この記事では、映画『娚の一生』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『娚の一生』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『娚の一生』の作品情報
上映時間:119分
ジャンル:ラブストーリー
監督:廣木隆一
キャスト:榮倉奈々、豊川悦司、安藤サクラ、前野朋哉 etc
映画『娚の一生』の登場人物(キャスト)
- 堂園つぐみ(榮倉奈々)
- 30代半ば、独身の女性。恋愛の区切りと共に辞職し、亡き祖母の一軒家へ移り住む。同僚との不倫関係を数年続け、疲れ果てている。祖母の染色を生業とする。
- 海江田醇(豊川悦司)
- 大学の教授。50代の初老で未婚の独身を貫いている。つぐみの祖母に長い間、片思いしていた。複雑な家庭環境で育った経歴を持つ。つぐみと結婚しようと思っている。
- 秋元岬(安藤サクラ)
- つぐみの元同僚で親友。寿退社する。
映画『娚の一生』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『娚の一生』のあらすじ【起】
染色家の祖母が亡くなった。美しくしとやかだった祖母は、つぐみにとっても大事な存在だった。細やかな気配りが出来るつぐみも、祖母に似て美しいらしいが、本人は大してそう思ってはいない。
祖母の葬式を終えた翌日、その男はふらりと現れた。男、海江田醇は関西弁を話し知的だが、どこかふてぶてしい初老の男だった。祖母から貰ったという離れの鍵を所持しており、前日の夜からそこに寝起きしていると言う。
祖母は若い頃、大学で染色を教えており海江田は教え子だったらしいが、それ以上は語らず離れに住み着く事を宣言した。
翌朝、離れのキッチンのガスが故障していたと言う海江田と朝食を摂るつぐみ。我が物顔でどこか不遜な態度の男だ。
買い物から帰ると、近所のお婆さんと世間話をしている海江田の話を聞く。彼はつぐみと結婚するつもりらしい。異議を唱えるつぐみは、家事の分担を海江田に言い付けた。
ご飯がおいしいと、必ずおかわりをする海江田。彼はつぐみに女としての精彩を欠いていると指摘。そして、自分と試しに恋愛をしてみないかと誘うも、つぐみはその誘いに断固して乗らなかった。

映画『娚の一生』のあらすじ【承】
つぐみの同僚で親友の秋元が遊び来た。秋元に自分の幸せを考えろと言われるつぐみ。
翌朝、秋元は海江田に根掘り葉掘り身上を聞き出す。海江田は既婚歴もなく独身で、生まれは京都。今は大学の哲学教授。身元はしっかりしているが、どこか胡散臭い。
秋元は帰り際、つぐみに寿退職する事を明かして帰って行った。
その日の夜、つぐみは落ち込んで死にたいと吐露。海江田はゴミ袋を1枚渡し、飛び降りるならこれに入って飛べと、事もなげに言った。その言い様に怒りを露わにしたつぐみは、夕食の支度を始める。すると、海江田が世間話でもするかのように、つぐみが不倫の後遺症で苦しんでいるようだから相談に乗ると言う。事情は秋元が話したのだろう。
ある日の朝、海江田は大学の仕事で不在だった。掃除をしていたつぐみ。ふと、姿見に映った自分の姿に海江田の言葉が過る。彼女は少しだけ身綺麗にした。
夕方、帰って来た海江田。つぐみは昼寝していたが、胸元にネックレスが無い事に気付く。一瞬、焦るもどうせ負け犬ネックレスだと言い、探す事をすぐに諦めてしまう。すると、海江田が急に怒鳴り出し、つぐみは自分を大事にしなさすぎると言って、出て行ってしまった。
辺りが暗くなり、雨が降り出した。ずぶ濡れの海江田がようやく帰って来る。疲労のせいで靴下すら脱げないらしい。彼の要望で靴下を脱がせるつぐみを、抱き締めようとする海江田。彼を突き飛ばすと、つぐみの胸元にはネックレスが戻っていた。綺麗だと褒められるが、祖母と付き合っていたらしい彼と恋愛など出来るはずがない。
映画『娚の一生』のあらすじ【転】
町の祭りに来た海江田。浴衣を着たつぐみと、借りた自転車に乗って港へ向かった。海江田はつぐみを1人にしないと言う。過去などどうでもいい。今、目の前にいる自分を見て欲しいと告げる。
祖母の法要が行われた。素知らぬふりで姿を現した海江田は、親族の前でつぐみと結婚したいと宣言。恋をしたので、仕方ないと言う謎の男に親族は茫然とする。
そんなある日の朝、海江田に手紙が届く。送り主を見た彼の様子が一変した。つぐみは気になってこっそり離れへ向かい、手紙を盗み見ようとするが、本人に見つかってしまう。見ても良いと言う彼を足蹴にしてしまうつぐみ。悪い妄想が先走る。すると、彼は話し出した。手紙の主は戸籍上の義姉で、内容は養い親が亡くなった事を知らせるものだった。1人にして欲しいと言う彼の要望を聞いて、つぐみは離れから出た。
祖母の仕事を引き継ぎ、染色をする穏やかで静かな毎日。
そんなある日、家の中に見知らぬ少年を発見。少年の身元を調べると遠縁の子供だった。恐らく母親は、新しい男が出来て子供を置いて行ったのだ。警察に母親の捜索願を出し、子供を預かる事にする。
