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映画『武士道残酷物語』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『武士道残酷物語』の概要:サラリーマンの飯倉進は、会社の都合で婚約者との結婚を延期するよう迫られていた。そんな折、進は権力者の圧力により悲惨な歴史を繰り返して来た飯倉家の系譜を振り返る。監督は今井正。7代に渡る飯倉家当主を演じるのは、歌舞伎役者の中村(萬屋)錦之助。

映画『武士道残酷物語』の作品情報

武士道残酷物語

製作年:1963年
上映時間:123分
ジャンル:歴史、サスペンス
監督:今井正
キャスト:中村錦之助、東野英治郎、渡辺美佐子、荒木道子 etc

映画『武士道残酷物語』の登場人物(キャスト)

飯倉進(中村錦之助)
現代を生きる飯倉家の子孫。自身の務める会社とライバル関係にある飛鳥建設の事務員、杏子と結婚する予定でいる。しかし、進が杏子から入手した情報によりダムの入札権を獲得すると、上司は、ほとぼりが冷めるまで結婚を延期しろと言い出した。苦境に立たされた進は、かつて見つけた飯倉家の歴史が書かれた日誌を思い出した。
杏子(三田佳子)
進の婚約者。進に頼まれ、自身の務める飛鳥建設が有する「信州ダム建設計画見積書」を持ち出す。後、結婚式の延期を打ち明けられ自殺を図った。
飯倉次郎左衛門秀清(中村錦之助)
慶長を生きた侍。関ヶ原の戦いで君主が敗れ、路頭に迷っていたところを堀式部少輔に拾われた。とある戦において堀氏の仮城を燃やされてしまい、高齢だった次郎左衛門は責任を取って自害した。
掘式部少輔(東野英治郎)
慶長から寛永にかけて君臨した、信州矢崎の藩主。次郎左衛門の働きをかっていたが、その息子である佐治右衛門には特段目を掛けていなかった。
飯倉佐治右衛門(中村錦之助)
飯倉次郎左衛門秀清の息子。父と同じく堀式部少輔へ仕えたが、老衰した堀氏への手厚過ぎる気遣いがかえって仇となり暇を与えられてしまった。堀氏が死去したことを受け、後を追って自害。
飯倉九太郎トモユキ(中村錦之助)
元禄期の飯倉家当主。九ノ助という弟がいる。兄弟で学問を嗜むべく江戸へ上がり、堀丹波守宗昌の城に仕えた。男色家の宗昌に見初められ寝所へ迎えられるが、萩の方への恋心を諦めきれずにいる。
堀丹波守宗昌(森雅之)
元禄期に信州矢崎を治めた藩主。男色家。正妻も、妾である萩の方も相手にせず、九太郎を手元に置く。萩の方と九太郎の浮気を疑い、二人を罠に掛ける。
萩の方(岸田今日子)
宗昌の妾。かつては正妻よりも手厚い寵愛を受けていたが、九太郎が現れたことでぞんざいな扱いを受ける。九太郎から想いを寄せられ、彼を受け入れる。
飯倉修蔵(中村錦之助)
天命期の飯倉家当主。堀式部少安高に仕える剣の達人。目隠しをした状態で物を切れる。堀氏の財力では百姓の反乱を抑えられず、田沼氏へ協力を求めるにあたり、婚姻間近であった娘のさとを差し出した。
堀式部少輔安高(江原真二郎)
天命期に信州矢崎を治めた藩主。横暴でわがままな殿様。百姓の反乱を抑えるために必要な資金が調達できず、修蔵の娘であるサトを田沼意知へ献上し、予算を上乗せして貰おうと考えた。
飯倉進吾(中村錦之助)
明治時代の飯倉家当主。進の祖父。信州から上京し、東京で下宿していた。晩年を迎え身寄りのなかった堀高啓に同情し、先祖代々世話になったという恩から面倒を見る。しかし、不在の隙に妻のふじが高啓に襲われてしまう。
堀高啓(加藤嘉)
信州矢崎藩最後の当主。子供ができなかったこともあり、家督に入らんとする実の弟によって長年座敷牢へ入れられていた。そのせいで精神を病んだ。数年ぶりに目の当たりにしたうら若き女人、ふじに懸想し、我を忘れ強姦する。
飯倉修(中村錦之助)
進の兄。神風特攻隊として戦争へ何の疑問も持たず、むしろ誇らしさを持って太平洋に散った。

