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映画『アイヌモシリ』のネタバレあらすじ結末と感想

この記事では、映画『アイヌモシリ』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『アイヌモシリ』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。

この記事でわかること
  • 『アイヌモシリ』の結末までのストーリー
  • 『アイヌモシリ』を見た感想・レビュー
  • 『アイヌモシリ』を見た人におすすめの映画5選

映画『アイヌモシリ』の作品情報


出典:https://video.unext.jp/title/SID0068971

製作年 2020年
上映時間 84分
ジャンル ヒューマンドラマ
監督 福永荘志
キャスト 下倉幹人
秋辺デボ
下倉絵美
OKI
結城幸司
製作国 日本
アメリカ
中国

映画『アイヌモシリ』の登場人物(キャスト)

カント(下倉幹人)
アイヌの血をひく14歳の男子。アイヌの伝統継承に熱心だった父の死後、アイヌ文化とは距離を置いている。ロックにハマり、友人たちとバンドを組む。
デボ(秋辺デボ)
カントの暮らすアイヌコタン(アイヌの集落)の中心的存在。カントの父の友人で、カントにもアイヌの伝統文化を継承させたいと考えている。
エミ(下倉絵美)
カントの母。北海道阿寒湖畔のアイヌコタンでアイヌの民芸雑貨店「エポエポ」を切り盛りする。息子には、自分の好きなように生きて欲しいと思っている。

映画『アイヌモシリ』のネタバレあらすじ(起承転結)

映画『アイヌモシリ』のストーリーをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、結末までのネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『アイヌモシリ』のあらすじ【起】

北海道の東部にある阿寒湖の温泉街に、北海道の中で最大のアイヌコタン(アイヌの集落)がある。
カントはここで暮らす中学2年生の少年で、アイヌの血をひいている。
1年前に父を亡くし、母・ミエはアイヌ民芸雑貨店を1人で切り盛りし、観光客にアイヌの民族楽器を演奏してみせたりもしている。

カントの通う中学校で、3者面談が行われた。
担任の吉田先生に進路の希望を聞かれたカントは「阿寒から出られれば、どこでもいい。特に希望はない」と言う。
帰り道、ミエはカントに「どういう意味?」と真意を尋ねた。
カントは「ここは大人たちが普通じゃない。アイヌに関わることばかりやらされる」と言う。

カントはロックが好きで、友人たちとバンドを組んでギターを弾いている。
アイヌの伝統を重んじていた父が死んでからは特に、アイヌ文化から距離を置くようになった。

父の友人で生粋のアイヌ民族であるデボは、イオマンテという儀式をするために小熊を飼育している。
イオマンテのクライマックスは、愛情を注いで育てた熊を「送る」つまり、殺すところにある。

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映画『アイヌモシリ』のあらすじ【承】

デボが属するアイヌコタンで、会議が開かれた。
デボを中心としてイオマンテをすべきとする者と、「時代錯誤だ。現代のこの世の中で動物を殺す儀式なんて、誰も理解しない」と反対する者が話し合った。
デボは「世の中の人達に分かってもらう必要はない」と、考えを曲げない。

カントの父の法要には、デボも参加した。
デボは「森の奥の洞穴に、死んだ人が暮らしている村がある。一緒に行こう」とカントを誘う。
カントはあまり乗り気ではなかったが、結局はデボと、その森でキャンプをすることになった。

森の神様に挨拶をする作法や、木の枝で釣り竿を作り、魚を釣って捌く方法等、デボはカントにアイヌの伝統技術を伝えた。
魚を捌くときに使ったナイフは、カントの父が作ったものだと言って、デボはカントにそれを託した。

「フクロウを見たことはあるか?」とデボに訊かれたカントは「動物園で見た」と答えたが、デボは「それは見たことにならない。野生のフクロウを見たら、村の守り神であることを納得せずにはいられなくなるはず。野生のフクロウを見なくてはいけない」と語った。

映画『アイヌモシリ』のあらすじ【転】

死んだ人が暮らしているという洞穴は、ただの岩間のようにしか見えず、森で一晩明かした後は雨に見舞われ、カントはあまりいい気分ではなかった。

しかしデボがカントに「本当に見せたかったもの」と言って、デボの飼っている小熊を見せたとき、カントは笑顔を浮かべた。
檻の中の小熊の名は「チビ」。
カントはチビの愛くるしさにときめき、デボが示した、デボとカントだけの秘密という条件の下で、チビの世話をすることにした。

しかしある日、カントがチビの檻へ行くと、そこには同じ集落の老女がいた。カントが驚いていると、老女は「儀式に参加する皆で世話をすることになった」と言った。

カントはデボのもとを訪れ「儀式」の説明を求めた。
デボは、冬にイオマンテを行い、チビを「送る」ことをカントに話したが、カントは反対する。
デボは、カントの父もイオマンテをやりたがっていたと話す。

