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映画『ハンナ・アーレント』あらすじとネタバレ感想

映画『ハンナ・アーレント』の概要:60年代~70年代にアメリカで活躍したユダヤ人哲学者ハンナ・アーレントの生涯を描き、2013年に日本で公開されたドイツ映画。監督は『ローザ・ルクセンブルグ』などの女流監督マルガレーテ・フォン・トロッタ。主演は監督と3度目のタッグを組むバルバラ・スコヴァ。

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映画『ハンナ・アーレント』 作品情報

ハンナ・アーレント

  • 製作年:2012年
  • 上映時間:114分
  • ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
  • 監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
  • キャスト:バルバラ・スコヴァ、アクセル・ミルベルク、ジャネット・マクティア、ユリア・イェンチ etc

映画『ハンナ・アーレント』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★☆☆
  • キャスト起用:★★★☆☆
  • 映像技術:★★★☆☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★★

映画『ハンナ・アーレント』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『ハンナ・アーレント』のあらすじを紹介します。

60年代アメリカ。ドイツから亡命して、現在はアメリカに住むハンナ・アーレント。彼女の元に、時代を揺るがす一大ニュースが届く。それは、逃亡先でイスラエル諜報部に逮捕されたアドルフ・アイヒマン。彼は、第2時世界大戦時に、ドイツのヒトラー元帥の下で、当時の最高責任者として多くのユダヤ人を強制収容所に送った張本人だったのだ。ハンナ・アーレントも当時はユダヤ人の迫害を受けて、やむなくフランス・パリに亡命したのだった。そんな彼女にとって、今回の世界を揺るがす逮捕劇に、興味を示さないはずもなかった。

イスラエル諜報部によって逮捕されたアイヒマンは、戦犯にかけられるためイスラエルに移送されることが決まった。ハンナもまた、その世紀の裁判を傍聴するために、飛行機の手配をすぐさま行った。イスラエルに着くと、旧友と再開し、昔話に花を咲かせた。

アイヒマン裁判の日、彼女は傍聴席から直接、アイヒマンの姿を目にした。彼はやせ衰え、昔の面影はどこにもなかった。裁判が進むにつれ、当時ユダヤ人の迫害政策の元、強制収容所に送られたユダヤ人家族やその体験者が、証人台で当時の経験を証言し始めた。それは、苦痛と葛藤と家族を失った、悲しみの宿る悲痛の叫びだった。そんな緊迫した裁判で、彼女はアイヒマンを客観の視点から、彼を見つめていた。そもそも彼は、本当の悪なのか?彼女は、アイヒマンを反ユダヤ主義者ではないと主張。彼は、当時の強制収容所を送る役職を義務として、行っていただけと。また、強制収容所にユダヤ人を送るのに、ユダヤ人の有識者が、ナチスに手を貸してしたことも主張した。

ハンナ・アーレントは永住するアメリカに帰ってから、その内容をニューヨーク・タイムズに数回に分けて掲載。彼女のその偏った思想は、全世界からバッシングと反感を買った。また、一部のユダヤ人がナチスに手を貸していたと言う一説も、同胞のユダヤ人から大きな反感を買った。

こうなることも覚悟していた彼女は、渦中の矢面に立たされながらも、彼女自身、信念を頑として曲げなかった。自らが働く大学がハンナを解雇しようとしても、それを撥ね退け、教壇に立ち、学生達の前でアイヒマンが行った悪事について語るのだった。戦争当時、ナチスたちの前に横たわっていたのは、真の悪ではない。ただ社会が彼を悪の世界に導いていったのだ。悪とは何か?絶対的、根本的悪があっても、あの時代の悪は『悪の凡庸さ』の他でもないと…。

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映画『ハンナ・アーレント』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ハンナ・アーレント』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

