映画『ア・ホーマンス』の概要:大島組が治めている街に、正体不明の男がフラリと現れる。大島組の組員である山崎道夫は、その男が刑事ではないかと疑いの目を向け、素性を探ることにした。だが、山崎は男と接する内に、自由な男に興味を抱くようになる。
映画『ア・ホーマンス』の作品情報
上映時間:99分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:松田優作、工藤栄一
キャスト:松田優作、石橋凌、手塚理美、ポール牧 etc
映画『ア・ホーマンス』の登場人物(キャスト)
- 風(松田優作)
- 記憶喪失で、自分が何者なのか全く分からない。ヤクザにも動じず、平然としている。喧嘩にもめっぽう強い。自分の居場所を作ってくれた山崎に恩を感じるようになる。
- 山崎道夫(石橋凌)
- 25歳。大島組の組員。頭が切れる人物。何事にも動じず、自由な風に興味を持ち、憧れるようになる。
- 藤井達巳(ポール牧)
- 大島組の代貸し。組のことよりも、自分の利益になることを優先する。あくどい人物。
映画『ア・ホーマンス』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ア・ホーマンス』のあらすじ【起】
大島組は麻薬の売買を行っていたのが、敵対する旭会が自分達のシマで販売するなと因縁をつけてきた。大島組の組員である山崎道夫は脅しに屈しず、旭会の組員を追い返した。
浮浪者達は座り込んでいるサングラス姿の男(風)を発見する。自分達のテリトリーなので素性を明かすよう求めるが、風は何も覚えていないのだと呟いた。風は記憶喪失で、医師からもそう診断されていた。山崎は街にやって来た記憶喪失の男が、刑事かどこかの組の者ではないかと言う疑いを持つ。風が風呂に入っている隙に、部下の井沢勘次に持ち物を調べさせた。その後、井沢は夜道で風に殴り掛かるが、風は何も反応を示さずに去って行った。その様子を見た山崎は、風が刑事でもヤクザの関係者でもないと結論づける。
山崎は風に自己紹介を行い、部下の非礼を詫びた。ヤクザだと名乗ったにも関わらず、風は平然としていた。山崎はそんな風に興味を持ち、今度酒を飲み交わす約束をした。そのまま立ち去ろうとするが、風に呼び止められ仕事の世話をして欲しいと頼まれる。山崎は男に危険な匂いを感じるが、放っておくこともできず、仕事を紹介することを約束した。
映画『ア・ホーマンス』のあらすじ【承】
山崎は組の息がかかったデート喫茶で風を働かせることにした。ある夜、男性客がホステス(ルージュ)に無理矢理関係を迫って揉め事を起こした。従業員がその客を殴り追い返そうとしているところに、風が偶然居合わせる。客は風が持っていたお盆を叩き落とそうとするが、風は平然としており、何事もなかったかのように無言で立ち去った。客はそんな風にあっけにとられる。
風は先程のルージュと道でばったり会う。バイクの後ろに乗せ、街の中を一緒に走った。その後、ルージュに自宅に誘われ、部屋の中で一緒に体を寄せ合って温まった。すると、ルージュに会いに山崎が訪ねて来る。風は寝ていたルージュを布団に寝かせると、山崎と相対した。山崎は風に記憶を取り戻そうとしない理由を尋ねた。すると、風は「都合が良いから」と言葉少なに答えた。山崎は他の人とは違う風に、ますます興味を持った。
大島組の組長である大島栄一が、組員達を引き連れ歩いていた。すると、突然現れた男達に撃たれてしまう。組員は襲撃した男の行方を捜した。組長は病院に運ばれるが、助かるかどうかは分からなかった。襲撃を指示したのは旭会の会長だった。だが、大島組の代貸しである藤井は、報復をすることなく手打ちで済まそうとしていた。旭会の会長が藤井と組みたがっているのが最大の理由だった。山崎は藤井の考えに否を唱えることはできなかったが、腹立たしさが腹の中を渦巻いていた。
映画『ア・ホーマンス』のあらすじ【転】
