この記事では、映画『CLIMAX クライマックス』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『CLIMAX クライマックス』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『CLIMAX クライマックス』の作品情報

上映時間:97分
ジャンル:サスペンス
監督:ギャスパー・ノエ
キャスト:ソフィア・ブテラ、キディ・スマイル、ロマン・ギレルミク、スエイラ・ヤクーブ etc
映画『CLIMAX クライマックス』の登場人物(キャスト)
- セルヴァ(ソフィア・ブテラ)
- 振付師。DJダディと共にフランスから22人のダンサーを集め、フランス・アメリカ公演を行おうとしている。リハーサルのため雪深い山奥の廃墟を貸し切り、3日間の合宿を行う。
- ルー(スエイラ・ヤクープ)
- セルヴァと仲の良いダンサー。エマニュエルの息子・ティトを可愛がるセルヴァに中絶の経験はあるかと尋ねる。その実、自身が妊娠中だった。
- ダヴィッド(ロマン・ギレルミク)
- 野心家で女好きのダンサー。「ここにいる女全員とヤった」と豪語するが、本命のセルヴァには軽くあしらわれる。
- プシケ(テア・カーラ・ショット)
- ドイツ人ダンサー。ドラッグにまみれたベルリンのダンスシーンに嫌気が差し、セルヴァの企画する公演のオーディションを受けた。レズビアンでイヴァナという恋人がおり、カップルでオーディションに合格した。
- エマニュエル(クロード・ガジャン・モール)
- シングルマザーのダンサー。息子のティトと共に合宿に参加した。望まない妊娠を「人生最大の失敗」と後悔しているが、それを成功に変えたいという思いでオーディションへ参加した。打ち上げではお手製サングリアを振る舞う。
- DJダディ(キディ・スマイル)
- セルヴァと共に公演を企画するDJ。ゲイ。
映画『CLIMAX クライマックス』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『CLIMAX クライマックス』のあらすじ【起】
ダンサーのルーは、雪の中をタンクトップで歩いた。彼女は悲鳴を上げながらもがき苦しみ、降り積もった雪は彼女から流れる血の色に染まった。1996年、冬。実話に基づく物語である。
セルヴァとDJダディは、オーディションに合格した22人のダンサー達へインタビューを行った。セルヴァはそれぞれが持つダンスへの思いをはじめ、ドラッグの使用経験や性的嗜好なども質問し、彼らは赤裸々に答えた。
ダンサー達は、全体リハーサルのため山奥の廃墟へ集められた。三日間の厳しい練習を終えた彼らは、すぐさま打ち上げパーティに興じた。エマニュエルの幼い息子・ティトも会場を歩く。ダヴィッドはエマニュエルが用意したサングリアを配って歩きセルヴァにキスを迫ったが、彼女は「やめてよ」とおどけて突き放した。
セルヴァは、ティトが心配だとルーへ溢した。ルーは、子供には悪い環境だねと言い、セルヴァに中絶の経験はあるかと聞いた。セルヴァは僅かに押し黙ると、煙草をふかしながら「選べるって素敵ね」とはぐらかした。
部屋でティトを寝かしつけるエマニュルは、彼に「ママは昔ダンサーだったの」と語りかけた。

映画『CLIMAX クライマックス』のあらすじ【承】
ディスコと化した広間は一旦落ち着きを取り戻し、ダンスをひとしきり楽しんだ面々は仲の良い者同士で語り合った。酒が入ったプシケと彼女の恋人・イヴァナは些細なことで喧嘩をし、ダヴィッドはオマーの恋人である女装家のガゼルと寝たいと言う。ガゼルの兄・タイラーは、ガゼル本人へ「オマーの何がいいんだ?」と交際をやめるよう諭すが、二人は既に9ヶ月付き合っていた。サイボーグは、ロッコへ「この部屋は嫌な予感がする」と打ち明け、二人は次第に猥談をはじめた。
ゲイのライリーは、同じくゲイのダディに「二日でダヴィッドを落とす」と宣言していた。それを聞いたダディは、「若いんだから全部やろうとするな」と冷静にアドバイスをした。ライリーが去ったDJ卓へやって来たエマニュエルは、ダディと談笑する。彼女は、サングリアの出来は大成功だと喜んだ。
彼らは再びダンスを始めた。皆思い思いに体を動かし、彼らは次第に酒による酔いではない“ハイ”の状態になっていった。
ヤク中のアライアは、コカインを求めて彷徨っていた。ライリーは、ガゼルに言い寄るダヴィッドへ抱き着く。プシケは遠くを見つめ、立ったまま放尿した。そんな光景に異常を感じたセルヴァは、サングリアを作ったエマニュエルを問い詰めた。エマニュエルは何の話か分からなかったが、セルヴァの喧騒にあてられたダンサー達がこぞって自分を責め出したためダディに助けを求めた。
誰かが「酒を飲んでいないオマーが犯人だ」と騒ぎはじめ、また別の者が「LSDを入れたろ!」と喚いたことでパニックが起き、興奮した彼らは無実のオマーを吹雪の中に放り出した。
映画『CLIMAX クライマックス』のあらすじ【転】
混乱の中をふと見るとティトが起きて来ており、眠りにつく前に興味を示していたサングリアを飲んでしまっていた。エマニュエルは慌ててティトの元へ駆け寄り、騒ぐ彼を電気室へ閉じ込めると、「あっちをまともな状態にしたら戻って来るから」と声をかけた。
セルヴァはイヴァナから声をかけられたが、無視してルーの部屋を訪れた。体調が優れないと言って広間を離れた彼女は嘔吐していた。彼女は信頼のおけるセルヴァへ妊娠している事実を告げ、さらに、父親は分からないと打ち明けた。そこへドムが現れ、サングリアを飲んでいないルーが犯人ではないかと言い出した。ルーとセルヴァは妊娠しているから飲酒できないと訴えたが、聞く耳を持たないドムはルーの腹を蹴り上げた。
ルーは会場へ戻ったドムに追いつくと、ナイフを手に取り「殺してやる」と叫んだ。しかし、ハイになったダンサー達は皆ルーが犯人だと喚き散らし、追い詰められたルーは自らの腹部へナイフを突き立てた。
一人廊下を歩くセルヴァは遂に錯乱し、悲鳴を上げながら暴れ出した。廊下と広間を行ったり来たりする彼女は、電気室の扉の前でティトに話しかけるエマニュエルに近付いた。彼女は「鍵をなくした」と泣いている。ティトも尋常ではなく泣き叫んでおり、セルヴァは鍵を探すようエマニュエルに強く言った。
広間はカオス状態だった。男達はダヴィッドをリンチし、動かなくなった彼の額に口紅で十字架を書いた。
映画『CLIMAX クライマックス』の結末・ラスト(ネタバレ)
セルヴァは、イヴァナに連れられて広間を出ようとした。その時、突然電気がショートし、照明が非常灯に切り替わった。エマニュエルはティトがブレーカーに触れて感電死したことを悟ると、半狂乱になって電気室へ向かった。
泣き叫ぶエマニュエルを横目に、セルヴァはイヴァナの部屋へ連れて来られた。イヴァナにキスを迫られたセルヴァは受け入れ、意識を取り戻したダヴィッドが部屋へやって来たが追い返した。
ダンサーの衣装で女装したダディは、部屋で泣いていたライリーを抱き締めた。トイレではタイラーがガゼルをレイプしており、ダヴィッドの出現によってガゼルは「自殺する!」と叫んで兄の元から逃げ出した。
タイラーはガゼルを追って広間へ来た。まともに歩けないガゼルは這って逃げようとするも、LSDの過剰摂取により遂に泡を吹いてしまった。心配したタイラーはガゼルを部屋へ連れ戻した。
広間は阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。セックスにふける者、白目を剥いて痙攣する者、雄叫びをあげながら異様な動きで踊り狂う者、ダヴィッドはそんな中、呻き声を上げながら助けを求め、床の上をはいずり回った。
翌朝、彼らの元には警察が訪れた。警察は建物内の光景に唖然とした。電気室の外ではエマニュエルが自殺しており、ルーは太陽光を頼りに叫びながら外へ飛び出した。外にはうずくまるように雪に埋もれたオマーの死体があり、タイラーのベッドで目を覚ましたガゼルは、タイラーから「何もなかった」と繰り返し言われた。
先程まで踊っていたプシケは、部屋で目薬を差した。彼女の瞳からは一筋の涙が流れていく。
映画『CLIMAX クライマックス』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
目眩がするような映像の連続だった。ダンサー達の美しさや力強いダンスに加え、奇抜なカメラワークが疑似トリップ体験をさせてくれる。
サングリアにLSDを入れた犯人はプシケだったわけだが、冒頭からあれだけの存在感があったにも関わらず、最後まで真犯人としての息を潜めていたことには驚きだった。個人的には大どんでん返しの内容だった。
ティトが死ぬ場面は見ていられなかった。幼い子供が命を落とす脚本は、無闇に犬を死なせてお涙頂戴する安易な映画くらい嫌悪感がある。エマニュエルが理不尽に責め立てられ、親子共々散々な最後を迎えてしまったのは心苦しい。(MIHOシネマ編集部)
監督が誰なのか見ずに鑑賞し始めましたが、すぐにギャスパー・ノエだと分かりました。彼の作品は本当に独特で、胸糞悪い映像が続くのにクセになるし、いつの間にか彼の描く世界観が美しいとまで感じてしまうのだから不思議です。
今作も例外ではなく、『アレックス』でもとても印象的だった目が回るようなカメラワークや、熱量の高いダンスシーンなど、気味が悪いほど熱い世界が描かれていました。
常識に囚われない彼の作品が好きな方は大満足できると思います。逆に、苦手な方も繰り返し見ているとクセになるのでは無いでしょうか。(女性 30代)
まさに狂気のダンス。序盤の完璧な振付とカメラワークに魅了されたと思ったら、後半は悪夢のような混沌へ突き落とされる。LSD入りのサングリアを飲んだダンサーたちが、次々と理性を失い、欲望と恐怖に飲み込まれていく展開は息を呑むほど。音楽と映像がシンクロしながら地獄を描く、まさに“トランス映画”。ガスパー・ノエの狂気が芸術に昇華した。(30代 男性)
映画というより体験。最初の30分は陶酔、残りの1時間は地獄。まるで観客までもがドラッグに侵されたような映像と音の連打に脳が痺れる。誰が悪いわけでもないのに全員が崩壊していく過程が異様にリアルで、ラストの逆さ映像がまさに世界の転倒を象徴している。快楽と破滅の境界を超えるガスパー・ノエらしい問題作。(20代 女性)
これほどまでに“感情が消耗する映画”はなかなかない。極限まで引き延ばされた長回し、照明の変化、絶叫の連鎖――その全てが地獄への下降線。ダンスと狂気がここまで融合するとは思わなかった。物語というより感覚で理解する映画。理解不能なのに目が離せない。まるで悪夢に引きずり込まれたような90分だった。(40代 男性)
最初はエネルギッシュなダンス映画かと思ったが、中盤から突然“恐怖映画”に変貌。誰が何をしたのかもわからないほどの混沌に包まれ、登場人物たちの悲鳴と音楽が一体化する。子どもを閉じ込めるシーンでは胸が痛くなった。狂気を突き詰めた果てに、映画の意味すら崩壊していく。ノエ監督の執念を感じる。(30代 女性)
音楽、映像、演技、すべてが暴走している。理屈ではなく五感で観る映画。カメラが上下逆転する瞬間、現実と地獄の境目が消える。ラストの雪景色の静けさが余計に不気味で、まるで世界が終わった後のようだった。恐ろしいのに美しい。中毒性のある映像体験。(20代 男性)
この作品は“狂気の美学”そのもの。ダンスという秩序だった動きが、ドラッグによって一瞬で崩壊する。その破滅のリズムを撮り続けるカメラが圧倒的。ノエ監督の演出は暴力的でありながら詩的で、色彩と照明が心理を映し出す。誰ひとり救われないのに、目が離せなかった。(40代 女性)
最も衝撃を受けたのは、演者たちの“本気の身体表現”。プロのダンサーたちが演技ではなく、本能で踊り、叫び、壊れていく。映画というより儀式。LSD入りサングリアの存在が明らかになってからのテンポの速さと、理性が崩壊していく描写に圧倒された。観終わってもしばらく立ち上がれなかった。(30代 男性)
ホラーでもスリラーでもない、“地獄の舞踏会”。誰かがサングリアにドラッグを混ぜたことで始まる悪夢。序盤のインタビュー映像で見せた明るさが、後半で全て裏切られる構成が残酷。音楽が鳴り止まないのに、全てが壊れていく。この狂気を芸術に昇華できるのはノエだけ。(20代 女性)
映画『CLIMAX クライマックス』を見た人におすすめの映画5選
エンター・ザ・ボイド(2009)
この映画を一言で表すと?
死後の意識を映像化した、ガスパー・ノエの“極限のトリップムービー”。
どんな話?
東京を舞台に、麻薬密売人の青年オスカーが警察に撃たれて死亡。しかし、彼の意識は肉体を離れ、街を漂いながら自分の過去と妹の運命を見つめ続ける。現実と幻覚の境界が溶けるような映像体験が続き、観客を死と再生の旅へ誘う。
ここがおすすめ!
『CLIMAX』同様、映像と音の“体験”で魅せるガスパー・ノエの代表作。主観映像・ストロボ・光の洪水など、脳を刺激する演出が圧倒的。死を描きながら、どこか生への執着を感じさせる異次元の映画体験。
サスペリア(2018)
この映画を一言で表すと?
ダンスと呪術、芸術と狂気が渦巻く、耽美で血塗られた悪夢。
どんな話?
1970年代ベルリン。名門舞踏団に入団した若きダンサー、スージーは、次第にその裏に潜む“魔女の秘密”を知っていく。舞踏、儀式、恐怖が絡み合う中、芸術と狂気の境界が崩壊していく。
ここがおすすめ!
『CLIMAX』と同じく“ダンス”を狂気と結びつけた作品。美しい振付が悪魔的儀式へと変貌する展開は圧巻。映像の色彩感覚とトム・ヨークの音楽が生む陶酔感が恐ろしくも美しい。
リヴィッド(2011)
この映画を一言で表すと?
美と死が交錯する、“眠れる館”の幻想ホラー。
どんな話?
看護師見習いの若い女性が、老婦人の屋敷に隠された財宝を探しに忍び込む。だが、その屋敷は“生と死のあわい”に存在する恐ろしい秘密を抱えていた。夢と現実が溶け合うような幻惑的な映像世界が広がる。
ここがおすすめ!
『CLIMAX』のようなヴィジュアルの強さと感覚的恐怖が魅力。鮮烈な照明と音響デザインが、観る者を不安と美の狭間に閉じ込める。芸術的ホラーを求める人におすすめ。
母なる証明(2009)
この映画を一言で表すと?
狂気に囚われた“母の愛”が暴走する、哀しくも恐ろしい人間ドラマ。
どんな話?
息子が殺人事件の容疑をかけられた母親が、無実を信じて独自に真相を追う。だが、事件を追ううちに母親自身の中に潜む闇が明らかになっていく。愛情と狂気の境界を問う物語。
ここがおすすめ!
『CLIMAX』が集団の狂気を描いたのに対し、本作は“個の狂気”を掘り下げる。ポン・ジュノ監督の緻密な構成とキム・ヘジャの圧倒的演技に引き込まれる。人間の情愛が恐怖へ変わる瞬間を体感できる。
ミッドサマー(2019)
この映画を一言で表すと?
陽光の下で行われる、“白昼の悪夢”と狂気の祝祭。
どんな話?
心に傷を負った若い女性ダニーが、恋人たちと共にスウェーデンの田舎で行われる夏至祭に参加する。しかし、明るい祝祭の裏には狂気と死が潜んでいた。極彩色の映像の中で進む恐怖が異様な美しさを放つ。
ここがおすすめ!
『CLIMAX』の狂乱と儀式的構成に近い体験ができる。美しい自然光の中で描かれる“崩壊”が逆に恐ろしい。アリ・アスター監督の美と不安を融合させた演出は、一度観たら忘れられない中毒性を持つ。






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