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映画『ハナレイ・ベイ』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『ハナレイ・ベイ』の概要:作家、村上春樹『東京奇譚集』の一篇である同名作を実写映画化。ハワイのカウアイ島、ハナレイ・ベイにて若くして亡くなった息子と10年間、向き合い続ける母親。10年目にして2人の若者と出会ったことで、ようやく生きる希望を見出す再生の物語。

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映画『ハナレイ・ベイ』の作品情報

ハナレイ・ベイ

製作年:2018年
上映時間:97分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:松永大司
キャスト:吉田羊、佐野玲於、村上虹郎、佐藤魁 etc

映画『ハナレイ・ベイ』の登場人物(キャスト)

サチ(吉田羊)
日本にてピアノバーを経営している。シングルマザーで気丈な女性。タカシを女手一つで育てる。シカゴに2年間、住んでいたことがあり英語が堪能。
タカシ(佐野玲於)
サチの息子。ハワイ諸島のカウアイ島にあるハナレイ・ベイへサーフィンにやって来るも、サメに襲われ亡くなってしまう。享年19歳。父親の形見であるウォークマンを愛用していた。
高橋(村上虹郎)
ハナレイ・ベイへサーフィンにやって来た日本人の青年。タカシと同じ年頃で、英語を理解しているものの、サチには話せることを隠している。調子の良いことを言いながらも、何かとサチのことを気にかけている。
三宅(佐藤魁)
ハナレイ・ベイへサーフィンにやって来た日本人青年。高橋の友人で同じ年頃。英語は話せないが、サーフィンはかなり得意。
尾崎亮(栗原類)
サチの夫。麻薬中毒で他の女と浮気した挙句、麻薬によって命を落とす。暴力的でろくでもない男。

映画『ハナレイ・ベイ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『ハナレイ・ベイ』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『ハナレイ・ベイ』のあらすじ【起】

ハワイ諸島、カウアイ島のハナレイ・ベイ。サーフィンを楽しみに来ていた息子タカシが、サメに襲われ亡くなったという報せを聞き駆け付けた母親のサチ。遺体の身元を確認しショックのあまり悲しむこともできず、淡々と事実を受け止め事後処理を行った。

タカシはまだ19歳で親子関係は良好とは言えなかったが、シングルマザーのサチにとってはたった1人の家族。火葬を終えた遺灰を手に一度は空港へ向かった彼女は、ふと思い立って踵を返し海辺のロッジを1週間、借りてハナレイ・ベイで過ごすことにした。

海辺の大きな木の下で読書をしてカフェで食事をする。その場に地元の警官が姿を現し、形見として残したタカシの手形が出来たと持って来てくれたが、サチは受け取らず。警官は自然に囲まれた島では時として自然が人の命を奪うこともあるが、どうかこの島を嫌わないで欲しいと言っていた。そして、タカシは亡くなって消えたのではなく、自然の流れに戻ったのだと慰めてくれるのだった。
その後、日本へ帰国したサチはタカシの葬式を行い、休むことなく荷物の整理。それ以来、彼女は息子が亡くなった時期に毎年、ハナレイ・ベイを訪れるようになる。

10年後、ハナレイ・ベイのスーパーにて2人の日本人青年、高橋と三宅に出会ったサチ。彼らは貧乏サーファーで浜辺にてテント暮らしをしていたが、限界を感じ安く泊まれる宿を探していた。そこで、サチはかつてタカシが泊まった宿へ2人を連れて行き、宿泊費を値切って安く泊まれるよう融通してやる。

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映画『ハナレイ・ベイ』のあらすじ【承】

それ以降、何かと2人と会話をするようになったサチ。10年も同じ時期に島を訪れ最早、知り合いとなった警官の妻とも毎年、同じやり取りを行う。警官の妻はタカシの手形をずっと預かってくれており、サチに渡したいと言う。サチも受け取らないの一点張りであったが、警官の妻も諦めることなく毎年、声をかけてくるのだった。

高橋と三宅がテント暮らしをしていた場所は毎年、サチが読書をして過ごす場所だった。だが、彼女はそこで本を読むばかりで海には決して近付かない。高橋は宿の主人からその話を聞き、サチの姿を見つめる。

その日の夜、サチがピアノを弾くレストランへ向かった高橋と三宅。高橋は英語が理解できたが、三宅は英語が分からない。酒に酔った元軍人が日本人であるサチに絡んで来たものの、店の主人のお陰で難を逃れた。ところが、レストランから帰る際、高橋と三宅が元軍人に悪態をつかれ絡まれてしまう。