カントはデボからイオマンテを撮影したビデオを拝借し、弓矢で熊を射殺する場面を見て愕然とする。

街では祭りが始まった。
ミエはふさぎ込んでいるカントを、祭りの懇親会に連れて行った。

映画『アイヌモシリ』の結末・ラスト(ネタバレ)

夜の懇親会で、カントは酩酊しているデボを見て会場を抜け出し、家の鍵束を持ってチビの檻へ走った。

鍵束の鍵を全て試したが、どの鍵でも檻は開かなかった。

冬が訪れ、イオマンテの日がやってきた。
カントの暮らすアイヌコタンは、部外者が入れないように封鎖された。
大人たちは総出で、儀式の準備を整えていく。

イオマンテの会場へ一緒に行こうと、デボがカントを迎えに来たが、カントは自室に閉じこもり、沈黙の抵抗をする。

カントは家で一人、イオマンテのビデオを見る。
ビデオの中で、熊が倒れた瞬間を見たカントは、走って会場に向かった。

しかし雪の上に血の跡が残っているだけで、チビの姿はなかった。

カントは一人、森の洞穴に行き、洞穴に雪玉を投げつける。
ふと振り返ると、そこには父が居た。
カントと父は抱き合う。

夜、カントがやっとチビと目を合わせたとき、飾られたチビは、首から下がなかった。
夜が明け、イオマンテの終幕にはカントも参加した。

数日後、カントは学校に向かう途中で何かの鳴き声を聞き、見上げるとそこには、野生のフクロウがいた。

映画『アイヌモシリ』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)

アイヌの伝統と、現代に生きる若者の揺れ動く感情が静かに、しかし力強く描かれていて深く心に残る作品でした。カントが伝統と現代のはざまで悩み、熊の供養祭に対して反発を抱く姿には、自分自身のアイデンティティに向き合う痛みと葛藤が詰まっていたと思います。最終的に彼が自分のルーツと向き合おうとするラストに、未来への小さな希望を感じました。(20代 男性)


大きなドラマや派手な展開はありませんが、それが逆にリアルで、日常の中にある「違和感」や「選択」を丁寧に描いている映画だと感じました。アイヌ文化の継承というテーマを、ティーンエイジャーの視点で描いた点が新鮮で、特に若い世代に観てもらいたい作品です。終盤、熊の殺生について問いかける場面が非常に印象的でした。(30代 女性)


非常に静かな映画でしたが、その沈黙の中に語られるメッセージが強く、観終わった後しばらく考え込んでしまいました。カントの反抗や迷いがとてもリアルで、自分も十代のころに「自分のルーツってなんだろう」と悩んだ記憶がよみがえりました。アイヌ語や風習も自然に描かれていて、文化ドキュメンタリー的な面でも価値があると思います。(40代 男性)


息子と一緒に観ましたが、親世代と子供世代の価値観のズレがテーマの一つになっていて、私自身の子育てにも重ねてしまいました。伝統を押しつけたくはないけれど、失ってしまうのも怖い。カントの母の葛藤にも強く共感しました。派手な演出に頼らず、ありのままの生活や心の動きを見せてくれる良作です。(50代 女性)


ドキュメンタリーのような演出がとても効果的で、現実とフィクションの境目が曖昧になってくるような感覚でした。特に、カントが大人たちのやり方に不信感を募らせていく過程が静かに、でも確かに描かれていて胸が痛くなりました。熊の供養を巡る価値観の衝突は、現代の日本社会にも通じる普遍的な問題を感じさせます。(30代 男性)


北海道出身の自分にとっては、アイヌ文化は身近なようで遠い存在でした。この映画を通して、アイヌの人々が何を大切にして生きているのか、その内面に少しだけ触れられた気がします。カントのように、伝統に反発しつつも心のどこかで向き合おうとしている姿に共感しました。地味ですが、非常に誠実な作品です。(20代 女性)


中学生の孫と一緒に観ましたが、とても静かで深い映画でした。最近の映画にはない“間”のある演出が印象的で、セリフよりも登場人物の表情や仕草が多くを語っていたように感じました。特に熊の供養の場面では、命と伝統の重さを改めて感じました。若い人にこそ観て考えてほしい映画です。(60代 男性)


「文化を守る」という行為の裏にある、現実との折り合いや利害関係が見え隠れする描写がとてもリアルでした。伝統が観光資源として消費されることへのカントの疑問は、私自身が感じてきた違和感とも重なり、深く共感しました。ラストにかけて、カントが少しずつ自分の立ち位置を見つけていく姿に希望を見ました。(40代 女性)


