この記事では、映画『デッドマン・ウォーキング』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『デッドマン・ウォーキング』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『デッドマン・ウォーキング』の作品情報
上映時間:123分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ティム・ロビンス
キャスト:スーザン・サランドン、ショーン・ペン、ロバート・プロスキー、レイモンド・J・バリー etc
映画『デッドマン・ウォーキング』の登場人物(キャスト)
- ヘレン・プレイジェーン(スーザン・サランドン)
- 死刑廃止論者のシスター。マシューのカウンセリングを行い、彼の本性を知っても尚、救おうと奮闘する。慈悲深く柔軟な考えの持ち主。マシューの姉であり、友人のような存在になる。
- マシュー・ポンスレット(ショーン・ペン)
- 若いカップルを襲い、強姦と殺害した罪で死刑の判決を受ける。落ち着いていて理知的な面もあるが、どうしようもない札付きの悪人で、助かりたいあまりに無実だと嘘を吐く。母親を殊の外心配し、家族には良い兄。
- ヒルトン・バーバー(ロバート・プロスキー)
- ヘレンの説得により、マシューの弁護士となる。最後の最後まで、死刑を止めるべく奮闘してくれる。白髪で恰幅の良い壮年の白人男性。
映画『デッドマン・ウォーキング』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『デッドマン・ウォーキング』のあらすじ【起】
黒人居住地区、教会のシスターで死刑廃止論者でもあるヘレン・プレイジェーンに、救いを求めて手紙を送ってくる死刑囚がいた。彼の名前はマシュー・ポンスレット。ヘレンは彼と文通するようになり、マシューの要望に応じて会いに行くことにした。
刑務所に勤める教誨師からマシューの罪状を聞く。彼は若いカップルを背後から襲い、女性をレイプした挙句に何度か刺傷したと言う。マシューは罪状から見れば正真正銘、札付きの悪人だった。
少年鑑別所に行ったことはあるが、刑務所には初めて来たヘレン。全てにおいて初めてだらけの中、マシューと面会した。彼には妻と子供がいるらしいが、逮捕されたきっかけは妻の通報によるものだったらしい。そして彼は、自分は殺していない、無実だと言うのだ。
助かる道は特赦審問会か上訴審。申請書をヘレンに提出して欲しいと訴えるのである。全ての書類を自力で揃え、あとは弁護士さえ探してくれれば、上訴審に持ち込めると言うマシュー。ヘレンには書類の提出と、弁護士探しを依頼した。
マシューはどうやら初回の面会で、説教をしないヘレンを気に入ったらしい。
書類に目を通したヘレン。事件は6年前。犯人は2人組で、そのうちの1人がマシューだった。2人の犯人は互いに罪を擦り付け合い、片方は有能な弁護士がついたおかげで無期懲役。証拠で不利を被ったマシューには死刑判決が下った。明らかに不平等な判決だった。
獄中のマシューから自宅に連絡がある。彼の死刑執行日が決定したと言うのだ。ヘレンは弁護士のヒルトン・バーバーをどうにか説得し、マシューと面会させた。
差し当たっての目標は、特赦審問会でマシューの印象を変えることだが、そのためには母親にも出廷してもらわなければならない。だが、マシューは母親を出廷させたくないらしい。
ヘレンはマシューの母親に会って、出廷してくれるよう頼む。凶悪犯の家族は、ただいるだけで世間的にも阻害されていた。

映画『デッドマン・ウォーキング』のあらすじ【承】
特赦審問会が開始。マシューの母親は出廷し、不幸な生い立ちを泣きながら訴える。そして、ヒルトン弁護士は、6年前の裁判は明らかに不利なもので、マシューの正当性がきちんと証明されなかったことを訴えた。
判定を待つ間、ヘレンは被害者遺族と顔を合わせるも、凶悪犯の味方をするなと批難される。
そして判決の結果、マシューの特赦請願は却下されてしまう。死刑は予定通り1週間後に執行されることになった。
ヒルトン弁護士はまだ諦めていないようだったが、マシューは去り際に精神アドバイザーとしてヘレンを指名する。
死刑囚の精神アドバイザーとは、毎日数時間を共に過ごし、その心を癒す役目である。死刑の当日はずっと付きっきりで、彼の死を最期まで見届けるのだ。望まない死を目前に、怯えない者などいないのである。
世間でマシューの死刑執行が騒がれる中、ヘレンは被害者の父親の元を訪れた。息子を失った父親は家族の思い出を語る。そして、共に過ごした自宅には、思い出があり過ぎて住み続けるのは辛すぎるのだと呟くのだった。
死刑囚の精神アドバイザーとして、女性が指名されるのは初めてのことだった。精神的な面で自らが起こした罪の償いをし、反省を促す仕事は重要な役割で、経験がなければ難しい役目だったが、ヘレンはこれも神が与えた試練と思い、マシューととことん付き合う決心をした。
死刑まで6日。ヘレンはマシューと人種差別について語り合った。その夜は死刑反対派のデモに参加し、神に祈りを捧げる。
ヒルトン弁護士は知事に嘆願書を申請している。了承される可能性は、ほぼ無いに等しいが、何もしないよりはましだった。
翌日は女性被害者の両親の元へ向かい、話を聞いたヘレン。聞けば聞くほど、被害者のカップルには輝かしい未来が待っており、事件が凄惨なものだったことを知る。そして、犯人を憎む気持ちと、未だに癒えない傷を見た。
テレビや新聞記事で、マシューが危険思想を語り出した。周囲は彼をモンスターと呼ぶ。そう呼ばれるままに彼自身が、人間ではなくモンスターになり切ろうとしているように思えた。
映画『デッドマン・ウォーキング』のあらすじ【転】
死刑まであと3日。マシューは刑務所から処刑所へと移送される。彼は最後の最後まで足掻くつもりらしく、自分を嘘発見器でテストしろと言う。そして、聖書を読みながら抜け穴を探すらしい。ヘレンは、イエスが1人で死を目前とする場面を読めと薦めた。
すると突然、ベルが鳴りマシューが別室へと連れて行かれる。1時間ほど待てと言われるヘレン。
マシューが戻る間、教誨師と話をしたヘレンだったが、立ち上がった途端に目の前が暗転し倒れてしまう。即座に医務室へ連れて行かれるが、所内は飲食禁止で空腹だったヘレン。血糖値が下がり、貧血で倒れただけだった。彼女はマシューが戻って来るから残ると言うも、強制的に帰されてしまう。
翌日、怒った様子のマシューと面会。彼はヘレンを心配しつつも、待っているはずの彼女がいないことに、大きな不安を覚えたらしい。連れて行かれた先で、身長や体重を測ったと言うマシュー。恐らくは、棺桶のサイズでも調べるつもりだと、たった1人残されて恐怖に苛まれたようだった。
ここにきて彼は、自分に残された時間がもうほとんどないことを自覚し、眠る時間も惜しいと言う。死刑当日に嘘発見器のテストが受けられると知ったマシューは、無実を証明してやると意気込む。
ヘレンは、死ぬ時に毅然として見せたいのならば、被害者の2人にどう関わったのかを告白するべきだとマシューに告げた。
その日の夜、ヘレンはヒルトン弁護士と共に、知事へと直談判に向かったが、やはり徒労に終わった。あとは、上訴審の結果を待つばかりである。
死刑当日。ヘレンは朝からマシューと面会。彼は昨夜、眠らずに死と正面から向き合ったらしい。ヘレンがその時になるまで、どう過ごしたいかを問うと、彼は自分を1人にしないで欲しい、ずっと傍にいてくれと言うのだった。
マシューが嘘発見器のテストを受けている間、上訴審に結論が出たかを聞いたが、嘆願書の精査に時間がかかっているようで、まだ結論は出ていないようだった。
その後、マシューは時間になるまで、家族と時間を共に過ごした。
映画『デッドマン・ウォーキング』の結末・ラスト(ネタバレ)
最後の別れに母親がハグしたがっていたが、警備上許されなかった。マシューは涙を堪え、母親に泣くなと言葉をかけた。いつだって、母親には気遣いを見せるマシュー。
最後の晩餐中、嘘発見器の結果を聞いたが、やはり処刑当日の緊張が影響を及ぼしていたため、結果は出せないと言われる。
ヘレンは最後まで、事件の日に何があったのかを聞くも、マシューは話したくないと言って口を噤むのだった。
死刑の数時間前。上訴審が却下されたことを知らされる。これでもう、死刑から逃れる術が無くなった。ヘレンは堪らなくなってトイレへ避難。必死に神へとマシューの赦しを祈った。彼に勇気を、我々に勇気をと。
死刑にあたっての準備が着々と進んでいた。マシューは泣きながら、家族に最後の電話をする。時間まであと30分だった。
ヘレンは彼から聖書を受け取る。マシューが死ぬ日付と時間が記してあった。
マシューは泣きながら、ヘレンに告げる。男は自分が殺したと。だが、女の方は殺していない。彼はとうとう、罪を告白した。マシューは昨夜、殺してしまった男女を思い、反省して祈りを捧げたと言う。そんな彼に、ヘレンは歌を唄って聞かせた。
そうしていよいよ、時間がやって来る。
マシューは自分を鼓舞する。真実は自由を与える。ヘレンは彼の肩に手を当てながら、処刑場へと向かった。そうすることで、彼に勇気を与えようとしたのだ。
時間は日付の変わる0時。マシューは最後の言葉として、犠牲者遺族へと心からの謝罪を口にする。四肢を拘束されても尚、震えが収まらない。マシューは最後にヘレンへ愛していると告げる。そうして、薬物を投与されたマシューは、静かに息を引き取った。
マシューの葬儀に参列したヘレンはその後、以前のように神へ祈る毎日へと、戻って行くのだった。
映画『デッドマン・ウォーキング』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
死刑廃止論者という立場のヘレンが、死刑囚であるマシューの死刑を何とか食い止めようと、様々な行動をとるが、結局それは叶わず死刑が執行されるまでを描いたストーリー。善悪という論点で言えば、確実にマシューが悪となるが、この作品での見所は、死刑当日までマシューがどのように考え、何を訴え、受け入れるまでの人間描写に尽きると思われる。死刑を食い止めようと被害者家族に会いに行くヘレンのシーンでは、被害者家族がマシューに対して望んでいる事と直面するなど、犯した罪に対する償いの大きさを感じ取れる。非常に感慨深い内容である。(男性 30代)
死刑廃止論者から描かれているので死刑は残酷という気持ちになると思います。
刑が執行されるまでの1週間、想像しようとしてもできない気持ちが描かれています。
死刑当日、家族との時間を過ごすシーンに胸が苦しくなりました。
執行シーンも描かれています。
人道的な執行方法なのかもしれないですが、人の命を奪うものに人道的もありません。
死刑制度について深く考えることができる映画のひとつですので、いろいろな角度から描かれた事実を自分の目で見て考えるきっかけになります。(女性 40代)
死刑制度の撤廃を訴える人たちの気持ちが初めて分かりました。私はこれまで死刑には賛成で、無意識に被害者の気持ちを優先して考えていたのだと思います。
しかし、加害者も人間であること、反省し更生していくチャンスを与えてあげるべきだということなど、これまで悪は罰するべきだとしか考えていなかった自分が恥ずかしくなりました。
罪を犯した人が刑の執行の日が来るまでにどんな心境で1日1日を過ごしていくのかが胸が痛いほど分かり、死刑についての考え方が今までとは大きく変わりました。(女性 30代)
死刑制度について考えさせられる重いテーマの作品でしたが、それ以上に心に残ったのはシスター・ヘレンとマシューの人間としての対話です。残虐な犯罪を犯した彼に対しても“赦し”を与えようとする彼女の姿勢に、正義や復讐とは何かを深く問いかけられました。ラストの「あなたの顔を見て死にたい」というマシューの言葉は、観ているこちらにも赦しの意味を問う強烈なメッセージでした。(30代 男性)
シスター・ヘレンとマシューの関係性が、宗教という枠を超えた“人間対人間”の本質を描いていて胸に響きました。死刑執行直前になってマシューがようやく自分の罪を認め涙を流すシーンには、思わず涙が出ました。被害者家族の気持ちも丁寧に描かれており、どちらの立場にも共感できる作りになっていて、まさに社会的にも感情的にも深い映画だと思います。(40代 女性)
衝撃的な内容ではありますが、決して一方的な視点で語られていないところが素晴らしい。シスター・ヘレンは加害者を救おうとしながらも、被害者家族の怒りや悲しみを真摯に受け止めている。その中でマシューが変化していく様子は、希望ではなく赦しの難しさを教えてくれました。死刑制度の是非以上に、「人が人を裁く」とは何かを突きつけてくる作品です。(20代 男性)
私は正直、死刑賛成派でした。でもこの映画を観て、安易に結論を出すべきではないと気付かされました。加害者がどれほど残酷なことをしていても、その裏にある人間としての心の葛藤や贖罪の感情を無視することはできない。サラ・サランドンとショーン・ペン、二人の演技は静かでありながら圧倒的な説得力がありました。多くの人に観てもらいたい映画です。(30代 女性)
マシューが最初は反省の色もなく傲慢な態度を取っていたのに、シスター・ヘレンとの関わりの中で少しずつ人間性を取り戻していく姿には心を打たれました。彼女はただキリスト教の教義を説くのではなく、ひとりの人間として彼に向き合っていた。死刑制度への賛否ではなく、「命と向き合う覚悟」とは何かを考えさせられる深い物語です。(40代 男性)
宗教や信仰心にあまり馴染みのない私でも、シスター・ヘレンの行動には心を動かされました。彼女がマシューの罪を赦そうとするのは、単なる宗教的義務ではなく“人を見捨てない”という人間的な意志に思えました。マシューが最後に自分の罪を認め、謝罪の言葉を口にする瞬間に、この映画のすべてが詰まっていると感じました。(20代 女性)
サラ・サランドンが演じるシスター・ヘレンの静かな強さが圧巻。信念を貫くその姿には敬意を覚えました。彼女が直面するのは、凶悪犯罪者だけでなく、彼を憎む世間や被害者家族の非難。にもかかわらず、彼女は誰の声も無視せず、すべての人間に誠実であろうとします。その姿が逆に“赦し”の難しさと尊さを物語っていました。(50代 女性)
映画『デッドマン・ウォーキング』を見た人におすすめの映画5選
ミスティック・リバー
この映画を一言で表すと?
