映画『黒衣の刺客』の概要:13年ぶりに戻って来た娘は、美しく天才的な暗殺者へと成長していた。彼女は任務としてかつての許嫁の暗殺を命じられるが、どうしても止めを刺す事が出来ない。情愛を消す事が出来ない、美しい暗殺者の苦悩を描いた任侠映画。
映画『黒衣の刺客』の作品情報
上映時間:108分
ジャンル:アクション、時代劇
監督:ホウ・シャオシェン
キャスト:スー・チー、チャン・チェン、妻夫木聡、忽那汐里 etc
映画『黒衣の刺客』の登場人物(キャスト)
- ニエ・インニャン(スー・チー)
- ティエンの許嫁だったが、政治的理由により許嫁を解消され公主の姉、道士のジャーシンに預けられる。やがて凄腕の暗殺者と成長し、ティエンを殺そうとする。情愛を消す事が出来ずに苦悩。無表情で無口。
- ティエン・ジィアン(チャン・チェン)
- 強大な力を持つファンボという国を治める主公。横柄だが、心優しい面もあり子供達を可愛がっている。インニャンとは許嫁同士だった。
- 鏡磨きの青年(妻夫木聡)
- 日本の使節団として中国へ渡るも、船が難破し流れ着く。帰る術もなく、鏡磨きを生業として生活している。居合わせたインニャンと父親を匿う。
- 公主ジーチャン / ジャーシン(シュー・ファンイー)
- 双子の姉妹。先帝の妹達。ジーチャンはファンボ主公へ嫁入りし、姉のジャーシンは暗殺組織の道士となり、インニャンを教育する。
映画『黒衣の刺客』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『黒衣の刺客』のあらすじ【起】
中国唐時代、親元を離れ道士ジャーシンに育てられたインニャンは、あらゆる技を叩き込まれた暗殺者として、13年振りに郷里ファンボへ戻って来た。従兄妹のティエン・ジィアンを殺す任務を命じられたからだった。
インニャンは母親から公主が婚姻の際、先帝の兄から貰った玉けつを受け取る。ティエンが元服の折、公主は彼とインニャンに2つある玉けつを授けた。それは、先帝の決意を2人に受け継ぐもので、ファンボと朝廷の平和を願い与えられた大切な物だった。
ティエンはファンボを治める主公である。彼の言う事には誰も逆らえなかった。
インニャンは主公の屋敷へ潜入し、暗殺の機会を窺う。そんなある日、兵に見つかったインニャンは屋敷内で騒ぎを起こした。ティエンは狼狽える事もなく正妃を訪ね、義務的に一時の時間を過ごす。
映画『黒衣の刺客』のあらすじ【承】
ティエンは朝廷寄りの意見を唱えるとして、インニャンの叔父を左遷。インニャンは常にティエンを見張り、妾妃と抱き合う2人さえも、表情を変えずに見つめる。だが、妾妃に姿を見られ、踵を返すインニャン。ティエンは彼女を追いかけて剣を交えた。
彼が一瞬、怯んだ隙に黒衣の女は逃げ去って行く。
無事に戻った主公を妾妃が慰める。彼女は置いてあった玉けつを彼に手渡した。主公は自分を狙う黒衣の女が、インニャンである事を知る。別れていた玉けつが2つとも、ティエンの手に戻った。
公主ジーチャンはティエンとインニャンの結婚を望み、2人に玉けつを与えたが、しかし翌年、事態が変化。当時の主公は息子に元家との結婚を望んだ。ジーチャンはティエンとファンボの将来を考え、インニャンを犠牲にしたのだった。
その後、インニャンは元家に侵入し、兵に斬られて死にそうになる。見かねたジーチャンは姉であるジャーシンに、インニャンを託したのだった。
ティエンはインニャンとの数少ない思い出を妾妃に語った。
インニャンの両親は、娘が暗殺者として育てられた事を知っていた。ジャーシンに預けなければ、娘は人並みの幸せを手に入れていたはずだった。だが、後悔は先に立たない。
