映画『カジノ』の概要:ニコラス・ピレッジの同名ノンフィクション書籍を、マーティン・スコセッシ監督が映画化。主人公のエースには実在のモデルがおり、カジノの裏側やマフィアのやり口が、リアルに再現されている。「レイジング・ブル」や「グッドフェローズ」で知られるロバート・デ・ニーロとジョー・ペシの名コンビが、本作でも息の合った演技を見せてくれる。
映画『カジノ』の作品情報
上映時間:179分
ジャンル:フィルムノワール
監督:マーティン・スコセッシ
キャスト:ロバート・デ・ニーロ、シャロン・ストーン、ジョー・ペシ、ジェームズ・ウッズ etc
映画『カジノ』の登場人物(キャスト)
- サム・“エース”・ロススティーン(ロバート・デ・ニーロ)
- カジノを知り尽くしている男として、ラスベガスの巨大カジノ施設「タンジール」を任される。故郷のシカゴでは有名な勝負師であり、ノミ屋として不法賭博で荒稼ぎしていた。鋭い勘と天才的な分析能力を持っており、ベガスでのし上がっていく。
- ジンジャー・マッケンナ(シャロン・ストーン)
- エースの妻。ベガスで高級娼婦をして、金持ちにたかっていた。生きがいは金だが、クズのレスターに惚れており、大金を貢いでいる。エースがその美しさと破天荒さに惚れ込み、猛アタックして妻にする。
- ニコラス・“ニッキー”・サントロ(ジョー・ペシ)
- エースの親友のギャング。エースの用心棒としてシカゴからベガスに出てきた。異常なまでに短気で暴力的な根っからの悪党。しかし息子のことは溺愛しており、毎朝必ず朝食を作ってやる。
- レスター・ダイアモンド(ジェームズ・ウッズ)
- 女に貢がせているポン引き。最低の男だが口が上手く、ジンジャーのように単純な女性を取り込むのが得意。ジンジャーが結婚後も金を貢がせる。
映画『カジノ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『カジノ』のあらすじ【起】
天才ギャンブラーのサム・“エース”・ロススティーンは、その能力を活かして故郷のシカゴで有名な予想屋となる。エースの腕はシカゴのボスたちからも重宝され、不法賭博で彼らの懐を潤していた。エースの邪魔をする奴は、親友のニッキーが暴力で黙らせる。しかし、エースは警察にマークされ、シカゴからベガスへ本拠地を移す。
ベガスでもエースは有名になり、ギャンブルを知り尽くした男として巨大カジノ「タンジール」を任されることになる。1970年代のベガスは、合法カジノが認められる場所として大人気で、年間数百万人の客が10億ドル以上の金を落としていた。
エースには逮捕の前歴があり、カジノを運営する免許を持っていなかった。しかし抜け道はいくらでもあり、エースはタンジールを仕切り始める。タンジールの表向きの社長はグリーンという男だったが、彼は売上金を誤魔化すための操り人形にすぎず、影の黒幕はトラック運転手年金協会会長のアンディだった。そのアンディから、マフィアのボスたちに上納金が収められる仕組みになっていた。ボスたちは月に1回カンザスシティーのスーパーの奥部屋に集まり、金の詰まったスーツケースを受け取る。売上金の集計に関しては、エースもノータッチだった。
エースがカジノを引き継ぎ、店の売上金は倍に跳ね上がる。エースは政治家や役人への手回しも忘れず、地元の有力者の身内も従業員として雇っていた。シカゴのボスたちは、ニッキーをエースの用心棒としてベガスへ送り込み、上納金を納めさせることにする。
映画『カジノ』のあらすじ【承】
ニッキーの悪党ぶりを熟知しているエースは、彼が無茶をしないか心配していた。しかし地元では小物扱いのニッキーにとって、ボスたちの目が届かないベガスは好き放題に稼げる天国であり、エースの予想通り、店でも余計なことをやり始める。