深夜にも関わらず、警察へ呼び出されたサチ。レストランの主人から事情を聞くと、どうやらサチのことを悪く言われ、高橋がそれに腹を立てたらしい。そのせいで、高橋が酷く殴られたと言う。だが、当の本人は怪我を負いながらもへらへらと笑い、原因すらも口にしないのだった。

映画『ハナレイ・ベイ』のあらすじ【転】

翌日、海辺へ向かったサチは三宅から高橋が宿で休んでいると聞き、手作りのサンドイッチを手に彼を訪ねる。どことなく、タカシと同じ年頃の2人が気になって仕方なく、特に高橋は人懐こく何かとサチに話しかけてくる。サチは2人にタカシの姿を重ね、次第に心を開くようになるのだった。

その日の夕方、いつもとは違う時を過ごしたサチ。高橋と三宅は翌日には帰国するらしく、世話になったサチに礼を言ってくれる。その際、ビーチからサーフィンをする彼らをじっと見つめる片足の日本人サーファーがいるという話を聞く。そのサーファーは赤いサーフボードを抱えており、右足の膝から下がないと言う。高橋と三宅が浜に戻ると、そのサーファーは忽然と姿を消してしまうらしい。しかも、サチがよくいる場所から少しだけ離れた場所に立っていると言うのだ。

赤いサーフボードに右足がない日本人サーファー。亡くなったタカシと特徴が同じだった。サチは翌日、いつもの場所へ足を運び噂のサーファーの姿を探したが、浜辺にはそのような人影は見つからなかった。

タカシの父親だった尾崎亮は麻薬中毒者で、子供が産まれても薬から抜け出せず浮気した挙句に薬で命を落とした。サチは尾崎の保険金でピアノバーを立ち上げ、店の経営をしながら幼い息子をたった1人で育てたのだ。そのタカシさえも亡くなってしまった。

映画『ハナレイ・ベイ』の結末・ラスト(ネタバレ)

1日中、タカシと思われる人影を浜辺にて探し回ったが、見つけられなかったサチ。日が暮れた頃、彼女はタカシが泊まったことがある宿へ向かったが、宿の主人も噂のサーファーを知らなかった。サチはタカシの持ち物を全て片付けてしまったので、手元には息子の写真すらない。すると、主人は宿日記を渡してくれる。そこには、笑顔のタカシの姿が何枚も残されているのだった。

更に翌日、今度はいつもの場所の大木を回り、何かないかを探した。高橋と三宅にだけ姿を見せたタカシ。なぜ、自分の前には姿を見せてくれないのか。もどかしい気持ちが募る。疲れ果てた彼女は思い立って海へと足を向けた。これまで1度として息子の命を奪った海へと近寄らずにきたが、やはり海へ入らなければならないのか。けれども、サチは波打ち際で足を止め日が暮れるまで立ち尽くし海を眺めた。

観念したサチは、翌朝になって警官の妻を訪ねる。息子が大嫌いだったと本心を口にするサチ。彼女は必死に島を受け入れようとしているのに、島は自分を受け入れようとしてくれない。それすらも受け入れなければならないのか。そう問うたサチに、警官の妻は亡くなった人の手形ほど価値があるものはないと言い、タカシの手形を渡すのであった。

やるせない気持ちで苛立った彼女はロッジへ戻って手あたり次第に荷物を巻き散らし、その勢いで息子の手形を目にする。涙が溢れて止まらなかった。10年間、一度も泣いたことなどない。それなのに、涙が溢れて止まらないのだ。タカシに会いたい。思う気持ちはただそれだけだった。

日本へ帰国したサチは、10年ぶりにタカシの荷物を開く。亡くなった当時の所持品から尾崎の形見でもあり、タカシの形見となったウォークマンを取り出し再生を押した。
しばらく後、街で偶然、高橋と再会したサチ。彼には女性を落とすコツとタカシの写真を見せた。そして、その年もサチはハナレイ・ベイを訪れる。浜辺に立ち、振り向いた彼女の目には笑顔にさせる人物が映るのだった。

映画『ハナレイ・ベイ』の感想・評価・レビュー

息子の死を頭では理解しつつも、心では受け入れられない母親の苦悩を描いている。原作は村上ファンの間でも史上屈指の名作と語られている同名作。ろくでもない夫と死別した後も、夫の荷物を処分しない母親を息子が詰るシーンがあるが、恐らくヒロインは不器用な性格で、元から容易に素直になれない人物なのだろうと思われる。

故に、息子が亡くなってもその死を受け入れつつも、簡単に納得できなかったのかもしれない。形見の手形を受け取らないのも、その心情の表れなのではないだろうか。2人の青年と出会ったことで心が軟化し、息子の死を受け入れることでようやく素直になれたということなのだろう。手形を目にして号泣する姿に酷く切なくなる。名作と言われるのも頷ける作品。(MIHOシネマ編集部)

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