映画『異邦人』の概要:何にも感動せず、何も感じない男は繰り返す日々を同じように過ごしていた。無意味に殺人を犯し、世間に異邦人扱いされる。人間とは何か。アルベール・カミュ原作小説をヴィスコンティが映画化。
映画『異邦人』の作品情報
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
キャスト:マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・カリーナ、ベルナール・ブリエ、ブルーノ・クレメル etc
映画『異邦人』の登場人物(キャスト)
- ムルソー(マルチェロ・マストロヤンニ)
- 不条理な感情を抱える青年。母の死や、自ら殺した男の死に意味を見出そうとしない。自らの感情に素直な男だが、それにより世間からは異質な存在だと言われてしまう。殺人の容疑で死刑宣告を受ける。
- マリー・カルドナ(アンナ・カリーナ)
- ムルソーの元同僚で恋人。ムルソーの不条理さに惹かれる。ムルソーを信じ続け、最後まで味方でいる。一途な女。
- レイモン・サンテス(ジョルジェ・ジュレ)
- ムルソーと同じアパートに住む男。ムルソーとは友人関係。悪い噂しかなく、売春斡旋の仕事をしている。社会的には悪い人間だが、どこか憎めない男。同居していた女との喧嘩が原因で、女の兄の仲間達に襲われる。
映画『異邦人』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『異邦人』のあらすじ【起】
アルジェに住むサラリーマンのムルソーは、母が死んだという一報を養老院から受ける。ムルソーは、アルジェから60キロ離れたマレンゴという養老院のある町へとバスで向かうのだった。
養老院に着いた夜、ムルソーの母のお通夜が執り行われる。母の棺の前で退屈そうに座っているムルソーは養老院の参事から、もうすぐ母の友人がお通夜にやって来ると言われる。
養老院にいたムルソーの母の友人達が棺の周りへと集まりだす。そして悔やみの言葉を述べ、眠ってしまう。翌日、土葬が行われるのだった。
アルジェへと帰ったムルソーは海へと出かける。そこで、かつての会社の同僚であるタイピストのマリーに再会する。その後、二人はフェルナンドの喜劇を鑑賞するために映画館へと行くのだった。
翌日ムルソーはいつものように起床し、仕事へと向かう。ムルソーは、毎日繰り返される同じ日々を過ごしていた。そんな日々の中で、同じアパートに住むレイモン・サンテスという名前の男に会うことだけが唯一変化のある時間だった。
映画『異邦人』のあらすじ【承】
レイモンと食事を摂るムルソー。レイモンは近所でも悪い噂しか立っていない男だった。レイモンは、一緒に住む女の兄を殴ってしまったとムルソーに語る。レイモンは、どうにかその女を懲らしめてやりたいと言い、ムルソーに協力して欲しいと頼むのだった。
ある日、マリーは自分と結婚したいかとムルソーに聞く。ムルソーはどっちでもいいと答える。そして二人はムルソーのアパートへ行き、愛し合うのだった。
翌日、ムルソーとマリーは一緒に朝を迎えた。するとレイモンの部屋から女の悲鳴が聞こえてくる。警察がレイモンの部屋に駆け込んで行くと、部屋にいた女がレイモンに殴られたと訴える。警察に連行されたレイモンだが、ムルソーの協力もあって釈放されるのだった。
レイモンがムルソーの仕事場に電話をかける。殴った女の兄の仲間につけられていると言うレイモンは、ムルソーにも注意喚起するのだった。電話を切ったムルソーは上司に呼ばれ、パリへの転勤を勧められる。しかし、ムルソーは生活の変化には興味が無いと答えるのだった。
映画『異邦人』のあらすじ【転】