エースは、カジノに出入りするジンジャーという高級娼婦に一目惚れし、熱心に彼女を口説く。ジンジャーは、レスターという昔馴染みのカス男に惚れ込んでおり、せっせと金を貢いでいた。エースは彼女の愛を自分だけのものにするため、彼女にプロポーズする。ジンジャーはレスターにもその方がいいと言われ、エースとの結婚を決める。
エースはジンジャーに贅沢三昧させ、大金と宝石類を預けた銀行の貸金庫を開ける権利も与えてやる。金が生きがいのジンジャーは、この生活に満足しているようだった。ひとり娘も生まれ、しばらくは平和な日々が続く。
ニッキーは、いかさま師を手なずけ、カジノで好き放題やり始め、警察から目をつけられる。エースは再三“やりすぎだ”と忠告するが、ニッキーは聞く耳を持たない。
エースの仕切りは見事で、賭博業界になくては存在としてラスベガス・カントリークラブから表彰を受ける。一方、ニッキーはついに警察のブラックリストに載り、カジノへの出入りを禁止される。ニッキーは、国中の警察とFBIからマークされることになる。
カジノを追放されたニッキーは、故郷から弟とヤクザ仲間を呼び寄せ、強盗を働くようになる。盗んだ宝石を闇ルートで売りさばき、大金を稼いでレストランを経営する。ニッキーの悪党ぶりは有名になり、彼こそ本物のギャングだと言われるようになる。シカゴのボスたちには2週間ごとに上納金を渡して機嫌をとっていた。
映画『カジノ』のあらすじ【転】
ジンジャーにまとまった金が欲しいと言われ、エースはその理由を尋ねる。しかしジンジャーは理由を話さず、エースは彼女に疑惑を持つ。ニッキーに尾行を頼んだところ、案の定ジンジャーは、レスターに金を渡していた。ニッキーから連絡を受け、エースは2人の密会場所へ向かう。
レスターはニッキーの手下にボコボコにされ、それを見たジンジャーは強いショックを受ける。ジンジャーはエースを罵り、酒浸りになっていく。
店の管理に厳しいエースは、無能な従業員をクビにする。その男は地元の役人の義弟で、役人は義弟の再雇用を要請してくる。しかしエースはそれを断り、役人の恨みを買う。
ニッキーのせいでFBIの監視が厳しくなり、カジノ経営にも影響が出始めていた。カンザスシティーに集まるボスたちは、上納金が減っていることに気づく。ボスたちは中堅ボスのピスカーノをベガスに送り込み、様子を探らせる。
グリーンは仲間割れした女性から金のことで訴えられ、法廷で帳簿の提出を迫られる。ニッキーはこの女性を射殺し、ニッキーとつながりの強いエースまでがFBIの捜査対象になってしまう。無免許のままカジノを運営していたエースは、免許を獲得するため奔走する。
ニッキーは金を預けていた銀行家まで脅し上げ、エースと大げんかになる。エースは必死で店を守ろうとしていたが、ニッキーは邪魔者を次々と殺害し、その容疑は20数件にまで膨れ上がる。ニッキーは巧みに証拠を隠滅し、逮捕を免れていた。
シカゴのボスたちも自重するよう忠告するが、ニッキーはそれも無視する。エースの免許申請は、ニッキーの無茶と義弟を解雇された地元役人に妨害され、審問会で不当に拒否される。これに怒ったエースは、カジノで接待を受けていた政治家たちをその場で罵る。さらに自らテレビ番組を製作し、その政治家の不正や審問会の不当性を訴える。
映画『カジノ』の結末・ラスト(ネタバレ)
エースはボス連中から引き下がるよう命令され、全てはニッキーのせいだと訴える。それを耳にしたニッキーは、散々エースを罵るが、彼に手を出すようなことはしなかった。しかしエースや銀行家から無視され、ニッキーは荒れる。
ジンジャーはエースとの離婚を望んでいた。しかし莫大な慰謝料と娘の養育権を主張し、エースと衝突する。ジンジャーは完全なアルコール中毒者になっており、娘を連れてレスターのもとへ行く。それを知ったニッキーは、エースのために動いてやり、ジンジャーと娘は無事に帰ってくる。しかしエースはジンジャーを罵り続け、ジンジャーはエースに殺意を抱く。