ご飯も食べずにテレビを観る。挨拶もせずご飯に手をつけようとする。好きな物はハンバーガー。食べ物はコンビニで買う。少年に対する母親の躾は酷いものだった。母親が帰る電車の時刻を諳んじる少年。つぐみは切なくなって少年を抱き締めた。
疑似家族のような生活が1週間。海江田は少年に母親から捨てられた事を告げる。すると、少年は姿を消してしまった。慌てて探し回る2人。夜になり、少年がようやく見つかる。怒鳴りつける海江田は少年を抱き締め、3人で帰宅した。
少年の母親が見つかった。迎えに来た母親は派手な女性で、悪気もなく帰ろうとする。3人で暮らした生活が思い出され、つぐみは泣きながら別れを惜しんだ。
映画『娚の一生』の結末・ラスト(ネタバレ)
ある日、つぐみの母親が訪ねて来る。四の五の言うつぐみをよそに、海江田と母親の間で結婚の話が進む。母親はスキップをして帰って行った。
夕方、ひょんな事から妙な雰囲気になる海江田とつぐみ。彼はつぐみの足先に口づける。そうして、2人は体を重ねた。
海江田はつぐみを連れて、京都の実家へ向かった。義母の仏前に参り、挨拶を済ませる。海江田の義姉夫婦は、義弟とつぐみを大歓迎した。家の事情を聞いた後、クラシックカーを譲り受けた2人は、寄り添いながら京都観光をして自宅へ帰った。
穏やかな生活の中ふと、つぐみの祖母が亡くなった時の事を語る海江田だったが、そこへ訪問者が現れる。つぐみの元不倫相手だった。離婚が成立したので、彼女を迎えに来たと言う。海江田は招き入れようと声をかけ突然、男を蹴り倒した。揉み合いになる内、気絶してしまう元不倫相手。つぐみは海江田をそっちのけにして、元不倫相手を病院へ。そこで再び、プロポーズしてくる勝手な男に対し、彼女はその気が無い事を話し丁重に断った。
決意を新たに自宅へ戻ったつぐみだったが、海江田の姿がどこにも無い事に気付く。
いくら待っても、彼は戻って来なかった。
海江田が姿を消して数日後、未曽有の台風が到来。つぐみは近所のお婆さんが心配で家へ向かう。お婆さんを背負い暴風雨の中を自宅へ戻ろうとするが、力尽きて道路に蹲った。しかしそこへ、颯爽と海江田が現れ、お婆さんを背負ってくれる。
彼が戻って来てくれたのだ。つぐみはほっとすると同時に、そんな思いで一杯だった。
郵便局員が郵便を届けに来た。あの少年からの葉書には、大きな丸が書いてあった。表札は海江田。翻る染物の布の間で、つぐみは海江田にそっと抱き着いた。
映画『娚の一生』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
原作の漫画が好きなのだが、個人的には榮倉奈々さんよりも菜々緒さんのような大人っぽい顔立ちの女優さんの方が堂薗つぐみ役に合っていると思う。榮倉さんでは豊川悦司さんとあまり合わなくて、少しだけ微妙に感じた。豊川さんは関西弁のセリフが上手くて、まさしく海江田醇を体現したような人だと思う。映画の舞台は本当に素敵で、長閑な風景と堂薗つぐみと海江田醇の何とも言えない関係がマッチしていて良かった。(女性 30代)
原作のつぐみと海江田先生の温かい恋愛模様が、映画でもうまく描かれていたと思う。原作の魅力の一つは、戸惑いながらも海江田に対してだんだんと惹かれていくつぐみの姿であるが、そこの部分はきっちりと描かれていた。
海江田役には豊川悦司が適役だったと思う。独特の洒落た雰囲気や、落ち着いた関西弁など、魅力を損なうことなく海江田を演じ切っていた。
映像は美しく、田舎特有のゆったりと時間が流れる様子がよく伝わってきた。(男性 20代)
原作ファンとしてもどうなるか楽しみにしていた映画でしたが、十分に楽しめました。原作と大きく違う部分もなく、安心して観られたと思います。豊川さんでは少しガタイが良すぎるのではないかと不安になったものの、歳を重ねた海江田のどこか掴めない雰囲気と、やわらかな関西弁も心地よくそれほど違和感を覚える事なく観ることができました。
激しい情動はないものの、少しずつ互いの距離が縮まっていく大人の恋愛が描かれているので、大人の恋愛を観たい人にオススメしたい作品です。(女性 20代)
最初は大柄で失礼な海江田を煙たがっていたつぐみだが、つぐみがなくした大切なネックレスを土砂降りの雨の中捜しまわったりする姿に心を打たれ惹かれ始める。海江田の大人の色気や優しさと、懇親的で一歩下がって付いていく男性を立てるつぐみの在り方がピッタリだった。言葉数は少なくも想い合っている大人の恋愛にキュンとした。長身でスタイルの良い2人が並んで歩く後ろ姿が本当に様になる。距離感を保ちながら進むラブストーリーも新鮮で面白かった。(女性 30代)
豊川悦司が榮倉奈々の足を舐めるイメージしか無かったこの作品ですが、共感できる部分が沢山あってとても楽しめました。
年上の男性って物凄く魅力的に見えますよね。落ち着いた雰囲気に、大人な振る舞い、喋り方も穏やか。そんな大人な男性の「イメージと違う」部分を見た時どう思うでしょうか?