映画『武士道残酷物語』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『武士道残酷物語』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『武士道残酷物語』のあらすじ【起】

婚約者の杏子が病院へ運び込まれたと連絡を受けた飯倉進は、彼女の元へ駆け付けた。杏子に付き添っていたアパートの管理人によると、彼女は睡眠薬で自殺を図ったらしかった。管理人から受け取った彼女の遺書には、「私達の愛が壊れてしまった以上、生きていけなくなりました」と記されていた。進は何が問題だったのか振り返り、その際、母の葬儀の際に見つけた飯倉家の歴史が記された日誌の内容を思い出した。

慶長五年、五月五日。関ヶ原の戦いで主君を失った侍、飯倉次郎左衛門秀清は、時の信州矢崎藩藩主、堀式部少輔の家臣として拾われた。多大な恩を感じた次郎左衛門は長年堀氏に仕え、その実直さを評価されていた。

ある時戦が起こり、堀氏の仮城が燃やされてしまった。万策尽きた侍達は極刑を覚悟したが、次郎左衛門は一人仲間達の前から姿を消すと、責任を追って割腹した。旗本の浅井嘉兵衛は侍達の元へ、次郎左衛門の遺体と彼が遺した手紙を届けに来た。手紙には他の侍への減刑を求める内容が記されており、それを受けた堀式部少輔は、残った侍達を追及することはなかった。

三年後。次郎左衛門の息子である佐治右衛門もまた堀式部少輔へと仕えたが、彼は父のようには気に入られなかった。そして、佐治右衛門が暇を貰っている間に堀式部少輔は老衰のため死去。佐治右衛門は、家族を残し殿を追って自害した。

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映画『武士道残酷物語』のあらすじ【承】

佐治右衛門以降特段問題は起きなかったようだが、元禄を迎えてからの日誌は奇怪さを増していた。

江戸にて堀丹波守宗昌に仕えた飯倉九太郎トモユキは、勉学に励んでいた。しかし、男色家である宗昌に見初められ夜の相手を任されることになる。萩の方へ想いを寄せていた九太郎は、宗昌から「女に現を抜かすな」と何度も釘を刺され寝所を共にした。九太郎と萩の関係を疑い続けていた宗昌は、わざと二人を狭い部屋へ押し込め、九太郎の本心を覗き見た。その結果、九太郎は去勢された後、強引に萩と結婚させられた。失意の中萩を連れ実家へ戻った九太郎だったが、彼女の腹には、最初で最後にまぐわった際に宿った命があった。

天命三年。飯倉家当主の修蔵は、主君である堀式部少輔安高に剣術の腕を見込まれ、剣術の大会においては褒美を貰うなどして気に入られていた。娘のさとは、弟子の数馬との祝言が目前に迫っていた。そんな中、百姓らが反乱を起こそうとしていた。安高は鎮圧に乗り出そうとしたが資金が無かったため、田沼意知へ事態の収束を願った。そのためにさとを差し出せと命令された修蔵は、怒りと悔しさに震えながらも承諾した。数馬は、江戸へ連れられて行くさとの籠を陰で見送った。

安高は、ある日道で見掛けた修蔵の妻、まきを気に入り城へ召し上げた。お茶をたてるという名目で連れて行かれたまきは、殿の寝所へ行くと聞かされ放心。夫へ操を立て、携帯していた短刀で自害した。

