映画『イット・カムズ・アット・ナイト』の概要:謎の病原体が蔓延した世界。山奥にひっそりと隠れ住む一家の元へ、ある男の一家が居候することになる。世界の情勢が分からない状況の中、緊迫した生活を送っていたが、とうとう感染の脅威が彼らへと襲い掛かる。
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』の作品情報
上映時間:92分
ジャンル:ホラー
監督:トレイ・エドワード・シュルツ
キャスト:ジョエル・エドガートン、クリストファー・アボット、カーメン・イジョゴ、ケルヴィン・ハリソン・Jr etc
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』の登場人物(キャスト)
- ポール(ジョエル・エドガートン)
- 元歴史教師でとても警戒心が強い。妻サラと息子トラヴィスの3人で生き残るため、とても厳格なルールを敷いている。ウィルの強い気持ちに共感するも、同様に反発もする。
- ウィル(クリストファー・アボット)
- 元修理工。妻キムと幼い息子を連れて生き延びるため、逃亡して来る。ポール同様に家族を守ろうと必死に足掻いている。
- サラ(カーメン・イジョゴ)
- ポールの妻。浅黒い肌をした女性で、ポールが作ったルールを勤勉に守っている。ウィル一家を率先して助けようと言ったものの、感染したと知ると手の平を返し始末しようとする。
- トラヴィス(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)
- ポールとサラの息子。浅黒い肌を持ち、大人しい少年。ストレスを発散させるために盗み聞きや絵を描いたりしているが、祖父が亡くなってから悪夢に苛まれやや不眠気味。飼い犬をとても可愛がっている。
- キム(ライリー・キーオ)
- ウィルの妻で幼い息子の母親でもある。金髪で若く美しい。非常に明るく朗らかで、緊迫した生活の中でも軽やかな笑い声をあげる。
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』のあらすじ【起】
謎の病原体が蔓延し、世界の情勢が全く分からなくなってしまった世界。人里離れた山奥にポールと妻のサラ、17歳の息子トラヴィスがひっそりと隠れ住んでいた。一家には祖父もいたが、とうとう病原体に感染してしまいポールはトラヴィスと2人で、祖父の息の根を止め遺体を焼いて感染を防いだ。
感染を防ぐためとは言え、家族の命を奪ったことは一家に暗い影を落とし、その日の夕食はほとんど喉を通らない。酷く疲れた様子で早々に休むことにしたが、明け方になって何者かが自宅へ侵入していることに気付く。一家は協力して侵入して来た男の意識を奪うことに成功。敵あれ何であれ、感染していないかを確かめるため、辺りが明るくなってきた頃、ポールはトラヴィスと共に男を木に縛り付け、口をガムテープで塞ぎ麻袋を被せて放置した。
男の声が木霊する中、一夜明けた翌日。ポールは男が感染していないことを確かめ、侵入した理由を聞く。男には妻子がおり80キロ離れた山の廃屋に避難しているらしい。ポールの家には食糧と日用品を盗むために入ったと言う。てっきり無人の廃屋と思ったが、ポール一家が住んでいたというわけである。
男、ウィルはポールの矢継ぎ早の質問に淀みなく答える。世界に何が起こっているのか、生存者はどれくらいなのかも未だ不明で、ウィル一家が逃亡し廃屋に至るまでの間、一切の人影を見なかったと言う。彼らは生きるために水と食糧が欲しかっただけらしい。ウィルもまた家族を助けるためにポール同様、必死なのだった。
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』のあらすじ【承】
ポールは一旦、自宅へ戻り家族で相談。サラが少数より大勢の方が助かる確率が高まると力説。ポールは助けるのはいいが、とにかく健康であれば良いと言う。更にウィル一家は複数の家畜を連れているようだったので、それも魅力的だった。ポールはウィル一家を助けることにし、迎えに行く準備を行った。
ウィルを拘束から解いて、車の荷台に乗せる。周囲を警戒しつつ車を走らせた。ところが、道も半ばで襲撃されてしまう。車は道を逸れて止まったが、そこへ2人の男が襲い掛かって来る。ウィルとポールは襲撃者を退治。警戒心の強いポールと口論になったウィルだったが、自分も襲われたのだと怒鳴り、2人の男の遺体を焼却処分することにした。
無事にウィルの妻キムとまだ幼い息子を救出。ポールは彼らを連れて自宅へ戻った。共同生活するにあたり、ポールがルールを説明。かなり厳重なものであったが、ウィル一家を歓迎した。
翌日からも外での仕事、家の中での仕事をそれぞれに説明。徐々に警戒心も緩和し、2つの家族は親交を深めていった。
そんなある夜、悪夢を見て目が覚めたトラヴィス。キッチンにキムがいるのを発見する。人妻とはいえ若く美しい彼女に密かに惹かれていたトラヴィスは、会話を経て更にキムへと心を寄せていく。
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』のあらすじ【転】
