映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』の概要:戦争で頭蓋骨を骨折したインディアンのジミーは、謎の頭痛と体調不良に悩まされていた。検査をしても身体的に問題が無く、精神病の疑いがあると言われる。そこでインディアンについて研究しているジョルジュが呼ばれ、ジミーのカウンセリングを行う事になる。
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』の作品情報
上映時間:117分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:アルノー・デプレシャン
キャスト:ベニチオ・デル・トロ、マチュー・アマルリック、ジーナ・マッキー、ラリー・パイン etc
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』の登場人物(キャスト)
- ジェームズ・ピカード(ベニチオ・デル・トロ)
- インディアンの男性。通称ジミー。かつて戦地に行っていたが、1945年2月に除隊。謎の頭痛と体調不良に悩まされる。
- ジョルジュ・ドゥヴル(マチュー・アマルリック)
- 人類学者で分析医。ジミーの治療を担当する。
- マドレーヌ(ジーナ・マッキー)
- ジョルジュの愛人。
- カール・メニンガー医師(ラリー・パイン)
- メニンガー精神医学校の医師でジョルジュの友人。
- ホルト医師(ジョゼフ・クロス)
- メニンガー精神医学校の医師。
- ヨークル医師(エリヤ・バスキン)
- メニンガー精神医学校の医師。
- ジャック(ゲイリー・ファーマー)
- ジミーの姉ゲイルの夫。
- ゲイル・ピカード(ミシェル・スラッシュ)
- ジミーの姉。ある日を境に疎遠になってしまった母親の代わりにジミーを育てる。
- ジェーン(ミスティ・アッパム)
- ジミーの元恋人。ジミーとの間に娘がいる。
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』のあらすじ【起】
1948年モンタナ州ブラウニング。姉のゲイルはソファで寝ている弟のジミーを起こす。だが、いつものように体に痛みを感じ、ジミーはなかなか起き上がることが出来ない。
ジミーは森で牛を放牧させ、牛が壊した桶を作り直す為に道具を取りに行く。すると、突然頭痛と光が点滅したような症状に苦しみ蹲ってしまう。
ジミーはゲイルと共に寝台列車に乗るが、そこでも冷や汗が止まらず眠ることが出来なかった。カンザス州トピカにあるメニンガー精神医学校を訪れ、問診を受ける。ジミーはかつて戦争に行き、頭蓋骨を骨折していた。だが、光の点滅の原因は州の病院に行っても分からなかった。ジミーは耳が聞こえ難くなっており、鉄道の仕事を辞めていた。ゲイルは次々と弟の身に起る病を心配していた。
ジミーは一通り検査をする為、入院する事が決まる。検査をする事に不安を感じている弟をゲイルはそっと抱きしめる。
ジミーは看護婦から問診を受ける。1945年に軍を除隊し、血液型は不明。結婚の有無を聞かれると顔が少し強張った。離婚歴があり、娘がいるが離れて暮らしていた。その後、視力検査や聴力検査など様々な検査を行う。だが、絵を見て人物の考えを述べるテストで、ジミーは何も答えることが出来なかった。絵の左側で男達が人のお腹を切ろうとしており、右手前に女性が立っている絵だった。その代わりジミーは自身が見る夢について話す。高い壁から落ちそうになるが落ちない夢で、それを落ち着かない様子で話す。
医者達はジミーの症状について会議を行う。鼓膜も問題なく頭蓋骨に骨の欠片が残っている様子もなかった。精神疾患が疑われるが、夢か現実化区別できない時があるとジミーが言っていたと聞くと、分裂病の疑いがあるとして医師達の表情は厳しくなる。
病棟長のホルトは人類学者のジョルジュ博士に手紙を出す。インディアンであるジミーが精神疾患なのか、それとも部族特有の行動様式か判断する為である。
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』のあらすじ【承】
ジョルジュはカール・メニンガー医師から連絡をもらう。手紙についての返事を求められ、嬉々として行く事を決める。
ジミーは食堂で食事をとり、薬を渡される。目の前に座っていた男性がじっとこちらを見詰めてると思ったら、突然ナイフを手にし自分の手に思いっきり刺した。ジミーは驚き、辺りは騒然とする。
ジミーはバーで医師達が何も説明をしてくれない事を愚痴る。そして、女性から声を掛けられるがキスをして病院へと戻る、次の日、看護婦が患者を起こす為に部屋を見て回ると、ジミーが床に倒れているのを発見する。お酒と鎮痛剤を飲んだ為、閉鎖病棟に入れられる。
ジョルジュはトピカに着きカール医師達に出迎えられる。次の日、ジミーと対面し、まずは自分の自己紹介をする。ジョルジュは病院に勤務する人類学者でインディアンが専門だった。そして、ジミーの家族の事やインディアンの部族の言語について問いかける。ジミーの母は厳しい人で、父は5歳で亡くなった事などを話す。話しているジミーは終始不安そうな顔をしており、精神を病んでいる者達と同じ病院に入れられた事を嫌がっていた。
