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映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の概要:『ダージリン急行』や『ファンタスティックMr.FOX』など数多くの作品を送り出しているウェス・アンダーソン監督による期待作。その不思議な世界観と華やかなセットで、数多くの賞を受賞している。

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映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の作品情報

グランド・ブダペスト・ホテル

製作年:2013年
上映時間:100分
ジャンル:ファンタジー、コメディ
監督:ウェス・アンダーソン
キャスト:レイフ・ファインズ、F・マーレイ・エイブラハム、エドワード・ノートン、マチュー・アマルリック etc

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の登場人物(キャスト)

ムッシュ・グスタヴ・H(レイフ・ファインズ)
名門グランド・ブダペスト・ホテルでその手腕を発揮するコンシェルジュ。ホテルの利用客の中に多くの愛人を抱えている。
ゼロ・ムスタファ(少年時代:トニー・レヴォロリ / 老年期:F.マーリー・エイブラハム)
移民の少年。グランド・ブダペスト・ホテルでベルボーイを務める事となるが、ふとした事からグスタヴと行動を共にするようになる。
マダムD.(ティルダ・スウィントン)
ホテルの利用客で、グスタヴの愛人の1人。グスタヴを深く愛しており、彼に名画「少年と林檎」を遺す。

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のあらすじ【起】

「グランド・ブダペスト・ホテル」。それは今は亡き、とある作家が遺した一冊の本でした。まるでお伽話のようなそんな本は、その実、実際の作者の体験をありのままに記した実話でした。そして1人の少女がその本を開き、再び物語は始まりへ、過去へと引き戻っていきます。

舞台は1968年、後に「グランド・ブダペスト・ホテル」を書き上げることとなる作家は、休暇を利用してとあるホテルに宿泊しに来ていました。そのホテルの名前はグランド・ブダペスト・ホテル。かつてその名を全世界に轟かせた名門中の名門でした。しかし時の流れとともにその栄光を失いつつあるそのホテルは、宿泊客数も落ち込み、寂れつつありました。

そんなホテルの中で、作家は1人の人物と出会います。その人物とはこのホテルのオーナー、ゼロ・ムスタファ氏本人です。2人はふとしたきっかけから食事を共にすることとなり、ゼロ氏は何故移民の身であった自分がこのホテルを相続する事となったのか、かつてこのホテルに何が起こったのか、長い物語を語りきかせ始めるのでした。

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映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のあらすじ【承】

若かりし頃のゼロ・ムスタファ氏は、グランド・ブダペスト・ホテルのベルボーイとして勤務する事となりました。ゼロが雇われた当時のこのホテルのコンシェルジュはムッシュ・グスタヴ氏という人物で、その類稀なる手腕で名門ホテルのコンシェルジュを見事に勤め上げていました。しかし、実はグスタヴ氏には多くの愛人がおり、その愛人たちは利用者としてよくホテルを訪れていました

マダムDもその1人です。しかし、高齢ではありましたがまだまだ健在であったマダムDの訃報が突如グスタヴの耳に飛び込んで来ました。グスタヴはゼロを連れ、急いでマダムDの住んでいた城へと向かいます。グスタヴとゼロがようやく城に着いた頃、場内では丁度遺産相続が行われているところでした。そして何と、マダムDは有名な絵画「少年と林檎」をグスタヴに贈る事を遺していたのでした。それはとても高価な絵画でしたので、マダムD達の親縁が納得するはずもありません。このままだと何かしらの妨害工作が行われると考えたグスタヴは、その絵画を一足早く盗み出してしまいます。

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』のあらすじ【転】

盗んだ絵画をホテルの金庫に隠したところで、警察がホテルへとやってきます。そして何と、グスタヴをマダムD殺害の容疑で逮捕するというのです。グスタヴは、マダムDの血縁者達、通称C.V.D.u.T.に嵌められたことを悟ります。何とか警察の手から逃げようとするグスタヴでしたが、最終的にお縄となり、刑務所に入れられてしまいます。