福岡徹刑事は大島栄一が撃たれた現場付近に風がいたことから、旭会が雇った刺客ではないかと考え疑惑の目を向けるようになる。そこで、密かに指紋を採取して調査してみたのだが、まるで手袋を嵌めているかのように指紋が出てこなかった。
山崎は藤井に指示され、横浜の黒井組に麻薬を売りにいくことになった。1人で行こうと思っていたのだが、風も車に乗ってきて一緒に行くと譲らなかった。山崎は風の説得を諦め、仕方なく車を発進させた。すると、刑事達が乗った車に追跡される。山崎は車を止めて福岡刑事達と会話をするが、刑事達は尾行を止める気はないようだった。しばらくして、刑事達の乗った車のレバーが壊れてしまい、追跡ができなくなってしまう。福岡刑事は応援を呼んだ。
風は刑事達に尾行されても一切同時なかった。風はこの世に未練が何もない様子だった。山崎自身も命が惜しくないと思おうとするが、脳裏には恋人の姿がチラついた。山崎は涙をサングラスで隠した。その後、山崎は麻薬売買の取引を済ませ、金を受け取った。そこに、暴走族達が現れ絡まれてしまう。風はナイフを素手で掴み、暴走族達を追い返した。
映画『ア・ホーマンス』の結末・ラスト(ネタバレ)
山崎と風は麻薬売買の件で捕まり、別々の部屋に連れて行かれ取り調べを受ける。福岡刑事が風を尋問するが、風は何も話さなかった。山崎を担当している刑事は風が話したと嘘を吐き、揺さぶりをかけることにした。だが、山崎も何も話そうとはしなかった。刑事達は取り調べを諦め、釈放することにした。山崎は風も釈放されたことを知り、微笑んだ。
山崎は迷惑をかけたことを謝罪し、風を組から解放することにした。山崎はたった1人で組長の敵を討とうとしていた。それを知った藤井は静かに怒りを滾らせ、山崎を止めることなく行かせた運転手の男を剃刀で切りつけた。すると、そこに旭会の組員が現れ、藤井は殺されそうになる。大島組の組員が刺客を取り押さえると、藤井が自ら銃を撃ち刺客を射殺した。
藤井はシマを自分の物にすることを宣言し、組員達に山崎を殺すよう指示を出した。そして、山崎の恋人を襲い、屈辱を与えた。藤井の元に組員から連絡が入るが、見つかったのは山崎ではなく風だった。藤井は風に拳銃を渡し、山崎を殺すよう命じた。だが、風は拳銃をバラバラに解体すると、山崎を狙えば体を粉々にしてやると藤井に脅しをかけた。
旭会の会長が撃たれたとニュースで報道された。すぐに病院に搬送されたが、意識不明の重体だった。犯人は目撃者の証言から、山崎の可能性が高いと判断された。その後、山崎は車に乗り、恋人が花屋で働く姿をじっと眺めていた。見るのを止めた後、少し進んだ先で風と再会を果たす。だが、そこに刺客が現れ、山崎は撃たれてしまう。山崎は3人の男から銃弾を浴びせられる。
風は襲撃犯を追いかけ始末した。その戦いの最中に体を撃たれてしまうが、なんと皮膚の裏にあったのは金属だった。風はサイボーグだったのだ。風が山崎の元に戻ると、警察、山崎の恋人、救急隊員が集まっていた。恋人は山崎が死んだと思って悲しんでいたが、山崎は辛うじて生きており、救急隊員が救急車に運ぼうとしていた。風は山崎の恋人を見て頷き、救急車に乗り込む姿を見送った。
映画『ア・ホーマンス』の感想・評価・レビュー
松田優作に石橋凌。顔面の圧がすごすぎるキャスト。しかも石橋凌が演じる役は25歳の設定。私が知っている石橋凌は、渋くて、怖くて強くて、かっこいい、25歳なんて想像もできませんでした。そんな彼はこの作品をきっかけに、歌手活動を辞め俳優に転身したとか。松田優作の遺作であり、初監督作品。天才を随所に感じることが出来ました。
『ターミネーター』的な雰囲気を感じさせながらも、映像はとても工夫されていて、暗闇の中で少しの光で表現する撮影方法は素晴らしかったです。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー