この記事では、映画『ドライブ・マイ・カー』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『ドライブ・マイ・カー』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『ドライブ・マイ・カー』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2021年 |
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上映時間 | 178分 |
ジャンル | ヒューマンドラマ |
監督 | 濱口竜介 |
キャスト | 西島秀俊 三浦透子 霧島れいか 岡田将生 |
製作国 | 日本 |
映画『ドライブ・マイ・カー』の登場人物(キャスト)
- 家福悠介(西島秀俊)
- 舞台俳優であり、演出家をしている。音の夫。芝居のセリフは車の運転中にCDで流し、確認をする習慣がある。
- 家福音(霧島れいか)
- 悠介の妻。芝居の脚本のような物語を作って悠介に聞かせるのが好き。脚本家をしている。
- 高槻耕史(岡田将生)
- 音が自身の芝居に起用した若い男性役者。音に惹かれている。
- 渡利みさき(三浦透子)
- 脚本家を務める悠介に対し演劇祭が手配した運転手。あまり自分のことを話さず、感情を表に出さない。
映画『ドライブ・マイ・カー』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『ドライブ・マイ・カー』のあらすじ【起】
悠介と音が、創作した芝居の脚本を読むように対話している。
その芝居は、親や教師からの信頼が厚いまじめな少女が空き巣に入り、異様な行動をエスカレートさせていくという内容だった 。
脚本を書き、自身も舞台に立ち演技もすることがある悠介。自身が女優をしている姿は映らないものの、芝居を書きキャスティングしている様子の音。
悠介の芝居は、登場人物それぞれが異なる言語を話し、役者の背後にほかの言語の字幕が表示される形式で、現存する著名な演劇演目を演じていくというスタイルをとっている。
ある日、悠介の本番を観た音が、終演後の楽屋を訪れる。音はそこで、自分の次の舞台で主役に選んだ若い役者・高槻を悠介に紹介した。
後日悠介は、夫婦の家で高槻と音の浮気現場を目にしてしまう。帰宅したことがばれないように静かに玄関のドアを閉めて、静かに仕事へ戻る悠介は感情を露わにしないままその後を過ごす。
別の朝、出勤前の悠介に「帰ったら話がしたい」と音が伝えた日に、自宅でくも膜下出血を起こした音はそのまま亡くなってしまう。悠介は、音が何を伝えようとしていたのかを知ることができずじまいとなった。
映画『ドライブ・マイ・カー』のあらすじ【承】
音の死後も、演劇の仕事を続ける悠介。亡き妻の話を人にすることはなく、写真や思い出に浸る様子も見せない。
大きな演劇祭で脚本を担当する悠介は、演劇祭が手配した専属運転手となる渡利に出会う。左の頬に大きな傷がある女だった。
渡利は悠介の赤い愛車を運転するようになる。
表情があまり変わらず、自分のことをあまり話さない渡利だが、次第に悠介の良き理解者のような存在となっていく。悠介と渡利は互いに、妻や母を無くしたもの同士だった。
渡利は、頬の傷は母が亡くなったときにできたものだと言う。手術で目立たなくすることも可能だが、消したくないのだと悠介に伝えた。
音を亡くした日を思い出し、きちんと話し合わなかった過去に囚われ後悔しながらも、悠介は演劇祭で披露するチェーホフの『ワーニャ伯父さん』の準備を進めていく。
その演劇祭のキャストオーディションに、妻のいっときの浮気相手であった高槻が現れる。悠介は高槻にワーニャ役を与え、稽古を共にし、時にふたりで飲みにいく仲になる。
映画『ドライブ・マイ・カー』のあらすじ【転】
悠介は音との過去を高槻に語る。
夫婦は娘を肺炎で亡くしており、その出来事は夫婦関係に大きな亀裂を与えた。女優をしていた音は、娘を亡くしたことをきっかけに女優を辞めたのだった。
その後、音は悠介との性交後に物語を作り、語り始めるようになる。
音のキャリアのピンチの時に、物語は突然降ってきた。それらをメモして脚本コンクールに送ったことから、音の脚本家人生が始まったのだ。
そこで悠介は、まじめな少女が空き巣に入り異様な行動をしていくという音の作った物語を聞かされていたのは自分だけではなかったと知らされる。
話が途中で浮ついていた物語の続きを、音は高槻にだけ話していたのだ。悠介は高槻にその話の続きを聞かされる。