父親は主公に呼び出される。参上すると左遷した父親の兄弟を左遷先まで、護衛する任を命じられた。
映画『黒衣の刺客』のあらすじ【転】
父親と叔父が出発。時間を置いて、彼らを狙う一団も出発した。
そうして、叔父を護衛する父親の一行が襲撃に遭う。近くにいた鏡磨きの青年が駆け付け、それを阻止しようとするも、窮地に立たされる。そこへ、危機を察知したインニャンが到着。彼女は襲撃者を撃退した。
その頃、主公の正妃は妾妃が妊娠した情報を得る。彼女は邪魔な者を消す為に早速、策を練った。
鏡磨きの青年の家で、世話になる事になったインニャンと父親。父は頻りに娘の事を嘆き、不幸を悲しむ。
鏡磨きの青年は日本人で、使節団の一員として中国へ向かっていたが、船が難破。流れ着いたは良いものの、帰る術が見出せず鏡磨きの職を生業とし、この地で暮らしているのだった。
インニャンは公主ジーチャンの孤独を思い、涙を滲ませる。そして、父と共に出発の身支度を整えた。
映画『黒衣の刺客』の結末・ラスト(ネタバレ)
主公の妾妃が呪いをかけられた。戻ったインニャンは彼女を助けるが、駆け付けた主公に剣を向けられる。彼はそこで妾妃が懐妊している事を知らされるが、インニャンはティエンを殺さずに去った。殺さなければならないのに、彼女はどうしても彼を殺す事が出来なかった。
調査の結果、妾妃に呪いをかけるよう計画したのは、正妃だった事が判明。主公は呪いをかけた呪術師を始末するよう指示して、正妃の元へ向かう。妻を前に剣を抜くが、息子が盾となり彼女を始末する事が出来なかった。
インニャンはジャーシンの元へ向かう。任務を遂行出来ない事を報告。ジャーシンは娘を始末しようとするが、彼女はジャーシンの上を行くほどに上達しており、傷1つ負わずに去って行く。シャーシンは寂しそうに娘を見送った。
インニャンは鏡磨きの青年の元へ戻る。青年を日本へ帰す約束をしていたのだ。彼女は暗殺から一切手を引き、青年と新羅へ旅立ち姿を消した。
映画『黒衣の刺客』の感想・評価・レビュー
数々の賞を受賞する台湾の監督ホウ・シャオシェンによる台湾、中国、香港合作の武侠映画。内容は難しいものではないが、セリフは差ほど多くなく静謐な空気感とそれぞれの心情を佇まいや表情、仕草で演じるというかなり高レベルな作品だと思う。淡々と進む中、美しい景色やかつての婚約者を暗殺する命を受けた美しい女刺客の懊悩が非常に繊細に描かれている。ヒロインを演じたスー・チーの美しさが際立っており、対決シーンでも緊張感で息を飲む。派手な演出はないが、複雑な人間の心情の奥深さを描ききった作品である。(女性 40代)
悲しい物語だった。ジィアンは国を治める者として横柄な態度が目立つが、優しい心も持ち合わせており、もしインニャンと結婚していればと思わずにはいられなかった。インニャンも暗殺者としては優し過ぎる人物だと思う。引き裂かれてしまった二人が、元の仲に戻る道がないことが何よりも悲しい。戦うシーンは全員動きがしなやかで美しさすら感じた。さすがだと思う。何気に妻夫木聡さんが出演しているのが驚きだった。(女性 30代)
凄腕の殺し屋を演じたスー・チーがとにかく美しい今作。殺し屋という役どころから、冷酷で残忍なキャラクターかと思いきや、かつて愛した人への優しさや愛情は忘れておらず、婚約者を殺すという使命と自分自身の素直な気持ちの狭間で葛藤する姿が、切なくも美しく描かれていました。
自分が殺し屋じゃ無かったら…彼女に感情移入して考えてしまいましたが、殺し屋だったからこそ守れたものもあり、とても複雑で悲しい物語でした。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー