この記事では、映画『エコール』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『エコール』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『エコール』の作品情報
出典:Amazonプライムビデオ
製作年 | 2004年 |
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上映時間 | 121分 |
ジャンル | ドラマ ミステリー |
監督 | ルシール・アザリロヴィック |
キャスト | ゾエ・オークレール ベランジェール・オーブルージュ リア・ブライダロリ マリオン・コティヤール |
製作国 | ベルギー フランス |
映画『エコール』の登場人物(キャスト)
- イリス(ゾエ・オークレール)
- 6歳でアジア系の少女。幼い弟がいる。同寮の年長者ビアンカを頼りにしており、リボン色は赤。
- ビアンカ(ベランジェール・オーブルージュ)
- 12歳の少女。黒髪で落ち着いており、面倒見の良いお姉さん。イリスと同寮でリボン色は紫。
- アリス(リア・ブライダロリ)
- イリスと同寮で10歳の少女。リボン色は青。外への興味が人一倍あり、審査で校長に選ばれなかったため、壁外へ脱走し行方不明となる。
- エヴァ(マリオン・コティヤール)
- バレエの教師。黒髪でしなやかな美しい女性。外の世界で経験することは、大事なことだと主張している。心優しい。
- エディス(エレーヌ・ド・フジュロル)
- 学校教師。足が少々不自由であるため、杖をついている。黒髪の女性。外の世界は悪だと主張している。気丈な面も持つ。
映画『エコール』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『エコール』のあらすじ【起】
森の奥深くに建てられた2階建ての邸。建物は古めかしいが、整然としており手入れが行き届いている。邸の玄関は開け放ってあり、エントランスには小さな棺が置かれていた。外からやって来た少女6人が棺を囲み、一番年長と思われる少女が棺の蓋を開けた。
中には幼い少女が下着一枚で横たわっている。開眼した少女はイリスと名乗る。年長の少女はビアンカと言い、周囲の少女達が次々と名乗りを上げた。
少女達は甲斐甲斐しくもイリスの世話をする。邸には6歳から12歳までの少女が7人。
プリーツの巻きスカートに半袖のシャツはどちらも真っ白。髪は結い、年齢により決められた色のリボンを身に着けるきまりだった。
その後は近くの川へ。泳ぎの練習をする時間だと教えられ、少女達は衣類を脱いで下着となり、川で泳ぎの練習をした。川には他にも沢山の少女達がおり、各々に水遊びを楽しんでいる。
夕方になると邸へ戻る。ビアンカの話だと邸は寮で、少し離れた場所に全部で5つの寮があると言う。各寮には同じく6歳から12歳までの、いずれも少女達ばかりが住んでいるのだった。邸では使用人が食事を用意している。時間となったら必ずテーブルにつき、全員で食事をするのだ。
夜の9時になると、ジャケットを身に着けたビアンカが、街路樹を歩きどこかへ出かけて行った。出かけるのは年長者1人だけらしい。そして、夜の10時になると消灯、就寝する。
翌朝、ビアンカに起こされたイリス。今日は一緒にいてと希望を口にすると、ビアンカはイリスを連れて森の道を進み学校へ。そこには、同じ色のリボンを身に着けた少女達が、全部で5人集まった。
開始の鐘が鳴る。少女達を出迎えたのは杖をついて歩く教師のエディス。その日は、森の動物について勉強した。
映画『エコール』のあらすじ【承】
この学校には誰も訪ねて来ない。唯一来るとすれば毎年、青リボンの子達を審査するために校長がやって来るだけらしい。イリスには幼い弟がいた。彼女は弟と会えることを心待ちにしているが、ビアンカは外に出るのは禁止だと言う。
その日はバレエのレッスン。イリスはレッスン着に着替え、バレエの教師であるエヴァに基礎を教わった。
ビアンカが夜の9時に、どこへ行って何をしているかを知りたいイリス。彼女に聞くと、ビアンカはイリスを森に隠し、自分の後を追うように仕向ける。
いつものように道を歩いて行くビアンカを追いかけて、イリスはとある建物に入った。彼女はそこで学校の全体図を見る。その部屋の通気口から不気味な音がしたため、イリスは走って建物を出た。すると同寮の少女達が迎えにやって来る。森から出ると罰を受け、死ぬまでここで働かなければならないらしい。
翌日、1つ年上でオレンジリボンの子が、森を囲む高い塀までイリスを連れて行った。そして、塀の外には変な人達がいるから出てはいけないと言う。だが、オレンジリボンの子はイリスをよく思っておらず、彼女に嫌がらせをする。イリスは森の中で転んで怪我をしてしまった。
