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映画『イヴの時間 劇場版』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『イヴの時間 劇場版』の概要:近未来、人型アンドロイドが家電として実用化された世界。主人公は自宅のアンドロイドのログから“イヴの時間”という喫茶店を見つける。そこは、人間とアンドロイドを区別しない特別な店だった。人とアンドロイドの親交を描いた長編アニメーション。

映画『イヴの時間 劇場版』の作品情報

イヴの時間 劇場版

製作年:2009年
上映時間:106分
ジャンル:ファンタジー、アニメ、SF
監督:吉浦康裕
キャスト:福山潤、野島健児、田中理恵、佐藤利奈 etc

映画『イヴの時間 劇場版』の登場人物(キャスト)

向坂リクオ(福山潤)
通称リクオ。ド近眼でメガネをかけている。両親と姉の4人家族。ピアニストだったが、とある理由から今はピアノを弾いていない。アンドロイドは家電で物だと思っていた。
真崎マサカズ(大人:野島健児 / 少年時代:三瓶由布子)
通称マサキ。父親はロボット排斥を推進する倫理委員会のCEO。ロボット法、専門弁護士を目指している為、法律に詳しい。リクオの友人。
サミィ(田中理恵)
人型家事用アンドロイド。向坂家の家事を担っている。女性型。控えめな性格でリクオの事を心から心配している。
ナギ(伊藤利奈)
喫茶店“イヴの時間”の店長。すぐにいじけるのが難点。

映画『イヴの時間 劇場版』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『イヴの時間 劇場版』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『イヴの時間 劇場版』のあらすじ【起】

これは、ロボットの実用化がされてしばらく。人型ロボット、所謂アンドロイドが実用化されて間もない頃の話だ。
向坂リクオの家には家事用のアンドロイド、サミィがいる。アンドロイドの頭上には、リングというホログラムが投影されており、これによって人間との区別をつけなければならないほど、アンドロイドは精巧に造られていた。

ある日、リクオはサミィのログに不審な点を発見。友人のマサキと、サミィが寄り道した場所へ行ってみた。ドアの右側の壁には“イヴの時間”と店名が掲げてあった。
中へ入り、まず目についたのは大きな看板。ルールが提示されている。
当店内では、人間とロボットの区別をしません。

店員に促され、席に座る2人。ここは喫茶店のようだ。マサキによると、提示されているルールは曖昧で、グレーゾーンらしい。しかも、店内で一服しているアンドロイドには、リングが無かった。リングは法的に、消してはいけない事になっている。明らかに法律違反だが、少し様子を見る事にした。イヴレンドというコーヒーを注文。これがまた、美味かった。

店で出会った少女から、アンドロイドが何を考えているか知りたいから、ここに通っていると聞いたリクオ。彼は学校で雨の日、迎えに来た無表情なアンドロイド達を眺める。アンドロイドは家電で物だ。物という認識故に、感情があるとは思ってもいない。けれど、物を大事にするという気持ちなら分かる。そんな話をしていると、少女型のアンドロイドが通り過ぎる。リクオとマサキは驚愕。少女型アンドロイドは、店で会ったあの少女だった。

サミィの迎えで自宅へ帰ったリクオ。彼女はコーヒーを淹れてくれたが、一口飲んで勢いよく立ち上がる。イヴの時間で飲んだコーヒーと同じ味だった。思わずサミィを怒鳴りつけてしまうが、リクオはそこではっとする。
店で会った少女の言い分。アンドロイドにも心があって、家族の事をもっと知りたいと思っている。その思考はまるで、人間のようではないか。

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映画『イヴの時間 劇場版』のあらすじ【承】

ロボット三原則には、嘘を吐くなという項目はない。マサキとリクオは再び、イヴの時間へ向かった。サミィが来るまで待つつもりだった。店内には今日も様々な客がおり、様々な感情をあらわにする。誰が人間で、誰がアンドロイドかは判別不能。店のドアは、客を追う事が出来ないよう誰かが帰った後、しばらく開かなくなるらしい。厳重である。

客の子供にメガネを隠されたリクオは、ようやく在り処を見つけて返してもらう。メガネをかけたリクオは、目前の客を見て驚く。サミィだった。控えめな彼女は、焦って逃げる。リクオは追いかけようとしたが、開かないドアの前で、ナギに怒られてしまった。