その後、劇場に入っての芝居の稽古中に、高槻は傷害致死の容疑で警察に連行される。
高槻の不在によって悠介は「演劇祭を中止にするか、悠介自身が代役を務めるか」の選択を迫られることとなった。
映画『ドライブ・マイ・カー』の結末・ラスト(ネタバレ)
悠介は渡利とドライブに出る。辿り着いた先は渡利が母と暮らしていた場所だった。
大雪の中で、渡利と母との思い出話を聞いていた悠介。ふいに音についての会話を振られ、悠介は亡き妻のことを思いながら「僕は音に会いたい」と涙する。
悠介と渡利はそれぞれに亡くした大切な人を思いながら涙し、慰め合うように肩を抱き合った。
演劇祭の『ワーニャ伯父さん』の本番の上演時間がおとずれ、観客の入った劇場の舞台の上には悠介の姿があった。
ワーニャ役は悠介自身が務め上げた。そして『ワーニャ伯父さん』は、観客の拍手とともに舞台の幕を下ろす。
後日、渡利は韓国のスーパーで買い物をしていた。レジを通り、赤い車に乗り込んで、車で待っていた犬を撫でるその表情は、笑顔だった。
映画『ドライブ・マイ・カー』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
村上春樹原作ということで構えて観たが、思っていた以上に心に深く染み渡る作品だった。妻との関係、喪失、そして他人との距離感が静かに描かれていて、観終わった後もしばらく余韻が残った。とくにドライバーの美咲との対話が物語を優しく包み込んでいて、まるでセラピーを受けているような感覚だった。(30代 女性)
濱口竜介監督の映画は初めて観たけど、これは傑作だと思う。演劇の稽古の場面を通して人の心の奥を少しずつ覗いていく構成がとても巧妙。特に、高槻との対話から妻の秘密に少しずつ迫っていく過程がサスペンスのようでもあり、胸が締めつけられた。静かだけど、ものすごく濃密な時間だった。(20代 男性)
3時間という長さに最初は構えたけど、まったく退屈しなかった。むしろ一つひとつの台詞が心に沁みて、どれも削れない重要なピースだった。喪失を経験した者同士が、少しずつ言葉にならない気持ちを共有していく過程がとても美しい。美咲とのあの雪のシーンは、まさに魂の交差だったと思う。(40代 女性)
人はどうやって誰かを赦せるのか、そして自分を赦せるのか。『ドライブ・マイ・カー』はその問いかけを、静かに、でも深く突きつけてくる作品だった。舞台稽古の静けさと車中の沈黙の重さが心に残る。高槻という若者を通して、亡き妻の「別の顔」に気づいていく主人公の心の揺れがリアルだった。(50代 男性)
若い自分には難しいかと思ったけど、むしろ「言葉にならない感情」って何だろう?と考えるきっかけになった。美咲が最後に語る、自分の中に残る母の記憶のシーンがとても強烈で、無音の中に言葉がどれだけ重いかを感じさせられた。観終わった後、誰かとゆっくり話したくなる映画だった。(10代 女性)
演劇という“言葉の表現”を通じて、登場人物たちの“言葉にできないもの”が浮き彫りになっていく展開がとても好きだった。広島の風景や、赤い車の美しさも印象的。特に、美咲が雪の中で涙を流すシーンは、それまで抑えてきたすべての感情が解放されるようで、本当に胸を打たれた。(30代 男性)
妻の死、そして彼女の秘密を知った夫が、すぐに怒るでも責めるでもなく、そのことと向き合おうとする姿勢に深く共感した。人間の器や愛の形について静かに問われている気がした。見た目や台詞以上に“空気”が語る映画。年齢を重ねた今だからこそ、より深く受け止められた気がする。(60代 女性)
高槻というキャラクターがとても印象に残った。暴力的で衝動的な彼が、主人公に見せる繊細さと脆さのバランスが絶妙。特に、亡き妻との関係について語る場面では、誰もが抱える「他人の知らない顔」について深く考えさせられた。全体としては静かな映画だけど、ものすごく刺激的だった。(40代 男性)
赤い車の中で繰り返される対話と沈黙が、まるで禅問答のように感じた。何気ない会話の中に、喪失や赦し、生き直しのヒントがちりばめられていて、自分自身の内面とも向き合う時間になった。終盤での美咲の言葉が、主人公を、そして観ている私自身をも優しく肯定してくれた気がする。(20代 女性)
海外で評価されるのも納得。言葉の選び方、空間の使い方、間の取り方、どれも本当に丁寧。特に、ろう者の俳優が登場する演出には驚かされたけど、「言葉がなくても伝わる」ことをまさに体感できた。どの登場人物も欠点を抱えていて、それでもなお美しい。そんな人間の真実を映した傑作。(50代 男性)
映画『ドライブ・マイ・カー』を見た人におすすめの映画5選
東京物語
この映画を一言で表すと?