バレエのレッスン終了後、1人残されたイリスは、エヴァから服従こそが幸福への道だと教えられる。
その帰り、同い年のローラがここから出ると言い、船に乗り込むのを手伝ったイリス。少女は舟のオールを一生懸命漕いで出て行こうとするが、なぜか舟は浸水するのだった。
翌日は朝から晩まで土砂降りの雨だった。不安に駆られたイリスは、ビアンカへと密かに脱走の件を話した。
すると、更に翌日。ローラの亡骸が見つかる。ローラは寮生全員が見守る中、棺に納められ火葬された。
映画『エコール』のあらすじ【転】
大晦日、教師のエディスとエヴァを含め、寮生全員で食事会。だが、エヴァだけが浮かない様子で急に席を立ち、泣き出してしまう。必死に慰めるエディス。
新年が明け、教師達は平静を装い少女達に挨拶をする。新年の抱負として、アリスは校長に選ばれることを願う。校長からたった1人選ばれる青リボンの子は、一番早く外へ出られるらしい。アリスは自信満々だった。
エヴァの特別レッスンに来たアリスだったが、事務所の前でエディスに会う。そして彼女から、あなたは選ばれないとはっきり言われてしまう。
外の世界に失望しているエディスは、アリスの好奇心を快く思っていない。だが、反対にエヴァは外に出て学ぶ機会を持つべきだと主張。2人はどうやら、外の世界に失望する何かを体験し、この閉鎖的な学校へとやって来たのだろう。
いよいよ審査の日、アリスは1人遅れて入室しながら、2番目に割り込む。バレエの後は簡単な身体審査。アリスともう1人の子で悩んだ校長だったが、残念ながらアリスは選ばれなかった。
納得のいかないアリスは、帰ろうとした校長に連れて行ってと叫ぶが、エヴァに止められ気絶した。
アリスはショックのため、塞ぎ込んでしまう。ようやく動けるまでに回復した彼女は、1人で森の壁に走って行く。そして、壁に這って伸びる蔦を登り、外への脱走を図った。彼女の行方は分からず、それっきりだった。
季節は瞬く間に冬から春へと移り変わり、それでいて淡々と過ぎる。ビアンカ達年長者は、いよいよ卒業へ向けての準備を始めた。次の子へ引き継ぎをするため、夜になったら11歳の子と共に出かけて行く。
学校では教師2人と使用人が待っており、大きな古時計の裏から秘密の部屋へ。そこは楽屋であった。
映画『エコール』の結末・ラスト(ネタバレ)
年長者達は慣れた様子である。羽の付いた妖精のような衣装を身に着けた4人と、それを誘う1人という設定。
今夜はどうやらお披露目の日らしく、妖精4人の内2人は11歳の少女であった。幕内の小さな舞台でリハーサル。幕の外には観客がいると言うエヴァ。
ビアンカ達は夜な夜な、この舞台で踊っては観客に舞を披露していたのだった。
明かりが消え音楽が流れる。そして、幕が開いた。少女達は小さな舞台で舞い踊る。失敗して転んでも、強制的に舞台へ戻され踊らされた。
翌日、バレエのレッスン後にエヴァから呼び出されたビアンカ。別室で生理用品を渡される。12歳ともなれば月経が始まる年齢でもあり、授業でもそれは習っていた。ビアンカは突然、今夜の舞台で卒業だと言われた。
前日とは違う舞を披露する少女達。とある観客がビアンカへとバラを投げ入れ、賛辞の言葉を叫んだ。特殊な環境で純粋培養にて育てられた少女達は、ここがどういう場所であるかを知らない。
舞台終了後、こっそりと幕外へ出たビアンカと友人。客席にはもう誰もいない。最後の客が出て行ったドアから更に外へ。そこは地下通路となっていた。しかし、使用人が前に立ちはだかる。彼女は今夜の舞台の売り上げを見せ、この金で学校が成り立っていることを教える。
少女達が夜な夜な踊って稼いだ金で、生活が成り立っていたのだ。ビアンカは今夜で卒業であるが、外になど出たくはなかった。
別室で休み翌朝、ビアンカは思い悩む。そこへイリスがやって来て、離れたくないと叫んだ。ビアンカはブランコから飛び降りて自傷しようとするも叶わず。イリスと2人、最後の時間を惜しむ。そして午後。同寮の少女達と別れを惜しんだビアンカは去って行く。奇しくも雨が降っていた。
卒業はビアンカだけではなく、12歳の年長者全員だった。エヴァとエディスに促され、紫のリボンを外した後、壁時計の裏から舞台へ。そこから客席を通り出口へ向かう。
地下通路を進むと一両編成の列車が停車していた。それへ乗り込んだ少女達。
列車は外の世界へと進む。長いトンネルを抜けて。どれくらい乗っていたのか、停車した列車から降りた後は階段を上る。そこで待っていた引き継ぎの女性が、少女達を外へと促す。エヴァとエディスはその場で去って行く少女達を見送っていた。
見たこともない巨大な建築物の前を通り、近代的な公園へ。目新しいものばかりである。少女達は噴水で戯れる。知らないものばかりが溢れる外の世界。
ビアンカはそこで出会った見知らぬ少年と笑い合うのであった。
映画『エコール』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
この作品は一種の寓話であり、少女たちが外の世界を知らないまま成長していく姿に、不思議な美しさと恐怖を感じました。特に、棺に入れられて入学する冒頭シーンは強烈な印象を残します。教育という名のもとに管理される少女たちの姿は、現実の教育制度や社会規範を風刺しているようにも思えました。最後にビアンカが施設を出るシーンは希望なのか、それとも更なる未知への不安なのか。観る人によって解釈が変わる余白のある作品です。(40代 女性)
この映画を観終わったあと、しばらく言葉が出ませんでした。映像がとにかく美しく、まるで夢の中をさまよっているよう。少女たちの世界には大人がいないわけではないけれど、彼女たちを導く教師すら何かを押し付けているように見え、不気味さを感じました。特に棺から出てきたビアンカが、何も知らないまま新たな“教育”に組み込まれていく姿には強烈なメッセージを感じます。閉鎖的で奇妙だけれど、どこか現実と地続きのような、そんな怖さがありました。(20代 男性)
少女たちが水の中から現れるシーンが印象的で、生命の誕生や再生を象徴しているように思いました。ストーリーというよりも、“雰囲気”で魅せる映画で、芸術的なアプローチが強いです。ダンスや日常の訓練が象徴的に描かれていて、女性としての成長や通過儀礼の暗喩なのだと感じました。明確な答えを提示しない構成が、観る人に深い思索を促す作品でした。音楽や色彩も秀逸で、映画というよりアート作品を観たような感覚です。(30代 女性)
正直、ストーリーを追うというよりも、映画全体の“空気”を感じる作品でした。セリフも少なく、象徴的なシーンが多いので、解釈に困る部分も多かったですが、その分、自分なりに考える余地がある。特に印象に残ったのは、少女たちが大人の階段を上る過程における“選ばれること”と“捨てられること”の残酷さです。最後に脱走を選ぶ者と残る者の選択もまた、人間の自由意志について考えさせられました。(50代 男性)
観る前に「美しいけど難解な映画」と聞いていましたが、確かにその通りでした。少女たちだけの世界で進行する物語は、外界と断絶されており、まるで実験室の中のよう。教育施設のようでありながら、どこかカルト的な雰囲気も漂います。ビアンカが出ていく結末も、決してハッピーエンドとは言えず、何とも言えない余韻が残ります。静かで退廃的、それでいて心をざわつかせる映画でした。(30代 男性)
私は母親の視点でこの映画を観てしまい、少女たちの無垢さと危うさに胸が締めつけられました。どこにも逃げ場のない閉ざされた世界の中で、“成長”という名のもとに行われる行為が、果たして教育なのか洗脳なのか。娘を持つ身として、非常に考えさせられる内容でした。映像美に目を奪われつつも、終始不安と恐怖がつきまとい、観終わったあともしばらく心に引っかかる作品です。(40代 女性)
最初はただのアート系映画かと思っていたのですが、観るほどに社会風刺としての深みを感じました。棺=死と誕生、ダンス=自己表現と規律、少女たちの未来=大人社会への不安。全てが象徴に満ちていて、単なる物語以上の意味を持っていると感じました。ストーリー性を求める人には合わないかもしれませんが、“映画で考えたい人”には刺さる作品です。(20代 女性)
『エコール』はまるで一篇の詩のような作品でした。少女たちの世界は極端に純化されていて、逆にそこに狂気が滲んでいる。監督が意図的に用意した不親切さが、観る者を物語に没入させる装置になっていたように思います。決して楽しい映画ではありませんが、強烈に印象に残ります。映画が問いかけてくる「成長とは?自由とは?」というテーマがずっと頭を離れません。(50代 女性)
映像が美しくて、言葉が少ないのにすごく訴えてくるものがありました。少女たちの生活がすごく整っているのに、不自然で不気味だった。棺に入って入学するとか、水から現れるシーンとか、普通じゃない演出ばかりなのに、それがすごく記憶に残ってる。なんか、大人になるってこういうこと?って、変な気持ちになった。エンディングもすごく静かで怖かった。(10代 女性)
この映画、最初は意味がよく分からなかったけど、何日か経ってからじわじわと来ました。男の自分には分かりにくい部分もあったけど、「選ばれる女」と「選ばれない女」がテーマなのかなって思った。美しい映像の中にある冷たい感情が、すごく印象に残る。見せ方が独特で、慣れないと退屈に感じるかもしれないけど、何かを感じ取れたときにこの映画のすごさがわかる。(30代 男性)
映画『エコール』を見た人におすすめの映画5選
籠の中の乙女(原題:Dogtooth)
この映画を一言で表すと?
常識が通用しない家庭で育つ子どもたちの姿を描いた、衝撃的で哲学的な寓話。
どんな話?
外の世界を知らずに育てられた3人の兄妹が、親によって“作られた現実”の中で生きる姿を描いたギリシャ映画。家の外は危険だと教え込まれた彼らが、次第に“本物”の世界へ目覚めていく過程が不穏に描かれます。
ここがおすすめ!
『エコール』と同様に、閉ざされた空間と教育の名を借りた支配がテーマ。観る者の倫理観を激しく揺さぶるストーリーテリングと、日常の狂気を描く静謐な演出が際立ちます。ラストの余韻も非常に強烈です。
少女邂逅
この映画を一言で表すと?
少女同士の淡くて痛い関係を繊細に描いた、静かな衝撃作。
どんな話?
いじめを受けて孤立した女子高生と、言葉を失った少女の出会いから始まる物語。互いに心を通わせながらも、思春期特有の不安定さと依存がにじむ、切なくも危うい関係性が描かれます。
ここがおすすめ!
繊細な映像美と、思春期の少女特有の空気感を巧みに表現。言葉にできない想いが空気に溶けるように描かれ、『エコール』の“少女の内面世界”に惹かれた人にはぴったりの一作です。
ヴァレリアン 千の惑星の救世主
この映画を一言で表すと?
ビジュアルの圧倒的世界観で魅せる、極上のSFファンタジー。
どんな話?
28世紀の宇宙を舞台に、若きスペースエージェントのヴァレリアンとローレリーヌが、惑星アルファで起きる陰謀に立ち向かう冒険を描いた壮大なスペースオペラ。リュック・ベッソン監督の真骨頂が光ります。
ここがおすすめ!
『エコール』で印象的だった視覚的な美しさに惹かれた人におすすめ。緻密に構築された未来都市や異星人のデザインが圧巻で、映像だけでも一見の価値あり。幻想的な美の追求が好きな人には刺さります。
聖なる鹿殺し(原題:The Killing of a Sacred Deer)
この映画を一言で表すと?
日常の中に静かに入り込む狂気を描いた、神話的サイコスリラー。
どんな話?
裕福な外科医の家庭に現れた一人の少年。彼の存在が次第に家族の運命を狂わせていく。なぜ彼はこの家に関わるのか?やがて明らかになる“償い”の物語。ヨルゴス・ランティモス監督による不穏な美学。
ここがおすすめ!
静謐な映像、抑制された演技、そして理不尽さを感じさせる展開。『エコール』の不気味な静けさと似た空気感が漂います。倫理的なジレンマを描く点でも非常に近く、観終えた後に深く考えさせられる一作です。
ピクニック at ハンギング・ロック
この映画を一言で表すと?
謎が謎のまま残る、美しくも不穏な青春ミステリー。
どんな話?
1900年、オーストラリアの寄宿学校の生徒たちがハンギング・ロックで行方不明になる事件が発生。彼女たちはなぜ消えたのか?真相は不明のまま、少女たちの神秘と不安を淡々と描きます。
ここがおすすめ!
物語の中核が“説明されない”ことが魅力。『エコール』同様、少女たちの神秘性と閉鎖空間の不穏さが印象的。霧に包まれたような演出と音楽、余韻のある構成が心に残ります。
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