ナギからサミィが悩んでいる事を聞かされたリクオ。自宅へ帰ってサミィにコーヒーを頼む。そして一言、最近のコーヒーはおいしいと感想を呟き反応を見たが、サミィには別段、変わった様子は見られなかった。

休日の昼間、マサキとリクオはまた、イヴの時間に来ていた。いつもいるカップルと話をする事になった2人。しかし、男性が持つ画像を見た事で、カップルは仲違いしてしまう。女性と男性はアンドロイド同士。2人は互いにアンドロイドである事を知らず、人間のように恋をしていた。面白い事もあるものだ。それは、イヴの時間という場所であるが故、なのだろう。

映画『イヴの時間 劇場版』のあらすじ【転】

イヴの時間へと、また来たマサキとリクオ。今日は閑散としており、やけに静かだった。ナギが席を外している間、珍客が訪れる。旧式のハウスロイドは、故障ばかりで常にガタガタと揺れていた。とにかくもう、旧式ハウスロイドには危険が一杯だ。彼の話を聞き様々な情報から、不法投棄された事が分かった。持ち主は新型を入手し、彼を捨てたのだ。だが、旧式の彼は持ち主を一心に思い続け、とうとう動きを止めた。
人とアンドロイドについて、マサキとナギが口論になる。

その日、サミィはメンテナンスで早朝に出掛けていた。リクオはアンドロイドと人間の関係に思い悩む。彼は下校後、1人でイヴの時間へ寄った。店内では、いつもの客がいつものように過ごしている。店で他の客に失態を犯してしまったリクオは、1人になって考える。

リクオは少し前まで、ピアニストを目指していた。マサキはロボット法の専門弁護士。リクオはジュニアピアノコンクールで、ロボットピアニストの演奏に負けた事がきっかけとなり、ピアノをやめてしまったのだった。

ピアノの音に目を覚ましたリクオ。いつの間にか寝ていたようだ。ピアノを不器用に弾いていたのはサミィだった。彼女は、リクオが弾くピアノを見様見真似で弾いたと言う。サミィの前では、ピアノを弾かないようにしていたと話すリクオ。自分より上手に弾けるようになったら、立つ瀬もない。吹っ切れたリクオは、心のままにピアノを弾いた。だが、サミィは演奏終了直後、店内から姿を消していた。

映画『イヴの時間 劇場版』の結末・ラスト(ネタバレ)

マサキの家には、旧型の家事用ロボットがいた。テックスという名前だったが、感情の芽生えたロボットに危惧を覚えた父親は、テックスに話すなと命令。以降、マサキはテックスと話した事がない。マサキの父親は、ロボット排斥を推進する倫理委員会のCEOだった。マサキはイヴの時間で、親交を持つアンドロイドと人間の関係に疑問を持ち、店に行く事をやめてしまった。

イヴの時間という店は、来てくれるお客さんの心で、成り立つ店だと語るナギ。それでもし、マサキが倫理委員会の誰かを連れて来て、営業が出来なくなったら、それも仕方のない事だと言う。
サミィはその日の夜、家でリクオに初めて話しかけた。マサキにまた、店に来て欲しいかと。するとリクオは、また来て欲しいと笑った。

学校でリクオから声をかけられたマサキは、怒って去ってしまう。裏切られて苦しい思いをするくらいなら、イヴの時間という店は無い方がいいのだ。
マサキが帰宅すると、父親からテックスがいなくなったと聞かされる。処分も視野に入れると話す父親。そこへ、リクオから電話が来る。助けて欲しいと言うので、マサキはイヴの時間へ向かった。

店に到着すると、やはりテックスがいた。今すぐ店を閉鎖しろと警報を鳴らしている。マサキはテックスとの関係を暴露。不満を怒鳴り散らす。しかしその時、店に新たな客が来る。その客を見たテックスは、急に慌ただしく動き出し言葉を放った。父親の命令を破ってでも、マサキを守る為だった。
新客はアンドロイドで、店に入る前からリングを消していた。完全に法律違反だと指摘するテックス。マサキは踵を返そうとした新客を捕まえた。テックスへ思いの丈を聞く。危険がある内は話せるはず。今しかないと思った。

テックスはずっと、マサキの傍にいたかった。だから、話せなくても理不尽な扱いをされても、ずっと傍にいたのだった。危険が去ると同時に、話さなくなったテックス。
マサキは泣きながら、テックスを抱えて家へ帰った。

