この記事では、映画『バース・オブ・ネイション』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『バース・オブ・ネイション』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『バース・オブ・ネイション』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:歴史
監督:ネイト・パーカー
キャスト:ネイト・パーカー、アーミー・ハマー、マーク・ブーン・Jr、コールマン・ドミンゴ etc
映画『バース・オブ・ネイション』の登場人物(キャスト)
- ナット・ターナー(ネイト・パーカー)
- 幼少期より、民を率いる特別な預言者になるとして育てられた。家族と共に農場に買われ農業に携わっていたが、農場主の婦人に文字が読めることを知られてからは聖書の勉強も許された。同胞達に向け説教を行っている。
- サミュエル・ターナー / サム(アーミー・ハマー)
- ナットが奴隷として身を置く農場の跡取り息子。幼少期より黒人達と暮らしていて、年の近いナットとは友人のように過ごしてきた。奴隷への人権に理解はあるが、世間体を気にして彼らを庇えない場面もある。
- チェリー・アン / マディソン・ヘイン(アヤ・ナオミ・キング)
- 奴隷オークションで白人の慰み物として売り飛ばされるところを、ナットの提言を受けたサムに買い取られた。サムの妹キャサリンの女中として働く。後にナットの妻となる女性。1人娘ジョアンナを授かる。
- レイモンド・コップ(ジャッキー・アール・ヘイリー)
- 黒人達を執拗に迫害する白人至上主義者。理不尽な理由で彼らを惨殺する。
映画『バース・オブ・ネイション』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『バース・オブ・ネイション』のあらすじ【起】
幼いナットの身体には、生まれつき皮膚が隆起したイボのような物があった。ナットが属していた黒人のコミュニティでは、その皮膚の隆起が将来民を導く預言者になる証であるとされた。
家族と共に大きな農場に買い取られたナットは、農場主の息子サムと友人のような関係を築きながら育った。ある時ナットが文字を読めると知ったサムの母エリザベスは、ナットに対し奴隷としては異例である聖書の勉強をさせるようになった。農場の経営者であり牧師である主人の後ろ盾もあり、ナットは日々勉強に徹した。
一方でナットの父は、農場から程なくしてある森の中で白人の警ら隊に襲われた。主犯格のレイモンドから銃を向けられもみ合う中で、銃が暴発。白人の内の1人が死んでしまった。父はナットや妻、祖母に別れを告げて逃げ出し、その日から二度と再会することはなかった。
父と生き別れるも聖書を学び博識に成長したナットは、同胞達に向け聖書の教えを伝えながらサムのお抱え使用人として農業に従事していた。
映画『バース・オブ・ネイション』のあらすじ【承】
サムの妹キャサリンが結婚することになった。農場主である父が病気で他界し跡を継いだサムは、結婚式の進行をウォルソール牧師に頼んだ。ウォルソールはサムの農場で働く奴隷達がよく働くことを褒め、サムはそれをナットの説教のお陰だと語る。
サムとナットがいつも通り馬車で用事に出掛けた帰りの道では、無残に頭を撃ち抜かれた黒人奴隷の死体が転がり、奴隷オークションも行われていた。サムもナットも複雑な表情でオークションを見物する。片腕を切断された黒人が買い取られた後、若い娘が売りに出された。彼女が白人の慰み物として買われそうになったところ、ナットがサムに「召使いを欲しがっていたキャサリンに結婚祝いとして買ってやろう」と提言する。サムはこれに同意し、屋敷に連れ帰られた女はチェリー・アンと名付けられ、ナットと同じ農場で働くことになった。
ナットはオークションで彼女を見た時から心を奪われており、共に生活する中で彼らは結ばれた。2人の間には娘ジョアンナが誕生し、奴隷といえどもある程度の人権を認めてくれるサムの農場で慎ましく暮らした。
映画『バース・オブ・ネイション』のあらすじ【転】
サムはある時、ウォルソール牧師からナットを説教の巡礼に使わないかという話を持ち掛けられる。サムの農場で働く奴隷達がみな健康的で従順なのは、聖書の教えを「主=白人」であると解釈させているからではないかと評判になっているようだ。サムは少々渋ったが農場の儲けになるならばと、ナットを連れて奴隷へ向けた説教巡礼を行うようになる。
各地で受ける説教内容への注文は、主人に従うような箇所を選んでくれというものだった。ナットはそれぞれの雇い主が望むような説教を続けて回ったが、同胞へのあまりに劣悪な対応や環境に心を痛め、白人にはバレないよう、彼らを勇気づける説教を涙ながらに行った。