監督マルガレーテ・フォン・トロッタとニュージャーマン・シネマ

マルガレーテ・フォン・トロッタは、ドイツの監督、脚本家、女優である。70年代は主に女優として活躍しており、ニュージャーマン・シネマの立役者の一人、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの2作品『聖なるパン助に注意』『悪の神々』に女優として参加。その後、ドイツの映画運動ニュージャーマン・シネマの中心人物にもなった監督、フォルカー・シュレンドルフと結婚し、『突然裕福になったコンバッハの貧しい人々』『ルート・ハルプファスの道徳』『つかの間の情熱』『とどめの一発』の4作品で共同脚本を執筆。彼女はその時の経験を活かし、75年『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』にて、共同だが監督デビューを飾る。その後78年、長編2作目『第二の目覚め』にて単独デビューを飾る。1981年に発表した長編3作目の『鉛の時代』にて、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。80年代には終息を迎えるドイツの映画運動ニュージャーマン・シネマの仲間入りを果たす。

80年代のミニシアター・ブームと共に、彼女の作品は日本でも公開されるようになり、彼女の活動は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。そんなマルガレーテ・フォン・トロッタ監督の代表作は『ローザ・ルクセンブルク』『三人姉妹』『ベルリン それぞれの季節』『ローゼンシュトラッセ』『もうひとりの女』そして本作『ハンナ・アーレント』彼女の作品は一貫して、女性目線の作品が多い。特に時代に翻弄された思想家や哲学者など、女性の識者が多い。『鉛の時代』『ローザ・ルクセンブルク』『ローゼンシュトラッセ』『ハンナ・アーレント』は第一次世界大戦から第二次世界大戦、戦後の逆境に遭いながらも力強く生き抜いた女性の半生を描く作品が目に付く。作品数そのものは、決して多くありません。どちらかと言えば寡黙な監督だが、その一つ一つの作品が心に深く伸し掛かる重厚な作品ばかりだ。

余談だが、前述した元旦那のフォルカー・シュレンドルフは、代表作『ブリキの太鼓』にて、80年のアカデミー賞にて外国語映画賞を、79年のカンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞した。近年では『シャトーブリアンからの手紙』や『パリよ、永遠に』など第二次世界大戦に関連した作品を発表している。高齢の二人だが、彼らのこれからの動向に注目できる。両監督は、現代ドイツ映画を代表する名監督だろう。

作中の『悪の凡庸さ』とは。社会悪と人間悪について

主人公ハンナ・アーレントが生涯貫き通した『悪の凡庸さ』とは、一体如何なるものか。現在でも、その思想に論争や物議を醸し出している。戦犯アイヒマン裁判を傍聴した結果、彼女はある一つの考えに到達する。アドルフ・アイヒマンが行った行為そのものは、人間悪を持ってのそれではなく、ただ公務としてユダヤ人を強制収容所に送り込んだだけと。ハンナは傍聴席から見た彼を、弱く頼りない普通の人間に見えたと主張。彼は反ユダヤ主義者でもなく、悪を最初から持った人間でもない。その時代の情勢に、ただ純粋に従った真面目な人間であると。アイヒマンもまた、ヒトラーには逆らえなかったと発言。逆らったとしても、何も変わらない。そんな時代であったと。

個人的観点だが、この現状を例えるなら、これは学級内で起きる“いじめ”の構造に似てなくもない。いじめる側といじめられる側=ナチスとユダヤ人。いじめを傍観する者≠強制収容所にユダヤ人を送る者。前者のいじめを傍観する者は、自らの身を守るためにいじめ加担する者、弱者を切り捨てる者。アイヒマンもまた、自身を守るために強制収容所の大役を行った。

その時の状況や社会の情勢で、人は変わってしまう。生まれ持っての悪、根本的絶対悪や人間悪は存在しない。社会そのものが、社会悪を持って、人の心そのものを変えてしまうのである。

映画『ハンナ・アーレント』 まとめ

映画自体のテーマは重い。観る人を選ぶ作品だろう。ナチスとユダヤ人の関係性。主人公のハンナ・アーレントもナチスの被害者でありながらも、ナチスの重大な役割を担っていた強制収容の責任者のアイヒマンの非を、被害者の立場から庇う発言をし続けたのは、アイヒマンが行った悪事を非難したのではなく、アイヒマン自身の人間性を判断して『悪の凡庸さ』について、力強く主張したのだろう。

今年で終戦70年目。戦中、日本が中国人や朝鮮人に行った悪事やドイツがユダヤ人に行った迫害について、今年は腰を据えてじっくり考える年だろう。そして、これらの事について考える時、この映画『ハンナ・アーレント』から何かヒントを得られるかも知れない。

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