ジンジャーはニッキーを誘惑し、男女の関係になって味方につける。ジンジャーの目的は、エースが握っている銀行の貸金庫の鍵だった。
ニッキーのせいでますます上納金は減り、地元のボスたちも苛立ちを募らせる。エースの妻を寝取ったという噂はボスたちの耳に入っており、さすがのニッキーも焦りを感じる。余計な問題を避けるため、仲間の女房を寝取ることは固く禁止されており、これに背いた者は始末されるのがマフィアの掟だった。
エースと大げんかになり、ジンジャーは彼を殺してくれとニッキーに頼む。しかしニッキーから冷たく追い出され、自暴自棄になったジンジャーは自宅前で大騒ぎする。エースは激怒していたが、警察になだめられ、ジンジャーが荷物を取りに家へ入ることを許す。ジンジャーは執念で金庫の鍵を探し出し、貸金庫からで大金と宝石を奪って逃げようとする。しかし全ての行動はFBIに監視されており、すぐに逮捕される。
FBIはボスの集まるスーパーも盗聴しており、ピスカーノのおしゃべりから関係者の名前を割り出していた。関係者は一斉に検挙され、集計室の帳簿やピスカーノの記録も差し押さえられる。ボス連中の命令でマフィアが動き始め、目撃者が消されていく。
この事件に絡む関係者は、冷酷に始末された。ジンジャーは悪い奴らに金をむしり取られ、やばい麻薬を打たれて死亡する。いち早く高飛びしていたニッキーは、弟とともに酷い暴力を受け、瀕死の状態で生き埋めにされる。
愛車が爆発し、エースは炎に包まれるが、爆弾の仕掛け方が下手だったため、奇跡的に助かる。生き延びたエースは、サンディエゴに移り住み、以前のように予想屋として、シカゴのボスたちを儲けさせる。一連の事件があった1983年以降、ベガスはすっかり様変わりし、今では巨大なレジャー・ランドのようになっている。
映画『カジノ』の感想・評価・レビュー
シカゴやラスベガスのカジノを舞台にした「夢」のようなストーリーと、その夢の裏側にあるマフィアや黒幕たちの、決して表には出てこない「悪」のストーリーが良いバランスで絡み合ったとても面白い作品でした。
ロバート・デ・ニーロとジョー・ペシのコンビは「裏社会」を生きる男を演じさせたら右に出るものは居ませんよね。頭の良いエースと破天荒なニッキー。凸凹コンビかと思いきや、お互いを信頼している部分も多く、しっかりと「絆」があり、そのせいで失敗したり大きく成功したり。ラストの展開はやっぱりそうかと残念な部分もありますが、とてもスッキリさせてくれました。(女性 30代)
随時、本音を語るようなナレーションが入りますから、登場人物の心情が手に取るように分かります。酷い暴力や裏切りが頻繁に見受けられますが、ストーリーのトーンが淡々としているため、さらりと受け入れることができました。ジョー・ペシ演じるニッキーの迫力が物凄く、呆然と見入ってしまいました。暴れ馬のように、どんどん破滅の道へと進む演技は、彼にしかできない芸だと思います。実話を基に忠実に再現したそうで、背筋が凍ります。(女性 30代)
マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロとジョー・ペシという裏社会をテーマにした映画には間違いない組み合わせで、観る前から期待しかなかったが、その通りだった。
三時間という長さが少しネックだと思っていたが、彼らのピッタリすぎる配役と、裏社会らしい裏切りや友情といった切り口はやっぱり面白いので長さを感じない。デニーロが醸し出すギャングの渋さと壮麗さも一番良かった。(女性 20代)
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