正直、最初は地味すぎると思ったのですが、観終わるころには胸がいっぱいになっていました。カントの言葉少なさ、でもその内面にある葛藤が静かに伝わってくる演出がとても良かったです。特に、熊の解体を間近で見るシーンでは、自分だったらどう感じるだろうと、自然と考えさせられました。(30代 男性)


「アイヌモシリ」は、日本国内に生きる“他者”の物語として、非常に貴重な視点を与えてくれる作品だと思います。カントのように、自分のルーツに無関心なまま過ごしてきた若者が、伝統と向き合うきっかけを得ていく姿に、自分の中のアイデンティティの問題を重ねました。地味ですが、心に長く残る映画です。(20代 女性)

映画『アイヌモシリ』を見た人におすすめの映画5選

累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『アイヌモシリ』を見た人におすすめの映画5選を紹介します。

風の電話

この映画を一言で表すと?

喪失の痛みと向き合う少女が、静かに癒しを探す旅に出る感動のロードムービー。

どんな話?

東日本大震災で家族を失った高校生ハルが、被災地・釜石にある「風の電話」を目指し、心の整理をつける旅に出る物語。道中で出会う人々との交流を通して、次第に感情を取り戻していく姿を描く。静かだが深い感情の波が胸を打つ作品。

ここがおすすめ!

『アイヌモシリ』と同じく、現代の若者が過去と向き合う姿が丁寧に描かれており、社会的背景と個人の内面が密接に繋がっています。過度な演出がなく、空気感と余白で語るタイプの映画が好きな方に強くおすすめしたい1本です。

カメジロー 沖縄の青春

この映画を一言で表すと?

沖縄の歴史と闘争を、ひとりの青年活動家の視点から辿る実録ドキュメンタリー。

どんな話?

戦後の沖縄で米軍支配と闘った政治家・瀬長亀次郎の生き様を描いたドキュメンタリー。民衆とともに声を上げ、信念を貫いたカメジローの姿を、当時の映像や証言を通じて描き出す。沖縄の現代史を知るうえでも貴重な作品。

ここがおすすめ!

『アイヌモシリ』と同様に、地域文化と権力構造の間に生きる人々の葛藤が描かれています。若い世代にこそ見てほしい、見過ごされがちな日本の“もう一つの歴史”を照らす力作。自分の立場をどう捉えるか、考えさせられます。

ナワリヌイ

この映画を一言で表すと?

国家に抗い命がけで真実を追う男のドキュメントスリラー。

どんな話?

ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイが、毒殺未遂から回復し、自ら襲撃の真相を暴こうとする姿を描いたドキュメンタリー。驚異の展開と緊迫感あふれる取材映像で綴られるリアルな“政治サスペンス”。

ここがおすすめ!

『アイヌモシリ』が扱う“声を持たない者たち”の苦悩と闘いは、この作品の根底にも通じます。文化や政治の抑圧のなかで、それでも声を上げることの意味を描いた重要な一本。ドキュメンタリーでありながら、物語としても圧倒される完成度です。

モリのいる場所

この映画を一言で表すと?

一人の老人の小さな世界から、人生の豊かさが見えてくる静謐な人間ドラマ。

どんな話?

昭和の画家・熊谷守一が晩年を過ごした東京の家を舞台に、庭と虫たちに囲まれた日々を静かに描く物語。庭の中で世界を完結させるような生活を続けるモリと、その周囲にいる人々とのユーモラスな交流が丁寧に描かれる。

ここがおすすめ!

『アイヌモシリ』の“静けさ”や“内なる葛藤”を好む方には、この作品も響くはず。何気ない風景や時間に、人生の真理や深さがにじみ出るような作風で、人間の根源的な豊かさについて思いを巡らせたくなる一作です。

タレンタイム〜優しい歌

この映画を一言で表すと?

宗教と民族を超えて人と人が繋がる、涙なしでは観られない青春映画。

どんな話?

マレーシアの多民族社会を舞台に、高校生たちが文化や宗教の違いを超えて理解し合い、音楽を通して心を通わせる物語。イスラム教徒の青年と華人の少女の恋を中心に、多様なバックグラウンドを持つ若者たちの葛藤が描かれる。

ここがおすすめ!

『アイヌモシリ』と同様に、「文化の継承」と「若者のアイデンティティの揺らぎ」をテーマにしており、静かな演出ながら感情の振れ幅は非常に大きい作品です。民族の違いを超えた普遍的な共感を呼ぶ、心に響く名作です。

この記事の編集者
影山みほ

当サイト『MIHOシネマ』の編集長。累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家です。多数のメディア掲載実績やテレビ局の映画番組とのタイアップ実績があります。平素より映画監督、俳優、映画配給会社、映画宣伝会社などとお取引をさせていただいており、映画情報の発信および映画作品・映画イベント等の紹介やPRをさせていただいております。当サイトの他に映画メディア『シネマヴィスタ』の編集長も兼任しています。

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