映画『屋根の上のバイオリン弾き』の概要:「屋根の上のバイオリン弾き」(原題: Fiddler on the Roof)は1971年のアメリカ映画。監督は「夜の大捜査線」でオスカーに輝いた ノーマン・ジュイソン。主演はミュージカルの本作が当たり役となり、そのまま映画にも出演したトポル。本作はそのヒットミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」を映画化したものである。本作は1971年のアカデミー賞で、撮影賞、音楽賞、音響賞の三部門を受賞し、ゴールデングローブ賞では作品賞、主演男優賞に輝いた。
映画『屋根の上のバイオリン弾き』 作品情報
- 製作年:1971年
- 上映時間:179分
- ジャンル:ミュージカル、ヒューマンドラマ
- 監督:ノーマン・ジュイソン
- キャスト:トポル、ノーマ・クレーン、レナード・フレイ、モリー・ピコン etc…
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映画『屋根の上のバイオリン弾き』 評価
- 点数:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『屋根の上のバイオリン弾き』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『屋根の上のバイオリン弾き』のあらすじを紹介します。
アナテフカの牛乳屋テヴィエ(トポル)は貧しいながらも信仰深く、少々口うるさい妻のゴールデ(ノーマ・クレイン)、愛らしい5人の娘、ツァイテル、ホーデル、ハーバ、シュプリンシェ、ビルケの家族と暖かい家庭を築いていた。アナテフカはウクライナの貧しい村で、様々な小売店が雑然と並び、屋根の上にはバイオリ弾きが、危なげなバランスを保ちながら楽しい曲を弾いている。そのバイオリン弾きが象徴するように、村もテヴィエも激しい現実から伝統を守って必死に生きていた。安息日の準備に忙しいある日、イェンテ婆さんが肉屋のラザールと長女ツァイテルの結婚話を持ってきた。ゴールデは喜んだが、ツァイテルには仕立屋のモーテルという恋人がおり、彼女はイェンテ婆さんの話をうやむやにした。テヴィエは仕事の帰り道、もし相手が金持だったらとも考えた。その途中で、彼はキエフから来た革命を夢見る貧しい学生のパーチックと意気投合する。そしてテヴィエは彼を家に招き、家族に紹介し安息日の祈りを捧げる。
次の日、テヴィエは仕方なく肉屋のラザールと長女ツァイテルとの結婚を許した。村人たちは祝福し、ユダヤ人もロシア人も一緒に乾杯した。しかし翌日、思いあまったツァイテルは、父にモーテルとの恋を打ち明け、結局テヴィエはモーテルとの結婚を許してしまう。反対していた妻のゴールデも、ようやくモーテルとの結婚を認めた。やがて結婚式が行われ、出席者は明日に希望を託す歌を合唱していたが、突然乱入してきた警官隊が台無しにしてしまう。
三女のハーバはロシアの若者フヨードカと恋に落ち、パーチックは次女ホーデルに結婚を申し込んだ。怒るゴールデにテヴィエは次女の気持を説明し窘めた。
そして間もなく学生革命家パーチックは逮捕され、ホールデはパーチックを追いシベリアに旅発つ。三女のハーバもフヨードカの元へ去った。
ウクライナの情勢は悪化するばかりで、ついにユダヤ人の強制退去命令が下り、村人たちは次々と村を離れてゆく。家財道具を積み込み、静かに村を離れようとするテヴィエの背後に、バイオリン弾きが奏でるもの悲しい曲が流れていた。
映画『屋根の上のバイオリン弾き』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『屋根の上のバイオリン弾き』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
日本でも愛されているロングランミュージカルの原作
先祖代々ロシア領内で暮らし、ユダヤの伝統を守りながら牛乳屋を続けてきた主人公のテヴィエが、娘は親の意向に反した結婚相手を見つけて家を離れ、テヴィエ自身や村の住民たちもロシアによる迫害により、生まれた土地を離れなければならなくなる、民族と家族の離散をテーマにしたミュージカルである。ユダヤの話にはこういった悲劇的なストーリーが多いが、過去に起こった大きな宗教戦争の類とは違い、小さな村でもそのようなユダヤ人排斥の現実があるという舞台設定がリアルである。日本でも森繁久彌、上條恒彦、西田敏行、市村正親と受け継がれ、長きにわたり舞台で上演したことでも知られる有名な作品。
劇中歌の「愛する我が家を離れて」や「アナテフカ」などメロディの美しい曲が、映画のロケシーンには一際映え、舞台とはひと味違う牧歌的なシーンが印象深い。特に娘を送り出す寂しさと、これから幸せに暮らして欲しいと願う親の気持ちを歌った「サンライズ・サンセット」は心に残る名曲である 。ブロードウェイミュージカルとしては、1972年から7年と9か月の間で3242回のロングラン公演が行われている。
ユダヤ人の不屈の魂の象徴。
多数派民族と少数民族との対立は現在の中東情勢を見ても分かるように、日本人としても理解しなくてはならない社会問題になっている。過去の遺物みたいな対立が、何故、今現在に至るまで深く根付いているのかという問題はアラブ諸国ばかりではなく、アジアの近隣国にも存在しているのだ。宗教的な部分での反戦映画は多く撮られてきたが、この物語は民族問題に直面した個人的な話として反映されており、実直に生きる人々が背負う業が深く描かれ、人々の心に感銘をもたらすことが多いという点で評価が高いのだろう。大きな枠組みで語るより、リアルで身近な話として置き換える方が理解しやすく、多くの世代にも訴えることが可能なのである。そして生活の中で生き続ける、故郷や家族、親子や男女の愛などの普遍的な価値の重要性が、切々と伝わってくるドラマが内包されている。
「屋根の上のバイオリン弾き」という題名の意味は、ローマ皇帝の暴君ネロによるユダヤ人の大虐殺の際に、逃げ惑う群衆の中、ひとり屋根の上でバイオリンを弾く男がいたという故事を描いたシャガールの絵にヒントを得たものであり、ユダヤ人の不屈の魂の象徴とされているという。
映画『屋根の上のバイオリン弾き』 まとめ
監督のノーマン・ジェイソンがこのミュージカル作品を映画化した意義は大きかったと感じる。ミュージカルというものは特定の劇場でしか上演されず、当時は舞台がテレビで上映されることもなかっただろう。絢爛豪華な作品ばかりでなく、こういった普遍的テーマを持つ作品を、映画というメディアを通し世間に広く知らしめるというのも映画監督の使命ではないだろうか。一昔前は娯楽の王様と言えばテレビと映画が大きな位置を占める中、ステージでしか観られないミュージカルを映画で上映するというのは、世界に発信するという意味で現在のインターネットに似ている部分は多かっただろう。
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