ジョルジュはジミーが描いた絵を見て、分裂病ではないと医師達に説明する。そして、ジミーが苦しむ原因は自分達と同じだと話す。
ジョルジュは分析医の博士号を持っていない為、医師会に公式な文章を提出するのにヨークル医師と組むよう、カール医師から言われる。
ゲイルが呼ばれジミーと共に説明を受ける。精神の病気の疑いがある為、日に1時間ジョルジュと面談するように言われる。ジミーは病棟を移り、看護婦のアルマが笑顔で出迎える。
ジミーはジョルジュと面談を行うが、彼の目の下にクマが出来て具合が悪そうなのを心配する。気にしないでいいと言われ、聞かれるまま夢の話をする。昨日は姉の牧場で牛を解体する夢で、一昨日は白人の男に腕を掴まれナイフで襲いかかられる夢だった。ジョルジュは2つの夢には共通点があると言い、ジミーは考えてナイフと答える。そして、インディアンの部族では夢は未来を表し、白人の文化では過去を表わすとされているので興味深いと言われる。
ジミーはジョルジュが体調不良で欠勤している事を聞かされる。フェンス越しに見えるジョルジュが借りている家を心配そうに見る。
ジョルジュがやって来るが、まだ体調が悪そうだった。ジミーは面談を行い、妻リリーの事を未だに引きずっている事を話す。軍に行っている間に妻が浮気をして離婚をしたのだ。
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』のあらすじ【転】
ジョルジュの愛人のマドレーヌから電報が届き、3日後トピカに来る書かれていた。ジョルジュは電車に乗ってやって来たマドレーヌを迎えに行く。だが、マドレーヌはトピカに来た理由をはぐらかす。
日曜日の面談で、ジミーは娘から手紙が来た事を話し、夢の中にジョルジュが登場した事を話す。夢の中で2人は猟に出かけたが、銃を持っているのはジミーだけだった。そこに熊が現れ追いかけられるが、引き金を引いても打てない。ジョルジュが弾は一発にしろと言い、ジミーが弾を装填すると別の夢へと変わる。狐狩りの場面になり狐を仕留める。狐を拾い上げるがジョルジュは何か言いたげにしていた。視線を戻すと狐は赤ちゃんに変わり、生死は不明だった。そこでジミーは目を覚ます。ジョルジュの診断では、ジョルジュがジミーの夢に現れたのは心の庇護者と思っているからだと言い、赤ちゃんは娘の事を表していると言う。手放したことを後悔してもその時のジミーはまだ17歳なのだから仕方がない、それよりも今の関係を大事にしろと伝える。ジミーは考え、お金を娘に送金する事を決める。だが、下ろすのに誰かのサインが必要な為ジョルジュに頼む。
マドレーヌとカール医師はジミー達が面談する様子を眺め、楽しそうな様子を見ていた。カール医師はマドレーヌにジョルジュの出会いを聞く。彼らの出会いは、先に夫がパリの待合室でジョルジュに出会った事から始まっていた。
ジミーはジョルジュと郵便局に行く。ジョルジュはわざわざ本人以外のサインが必要な事に苛立ち、職員にぶつける。その後、ジョルジュが散発している間ジミーは隣に座り、2人は他愛のない会話をする。
ジミーはある朝、血のようなもので枕が汚れているのに気づく。ジミーは姉に手紙を書く。軍に居る間、いとこからの手紙で妻の浮気を知り傷ついた事。疲労困憊の中、仲間の兵士と移動中に急停車した車から自身の体が投げ出され負傷した事。枕の汚れはその時病院で耳から出たものと同じだった。
ジョルジュに診察してもらうと、膿のようなものではないかと言われる。ジミーはまた頭痛がしだした事を話す。頭が原因なのではないかと言うが、ジョルジュから体の傷が癒えても心が傷を負ったままだと言われ、解決策は過去を断ち切る事だと言われる。
ジョルジュはジミーが治るまで病院に居るつもりだった。それを聞きマドレーヌは少しの怒りを滲ませる。ジョルジュは夕方になってもジミーが帰ってこないのを心配し探しに行くと、美術館で絵を眺めているのを見つける。そして、マドレーヌを大切な友人だと紹介する。
ジミーは面談で私(ジョルジュ)に依存する事が大切だと言われるが、そんな簡単には出来なかった。ジョルジュは話を進め、子供時代の話を聞く。ジミーは誰にも話したことが無い話をする。近所に住む姉妹がおり、自分より年下の妹と氷の上で遊んでいる時、妹が水の中へ落ちても助けが呼べず死んでしまった事。自分より年上の近所の姉に性器に触る事を強要された事。しかも、それをゲイルに見つかり、殴られて母に告げ口されたが、嘘をついて誤魔化した事。父が死んで、母が男とセックスしているのを見てしまい姉の家へと走って逃げた事。ジミーはその日から母とは疎遠になっていた。
ジョルジュは医師達の前で面談の話をする。ヨークル医師は面談がうまくいっている事を喜ぶ。
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』の結末・ラスト(ネタバレ)
