)
- 東都大学医学部第二外科教授。東に頼まれ、浪速大学医学部第一外科教授の候補を見繕う。
- 財前又一(石山健二郎)
- 財前の義父。産婦人科を営んでおり、金持ち。豪放磊落な性格で、財前を教授にするという夢を叶えるため金に糸目を付けず支援する。
- 菊川昇(船越英二)
- 金沢大学医学部外科の教授。船尾に推薦され、浪速大学医学部の教授候補となる。温厚な性格。妻を亡くし、現在は独身である。
映画『白い巨塔』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『白い巨塔』のあらすじ【起】
浪速大学医学部第一外科の助教授・財前五郎は、次期教授の座を狙い野心を燃やしていた。自信満々で不遜な態度は反感を買うことも多いが、医師としての実力は確かなもので、とくに食道外科の手術の腕は見事なものだった。来年3月で第一外科教授の東は定年退職する。女手一つで育ててくれた岡山の母のためにも必ず教授になると財前は胸に誓っており、婿入りした財前産婦人科の財前又一がそれを後押ししようとしていた。
東は自分への敬意が感じられない財前を快く思っておらず、母校である東都大学医学部の教授・船尾を巻き込んで他大学からの候補を立てようとしていた。船尾が推薦したのは金沢大学の菊川昇であった。温厚な性格で、妻に先立たれ今は独身、娘と結婚させれば東が浪速大学で影響力を持ち続けることも可能だった。
又一は自身が副会長を務める関西医師会の会長・岩田を呼び寄せ、浪速大学医学部長で第一内科教授の鵜飼に接触。鵜飼の同期でもある岩田が鵜飼を浪速大学学長に推すと約束すると、鵜飼は財前派の筆頭となった。一方、財前は医局員への工作を始める。医局長の佃を焚きつけ、財前が次期教授にふさわしいという風潮を医局内に作らせた。
映画『白い巨塔』のあらすじ【承】
そんなある日、財前の同期で第一内科助教授の里見がとある患者の検査を財前に依頼してきた。里見は科学者気質で検査結果に慎重な傾向があり、臨床医としての融通性には欠けると言われていた。佐々木庸平というその患者を検査した財前は噴門癌と断定、第一外科で引き取ることにする。その後、佐々木のレントゲンに映る影を不審に思った里見は、手術前に断層写真を撮るべきではないかと何度も財前に進言した。だが教授選で手一杯の財前が応じることはなく、そのまま佐々木の手術が行われた。
第一外科教授の選考会が行われ、14人の候補者の中から、浪速大学の財前、金沢大学の菊川、徳島大学の葛西の3人が正式な候補として決定する。菊川派の東、財前派の鵜飼、そして葛西派の整形外科教授・野坂の思惑が入り乱れ、それぞれの票固めが始まった。病理学教授の大河内はどの派閥にもなびくことはなかったが、病理検査を軽視してすぐに手術をしたがる財前のことは毛嫌いしていた。手術を終えた佐々木の容体が悪化していたが、財前は術後肺炎の症状だと言って検査も行わなかった。里見は何か別の原因があるのではないかと疑っていた。
映画『白い巨塔』のあらすじ【転】
投票当日を迎えた。菊川を推す東は、教え子である財前と葛西を押しのけてまで菊川に票を入れることはできないと言い、棄権を表明する。これは中立派に訴えるための東の巧妙な策であった。東の心意気に感心した者たちが菊川に票を投じ、結果は財前12票、菊川11票、葛西7票。財前の得票数が過半数に満たなかったため、財前と菊川で決選投票が行われることになった。
菊川派と財前派は、野坂が葛西のために集めた7票を手に入れようと奔走する。両派閥は金や重役のポストで野坂を懐柔しようとし、野坂は両者に色よい返事をしてすべてを手に入れようと目論んだ。佃は医局員の安西とともに金沢にいる菊川のもとへ赴き、立候補を取り下げてもらいたいと脅迫まがいの要請をする。それを聞いた船尾は激怒し、大阪に出向いて菊川の票固めに励んだ。この間も里見や助手の柳原が財前に佐々木の不調を訴えていたが、決選投票を控えた財前は耳を貸さなかった。又一は財力に物を言わせ、葛西派の買収に力を注いだ。
映画『白い巨塔』の結末・ラスト(ネタバレ)
決選投票が始まった。病室では、佐々木が遂に息を引き取った。投票の結果、2票の差で財前が第一外科教授に選出される。東は定年を待たずに退官し、財前が教授の座に就いた。教授選に尽力した佃らもそれぞれ昇進し、第一外科は財前派で占められることになった。順風満帆に思えたが、死亡した佐々木の遺族が財前の診断は誤診だったと訴えを起こす。
財前は強硬な態度で誤診などしていないと断言し、裁判で徹底的に争う構えだった。柳原が良心の呵責に苛まれながらも誤診はなかったと証言し、裁判は財前側が優勢となるも、東が船尾を鑑定人として出廷させる。菊川派だった船尾の登場は財前に不利になるかと思われたが、医学界の権威を守りたい船尾は財前を擁護するのだった。原告側の請求は全面的に棄却され、財前は無罪となった。真実を語った里見は、財前に不利な証言をしたということで辞職を余儀なくされた。
浪速大学病院では、教授の財前による総回診が始まろうとしていた。財前は大勢の部下たちを従え、廊下を闊歩していく。同じ頃、里見は1人病院を後にした。
映画『白い巨塔』の感想・評価・レビュー
教授になるという野望のために財前は1人の患者を見殺しにし、その罪が問われるはずの裁判でも医学界の権威のために無罪になる。続編まで描いたドラマ版と比べ後味は悪いが、現実的な終わり方だと思った。皆が腹に一物抱えたやりとりは端から見ている分にはとても面白い。また、すべてにおいて対照的な財前と里見の対比が印象的だった。実際の手術の映像を使用したという冒頭のシーンが衝撃的で、白黒の映像とはいえ直視できないところがあった。(MIHOシネマ編集部)
兎にも角にも山崎豊子の原作そのものが面白い。結構なボリュームのある原作だが、うまく1本の映画にまとまっていると思う。思いっきりナレーションで説明を済ませてしまう離れ業も使われているが、それも含め昭和の大映ドラマの味と思えば楽しい。1人の助教授の出世物語と裁判物語が交差して、硬質ながらも娯楽性があり目が離せない。また主人公が完全な「正義のヒーロー」でないことが、その背景も含め現在にも残る社会の構造を浮き彫りにしている。50年以上前の話だが本質は今でも全く古くない、今見返すべき1本。(男性 40代)
私たちの多くが、患者側の立場だと思います。この作品を見ると、病院が嫌いになりそうなくらい人間の黒い部分や、欲、野望、権力に満ちていて、何も出来ない患者側は完全に置いてけぼりでした。
病院の中が全てこうなっている訳では無いと思いますが、リアルな描写も多くあるのでしょう。序盤はなんだこいつと思っていた財前のキャラクターですが、ストーリーが進むにつれて更に財前の醜い部分が出てくるので、こんな主人公でいいんだ…と驚きました。
原作やドラマ版なども鑑賞してみたくなりました。(女性 30代)
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