この記事では、映画『彼女のいない部屋』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『彼女のいない部屋』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『彼女のいない部屋』の作品情報

出典:https://video.unext.jp/title/SID0086386
| 製作年 | 2021年 |
|---|---|
| 上映時間 | 96分 |
| ジャンル | ヒューマンドラマ ミステリー |
| 監督 | マチュー・アマルリック |
| キャスト | ヴィッキー・クリープス アリエ・ワルトアルテ アンヌ=ソフィ・ボーエン=シャテ サシャ・アルディリ |
| 製作国 | フランス |
映画『彼女のいない部屋』の登場人物(キャスト)
- クラリス(ヴィッキー・クリープス)
- マルクの妻で、娘のリュシー、息子ポールという二人の子供の母親。ある日、家族を置いて家を出たようだが、一人になってから家族とのかけがえのない日々を想像し思いを巡らせる。
- マルク(アリエ・ワルトアルテ)
- クラリスの夫で二人の子供の父親。鉄道技師として働いている。クラリスからは「置物同然」と詰られたりもするが、妻のことを愛し家族にとって良い父親であろうと努めている。
- リュシー(アンヌ=ソフィー・ボーウェン=シャテ)
- クラリスとマルクの娘。弟ポールにとってはしっかり者の姉。体操を習っているが、本当は大好きなピアノに専念したいと思っている。その才能を母クラリスからも期待されている。
- ポール(サシャ・アルディリ)
- クラリスとマルクの息子。サッカー選手に憧れるリュシーの弟。
映画『彼女のいない部屋』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『彼女のいない部屋』のあらすじ【起】
ポラロイド写真を並べ「やり直そう」と呟き、感情を露わにする女性。
明け方、クラリスは寝ている夫のマルク、娘リュシー、息子のポールを置いて家を出ようとしていた。車を出した彼女は、途中で友人のガソリンスタンドに立ち寄る。「金曜で二ヶ月よ」と友人に話すクラリス。
朝、リュシーとポールは「ママはどこに行ってしまったの?」と会話を交わしながら、マルクと朝食を取っている。その後、いつものようにマルクは仕事に、子供達は学校に向かった。
クラリスは車の中で、リュシーが練習しているピアノのテープを聴き懐かしむ。途中バーに立ち寄り、酔っ払うクラリス。彼女は、バーのママや客に「自分が家を出て来た」と話している。一週間が二ヶ月、三ヶ月になり、半年になったと言う。テレビでは遭難者を捜索しているというニュースが流れていた。クラリスは、横にいる男性客を「マルク」と呼び、涙を流した。
1人の生活が始まってから、クラリスは観光ガイドの仕事を始めた。彼女は誕生日に、職場の同僚から黄色い日記帳をプレゼントしてもらう。彼女はその日記に、家族達の想像上の生活を記していく。
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映画『彼女のいない部屋』のあらすじ【承】
マルクはいなくなったクラリスのことを忘れるため、彼女の荷物を整理して処分しようとしていた。それを見つめるリュシー。ポールは「パパがママを捨てた」と喚き始め、リュシーがその間に入った。
数ヶ月前の出来事を回想するクラリス。雪山を進んでいくクラリスを、男性二人が危険だからと止めに行く。ロッジでは、雪山で行方不明になった三人について、ホテルの人達が話し合っている。捜索している現場から無線が入り、雪崩が起きて春まで捜索は難しいということだった。
ベッドで目を覚ますクラリス。彼女は「無理がある」と呟き、日記をつけるのを止めることにする。
クラリスは、学校にやって来て密かにピアノを弾く娘の姿を陰から見守る。その後、クラリスはガイドの仕事を紹介してくれた友人とカフェで話をする。「以前は子供を窓から捨てたくなったこともあるけど、今は子供達が子鹿に見える」と話して過去を悔いる。
映画『彼女のいない部屋』のあらすじ【転】
その後バーで、ピアニストのマルタ・アルゲリッチのドキュメンタリービデオを見たクラリス。映像の中で、マルタは母親との関係を話していた。それを自分とリュシーの関係に重ね合わせ、思いを噛み締める。やがてクラリスは、成長したリュシーやポールの姿を妄想し始める。
すっかり雪が解けた春のスキー場。1人ロッジで食事を取るクラリス。テーブルには4人分の朝食の準備がされている。彼女の様子を気にする、他の客やスタッフの女性。ふと外に目をやると、捜索隊が連れた犬が山から降りて来る。
クラリスの妄想の中では、いなくなったクラリスの部屋をリュシーが使うことになったらしい。いらない机を運び出し、グランドピアノが運び込まれる。リュシーは、パリの音楽院に推薦されることになったと、嬉しそうにマルクに話している。しかし、ポールが木の上で黄色い日記を燃やし始めると、妄想の世界は崩壊してしまう。
クラリスはマルクの職場を訪ねる。マルクの同僚から「マルクは仕事を辞めた」と聞かされる。どこへ行ったのかと聞くと、「それは君次第だ」という答えが返って来る。
映画『彼女のいない部屋』の結末・ラスト(ネタバレ)
リュシーのピアノのオーディションを見に、パリにやって来たクラリス。しかし、クラリスが会場に入って来るや否や、演奏せずに出て行ってしまう娘。クラリスが追い掛けると、「あなた誰ですか?」と言われた。その少女はリュシーではなく、全くの他人の子供だった。
クラリスは家族を置いて家を出たわけではなかった。雪山で遭難してしまったマルクと二人の子供。彼らの安否が分からず、クラリスは何ヶ月も一人で待ち続けていたのだ。その空白を埋めるため、最初は逆に「自分がいなくなった」家族というシナリオを作り妄想した。しかしそれだけでは心の隙間を埋められなくなったクラリスは、他人の子供を娘や息子だと自己暗示をかけていた。
数ヶ月後。春になり雪もすっかり解けた春のスキー場。ロッジにいたクラリスが外に目をやると、捜索隊が山から降りて来る。ロッジを飛び出したクラリスは、三人の遺体と対面し嗚咽した。
三人の墓参りを終えた後クラリスは、家を売るため不動産屋を案内する。家族のポラロイド写真を並べ、気持ちに整理をつけるクラリス。彼女は、写真をリュシーの楽譜に挟み、荷物をまとめて家をあとにするのだった。
映画『彼女のいない部屋』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
冒頭、突然家を出ていくクラリスの行動に戸惑いながらも、ロードムービーのような静かな旅に引き込まれた。しかし物語が進むにつれ、彼女が向かっている現実が徐々に歪んでいることに気づかされる。終盤で明かされる、家族がすでに亡くなっているという事実は衝撃的で、彼女の旅が喪失を否認するための時間だったと分かった瞬間、全てのシーンが違って見えた。派手な演出はないが、悲しみを直視できない心の動きを映像で表現している点が見事。観終わった後、静かな余韻が長く残る作品だった。(30代 男性)
正直、最初は話が分かりにくく感じたが、ラストで一気に腑に落ちた。クラリスが夫や子どもたちと連絡を取らず、どこか現実感のない旅を続けている理由が、すでに彼らが存在しないからだと分かった時、胸が締め付けられた。彼女は逃げているのではなく、現実に戻る準備をしていたのだと思う。悲しみを無理に描写せず、空白や沈黙で表現する手法が印象的で、感情を押し付けてこない点が良かった。(20代 女性)
喪失と向き合う過程を、ここまで静かに描いた映画は珍しい。クラリスは感情を爆発させることもなく、淡々と旅を続けるが、その裏には深い絶望がある。家族と再会するかのような描写が何度も挿入されることで、観客も彼女の錯覚に付き合わされる構造が巧妙だった。ラストで現実を受け入れ、家に戻る決断をする姿は、悲しみの終わりではなく始まりを示しているように感じた。大人向けの繊細な作品。(40代 男性)
映像がとにかく美しく、風景の一つ一つがクラリスの心情を映しているようだった。家族の存在が曖昧に描かれることで、観ている側も「何かがおかしい」と感じ続ける。ネタバレを知ってから振り返ると、彼女が家族と実際には会っていない場面ばかりだったことに気づき、演出の細やかさに感心した。喪失を経験した人ほど刺さる作品だと思う。静かで、残酷で、それでも優しい映画。(30代 女性)
この映画は物語を理解するよりも、感情を感じ取る作品だと感じた。クラリスの行動は合理的ではないが、深い悲しみの中にいる人間としてはとてもリアルだ。家族がいない現実を直視できず、存在しているかのように振る舞う姿は痛々しい。最後に彼女が一人で家に戻る場面は救いがあるようで、同時にとても孤独だ。観る側に寄り添いながらも、簡単な答えを与えない点が印象的だった。(50代 男性)
全体的に説明が少なく、観客に委ねる部分が多い映画だと思う。その分、クラリスの心の中に入り込むような感覚があり、観ていて不思議な没入感があった。家族と電話がつながらない違和感や、すれ違う人々との距離感が、後半で一気に意味を持つ構成が巧み。ラストで明かされる真実は悲しいが、彼女が前に進むための一歩として描かれている点が救いだった。(20代 男性)
女性の立場で観ると、母親としての喪失の描写がとても胸に刺さった。子どもたちの存在を心の中で生かし続けなければ、正気を保てなかったのだと思う。現実と幻想が交錯する演出は、決してトリック的ではなく、心の防衛反応として自然に感じられた。ラストで彼女が現実を受け入れる決断をしたことに、悲しさと同時に強さも感じた。静かだが深く心に残る作品。(40代 女性)
一見すると単調な旅の映画だが、実は非常に構造的で緻密な作品だった。クラリスが出会う人々との会話や風景が、すべて彼女の内面を反映している。家族が亡くなっているという事実を知った後に振り返ると、前半のシーンがすべて伏線だったことに気づかされる。派手な展開はないが、観る者の感情を静かに揺さぶる力がある。フランス映画らしい余白の美学を感じた。(60代 男性)
この映画の良さは、悲しみを言葉で説明しないところにあると思う。クラリスは涙を流すよりも、移動し続けることで現実から距離を取ろうとする。その姿がとても人間的だった。ラストで彼女が一人で家に戻る場面は、絶望ではなく再出発のようにも見える。観る人の人生経験によって受け取り方が変わる、静かで深い作品だと感じた。(30代 男性)
年齢を重ねてから観ると、「残された者がどう生きるか」というテーマがより重く響いた。クラリスは家族を失った瞬間で時間が止まってしまっているが、旅を通じて少しずつ現実に近づいていく。その過程がとても丁寧に描かれていた。悲しみは消えないが、それでも生きていくしかないという事実を、静かに肯定しているように思う。派手さはないが、長く心に残る映画。(50代 女性)
映画『彼女のいない部屋』を見た人におすすめの映画5選
マンチェスター・バイ・ザ・シー
この映画を一言で表すと?
喪失と後悔を抱えたまま生きることの痛みを、静かに見つめる傑作。
どんな話?
兄の死をきっかけに故郷へ戻った男は、過去に起きた取り返しのつかない出来事と向き合うことになる。甥との共同生活を通して、彼は失ったものと生き続ける現実の重さを突きつけられていく。
ここがおすすめ!
『彼女のいない部屋』同様、喪失から簡単には立ち直れない人間の姿を誠実に描いている。感情を爆発させず、沈黙や日常の中で悲しみを表現する点が共通しており、深い余韻を残す一本。
トリコロール/ブルー
この映画を一言で表すと?
愛する人を失った女性の孤独を、美しい映像で描いた名作。
どんな話?
夫と娘を事故で亡くした女性は、過去とのつながりを断ち切ろうと孤独な生活を選ぶ。しかし、周囲の人々との関わりの中で、完全に孤立することの不可能さに気づいていく。
ここがおすすめ!
悲しみを抽象的かつ感覚的に描く手法は『彼女のいない部屋』と非常に近い。色彩や音楽が感情を代弁し、言葉にできない喪失を体感させてくれる。
ドライブ・マイ・カー
この映画を一言で表すと?
失った存在と対話し続けることで、前へ進もうとする物語。
どんな話?
妻を亡くした演劇演出家は、仕事で訪れた広島で専属ドライバーの女性と出会う。車内で交わされる静かな会話を通じて、彼は自分の悲しみと少しずつ向き合っていく。
ここがおすすめ!
喪失を抱えたまま生きる時間の描写が『彼女のいない部屋』と共鳴する。説明しすぎない構成と余白の多さが、観る者自身の感情を引き出してくれる作品。
アフター・ライフ
この映画を一言で表すと?
死後の世界を通して、生きた記憶を問い直す静かなファンタジー。
どんな話?
死者が一つだけ大切な思い出を選び、永遠に持っていくという不思議な施設を舞台に、さまざまな人生が描かれる。生と死の境界で、人が何を大切にしてきたのかが浮かび上がる。
ここがおすすめ!
直接的な悲劇ではなく、喪失の余韻を丁寧にすくい取る点が共通。静かな語り口の中に、生きることの意味を考えさせる優しさがある。
さざなみ
この映画を一言で表すと?
長年連れ添った夫婦に訪れる、静かな心の揺らぎを描くドラマ。
どんな話?
穏やかな老夫婦のもとに一通の手紙が届き、過去に秘められていた感情が少しずつ表面化していく。長い年月を経ても消えない喪失と後悔が、日常を揺るがしていく。
ここがおすすめ!
大きな事件ではなく、心の中で起こる変化を描く点が『彼女のいない部屋』と共通。静かな会話の積み重ねが、深い感情を浮かび上がらせる大人向けの作品。






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