ナットが農業と巡礼をこなす日々の中、妻チェリーがかつてのナットの父親と同じように森の中で白人の警ら隊に襲われた。レイモンドを筆頭に理不尽な理由で暴行を受けたチェリーは、一命は取り留めたものの無残にも顔面が腫れ上がってしまった。翌日には、サムの父がかつて開いていたように親睦会が開かれる予定だった。資金を得るためにも非常に重要な親睦会へ向け、ナットは重症の妻の側を離れ給仕を担当することになった。
そして親睦会の夜、サムの客がナットと共に農場で働くハークの妻エスターを抱きたいと申し出た。ナットもハークもサムへ全力で抗議したが抵抗虚しく、エスターはレイプされてしまう。同じ人間であるのに、あまりに理不尽な世の中へ対して改めて向き直ったナットは、同志を集め白人への反乱を企てる。
映画『バース・オブ・ネイション』の結末・ラスト(ネタバレ)
親睦会の夜からサムに反抗的な態度を示すようになったナットは、説教や集会を禁止されていた。しかし、彼は秘かに若く信頼できる奴隷達を集め、反乱軍を成立させていた。集まったのはサムの農場からだけでなく、反乱の噂を聞いた黒人達が各地からやって来て次第に規模は拡大していった。
まず手始めに殺されたのはサムである。サムお抱えの白人使用人もオノで殺され、奴隷達の復讐が始まった。サムの農場から始まり、反乱軍のメンバー達はそれぞれの雇い主を惨殺していった。そうして彼らは、エルサレムの武器庫を目指して邁進した。
武器庫に辿り着いた反乱軍は、レイモンドと対峙することになる。白兵戦では反乱軍が勝利を収めたが肝心の武器庫からは火器が全て搬出されており、反乱軍は進駐軍によって制圧されてしまった。ナットは何とか生きて逃げ切ったが、この反乱をきっかけに各地で奴隷達をはじめ自由黒人までもが無残に殺害されてしまう。結果的にナット達反乱軍が手にかけた白人犠牲者の数を大幅に上回る黒人達が、理由なく殺される結果となった。
追われる身となったナットは、後日自ら街に姿を現し処刑された。公開処刑されたナットの遺体は、皮を剥がれた後に解体。身体の一部は白人の群衆たちが勝利の記念として持ち帰ったという。
映画『バース・オブ・ネイション』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
聖書の解釈が雇い主側と奴隷側で異なるという部分が、観ていて非常に悔しかった。人種や立場を超越し等しい教えを齎すはずの聖書も、時に人を服従させるための武器になってしまうのかと思うとやりきれない。
ナットが説教で訪れたある牧場で、奴隷達へ泣きながら声を張り上げスピーチする場面には胸が熱くなった。主人に従うような説教を求められている中で、白人にバレないギリギリのラインで同胞を勇気づけるナットは非常に頭の良い人間だったのだと感じた。(MIHOシネマ編集部)
本作は、アメリカ南部の奴隷制度に対して反乱を起こしたという実在の奴隷の黒人牧師ナット・ターナーの半生を描いた歴史作品。
アメリカの現代も決してなくなることのない人種差別に、心が痛む。
救いようのないラストに、あの暴動の意味は何だったのだろうと、ただただ悔しさと悲しみが込み上げてきた。
しかし、立ち上がった彼らの姿は力強く、美しいとさえ思えるほどのパワーを感じた。
願うだけなら簡単だが、一刻も早くこういった差別や差別が引き起こす戦争が消えて欲しいと思った。(女性 20代)
アメリカ史に深い影を落とした奴隷制度を、ナット・ターナーの反乱を通して描いた衝撃作。冒頭の牧師としての彼の姿からは想像できないほど、抑圧と暴力に耐えた末に立ち上がる姿に圧倒されました。家族や仲間を奪われ、信仰を裏切られた彼の決起は血に塗れたものですが、そこには人間としての尊厳がありました。悲惨な結末も含め、強烈な問題提起の映画でした。(20代 男性)
宗教的な説得力をもつターナーが、奴隷解放のシンボルとなっていく過程が胸に響きました。奴隷として生きるだけでなく、人間としての尊厳を守るために彼が選んだ道は暴力と死に直結していましたが、それを否定できない現実の重みがあります。ラストの反乱の場面は血なまぐさくも力強く、観ていて胸が苦しくなりました。それでも彼の行動は消せない歴史の声だと思います。(30代 女性)
作品を観ながら何度も息を呑みました。特に妻が白人に凌辱され、彼自身が牧師として利用されてしまうくだりは怒りで体が震えました。その後の反乱は凄惨でしたが、積もり積もった怒りの爆発として納得できるものでした。最後に処刑されてもなお、彼の精神は後世に伝わったことが映像で示され、歴史的意義を強調していたのが印象的でした。(20代 女性)
映画としては重苦しいですが、非常に意義深い作品です。主人公ターナーが奴隷仲間に希望を与えようとしながら、自身もまた傷つき絶望していく姿は観ていて辛い。最終的に蜂起しても大勢が犠牲となり、彼自身も処刑されますが、その流れが無意味でなかったことを描いている点が救いでした。過去を直視することの大切さを強く感じました。(40代 男性)
