映画『007 カジノ・ロワイヤル(2006)』の概要:英国情報局秘密情報部(通称MI6)のスパイ、ジェームズ・ボンドを主人公とする007シリーズの21作目。殺しのライセンス“00(ダブル・オー)”を得た若き日のボンドが、国際テロ組織の金脈を断つために活躍する。
映画『007 カジノ・ロワイヤル』の作品情報
上映時間:144分
ジャンル:アクション、サスペンス、アドベンチャー
監督:マーティン・キャンベル
キャスト:ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、マッツ・ミケルセン、ジュディ・デンチ etc
映画『007 カジノ・ロワイヤル』の登場人物(キャスト)
- ジェームズ・ボンド / 007(ダニエル・クレイグ)
- MI6の敏腕スパイ。爆破事件の容疑者を追う中で、国際テロ組織の金脈を巡る事件に行き当たる。天才的なポーカーの才能を買われて、事件の鍵を握るル・シッフルと、高額賭け金のポーカーゲームで勝負する。
- ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)
- 金融活動部(FATF)の海外渉外担当。ボンドがカジノで使う資金を英国財務省から調達する。犯罪組織に拉致された自分を救おうとしたボンドと愛し合うようになるが、ボンドには言えない秘密を隠し持っていた。
- ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)
- 表向きは富裕層の資金を運用するディーラーだが、裏の世界では国際テロ組織の資金を運用している。天性の数学力を持っており、ポーカーなどの賭け事にめっぽう強い。涙腺の異常で血の涙を流し、ぜんそくにも冒されている。
- M(ジュディ・デンチ)
- MI6の局長で、ボンドのボス。自分の部屋に勝手に忍び込んで情報を盗み出すなど、破天荒な行動を取るボンドに手を焼いている。しかし、一方でボンドの才能を高く買っており、彼の行動を影ながらサポートする。
- フェリックス・レイター(ジェフリー・ライト)
- 米国中央情報局の工作員。ボンド同様、ル・シッフルをマークしており、身分を偽ってカジノゲームに参加した。ル・シッフルの罠でゲームに大敗したボンドに自分の素性を明かし、資金を提供する。
- マティス(ジャンカルロ・ジャンニーニ)
- MI6の工作員。ボンドがル・シッフルとの勝負に集中できるよう、さまざまな障害を事前に排除するなど、熟練の工作員らしい腕前を見せる。しかし、二重スパイの疑いもあり、ボンドは彼を裏切り者と見ているが、真相は不明。
- アレックス・ディミトリオス(シモン・アブカリアン)
- 武器売買の仲介人。ル・シッフルの旅客機爆破計画に協力するが、ル・シッフルの盟友というわけではない。バハマのリゾートホテルでボンドとのポーカー勝負に負け、賭け金の代わりに愛車を取られてしまう。
- ミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)
- ル・シッフルを影で操る謎の人物。ル・シッフルがテロ組織から運用資金を受け取るときもそこに同席している。また、後にヴェスパーとの関係も明らかになる。
映画『007 カジノ・ロワイヤル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『007 カジノ・ロワイヤル』のあらすじ【起】
チェコのプラハ。英国の諜報機関MI6の工作員ジェームズ・ボンドは、内部の機密情報を漏洩させたスパイを待ち伏せし、暗殺する。MI6の中で、殺しのライセンスと言われる00(ダブルオー)に昇格する条件は、2人の人間を殺すことであった。そして情報を漏洩したスパイと、その協力者を暗殺したボンドは、正式に007と呼ばれるスパイとなった。
