映画『刺さった男』の概要:2012年制作のスペイン映画。監督はアレックス・デ・ラ・イグレシア。脚本はランディ・フェルドマン。出演はホセ・モタ、サルマ・ハエック、カロリーナ・バング、ブランカ・ポルティージョ、ファン・ルイス・ガリアルドなど。
映画『刺さった男』 作品情報
- 製作年:2012年
- 上映時間:94分
- ジャンル:コメディ
- 監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
- キャスト:ホセ・モタ、サルマ・ハエック、ブランカ・ポルティージョ、ファン・ルイス・ガリアルド etc
映画『刺さった男』 評価
- 点数:95点/100点
- オススメ度:★★★★★
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★★
[miho21]
映画『刺さった男』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『刺さった男』のあらすじを紹介します。
元エリート広告マンだったロベルト(ホセ・モタ)は、今では失業中の身である。妻のルイサ(サルマ・ハエック)や子供たちを養うために、今日も就職活動の真っ最中だ。
旧友の経営している会社に赴き、仕事を貰おうと懇願するロベルトだったが、むげに断られてしまう。失意の彼は、妻ルイサとの思い出の場所であるホテルへと向かう。しかし、その場所は遺跡発掘現場となっていて、ホテルは見る影もなかった。なんとなく中へ入ったロベルトは、ふとした不注意で遥か下へと転落してしまう。気が付くとロベルトは床に寝ていて、後頭部には太い鉄筋が刺さっていた。幸い命に別状はなく、意識は保ったままだ。しかしいつ何が起こるかは誰にもわからない。
救急隊が到着し、マスコミがロベルトの周りに集まって来る。ここではちょうど市長が記者会見の真っただ中であり、遺跡発掘中止によるイメージダウンを心配していたのだ。さまざまな人間たちによるさまざまな欲望が渦巻く中、ロベルトは一発逆転のチャンスを思いつく。それはマスコミによる独占インタビュー権を高額で売り飛ばすというものだった。こうして一躍時の人となったロベルト。彼は大金を手に入れる事が出来るのだろうか。そして後頭部の鉄筋は無事に除去する事が出来るのだろうか……。
映画『刺さった男』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『刺さった男』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
究極のブラック・コメディ
スペイン映画の鬼才アレックス・デ・ラ・イグレシア監督作品。彼の特徴とは独特のブラックユーモアセンス。今作はなんと、後頭部に鉄筋が刺さったしまった男というアイディアのみで94分間もたせてしまう驚異の作品を作り上げている。普通なら一発ネタにしかなりそうにもない作品なのだが、それを最後まで飽きさせないシナリオがまず素晴らしい。主人公のロベルトは、今は無職であるものの昔は敏腕広告マンだったという設定がまず効いている。頭に鉄筋が刺さった彼がまず最初に考えたのは、これは金になる、という事。こんな状況でそんな事を思い付くのも笑えるが、それを本当に実行に移そうとする人間が多数現れるのもおかしい。イグレシア監督は、メディアという媒体に群がる人間心理を通して、人の醜さ、可笑しさ、欲深さをあぶり出して行く。
欲に溺れる人間模様
今作に登場するキャラクターは、どれもこれも自分の事しか気にしていない。遺跡発掘現場の館長はなんとか遺跡を無事に掘り起こすことを、市長は自分のイメージアップを、医者はテレビに映っている自分の顔を、テレビリポーターは視聴率を、そしてロベルトは金もうけと家族の事を。そんな中、唯一の良心と言えるのがロベルトの妻であるルイサ。ある意味で欲に狂った人間しか登場しない中、彼女のみが理性を持って行動しているのがこの作品の救いと言えるだろう。終盤、極悪プロデューサーがテレビの前でロベルトが死んだら大金を出そうとオファーしてくるものの、それを迷いもせずに断るルイサの姿には拍手喝采である。近年はハリウッド映画で見る事も多いサルマ・ハエックがこのルイサを演じているのだが、母国語スペイン語での演技こそは彼女の本領発揮と言えるだろう。近年稀に見るブラックユーモアの傑作である。
何これ超面白いじゃんと虜になってしまった今作。タイトルからして結構ヤバい匂いがするななんて思っていたら、おいおいとツッコミたくなってしまうようなストーリーでまんまとハマってしまいました。
主人公は本当に刺さった男。頭に鉄の棒が刺さってしまったことで男の人生が大きく変わるのですが、その方法がかなりヤバいんです。普通の人だったらまず、自分の命を心配すると思うのですが、彼が考えたのは「金」のこと。
困難な状況をチャンスに変えようとする精神は見習いたくなるくらい強いもので、それを真面目にやっているので面白くなってしまいました。(女性 30代)
映画『刺さった男』 まとめ
ブラックといえばこれほどブラックな映画もそうないだろう。全編の半分以上が頭に鉄筋が刺さったままで進行していくのだから、見ているこちらはたまったものではない。痛みはないとはいえ、脳の中に深く鉄筋が刺さっているのだ。見ている観客は後頭部がムズムズしてくることだろう。そんな状況の中、群像劇のように様々な人間が欲のみで行動する様がコミカルに描かれて行く。笑っていいのか、痛がっていいのかがわからないようなこの絶妙なバランス感覚こそが、この作品最大の魅力と言えるだろう。特に、頭を動かす事が出来ず、最後まで顔のみの表情で演技を続けたロベルト役のホセ・モタは素晴らしい。「最強のふたり」のフランソワ・クリュゼに匹敵するほどの熱演だ。
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