そんなグスタヴ氏の協力者は、一緒に絵画を盗み出したゼロとそのガールフレンド、アガサでした。アガサはとても可愛らしいケーキを作り上げる職人で、そのケーキの中に工具を少しずつ入れて刑務所へと送ります。そのあまりの可愛らしさから、警察も中を改めるのをやめその形姿のままグスタヴ達に渡していたのでした。そして工具が揃った頃、グスタヴと他の囚人たちは脱獄の計画を立て始めます。

そして何とか脱出に成功したグスタヴはゼロと交流します。名門ホテルのコンシェルジュ達には「鍵の秘密結社」という秘匿のコミュニティがありました。グスタヴはその力を使い、マダムDの家に勤めていた執事、セルジュXの元へと向かいます。

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の結末・ラスト(ネタバレ)

しかし、グスタヴの協力者となり得るセルジュXは、既にC.V.D.u.T.の手にかかり命を落としていました。真相を突き止めようとするグスタヴとゼロ、そしてグスタヴを殺し「少年と林檎」を手に入れようと企むC.V.D.U.T.は、苛烈な追いつ追われつを繰り広げます。更にそこに脱獄したグスタヴを再度逮捕しようとする警察も加わり、彼らはグランド・ブダペスト・ホテルにて一同に会しました。

しかしそんな混乱の最中、アガサとゼロは絵画の中にもう一枚の遺書が忍ばせてある事に気が付きました。そしてその遺書には、自分の全財産をグスタヴに贈る、というマダムDの最期の遺志がしたためられていたのです。そしてグスタヴは大金持ちとなり、アガサとゼロは結婚式を挙げました。

しかしそんな幸せも長くは続きません。その当時、時代は狂乱の最中にありました。世間の移民に対する風当たりはますます強くなり、それはゼロに対しても同様でした。憲兵に拷問されそうになったゼロをグスタヴが庇い、何と命を落としてしまったのです。そして最愛のアガサも、流行り病にかかり若くしてこの世を去りました。予め全財産をゼロに贈ると遺していたグスタヴの遺言に従い、ゼロはその全てを引き継ぐ事となりました。そして現在のグランド・ブダペスト・ホテルに至るのです。話を聞き終えた作家は、早速この信じ難いが、間違いなく実話であるこの話を書き起こすべく、執筆にとりかかるのでした。

映画『グランド・ブダペスト・ホテル』の感想・評価・レビュー

ウェス・アンダーソン監督の映画は、好き嫌いが分かれやすい。筆者はどちらかというと苦手なのだが、本作は彼の作品が苦手という人でも、比較的受け入れやすくなっているのではないだろうか。豪華俳優陣が演じる多彩なキャラクター、色彩豊かな映画芸術、練られたストーリー、計算されつくされた撮影技法。次々と見る者に驚きを与えてくれる本作は何かしら気に入る部分が見つかると思う。そういった点で、彼の最高傑作だと筆者は思っている。(男性 20代)


コミカルな動き、不思議な色合い、突然のグロテスク、非常に魅力的で引き込まれました。冷静沈着なグスタヴの皮肉たっぷりなセリフや、間抜けなゼロの緊張感の無いセリフなど、話の緊迫感を削ぐような力の抜け方が最高です。息ぴったりな師弟コンビの、脱獄後の口論や、逃亡中の黙祷など、随所に笑えるシーンがあります。

登場人物も魅力的です。各地のホテルマン助っ人の登場にはワクワクします。ゼロの恋人のアガサも可愛く度胸があり素敵です。大好きな作品です。(男性 20代)


ノスタルジックで作り込まれた世界観がなんとも魅力的な作品。全体の色使いがキレイでクラシカルかつポップ、音楽や演技も時にコミカルで、独特の雰囲気がある。ティム・バートンやジュネ&キャロの作品が好きな人には特にオススメしたい。