映画『武士道残酷物語』のあらすじ【転】

娘との別れに加え、妻の遺体と共に閉門を言い渡された修蔵は、呆然と月日を過ごした。数馬は、無気力になった修蔵の元へ足繁く通い世話をした。そんな折、田沼意知は家臣の謀反により刺殺され、さとは修蔵と数馬の元へ帰された。さとが戻ったと知った安高はそうそうに彼女を召し上げようとしたが、さとが拒否したため強引に数馬と引き離した。

我慢の限界を迎えた修蔵は、末子の十次郎へ「侍の命は侍の物に非ず、主君の物と知れ。己を殺して主君に従え」と遺言を残すと、安高へ物申しに向かった。自分に歯向かう修蔵へ、安高は「日頃の働きに免じて、目隠しをして罪人を切れれば許してやる」と言い放った。修蔵は言われた通り刀を振るったが、目隠しを取ってみると、さとと数馬の首が転がっていた。泣き崩れた修蔵はその場で自害した。

十次郎より後細々と続いた飯倉家は、明治に入り、進の祖父である進吾が当主となっていた。信州から上京した進吾は、車引きの仕事に就きながら勉学に励み、よりよい就職先への試験を志していた。そんな中、彼は身寄りのない堀高啓の世話を引き受けた。

映画『武士道残酷物語』の結末・ラスト(ネタバレ)

精神を病んでいた高啓は、進吾とその妻、ふじと、ふじの兄が暮らす屋敷で療養した。進吾は、高啓の症状は「心からお仕えすればきっと良くなる」と信じていたが、ふじの兄が新潟へ赴き、進吾も試験のため不在の際、錯乱した彼はふじを凌辱した。その後間もなく高啓は病死し、新しい主君を得た進吾は日清戦争にて戦死した。

進の兄である修もまた、戦争によって命を落とした。特攻隊として誇りを持っていた彼は、勇んで太平洋の海に散った。

現代を生きる進は、杏子との結婚を目前に控えていた。仲人を引き受けた上司は、杏子がダムの入札で競っているライバル会社のタイピストと知ると、相手の見積もりを聞き出すよう命じた。進は悩んだが、重要な書類を扱っていると言う杏子に、入札の額が分かったら知らせるよう頼んだ。

杏子の手元に「信州ダム建設工事見積書」が届いた。彼女は逡巡の末全ての資料を進へ手渡し、進の会社は無事ダムの入札権を獲得した。仕事が片付いた後、進の上司は、杏子の親代わりである飛鳥建設の木原重役と顔を合わせるのは気まずいという理由から、式を数年先延ばしにするよう言い付けた。その結果、杏子の精神は自殺を考えるまでに追い詰められたのだった。

進は、杏子へ結婚の延期を伝えた際、彼女が「私達、所詮自分達だけじゃどうにもならないのね」と言い部屋を飛び出したのを思い出した。進は飯倉家の歴史を知った時、かくあるまいと誓った筈だった。しかし、知らずの内に先祖らと同じ道を歩んでいたことに気付いた彼は、意識を取り戻した杏子へ二人だけでも結婚しようと力強く告げた。

映画『武士道残酷物語』の感想・評価・レビュー

日本古来の主従関係や上下関係、封鎖的な男社会、これら全てのマチズモに翻弄された一族を描く壮絶な物語だった。

飯倉家は不憫で仕方なく、初めこそ「自ら進んで被虐の歴史をなぞっているではないか」と腹が立ったが、飯倉の人間が悪いのではなく、社会の構造がそうさせたのだと気付きやりきれない気持ちになった。

進は歴代で初めて自分で物事を決心した、あるいは理不尽な圧力との決別を実行に移した人物だろうが、前後の流れから察するに彼らは幸せにはなれないのだろう。そう思うと尚の事陰鬱としてくる。(MIHOシネマ編集部)

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