映画『エクスペリメント(2010)』の概要:平和集会に参加したトラヴィスはそこで、一人の女性に恋をする。その女性に旅行へ行こうと誘われたトラヴィスだが、彼は州の方針で、勤めていた介護職の仕事を奪われたばかりだった。金の工面に困っていたトラヴィスは、ある日、被験者募集の新聞広告を見つける。
映画『エクスペリメント』の作品情報
上映時間:97分
ジャンル:サスペンス
監督:ポール・T・シュアリング
キャスト:エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー、カム・ジガンデイ、クリフトン・コリンズ・Jr etc
映画『エクスペリメント』の登場人物(キャスト)
- トラヴィス(エイドリアン・ブロディ)
- 介護職に勤めていた男性。思いやりのある性格で、虐げられている弱者を見過ごせない。
- バリス(フォレスト・ウィテカー)
- 失職中の男性。トラヴィスと共に被験者として心理学の実験に参加する。温厚な性格だったが、実験で看守役に任命されてから変貌していく。
映画『エクスペリメント』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『エクスペリメント』のあらすじ【起】
介護士のトラヴィスは、雇い主から一時解雇を言い渡された。トラヴィスに落ち度はないと雇い主は言う。雇用削減は州の方針だった。雇い主は、州が考えを改めれば再雇用の可能性もあると、トラヴィスを励まし、新しくできる暇を使って彼が長年夢見ていた旅に出たらどうだと促した。
トラヴィスは友人に誘われて平和集会に参加していた。戦争反対を訴える行列の中で、トラヴィスが参加者の女性に見惚れていると、友人が戦地にいるという男が割り込んできた。男の暴走に巻き込まれそうになった女性を助けるトラヴィス。彼女の名前はベイといった。そのことがきっかけで、二人は仲を深める。ベイは知見を広めるために、インドに行くつもりだとトラヴィスに語った。そして、彼女はトラヴィスをその旅に誘う。しかし、仕事を解雇されたばかりのトラヴィスには、旅費を出す余裕なんてなかった。
金は無い。それでも、ベイとの旅は諦め切れない。トラヴィスは新聞の広告欄に行動実験の被験者募集の記事を見つけた。被験者として採用されれば、一日で千ドルが支給される。トラヴィスは採用面接を受けることにした。
映画『エクスペリメント』のあらすじ【承】
試験会場で、トラヴィスはバリスという男と知り合った。スーツを着込んで挑むバリスをトラヴィスは賢そうだと称し、バリスはヒッピーのような格好をしたトラヴィスを宇宙人と称した。
研究者が会場に現れ、志望者に実験の概要を説明した。州刑務所内の生活環境の再現。唯一の採用条件は、服役経験がないことだった。実験は安全だが、人権を侵害する可能性があると研究員は説明を加えた。
研究員との面談のあと、トラヴィスは個室に収容され、戦争や犯罪、事故といった、過激な映像を見せられた。眼を背けず、映像を観終えると、トラヴィスは部屋を出るよう促された。
会場から帰宅したトラヴィスはベイと愛し合った。ベイは平和集会のときのトラヴィスの態度を賞賛した。彼は集会を邪魔した男に暴力を加えることなく、平和的に問題を解決したのだ。トラヴィスはインドに行ける目途が立ったとベイに言う。
試験の結果、トラヴィスもバリスも被験者として採用されることが決まった。他の被験者と共に指定の集合場所で待機していると、バスがやってきた。被験者たちが乗り込むと、バスは動き出し、町を出て刑務所へと向かった。
映画『エクスペリメント』のあらすじ【転】
実験の一日目。再度、人権侵害が起こる可能性を警告された被験者たち。彼らは研究者によって二つのグループに分けられた。トラヴィスは囚人グループで、バリスは看守のグループだった。囚人グループは生活を規制され、看守グループは秩序の維持を命じられる。どちらかが自分たちの役割を破ったり、一人でも離脱者が出れば、全員の謝礼は無くなると研究者は言った。
運動の時間中、囚人の投げたボールが看守に当たり、看守が怪我を負ってしまう。不慮の事故だった。しかし、秩序を守らなければならない看守チームは謝礼が無くなることを恐れて囚人たちに罰を加える。軽い罪には軽い罰を。看守は囚人たちに腕立て伏せを命じた。看守役だったバリスだが、その光景に違和感を覚えた。
二日目、看守たちは。食事の内容に不満を漏らして暴れ出した囚人たちの処遇に悩んでいた。囚人は体罰がないと思っているから付けあがっている。体罰を実行しようとする仲間を見て、バリスは非暴力でも相手に屈辱を与えることができると説く。バリス主導で行われた制裁。囚人の立場を解らせるため、演説したバリスは高揚感に浸った。