ストーリーが入れ子状態になっていて、冒頭に少女が持っていた本を開き、その本の作者がある男から聞いた話を綴り、話した老人が過去を回想するという内容。理解が難しいことはないが、ひねりの効いた脚本にうなる。俳優陣も豪華だったが、中でもマチュー・アマルリックが普段とは違うコミカルな演技を披露していたのが嬉しかった。(女性 40代)


ウェス・アンダーソン監督の独特のリズム感を持った作品が大好きです。
この作品もサスペンス的なお話だし、人も死んでしまうけど、どこか上機嫌でハッピーな作品に感じてしまうのはリズム感、ポップなカラー、オシャレな世界観ゆえなのでしょう。

主役のレイフ・ファインズもさることながら、脇役がとても豪華、個人的に好きな俳優さんがたくさん出演していて嬉しい。
クリエイターの野村訓市氏が出演されているのでどこに出ているか探すっていうのも面白いかも。(女性 40代)


可愛らしいパステルな色味の画面に反して内容は結構暗め。ウェス・アンダーソン監督の映画は個人的に少し癖が強いと感じるものが多いのですが、この作品は比較的見やすいのではないでしょうか。ハッピーエンドでなく、少し寂しさの残る終わり方も好きです。

建造物や衣装、メンドルのお菓子、小物そしてカメラワークに至るまで監督のセンスやオタク的とも言えるこだわりの強さが感じられます。ただストーリーを追っていくのではなく、色彩豊かな画面や1シーンの情報量の多さなど、楽しめる要素満載です。ジュード・ロウの登場も嬉しかったです!(女性 20代)


パステルピンクの上品な砂糖菓子のような映画、しかし甘いだけではない。シンプルだが深い想いがそこにありつつ、それを見事にシュガーコーティングして口当たり良く受け入れられるよう仕上げた一品。
シーンによって画角が変わる映像は、どこを切り取ってもポストカードのように均整が取れている。細部にまで監督の神経が行き届いていて陶酔感すら覚える。
おとぎ話のようでありながらどこか生身。何故か感じる郷愁が愛おしい作品。(男性 40代)


ウェス・アンダーソンが持つ色合いとシンメトリーの絵が好き。世界観が独特すぎて、間合いも絶妙で、彼しか持っていない感性で映画を作ったのだ、と感動できる。ここで特筆すべきは、豪華な俳優たち。脇を添える方々が必ず見たことがある素敵で重厚感のある名優たちばかり。そして、素敵な美術セットと遊び心ある撮影の方法。CGではなくて、模型を多用した撮影(ホテルの外観も模型)。だからなのか、アニメ的な動きも感じる映画でした。(女性 30代)


ウェス・アンダーソンといえば鮮やかな映像演出、ユーモラスな群像劇に創造性溢れる世界観が魅力な作品が多いと思うが、本作はその全てがバランスよく分配された作品で、彼の世界観に入るには入門としてベスト。

左右対称的な画面構成に加えて個性的なキャラクターたちが繰り出すミステリーはオシャレコメディ映画としての頂点をも極めそうだ。ヨーロッパ映画のテンポの掴みにくい展開には慣れないが、アートの世界を堪能したい人にとって最高の一作である。(女性 20代)


まるでお菓子をひっくり返したような甘く柔らかい映像に反して、ビターでシリアスなストーリーのコントラストのセンスが良かったです。ただ物語の展開が独特で、情報量が多いので、何度も観ないと理解できません。正直、理解できたと思っていても、監督の思いがしっかりと受け止められなのかは定かでないほどこだわりのある作品でした。驚くことにムッシュ・グスタヴ役は、ハリー・ポッターのヴォルデモートを演じていた俳優だったということです。(女性 20代)


とにかく世界観がお洒落でハイセンス。思わず画面を止めて一つ一つのシーンをじっくりと鑑賞したくなるようなそれは、もはや映画という枠を超えた、一つのアート作品だと思う。
本編は終始コメディちっくに進むようでいて、時折ハッとするような冷たさも孕んでおり、鑑賞後は不思議な感覚にさせられた。
ジュード・ロウ目当てで観た割には、彼の出演シーンが短くて残念だったが、それでも一見の価値ありな作品だった。(女性 30代)