ボンドは、00昇格後の初任務として、マダガスカルで1人の爆弾製造者を追っていた。そして、命をも落としかねない壮絶な追跡劇の果てに、ある大使館に逃げ込んだ男を捕らえて射殺する。男が持っていた携帯電話の着信記録には「エリプシス」という言葉が残されていた。
ロンドンに戻ったボンドは、上司であるMの邸宅に忍び込み、軍用のネットワークを利用して「エリプシス」の発信元を突き止める。バハマのリゾートホテルから爆弾男にコンタクトを取ったのは、武器商人のディミトリオスだった。
バハマへ渡ったボンドは、ディミトリオスの妻を誘惑して情報を引き出し、マイアミに向かうディミトリオスを尾行する。ディミトリオスの目的は、マイアミ国際空港に初お目見えする超大型旅客機の爆破であった。
ボンドの尾行に気付いたディミトリオスは、人混みの中でボンドを刺殺しようとするが、逆にボンドに殺される。しかしその間に、爆破計画は別の工作員の手に委ねられていた。ボンドはその工作員を必死で追った。
映画『007 カジノ・ロワイヤル』のあらすじ【承】
爆破計画を影で動かしているのは、ル・シッフルという男であった。ル・シッフルは国際テロ組織から預かった資金を運用する闇の投資家だ。今回は大型旅客機を製造したメーカーの株を大量に空売りしていた。この会社の旅客機がお披露目式で爆発すれば、同社の株価は暴落し、ル・シッフルは巨額の利益を手にすることになる。
Mから連絡を受けたボンドは、工作員の爆破目標が超大型旅客機であることを知る。そして死闘の果てに、爆破をギリギリのところで阻止した。
ボンドが爆破計画を阻止したことで、ル・シッフルは逆に巨額の損失を出してしまう。その資金はテロ組織から借りたものであり、返せなければ命を狙われる。焦ったル・シッフルは、資金を取り戻すため、モンテネグロのカジノ・ロワイヤルで開かれる高額のポーカーゲームへの参加を決める。
Mは、このポーカーゲームに参加するよう、ボンドに命じる。ボンドがル・シッフルに勝てば、ル・シッフルはテロ組織に資金を返済する道が断たれる。そこで逃げ場を失ったル・シッフルを確保し、資金源を吐かせるという計画だった。
モンテネグロに向かう列車の中で、ヴェスパーという美しい女性がボンドに接触してきた。彼女は英国財務省の金をボンドに渡す調達係であると同時に、監視役でもあった。他にMI6からマティスというスパイがボンドの世話役として現地に送り込まれていた。現地にはボンドのために、アストンマーティンの高級車と、スパイ道具一式が用意されていた。
映画『007 カジノ・ロワイヤル』のあらすじ【転】
いよいよゲームが始まるが、ボンドはなぜか負け続け、賭け金は徐々に減っていった。ヴェスパーはボンドの不甲斐なさをなじるが、それはボンドの作戦であった。ル・シッフルはブラフ(はったり)をかけるときに顔が引きつる癖がある。そこが勝負どころだと言い、ボンドはヴェスパーを安心させる。
そして、勝負どころでボンドはル・シッフルのブラフを確認し、そのゲームに賭け金の全額をつぎ込む。ところが、それはブラフと見せかけたル・シッフルの罠だった。勝負に負けたボンドは、資金を全額失う。ヴェスパーに追加の資金を依頼するが、愛想を尽かしたヴェスパーはそれに応じない。万策尽きたボンドは、思い余ってル・シッフルを殺そうとするが、それを止めたのは米国諜報機関CIAのフェリックスだった。
フェリックスは身分を偽り、このポーカーゲームに参加していた。しかし、自分の力ではル・シッフルに勝てないので、自分の資金を使ってゲームを続けるよう、ボンドに頼む。
新たな資金を得たボンドは、最後の大勝負でル・シッフルに勝ち、賭け金の全額を手に入れる。敗れたル・シッフルは顔色を変えて席を立った。ボンドはその身柄拘束をフェリックスに託した。