ジョルジュはマドレーヌに誘われ草原を馬で走る。寝転びながら休憩していると、夫から手紙が来た事を聞かされる。しかも、フランス行きのチケットが同封されていた。しかし、ジョルジュはフランスに戻る気は無かった。
ジミーとジョルジュは映画を見に行く。帰り道ジミーは自分の周りの女性が死んでしまう事を嘆き、過去の話をする。娘の母であるジェーンから妊娠したと聞かされた日の事である。夜、ダンス会があるので行くと、部屋ではジェーンと母が話していた。別の女性から送って欲しいと頼まれ、送り届けて会場に戻るとジェーンが男性と居るのを見つける。ジミーは浮気を疑い、結婚する事を止める。だが、ジェーンは裁判されようと無視されようともジミーの事を愛し続けていた。だがある日、一家で町を離れる事になり、ジェーンは別の男性と結婚する。その後、ダンス会場でジェーンと共に居た男性に会い、ジミーの事を探すのに協力しただけだと言われる。その後、軍に入隊し妻のリリーと離婚し、ジェーンと偶然再会する。ジェーンは結婚してなおジミーを恋しがっていた。ジミーは胆のうの手術をするという彼女を見舞いに行くが、駅で彼女の同級生と会い亡くなってしまった事を聞かされる。ジミーは深く後悔していた。
ジミーの退院は検査次第で、もう間もなくだった。ジョルジュにはジミーが別れを惜しんでいる事が分かっていた。
ジミーは人形劇を見ていて頭痛が起きた事を話す。劇の内容は、女性を巡って男性が争う話だった。ジョルジュ曰く、それを見て心が傷ついたのではないかと言う事だった。面談を終わろうとするが、ジミーは苛立っている様子だった。ジョルジュのせいで自身の宗教観念が損なわれたと話すが、ジョルジュには身に覚えが無く冷静に話をさせる。2人は静かに言い争うが、次の面談の約束をし握手をしてジミーを送り出す。
マドレーヌは帰る日になり荷物を片付ける。ジョルジュを笑顔で送り出すが、1人になるとどこか淋しそうに微笑んだ。荷物をまとめるとジョルジュに宛てた手紙をそっと置いた。
ジミーは検査を受けるが時間がかかり、経理の窓口に間に合いそうになく焦る。看護婦のアルマに土曜の午前中なら空いていると言われ行くが閉まっていた。その後、ジミーはひどい頭痛に襲われベッドに運ばれる。ジョルジュがやって来て何が原因か探る。アルマの間違いを怒れず、女性を傷つける事も女性から傷つけられることも恐れているという。
ジミーは町へ出掛け、バーで声を掛けて来た女性にスカーフを贈りセックスをする。退院したらインディアンの多い町に行き、造船所で働く予定を立ている事を話す。
医師達はジミーの症状が良くなった事を話し、検査の結果が良かったら木曜日に退院できると伝える。コンプレックスが吹き飛んだと喜ぶジミーに、そんな医学的な言葉などつける必要が無いとジョルジュは怒る。だが、名前は必要だと言うジミーに、心的外傷という言葉があると言い、魂が傷ついたんだと話す。
ジミーは最後の検査を行い、ジョルジュは健康体だった事を伝えるが、ジミーは悲しそうだった。ジミーは退院後、娘に会いに行く事を考えておりいつかジョルジュも来てくれと誘う。
ジョルジュもまたジミーを恋しがっていたが、駅まで見送る事はしなかった。ジミーは娘に会いに行き養子にしようと考えている事を伝える。2人は話し合う事を決める。
映画『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』の感想・評価・レビュー
本作は、1948年のアメリカ・モンタナ州を舞台に、第二次世界大戦から頭蓋骨を骨折し心にも傷を負って帰還した先住民族の男と精神分析医の対話を実話を基に描いたヒューマンドラマ作品。
先住民族の患者とユダヤ人の医者の対話を中心に展開していくというシンプルな物語だが、2人の片言の英語がとても滑稽で長い対話を飽くことなく鑑賞できた。
特に、患者の心の傷の原因が戦争のトラウマではなく、過去の体験や女性との関わりからきているというのではないかという医者の精神分析の場面は見応えがあった。(女性 20代)
ジョルジュが言った「魂が傷ついている」という言葉がとても印象に残っている。過去のトラウマによってジミーに起こった病の症状は、誰にでも起こりうるものだと思う。その時、ジョルジュのような話をじっくり聞いてくれる精神科医に出会いたいなと思った。ジミーとジョルジュの関係は友情とも違うし、ただの医師と患者とも違うし、上手く言葉では言えない独特な関係だなと思った。静かな二人のやり取りに、引き込まれる作品だった。(女性 30代)
淡々と進むストーリーにジミーとジョルジュの会話。大きな驚きや面白い展開がある訳でもなく、至って普通なストーリーでしたが、物凄く心地よかったです。映画に驚きを求めている人には物足りない作品だと思いますが、ジミーの原因不明の症状や日々見続ける夢の内容など、一つ一つを親身になって聞いてくれるジョルジュの表情や仕草がとても自然で、私は好きでした。少しずつジミーが変わっていくのが分かるし、それと同時にジョルジュが変わっていくのも分かります。
静かで優しい大人の作品でした。(女性 30代)
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