ムルソーとマリーはレイモンに誘われて海岸へと出かける。しかし、そこには後をつける男達の姿があった。それはレイモンが殴った女の兄の仲間達だった。レイモンの友人の別荘へと着いたムルソー達。そこで、後をつけてきた男達とレイモンが殴り合いをするのだった。
ナイフで刺されたレイモンを病院へと送るムルソー。その帰り道、海岸で再び男達に遭遇する。レイモンは銃を取り出すがムルソーがそれを預かり、落ち着くようにとレイモンに言う。そして、後をつけてきた男達は逃げ去って行くのだった。
レイモンを別荘へと送り、ムルソーは一人で浜を歩いていた。暑さに意識朦朧となるムルソー。その暑さは、母の葬儀の日を思い出させる暑さだった。そこに再び後をつけてきた男が現れる。ムルソーは預かっていた銃でその男を撃ってしまうのだった。
ムルソーは逮捕され、独房へと入れられてしまう。そこへ弁護士がやってきて、裁判で闘うためにムルソーのことを色々と尋ねる。弁護士はムルソーに、なぜ母が死んだときに悲しい顔をしなかったのかと尋ねる。裁判を有利に進めるために、自然な感情を抑えていたと答えるべきだと弁護士は言うが、それは嘘になるから嫌だとムルソーは答えるのだった。
マリーがムルソーとの面会にやって来る。マリーは、無事に出所したら結婚しようとムルソーに言うのだった。
映画『異邦人』の結末・ラスト(ネタバレ)
独房に入って5ヶ月が経った。ムルソーは、裁判で判事の質問に丁寧に答えていく。ムルソーは男達を殺す意思はなかったと証言する。しかし、あらゆる状況証拠がムルソーを不利な立場へと向かわせるのだった。
証人尋問が始まる。証人として法廷に現れたのは、養老院の参事達だった。彼らは、ムルソーは母の死後も平気な顔をしているような人間だと証言する。
今度はマリーが証人として法廷に現れる。マリーは正直にムルソーとの再会を話す。葬儀の翌日に再会し、海へ行った後に喜劇映画を見てムルソーの家へと行ったと証言する。マリーは必死にムルソーの無実を訴えるも、悪い印象を与えてしまうのだった。
さらにレイモンが証人台に立つが、売春斡旋業を営んでいたレイモンの証言はムルソーの助けにはならなかった。
最後に、なぜ殺したのかと判事に聞かれるムルソー。太陽のせいだ、とムルソーは答える。そして、死刑を宣告されるのだった。
死刑を待つムルソーは神父の説教を拒否する。ムルソーは神なんかどうでもいいのだと叫ぶのだった。そして、ムルソーは忍び寄る死を前にして母のことを思う。死を意識し、自由になったムルソーは幸せを感じて死刑台へと向かうのだった。
映画『異邦人』の感想・評価・レビュー
『異邦人』という題名が秀逸だなと感じた。主人公のムルソーの行いは善悪で簡単に片づけるのは難しいように思う。きっとムルソーが善悪で行動していないからだ。しかし、心のまま殺人を犯してしまった彼のことは、やはり理解しがたい。
死によって自由を感じるムルソーにとって、この世はきっと生きづらい世界だったのかもしれない。そう思うと、彼のことを心から愛していたマリーの存在が、少しだけ悲しかった。マリーはムルソーが死んでも、彼のことを忘れることができないのではないかと思った。(女性 30代)
考えさせられるサイコパス作品。「サイコパス」の映画として1番に思い浮かぶのは『アメリカン・サイコ』です。主人公のベイトマンは自分が大好き過ぎて、周りの人間の低能さに嫌気がさし、次々と人を殺していきます。かなりのサイコパスで狂ったやつ。しかし今作の主人公ムルソーは静かなサイコパス。人の死や自分自身に「何も感じない」ために、人を殺してしまう。危ないやつですよね。
作品を見ていてふと思ったのは、ムルソーは危ないヤツと認識しながらも、「共感」できてしまう部分があった所。何が正しいのかはわかりませんが、どんな人にも少なからず、ムルソーに共感する部分があると思います。(女性 30代)
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