映画『エクスペリメント』の結末・ラスト(ネタバレ)
それから、バリスの行動はエスカレートを続ける。低血糖で倒れている囚人を無理矢理娯楽に参加させようとしたり、それを制止したトラヴィスを殴りつけようとした。更にバリスは、自分に口答えしたトラヴィスを檻から連れ出し、彼の髪を剃ると、尿を浴びせた。
バリスの横暴を見た看守の一人が、もしも、今後も同じようなことをやるようなら、自分は実験を止めると宣言した。しかし、バリスは弱虫だと笑うだけで、真に受けなかった。
自分の行いが間違えていれば、監視している研究者が止めるはずだと言い張り、バリスは暴力性を増していく。次第に被害妄想に囚われ始め、トラヴィスが囚人を率いて暴動を起こそうとしていると思い込み、執拗に彼を貶める。更に、自分の言うことを聞かない看守暴行を加えた。
囚人を集め、独善的な演説を始めたバリス。ヴィンセントは囚人服を脱ぎ捨て、研究員に扉を開けろと訴える。しかし、研究員は何の反応もしない。それをいいことに、看守たちは暴走を始めた。研究員から言い渡された暴力禁止のルールを破り、囚人を力で支配し始めた。
バリスによって隔離されていたヴィンセントは牢からの脱走に成功した。看守に襲われていた囚人を一人ずつ助けていくヴィンセント。その途中、低血糖の男が殴り殺されているのを見つけ、涙を流す。ヴィンセントの周りに囚人仲間が集まり、反撃を決意した。
窮地に立たされた看守は撤退を始めた。しかし、封鎖された刑務所に逃げ場はない。これまでの恨みを晴らすように、囚人たちは看守を追い詰め、袋叩きにした。すると、実験中止のサイレンが鳴ると共に、刑務所が解放された。建物の外で項垂れる被験者たちの前にバスがやってきた。車内で、ヴィンセントと同じ檻にいた囚人役の男が問う。「これでも、おれたちはサルよりも進化してるのか?」ヴィンセントは力無く頷いた。
事件を企画した代表者は殺人罪で起訴された。ヴィンセントは実験で得た謝礼で恋人と共にインドを訪れ、自分が生きていることを実感した。
映画『エクスペリメント』の感想・評価・レビュー
スタンフォード大学で実際に行われた監獄実験をもとにした作品。
心理実験をもとに作られた作品は数多いが、本作はハリウッド版である。
エイドリアン・ブロディを始めとする存在感のある俳優陣たちの怪演は非常に見応えがあった。
監獄内での被験者たちの様子は分かるが、監視側の職務怠慢の部分の描写がない為、内容が端的に見えてしまったのではないか。
しかしバリスのように、置かれた状況や与えられた役割によって人格が豹変する様子は非常に狂気的で、人間ほど恐ろしいものはないと感じた。
もし自分が同じ状況に置かれた時、「それは間違っている」と言える人間でいたいと思った。(女性 20代)
映画の元となった「スタンフォード監獄実験」を簡単にしか知らないのだが、なぜ最悪な状況まで研究者が放っておいたのか疑問が残る。被験者達の安全よりも、研究を優先させてしまったのだろうか。
元々は温厚だったがバリスが、この実験によって暴力性に目覚めてしまったのが可哀そうでしかたがない。この実験を経験しなければ、ずっと心優しい人のままでいられたのではないだろうか。いくら実験と言えども、被験者の人生を歪めてしまうものは受け入れられそうにない。(女性 30代)
状況によって人の行動や人格が変わるのではないかという仮説のもとに行われた「スタンフォード監獄実験」を元に作られた作品。
実験自体は予想外の進行状況で早々と打ち切りになったが、衝撃的な結末を迎え、多くの人の心に残ったであろう。
状況や役割で普通の人が悪魔に変わってしまう様は実験と呼ぶにはあまりにも生々しく残酷であった。本作では俳優たちの演技によって、その様子が詳細に、そしてドラマチックに描かれている。(女性 20代)
この作品の元となったのは「スタンフォード監獄実験」という、実際に行われた実験です。被験者に「囚人役」と「看守役」どちらかの役割を与え、演じさせる。最初は演じることに疑問を持っていた被験者たちも、次第に「看守役」は「看守」らしく囚人たちを正し、背くものには罰を与える。一方「囚人役」は実験前は同じ「人間」だったはずなのに、正され罰を受けるうちに「囚人」らしくなってしまう。
ある意味「洗脳」のようなこの実験。とても恐怖を感じると共に「興味深い」とも感じました。実験の主催者たちは、何を目的に「どこまで」知りたかったのだろうかと疑問が残りました。(女性 30代)
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