アンドロイドは1人1人、個々に感情を持っていて、それぞれに思う事がある。人工知能が発達した結果だ。人と同じように、自由な思考をする事。それを、望む人もいるだろう。
イヴの時間という店は、アンドロイドと人が親交を持てる空間。アンドロイドが笑って過ごせる、大切な場所なのだった。

映画『イヴの時間 劇場版』の感想・評価・レビュー

「人間とロボットを区別しない」というイヴの時間のルールのもと、人間とアンドロイドが寄り添って生きていく様子がとても良い。
遠くない未来、家庭用アンドロイドが存在し、こんなカフェがあるんじゃないかと思ってしまう。
サミィに「コーヒー、美味しくなった」と伝えるリクオが良かった。

人間そっくりなアンドロイドの10年前の姿がいかにもロボットという姿で、今現在、世の中にあるペッパー君やアレクサが10年でどのように進化していくのかと楽しみにしてしまう。(女性 40代)


アンドロイドに感情があるのかどうか議論する映画は様々あるが、その中でも色々と考えさせられる物語だと思う。主人公のリクオはただ単にアンドロイドのことを邪険にしているわけではなく、自分が得意としていたピアノでロボットに負けたことが問題の根底にあったので感情移入がしやすかった。もしこんな未来が訪れたらアンドロイドのことを大切にできればいいが、リクオのように簡単にはいかないかもしれないなと思った。(女性 30代)


2008年にインターネット上にて、全6話構成で公開されたアニメを再編集し、新作シーンを加え劇場版として公開した作品。アンドロイドが家電扱いされるようになった近未来が舞台だが、現代でもほど近い未来だろう。人工知能が発達したことで自我を持つようになったアンドロイドが、精巧過ぎて人と区別がつかないというのが問題の1つでもあると思う。今作は非常に考えさせられる内容となっており、正にアンドロイドと人の距離を描いている。人に興味を示し寄り添おうとするアンドロイドが多く描かれ、情に訴えかけてくるところが憎い。ただの家電として見るか、同じ視点で同等に見るか。3DCGを含めたCG制作を全面に押し出した素晴らしい作品。(女性 40代)


近い将来、ロボットとの共存は当たり前になっていると誰もが予測する。
しかし、もしも現実世界で本作のようにアンドロイドが心を持っていたら、自分ならリクオと同じく疑問を抱くだろう。
もちろん、「人間とアンドロイドを区別しない」という喫茶店のコンセプトは、差別がなくて両方の共存に前向きで素晴らしいのだが。
本作は、人間がどこまで自由に発明を続けるべきなのか、生み出した者への責任や、世に放たれたものたちがもたらす影響など、そういったことを問題提起しているように感じられた。(女性 20代)


考えさせられる作品だった。現実でも人間の形により近いアンドロイドが発明されている中で、考えられなくはない世界だと思った。会話のテンポ感がよく、ストーリーの進みが早い印象だった。家電として存在しているアンドロイドが、カフェの中では人間と変わらない姿を見せる。
人間が人間たりうる要素はなんだろうか。劇中に出てくるアンドロイドは見た目も、言葉も変わらず、感情もある。確かにあったはずの境目が、次第にわからなくなっていく。

結局、イヴの時間が今後どうなるのかは分からないままだった。
アンドロイドと人間の間にある愛情や、絆を確かに感じるおもしろい作品だった。続編があるのなら観たいと思う。(女性 20代)


アンドロイドと人間が共存する世界を描く作品は沢山ありますが、ほとんどの作品で描かれるのは個性を持たずに造られたアンドロイドが、少しずつ知識や知能を身につけ、愛や憎しみといった感情を持ってしまうという設定。人間に対してアンドロイドのほうが優位に立つ設定が多いですよね。
しかしこの作品では、アンドロイドはもともと個性を持って造られたが、人間の世界に順応するために「個性を消している」設定になっています。これが本当に素晴らしい。こういうストーリーだから成り立つ温かさや、アンドロイドだからこその温もりを感じることが出来ました。(女性 30代)


日常にアンドロイドが溶け込んでいる世界。いつかこんな時代が訪れるであろうと思わせる、近未来的な内容でした。登場人物の表情や会話の間が独特な作品です。機械的でありながら温もりも同時に感じることのできる、唯一無二の雰囲気でした。また、カフェ「イヴの時間」という空間が理想的過ぎて、うっとりしました。世界は人間だけによって成り立っているわけではありません。機械などの物に対しても、思いやりの心を持って扱っていきたいと感じます。(女性 30代)

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