ナット・ターナーの物語は、歴史の教科書では数行しか触れられませんが、映画を通じてその背景の壮絶さを知りました。奴隷制の残酷さと人種差別の根深さを、ドラマとしてではなく現実の出来事として突きつけられます。信仰を利用し、人を支配する構図が特に印象的で、観終わったあとも心に重く残りました。教育的価値も高い一作です。(50代 女性)
アクション映画のような盛り上がりではなく、むしろ淡々とした描写で進むのが逆にリアルさを際立たせていました。特に反乱シーンは血にまみれて恐ろしいですが、その裏にある人間の叫びを感じさせます。英雄譚というより、悲劇をもって社会の理不尽を暴く物語。単純に善悪で語れない人間の行動に深く考えさせられました。(30代 男性)
女性としては、妻が暴力の犠牲になり、それが夫の決起につながる流れが胸に突き刺さりました。自分が守るべき存在を奪われた時、人は何を選ぶのか。ターナーは信仰を武器に戦いましたが、最終的にはその信仰すら血に塗れてしまう。その矛盾が悲しく、同時に彼の人間性を際立たせていたと思います。観ていて涙が止まりませんでした。(20代 女性)
歴史を描く映画は数あれど、『バース・オブ・ネイション』ほど心を揺さぶられた作品は少ないです。ナット・ターナーが理想を抱き、現実に裏切られ、最後は命をかけて立ち向かう姿は英雄的でありながらも悲劇的。希望を繋ぐ子供たちの姿が最後に映し出されることで、彼の戦いが未来へ受け継がれることを示したのも感動的でした。(40代 女性)
映画『バース・オブ・ネイション』を見た人におすすめの映画5選
それでも夜は明ける(2013)
この映画を一言で表すと?
奴隷制度の残酷さを徹底的に描き切った、魂を揺さぶる実話映画。
どんな話?
自由黒人として暮らしていたソロモンが拉致され、奴隷として売られてしまう。苛烈な労働と虐待の中で生き抜き、自由を取り戻すまでの12年間を描いた物語。彼の苦悩と希望、そして人間の尊厳をめぐる闘いが胸を打つ。
ここがおすすめ!
アカデミー賞作品賞受賞作であり、圧倒的なリアリティと俳優陣の演技力が観る者を震わせます。『バース・オブ・ネイション』と同じく奴隷制の非人道性を正面から描き、観終わったあと長く心に残る作品です。
アミスタッド(1997)
この映画を一言で表すと?
奴隷船反乱から始まる、自由と正義をかけた法廷闘争の物語。
どんな話?
1839年、アフリカ人奴隷たちが船上で反乱を起こし、アメリカに漂着。彼らは「奴隷か自由人か」を巡って法廷に立たされる。弁護士ジョン・クインシー・アダムズらの尽力と、自由を求める叫びが交錯する歴史劇。
ここがおすすめ!
スティーヴン・スピルバーグ監督による壮大な人間ドラマ。法廷劇としてのスリルと人間の尊厳を守る戦いが融合し、『バース・オブ・ネイション』と同じテーマを違う角度から深く掘り下げています。
グローリー(1989)
この映画を一言で表すと?
黒人兵士たちの誇りと勇気を描いた、胸を打つ戦争ドラマ。
どんな話?
南北戦争で結成された北軍初の黒人連隊「第54マサチューセッツ連隊」。彼らは差別と偏見の中で訓練を重ね、やがて命を懸けた戦いに挑む。兵士たちの苦悩と絆、そして誇りが鮮烈に描かれる。
ここがおすすめ!
デンゼル・ワシントンのアカデミー賞受賞をはじめ、キャスト陣の熱演が光ります。奴隷制から自由への闘いを軍隊という視点から描き、『バース・オブ・ネイション』で感じた尊厳のための闘争と強く共鳴します。
マルコムX(1992)
この映画を一言で表すと?
黒人解放運動を導いた革命的指導者の壮絶な人生を描く伝記映画。
どんな話?
差別と犯罪にまみれた青年時代を経て、獄中で信仰に目覚めたマルコムX。公民権運動のリーダーとなり、黒人の尊厳と自由のために戦った彼の生涯と、暗殺へ至るまでの激動の軌跡を描く。
ここがおすすめ!
スパイク・リー監督とデンゼル・ワシントンの迫真のタッグが、マルコムXの複雑な人物像を力強く映し出します。『バース・オブ・ネイション』が奴隷反乱を描いたのに対し、本作は20世紀の黒人解放闘争を体感させます。
ドゥ・ザ・ライト・シング(1989)
この映画を一言で表すと?
人種差別の現実を鋭く切り取る、衝撃と余韻を残す社会派ドラマ。
どんな話?
ニューヨークのブルックリンを舞台に、黒人や移民たちが暮らす街の日常を描く。しかし小さな軋轢がやがて暴動へと発展し、抑えられていた差別や怒りが爆発する。人間の生々しい感情を正面から描いた作品。
ここがおすすめ!
スパイク・リー監督の代表作で、今も色褪せない人種問題のリアリティを突きつけます。『バース・オブ・ネイション』で描かれた抑圧と闘争の精神を現代に引き継ぐ作品として、必見の一本です。
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