日中、息子の様子に気付いたポールは家族以外を信用するなと忠告したが、普段はとても大人しいポール一家の飼い犬が突如、吠えながら森の奥へと走り去ってしまう。トラヴィスは飼い犬を追って単独で森へ向かい、何かの気配と物音を耳にする。僅差でウィルとポールが駆け付けたが、周辺には何も見当たらず。ポールはルールを破った息子を強く叱り、家へ連れ戻した。
その日の夕食に笑い声はなく、飼い犬も戻って来ない。夕食後、ポールは無心に不気味な絵を描き続ける息子に明朝、犬を探しに行こうと告げた。
しかし、深夜になってまたも悪夢を見て目が覚めたトラヴィス。階下にてキムの息子が別の部屋で寝ているのを見つけ、両親の部屋へ送り届ける。その後、たった1つしかない出入り口から物音を聞きつけ、トラヴィスは急いで父親へ報告。飛び起きたポールはウィルと共に様子を見に行った。すると、そこには病原体に感染し、血塗れとなった飼い犬が倒れている。辛うじて息をしていたものの、感染した時点で助かる見込みはない。泣き暮れるトラヴィスが落ち着きを見せた頃、ポールとウィルの3人で飼い犬の火葬を見守った。
その後、食堂でトラヴィスが見たことを全て話す。家の出入り口は赤いドアの1つだけだが、なぜか鍵が開いていた。トラヴィスはドアに近寄ったが、触れていないため、恐らくウィルの息子が開けたのだろう。もしかすると、もうすでにウィル一家は感染しているかもしれない。ポールはウィル一家へ一室に閉じ籠るよう告げた。
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』の結末・ラスト(ネタバレ)
念入りにシャワーを浴びた後、両親の部屋で再び眠りに就いたトラヴィスだったが、またも悪夢に苛まれる。おののいた彼は飛び起きて、身体を確認。感染の兆候は見られなかった。
どこかで声がする。トラヴィスは盗み聞きができる屋根裏へ向かい、キムの泣き声とウィルの会話を聞きつける。そして、まだ寝ている両親を起こし幼い息子が感染したのではないかと告げた。ポールとサラは飛び起きて耳を澄ます。ウィル一家は感染者を出したため、この家から去ることを相談しているようだ。
追い詰められた人間は何をしでかすか分からない。ポールとサラはウィル一家を始末しようと決意。ガスマスクを装着し銃を手にウィル一家の部屋へと向かった。
ところが、ウィルもまた警戒を強め隠し持っていた銃でポールを脅しつける。彼らは十分な食糧と水を持って家を出ていくと言う。ポールを人質に取ったウィル一家は、部屋から出たものの銃を持ったサラが待ち伏せている。互いに牽制し合い、隙を突いてポールがウィルを拘束。サラは逃げ出したキムに銃口を向け、ウィル一家を外へ。
ところが、外へ出たところでウィルが意識を取り戻し反撃されてしまう。ポールが殴り殺されそうになったため、サラがウィルを銃撃。すかさず立ち上がったポールは、逃げていくキムと息子を銃撃した。銃弾は幼い息子を殺し、キムの悲痛な慟哭が森へと響き渡る。ポールは彼女をも撃ち殺してしまった。
それからすぐ、トラヴィスが病気を発症。やはり、あの夜に感染していたのだ。ポールもサラも最早、ガスマスクをせず1階の食堂で肩を落とすのだった。
映画『イット・カムズ・アット・ナイト』の感想・評価・レビュー
今作は30歳と若い監督の作品で、世界情勢が全く分からない状況の中で展開されている。そして、謎の病原体が蔓延し生存者がほとんどいないことがセリフで明かされ、それでも生き残っている人間がいて、生き延びるために必死で足掻いている。
作中のセリフや生活、行動の中にはたくさんのヒントが散りばめられており、非常に緊迫した生活の中、感染したかどうかも分からない状況で疑心暗鬼となって争い合う様子が描かれる。個人的には非常によくできた作品だと感じたし、次回作が気になるところである。(MIHOシネマ編集部)
コロナ禍で疑心暗鬼になりつつある今見ると、違った意味で恐怖を感じられる作品でした。結局一番怖いものは何なのかを考えながら見て欲しいです。
舞台は謎の疫病に侵されて壊滅した世界。その感染を逃れるために、森の中でひっそりと暮らすポール一家が主人公です。家族しかいない、閉鎖された空間で感染を恐れて生きる日々。こういう時間が長く続くと肉体よりも先に「精神」が壊れていくのだと感じました。
不気味な世界観や、音で驚かせてくる部分もありますが最後まで飽きずに楽しめました。(女性 30代)
以前に一度鑑賞した時はあまりピンと来なかったが、コロナ禍の今観ると違った味わいがあり興味深かった。正体のわからないものに怯え、他者を信じられず疑心暗鬼になっていく主人公たち。必死に自分を守ろうとする人間たちの姿に苛立ちながらも、緊迫した演出や不穏な空気感に不安を煽られ続け、思わず作品の世界にのめり込んでしまった。(女性 20代)
恐らく病原菌に関するストーリーですが、状況の説明がほとんどなされないまま進行します。説明しないことによって、効果的に緊迫感を表現していたようにも思います。閉ざされた空間での、人間の思惑や機微の描写が優れており、見ていて息が詰まりました。他人を信用すること、他人とコミュニケーションをとることの難しさを、重く暗く伝えているように感じます。最も恐ろしいのはウイルスではなく、精神的に追い詰められた人間だといえます。(女性 30代)
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