映画『グラスホッパー』の概要:伊坂幸太郎の小説「グラスホッパー」を原作とした、2015年公開のサスペンスムービー。2013年に公開された「脳男」と同様に、監督は瀧本智行、主演は生田斗真。
映画『グラスホッパー』 作品情報
- 製作年:2015年
- 上映時間:119分
- ジャンル:アクション、サスペンス、フィルムノワール
- 監督:瀧本智行
- キャスト:生田斗真、浅野忠信、山田涼介、麻生久美子 etc
映画『グラスホッパー』 評価
- 点数:60点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★☆☆☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★☆☆☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『グラスホッパー』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『グラスホッパー』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『グラスホッパー』 あらすじ【起・承】
中学で理科を教えていた虫も殺せないような男、鈴木。
彼は、薬物中毒者の起こした事件で、婚約者の百合子を失った。
「本当の犯人はフロイラインの寺原親子」という手紙を受け取った鈴木は、怪しげなダイエット商品販売会社「フロイライン」に入社。
街中で偶然話しかけてきた元教え子を名乗る少女が、フロイラインの危険なダイエット商品に引っかかり、社長の息子「ジュニア」のオモチャとして引き渡されることになってしまう。
しかし鈴木の目の前で、ジュニアは「押し屋」という殺し屋に殺害されてしまう。
鈴木は押し屋を尾行するように上司の比与子から命令されるが、家族までいる普通の男が殺し屋だと知って驚く。
一方、自殺屋と呼ばれる殺し屋「鯨」は、その目を見ただけで自殺してしまうという、不思議な能力を持っている。
その日も彼は、完璧と称される仕事をしていた。
その一方で、ナイフ使いの金髪の少年の殺し屋「蝉」と相棒の岩西は、ジュニアを通して寺原会長から、知りずぎた「鯨」殺害の依頼を受ける。
寺原会長の元に謎のタレコミが入り、鈴木が復讐のために押し屋にジュニア殺害を依頼した事になってしまう。
濡れ衣を着せられたことを知った鈴木は、行き場もなくさまよううちに、押し屋に忠告をするべく見つけていた家の前に立っていた。
映画『グラスホッパー』 結末・ラスト(ネタバレ)
押し屋の家で火事騒ぎが起こり、助けた鈴木は一家に気に入られてしまう。
寺原から逃げるようにと押し屋に忠告した鈴木は、自分の命と引き換えに教え子を開放させると、比与子と約束を取り付ける。
岩西と蝉は、依頼してきたジュニアが死んで依頼主の会長が生きているという状況に戸惑い、鯨は自分が殺した人間の幻覚が見えるようになっていた。
やがて岩西は、鯨と争った末に自殺させられてしまう。
岩西の亡霊に、父親から虐待され殺してしまった過去を指摘された鯨は、全てを終わらせるために寺原会長を消そうとする。
蝉は岩西の敵をとるため、鯨の居場所に向かっていた。
鈴木が殺されるという瞬間に寺原会長の前に現れた鯨。
慌てて逃げ出した寺原会長と比与子だったが、鈴木の教え子を装って潜入していた殺し屋に命を奪われる。
鯨と、彼を追ってきた蝉は乱闘になり、最後は2人一緒に命を落とす。
途中で気絶していた鈴木が目覚めると、すべてが終わった後で、逃げるようにその場から去っていった。
その足で押し屋の家に行くが、もぬけの空。
鯨と蝉は亡霊になるが、意気投合して去っていった。
1年後。
押し屋の妻から真相を聞かされる鈴木。
彼らは寺原親子を抹殺すべく寄せ集められた人々で、押し屋一家は家族でもなく、鈴木の教え子と名乗った少女もそのメンバーだった。
すみれと一緒にやってきた少年が、事件の時に百合子に命を救われた子供と知った鈴木は涙を流した。
映画『グラスホッパー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『グラスホッパー』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
原作とは別物の作品
伊坂幸太郎の小説の世界観を、そのまま映像化した「アヒルと鴨のコインロッカー」などの中村義洋監督の作品とは違い、オリジナルの世界観でキャラクターたちを動かしている本作。
しかし原作の完成度が高いため、原作を読んでから映画本編を見ると拍子抜けしてしまう。
主人公の鈴木が婚約者を亡くし、偶然拾った手紙から怪しい会社「フロイライン」に転職するという無理やり感が否めない始まり方だが、“一般人”の鈴木が裏社会の騒動に巻き込まれていく様子は面白い。
また、最後まで鈴木が中心人物になるのではなく、一歩下がった場所から見ているようなストーリー。
そしてラストでピエロの恰好をしながら、「道化だった」と悟る部分はよくできている。
しかし“蝉”の物語、“鯨”の物語が表面的にしか映し出されておらず、“押し屋”や寺原会長を殺害した鈴木の生徒を名乗る女性に関しては、すみれの口から話されるだけなので、いまいちスッキリせず強引さすら感じる。
別の視点から見たストーリーが、最後にうまくつながるのが面白い伊坂幸太郎の原作なのだが、本作ではそれがまったく機能していないのも残念。
配役がピッタリ
キャスティングが上手く、“押し屋”を演じた吉岡秀隆の影のある演技は秀逸。
“鯨”役の浅野忠信の、自殺したくなるような空っぽな目や表情はさすが。
“蝉”役の山田涼介のアクションには目を引かれるが、切羽詰まった狂気やうるさいセミという印象は薄い。
岩西役の村上淳の飄々とした演技や、比与子役の菜々緒の全力でキレた演技は見ていて清々しい上に、似合っている。
どこまでも普通にこだわった鈴木役の生田斗真は、濃いキャラクターの中だからこそ浮いた演技になっていて、見ものになっている。
伊坂幸太郎作品が好きな方にはおすすめできない作品です。彼の小説の面白いところは、自分が見ていたストーリーは一つの視点から偏った部分を切り取ったもので、別の視点から見るとこう見えてるんだよと教えてくれるようなシナリオだと思います。
映像化された彼の作品は沢山ありますが『ゴールデンスランバー』などでも最後に驚きの展開が待っていて、観客を興奮させてくれました。
しかし、今作はそういった魅力や驚きがありません。原作を読んでいる方にとっては、ものすごく平坦でつまらない作品に感じてしまうのではないでしょうか。(女性 30代)
映画『グラスホッパー』 まとめ
「アヒルと鴨のコインロッカー」、「フィッシュストーリー」、「ゴールデンスランバー」などの伊坂幸太郎の小説を、原作に忠実に映画化してきた中村義洋監督作品とは違い、あくまでも“原作”という域を出ていないのが本作品。
原作を読んでからではかすんでしまう内容なので、読む前に見ておきたい映画になっている。
豪華なキャストの使い方がうまく、ヒステリックな比与子役の菜々緒の演技はこんな役が見たかったと思わせる。
吉岡秀隆の影のある演技も、“押し屋”という殺し屋にピッタリ。
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