ゲームに勝利したボンドは、ヴェスパーと2人で祝杯を挙げていた。そこへマティスから呼び出しのメールが入り、ヴェスパーは席を立つ。そのときボンドは、マティスの裏切りを直感的に悟った。ル・シッフルにブラフの秘密を漏らしたのも、マティスだったのだ。
慌てて後を追うボンドの目の前で、ヴェスパーが車で連れ去られた。Mの用意してくれたアストンマーティンで夜道を追跡するボンド。突如、拘束されて道に横たわるヴェスパーがヘッドライトに映し出され、慌ててハンドルを切るボンドだったが、車は横転、大破して、ボンドも重傷を負ってしまう。
映画『007 カジノ・ロワイヤル』の結末・ラスト(ネタバレ)
目を覚ましたとき、ボンドは裸にされ、暗い部屋の中で椅子に拘束されていた。そこへCIAに拘束されたはずのル・シッフルが現れる。
ル・シッフルは、ボンドがポーカーの賞金を預けた銀行口座のパスワードを聞き出そうとして、激しい拷問で責め立てた。しかし、何者かが部屋に乗り込んできて、ル・シッフルの頭を銃で撃ち抜く。ボンドはその暗殺者の顔も確認できないまま、気を失う。
目覚めたボンドは病院のベッドにいた。ヴェスパーも無事だった。マティスはMI6によって拘束された。どうやって救い出されたのか、ボンドにはわからなかったが、この事件を機にヴェスパーとの関係は急速に深まり、2人は愛し合うようになっていた。
初めて心から人を愛したボンドは、MI6を辞め、ヴェスパーと2人で幸せな生活を送ろうと決意する。そんなボンドの元にMから連絡が入った。カジノで取り戻した金が財務省に返されていないというのだ。慌てて銀行に確認したボンドだが、金は今まさにヴェネツィアの銀行で引き出されている最中だという。そして、その金を引き出していたのは、ヴェスパーだった。
ボンドがヴェスパーを探しに行くと、彼女は見知らぬ男2人にスーツケースを渡していた。そのうち1人がボンドに気づき、ヴェスパーを拉致して逃げていった。
追跡するボンド。男たちにはさらに仲間がいて、銃撃戦が始まった。ヴェネツィアの水辺に浮かぶ古い建物に男たちを追い詰め、ボンドはヴェスパーと金を取り戻そうとする。そして、敵をことごとく倒したボンドだったが、その騒ぎで建物は崩壊し、ヴェスパーは溺死。金も何者かによって持ち去られた。
Mからの連絡で、ボンドはヴェスパーが別の犯罪組織に恋人をさらわれ、脅されて組織に協力させられていたことを知る。しかし、彼女はボンドのことを愛していた。そのため、ボンドが拉致されたとき、金と引き替えにボンドの命を救ったのだ。
さらにヴェスパーは、組織の黒幕の情報をボンドに残していた。黒幕の名はホワイトといい、ル・シッフルを操っていたのも彼だった。
ヴェスパーの情報によってホワイトの居所を掴んだボンド。国際犯罪組織に立ち向かう、彼の新たな任務が始まった。
映画『007 カジノ・ロワイヤル』の感想・評価・レビュー
人気スパイアクションシリーズ21作目、新たに主演にダニエル・クレイグを迎え、これまでのシリーズとは一新、新たなボンド像を確立した作品。
誰もが知るジェームス・ボンドの誰も知らない過去を描いた作品。シリーズ再出発の継起としてふさわしい作品となっており、冒頭ではじめて人を殺め、苦悩するボンドの姿が印象的。作風もかつてのコメディ要素を一切排除しシリアスなテイストで物語が進行し、緊迫したシーンの連続は臨場感が高めている作品。(男性 20代)
6代目ジェイムズ・ボンドとして、ダニエル・クレイグが初主演の作品です。鍛えられた肉体のお陰で、身のこなしがとにかくスマート。そのお相手となるボンドガールはエヴァ・グリーンなのですが、こんなに美しくて知的でミステリアスなボンドガールが過去にいたのでしょうか。2人の会話のやりとりも、彼女の良さが前面に現れた作品だったと思います。ストーリー的にも、最後の最後まで何が隠されているかわからないので、気が抜けません。(女性 20代)