家族のすれ違いを静かに見つめながら、人間の本質を問う日本映画の金字塔。
どんな話?
老夫婦が久しぶりに子どもたちに会うために東京を訪れるが、冷たくあしらわれ、寂しさを抱えて帰郷する。そんな中で彼らに温かく接するのは、亡くなった息子の妻だった。世代間の溝と人の優しさが交錯する名作。
ここがおすすめ!
小津安二郎監督の美学が詰まった一作で、視線の演出や間の使い方が『ドライブ・マイ・カー』と非常に親和性が高い。言葉にせずとも伝わる感情の描写に深く共感できるはず。静かな余韻を味わいたい人におすすめ。
愛の不時着(TVドラマ)
この映画を一言で表すと?
国境を越えて出会った男女の絆が、静かな奇跡を生むラブストーリー。
どんな話?
韓国の財閥令嬢と、北朝鮮の将校という立場を超えて愛し合う二人。偶然のパラグライダー事故から始まる関係が、国家という枠を越えた深い信頼と理解へと育まれていく。ユーモアと感動が絶妙に融合した物語。
ここがおすすめ!
感情の揺れを丁寧に描く脚本と、互いの心に触れていく過程が『ドライブ・マイ・カー』好きに刺さるはず。シリアスなテーマを内包しながらも、あたたかさを感じられるヒューマンドラマとして非常に秀逸。
遠い空の向こうに
この映画を一言で表すと?
夢と葛藤の中で人と人が支え合う、実話に基づく青春ヒューマンドラマ。
どんな話?
炭鉱町で育った少年が、ロケットに夢を抱き、仲間と共に挑戦を始める。家族や社会の偏見に抗いながら、自らの可能性を信じて前進する姿を描いた実話ベースの感動作。夢、挫折、そして再生の物語。
ここがおすすめ!
喪失や沈黙ではなく、「想いを言葉にする」力を描いた作品。心の奥にある情熱や葛藤を誠実に描いており、内省的な『ドライブ・マイ・カー』とは対照的ながら、同じく“人と人の理解”をテーマにしている。
わたしは、ダニエル・ブレイク
この映画を一言で表すと?
社会制度の冷たさと人間の温もりの対比が胸を打つ、現代の社会派ドラマ。
どんな話?
心臓病で働けなくなったダニエルは、福祉制度の理不尽な手続きに翻弄される。生活に苦しむシングルマザーとの出会いを通じて、彼の優しさと闘いが浮き彫りになっていく。静かな怒りと切なさが交錯する物語。
ここがおすすめ!
『ドライブ・マイ・カー』と同様に、言葉少なに人物の内面を深く描いている。社会の無情さの中に光る人間の尊厳とつながりを見せてくれる感動作で、観る人の人生観を揺さぶる力がある作品です。
アバウト・レイ 16歳の決断
この映画を一言で表すと?
性の多様性と家族の絆を描いた、静かで温かい成長物語。
どんな話?
トランスジェンダーの少年レイがホルモン治療を受けるため、母と祖母に理解を求めながら、自分らしく生きるために一歩踏み出していく。それぞれが抱える葛藤と、家族としての絆が浮き彫りになる。
ここがおすすめ!
『ドライブ・マイ・カー』のように、他者との関係性を通じて自分自身と向き合っていくプロセスが丁寧に描かれている。穏やかながらも力強いメッセージがあり、多様な価値観を受け入れるヒントが得られる作品です。
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