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みんなの感想・レビュー

  1. ヤマグチ より:

    少女が本を開き、その本の語り手がまた別の人物の物語を語る、というマトリョシカを彷彿させる冒頭でこの作品は始まる。鮮やかでセンスのある色使いと、可愛らしい映像が、本当に絵本の中の世界みたいだ。
    サスペンス要素が強いストーリーだが、殺人鬼に追いかけられるシーンをポップに描くなど、独特で不思議な雰囲気がとても魅力的である。
    話の内容は分かりやすくて面白く、キャストは豪華で見応えがあるため、ウェス・アンダーソン監督の作品に苦手意識がある人にもお勧めしたい。

  2. きーもも より:

    ピンク色のホテルに可愛らしくお洒落なインテリア。「ジャケ買い」という言葉がありますが、今作はまさにジャケ買いしたくなるような可愛らしい雰囲気とウェス・アンダーソン監督の独特の世界観が相まった素晴らしい作品でした。
    ファンタジーな展開を期待して鑑賞した人は大きく裏切られたことでしょう。今作で描かれていたのはサスペンスでもあり、ミステリーでもあり、グロテスクで少々過激な描写もありました。そんなミスマッチさやチグハグさが今作の魅力なのです。
    キャストもとても豪華なので何度見ても飽きない作品です。

  3. 瑞季 より:

    舞台になっているホテルがとにかく可愛いいので観ていてとても楽しかった。ストーリーがテンポ良く進んでいくので、飽きることなく最後まで観ることが出来た。また、ミステリーの中にあるコメディ要素と、少しグロテスクな要素のバランスが取れているところも良かった。

    どこを切り取っても可愛いシーンばかりなので、まるでオシャレで大人が読める絵本を見ているような感覚になれる作品だったので面白かった。

  4. ふくりん より:

    これまでのウェス・アンダーソン監督の作品にも見られるように、左右対称の構図、セットのデザインや衣装の色彩感覚、そういった彼の映像美へのこだわりが本作品にも細部まで盛り込まれている。
    この物語はサスペンスであり、コメディーでもある。
    カリスマコンシェルジュと若いベルボーイのやり取りはずっと聞いていたい。
    平面図的な配置は視覚的にも楽しめ、それでいてずーっと美しい。

    こんなホテルに滞在してみたい。旅に誘ってくれるような作品だ。

  5. pillow より:

    「あぁ、ウェス・アンダーソンだなぁ。」と、すぐわかるような作品です。
    この監督の映画は、内容よりも映像を観せる作品だと思っています。今作も例に漏れず、独特の色遣いやカットなどで魅了していきます。個人的には大好きですが、毛嫌いする人が多いのも頷けます。決して万人受けするような作品では無いと思います。
    そして今回もエドワード・ノートンが出ています。このタッグはずっと続いて欲しいと願います。きっとお互いにしっくりするものがあるのでしょう。

  6. 匿名 より:

    次世代の映画界を担う時代の寵児こと、ウェス・アンダーソン監督の最新作。彼は『アンソニーのハッピー・モーテル』で監督デビューした後、長編2作目『天才マックスの世界』でも軒並みならぬ世界観を発揮し、全世界を驚愕の渦に巻き込んだ。現在この作品は、カルト映画と呼ばれている。若き天才、ウェス・アンダーソンはその後も『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ライフ・アクアティック』『ダージリン急行』アニメ製作の『ファンタスティック Mr. Fox』『ムーンライズ・キングダム』実写6本とアニメ作品一本。その内、初期2作以外は日本での劇場公開がされている。アカデミー賞では『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』と『ムーンライズ・キングダム』の2作品で、両作品とも脚本賞止まり。その上、どちらも受賞ならず。ここまで、注目されながら、アカデミー賞にて初めて最多ノミネート、最多受賞を果たした。若き天才の存在感を見せつけた。ただし、作品賞も監督賞も受賞は逃した。主要部門は獲れなかったのは、残念だが、私が思うに、これはアカデミー賞会員の優しさでもあり、愛情だろう。ここで受賞してしまえば、彼はきっとここ止まりのまま、満足するだろうと。そうではなく、今まで以上のいい作品を製作出来ることをアカデミー賞会員は皆、分かっているから、敢えて彼に賞を贈らなかった。だからこそ、次の彼の作品がどんなアプローチで完成させるのかが、今から楽しみなのだ。