6代目ジェームズ・ボンドを演じるのはダニエル・クレイグです。ショーン・コネリーやロジャー・ムーア、ピアース・ブロスナンなど様々なボンドを見てきましたが、クレイグボンドは笑い一切無しのクールで硬派な印象です。少なくともロジャー・ムーアのボンドとは全く違います。
リブート版ということで、これまでの007シリーズを見たことがない方にも見やすいストーリーかなと思います。しかし、この作品だけを見てこれが『007』か、これがボンドか、と思われてしまうとこれまでのシリーズのファンとしては少し違和感があるかもしれません。
ダニエル・クレイグ演じる新しいボンドのこれからが楽しみになるような、期待が高まる作品です。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー
主演のダニエル・クレイグは『典型的なボンド映画なら出ようと思わなかった』という。娯楽映画であるとはいっても、映画のはじめには世界的危機があるというのに、最後には観客がそれすら忘れてしまうほどハッピーエンドになっている映画はおかしいと彼は言ったそうだ。
何故ボンドは、いま1つ向いていないといわれながらも、007になれたのか。その理由を理解するのにふさわしい一作なのではないかと私は思う。
①まだ強靭な男な男ではなかった頃の007
ボンドは、ル・シッフルの片目が動くとハッタリだと気づき全額を賭けるが、それはル・シッフルの罠で、全額を失いヴェスパーに追加を求めるものの断られてしまう。
そこに手を差し伸べたのがCIA職員のフェリックス(ジェフリー・ライト)だった。自分は降りなければいけないから金を出すからあの男を逮捕させてくれという取引だった。取引に応じるボンド。フェリックスの登場は後の007シリーズで必ずCIAが関わる因縁を彷彿とさせる。
ボンドはフェリックスの援助により勝ち続けポーカーでル・シッフルから資金を取り戻していくが、ボンドはマティーニに毒を盛られ毒殺されそうになってしまう。ボンドはアストンマーチンに搭載されている解毒装置で九死に一生を得て戻り、ル・シッフルとのタイマン勝負に出て、ようやく彼を破産に追い込む事が出来る。
この映画でのボンドは、他の007シリーズの様に、敵役、脇役をものともせずなぎ倒していく強靭な男、というのではなく、まだ周囲の人間に翻弄される一人の諜報部員という印象も受ける。
最初に戦った相手は、テロリストの資金源であり、その資金源を破産させる事が任務。この後ボンドは、ル・シッフルに捕まり拷問を受けるが、意外にもテロリスト幹部のミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)がル・シッフルを射殺した事で、ボンドは救われる。
②ボンドが非情な諜報部員になった理由
意識が戻ったボンドは、諜報部員をやめてヴェスパーと暮らそうとするが、それはボンドが本心から人を愛せなくなる男となるきっかけだったとも言える。
MI6に入金されるはずのル・シッフルの資金はミスター・ホワイトの元に渡っていた。それはヴェスパーがボンドを助ける見返りとして送金したからだった。彼女は殺し屋に襲われ浸水した建物の中で死んでいく事を選ぶ。
ボンドはこの最初の任務で、誰が自分を裏切り、誰が合理的に信頼するに値するのか、一気に叩き込まれてしまう。それは彼の心に消えることのない傷を作る事になるのは確かだ。
③ボンドの過去が浮き彫りになる作品構成
ダニエル・クレイグが主役を務める007は現在も続いているが、少なくとも『007 スカイフォール』までは、ジェームス・ボンドが007になるまでの物語と捉えてもいいのだろうと思う。
『007 カジノロワイヤル』で運命の女性をなくし『慰めの報酬』で、ミスター・ホワイトの組織に決着をつけ、『007 スカイフォール』では自分を育ててくれたMとの別れを体験する。
最小限の脇役構成にしている所も、スパイ映画としては成功している例ではないかと思う。