過去の悲劇が、現在の悲劇を呼び起こす――心をえぐるミステリー・ドラマ。
どんな話?
幼少期の誘拐事件によって人生が大きく変わった3人の男たちが、大人になってから再び殺人事件によって交差する。誰もが加害者にも被害者にもなり得るという緊張感の中で、愛と赦し、そして怒りが交錯する物語。
ここがおすすめ!
『デッドマン・ウォーキング』と同様に、加害者と被害者の境界が曖昧になるテーマ性が秀逸。人間の弱さと業を深く掘り下げ、観る者に「正義とは何か」を問いかけてきます。ショーン・ペンの鬼気迫る演技も圧巻です。
ショーシャンクの空に
この映画を一言で表すと?
絶望の中で見つけた“希望”――刑務所という檻の中で描かれる心の自由。
どんな話?
無実の罪で収監された男アンディが、長い年月をかけて希望を捨てずに生き抜いていく。囚人たちの友情や自由への希求を通じて、人間の尊厳とは何かを静かに、しかし力強く描く名作。
ここがおすすめ!
刑務所を舞台にしながらも、“救い”と“赦し”が物語の核にあります。『デッドマン・ウォーキング』と通じる、人間の再生を描いた物語であり、観終わった後に希望の光を感じられる感動作です。
アメリカン・ヒストリーX
この映画を一言で表すと?
憎しみは連鎖する――その鎖を断ち切る勇気を描いた衝撃作。
どんな話?
白人至上主義の暴力に染まっていた兄デレクが刑務所で改心し、同じ道を歩み始めた弟を止めようとする。過去の罪と向き合いながら、差別と暴力の連鎖から抜け出そうとする兄弟の姿を描いた社会派ドラマ。
ここがおすすめ!
罪を犯した者が、償いをし、変わろうとする姿勢は『デッドマン・ウォーキング』にも通じます。暴力の恐ろしさだけでなく、“贖罪”の意味を深く考えさせる作品で、胸に深く突き刺さるメッセージ性があります。
イン・ザ・ベッドルーム
この映画を一言で表すと?
喪失の痛みと、押し殺された怒りが静かに崩壊を招く――哀しみのサスペンス。
どんな話?
息子を殺された中年夫婦が、悲しみと怒りの中で葛藤しながら、ある“決断”を下すまでの静かな復讐劇。感情を抑えた演出がかえって緊張感を生み、観る者を引き込んでいく。
ここがおすすめ!
被害者遺族の視点から描かれる「赦せない」という感情がリアルで、『デッドマン・ウォーキング』と対になるような作品。死刑制度は扱っていないものの、「人は人を裁いてよいのか」という問いが根底に流れています。
リチャード・ジュエル
この映画を一言で表すと?
真実が見えなくなる時、人は簡単に“加害者”にされる――実話ベースの社会派ドラマ。
どんな話?
爆破事件の第一発見者で一躍英雄となったリチャード・ジュエルが、一転して犯人として扱われてしまう。メディアと権力に翻弄される中、彼と母親、弁護士の闘いを描く実話に基づいた物語。
ここがおすすめ!
“犯人”というレッテルの裏側にある人間性を見つめるという点で、『デッドマン・ウォーキング』に通じるものがあります。法とメディアの恐ろしさ、そして信じる力の強さを実感できる作品です。
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