  7. 匿名 より:

    本当にウェス・アンダーソン監督の演出は、目を見張るものが多い。例えば、左右対称のシンメトリーが取り入れられていたり、原色とも言える色をふんだんに使い、まるで異世界にいるような錯覚に陥れられる。また彼の撮影技術は独特で、多数のカメラを使わずに、一つのカメラを動かしながら、長回しを行ったり、撮りたい角度のポイントを一つのカメラの視点から順々に撮影していたり、また鏡のトリックを駆使し、敢えて演者が鏡を通して話すのを、まるで私たちが第3者の視点から観るのも楽しい。よく固定カメラでの撮影が見られ、右から列車がフェームインしたかと思えば、次に左から車がフェームインするような演出が数多く見られる。低予算でありながらも、映画そのものに拘り抜いた演出力を発揮し、まるでおもちゃ箱を開けたような、世にも奇妙な不思議な世界が広がる。それが、ウェスワールドの真骨頂だろう。また面白いのは、脚本の所々に、言葉遊びが含まれている点だ。例えば、本作では主人公のゼロ・ムスタファ。初登場シーンでは、グスタブ・Hから色々質問攻めにされるシーンがあるが、家族の有無に答えられなかった時のグスタブ・Hの返答が『ゼロ(0)か』と言う答えるシーン。まさに計算されたネーミングと台詞とシーンだろう。他に、ゼロが恋に落ちる少女の名がアガサだ。ゼロが彼女にプレゼントを贈る時、Z~Aに、とわざわざ言わせているが、これも何かの言葉遊びだろう。

    また、ウェス・アンダーソンは、若手からベテラン、大物からトップスターの役者の使い方が実にスマートだ。まるで、ウッディ・アレンのようだ。日本で言うと三谷幸喜あたりだろうか?脚本を書きながらイメージするのか、それとも脚本が出来上がってから役者をオファーするのか?私はきっと、前者だと思う。執筆段階から演じて欲しいキャラクターと役者をイメージしながら執筆していたのだろう?そんな彼の、ヴィジョンが我ながら気になる。本作も、類を観ないトップスターが勢揃いした。総勢16人の新旧のスターばかりだ。フランス人に、イギリス人に、アメリカ人と、国籍もバラバラだ。ただウェス・アンダーソンは、まったくブレない人間だ。これだけの有名人がいても誰一人欠けることもなく、存在感を発揮している。どこのシーンに誰が出演しているのか、探しながら鑑賞するのも、彼の作品を観る上での楽しみの一つだ。まだ未見の方は、これらを踏まえて鑑賞すると、この映画の楽しみが一つ見えてくるだろう。

  8. 匿名 より:

    基本、人が映画を選ぶものだが、時に映画が人を選ぶことがある。ウェス・アンダーソン監督の作品郡は、どれも映画が人を選ぶ。正直、私は彼のことも、彼の作品も苦手だった。ただ、ここまで整理すると、やはり彼の作品はオタク傾向の強い作品であるのは間違いないが、私がこの作品で最も好きなのは、師弟関係の描き方だ。グスタブがゼロに対する絶対なる信頼感。そこに、いつも心が揺れ動く。親子以上に結ばれた師弟関係の美しさ。その対照した映画の色彩と小道具の繊細を兼ね備えた芸術性の高い一本だ。