年上の男性のダメな部分や、カッコ悪い部分こそ魅力的だと思ってしまう私は、もう既に豊川悦司の虜なのかも知れません。枯れ専じゃ無くてもかなりときめいてしまいました。(女性 30代)
豊川悦司演じる海江田の、突拍子も無い言動と図々しさに面食らいますが、慣れると清々しさを感じました。海江田を冷たくあしらっていたつぐみは、後半にはすっかり受け入れています。つぐみの緩やかな心情の変化を繊細に描いていて、つい共感してしまいました。原作の舞台は架空の田舎町でしたが、映画では鹿児島県になっていて素晴らしい世界観でした。古びた駅、古民家、方言。癒しが満載です。染め物の色合いも美しく、目が離せませんでした。(女性 30代)
榮倉奈々さん演じる海子の、過去に傷つきながらも少しずつ心を開いていく様子がとても繊細で共感できました。年上の海江田先生との距離感もリアルで、最初は違和感があった年の差恋愛も、次第に自然に感じるようになりました。特に、終盤で海子が「一緒にいたい」と素直に気持ちを伝えるシーンは涙が止まりませんでした。静かで深い、大人の恋愛映画です。(30代 女性)
海江田先生のキャラがとにかく魅力的でした。見た目は強面だけど、実はとても優しくて包容力のある人間味に溢れていて、こんな男性に出会えたらと思わせる存在でした。海子が自分の殻を破って心を開いていく過程は、観ていてとても心に響きました。淡々と進む物語の中に、確かに熱い感情が流れているのを感じました。(40代 女性)
年の差恋愛って苦手だったけど、この映画はそんな偏見を吹き飛ばしてくれた。海江田先生の存在感がすごくて、特に「一緒にいてほしい」って言うあの言葉が頭から離れない。静かな田舎町での生活の中に、ふとした瞬間に生まれる愛情がとても美しかった。心がほっとするようなラブストーリーだった。(20代 男性)
主人公・海子の立場に自分を重ねて観ていました。恋愛から逃げていた彼女が、海江田先生のまっすぐな愛に少しずつ癒されていく姿に、何度も涙しました。特に、海子が抱える「自分には愛される価値がない」という思いに共感してしまい、終盤の告白シーンは心から応援していました。優しく、切ない映画でした。(50代 女性)
映画『娚の一生』を見た人におすすめの映画5選
しあわせのパン
この映画を一言で表すと?
心と体がほぐれていく、パンの香りとともに味わう癒しの時間。
どんな話?
北海道・洞爺湖の湖畔にあるパンカフェを営む夫婦のもとに、悩みを抱えた人々が訪れる。静かな自然と温かなパンに囲まれながら、それぞれの心が少しずつ癒され、前を向いていく様子を描いたヒューマンドラマ。
ここがおすすめ!
静かな映像と穏やかな音楽、美しい自然の描写が印象的で、観るだけで心が和らぎます。登場人物たちの人生模様も共感しやすく、自分のペースで歩いていくことの大切さをそっと教えてくれる作品です。
東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜
この映画を一言で表すと?
母と子の深い絆に涙する、大人のための感動作。
どんな話?
主人公・ボクは自由な人生を送りながらも、病に倒れた母・オカンと暮らすことで、自分の人生を見つめ直していく。親子の愛情と人生の選択を、静かで温かいタッチで描く実話をもとにした作品。
ここがおすすめ!
親子愛の奥深さに胸が締めつけられるような感動があります。大切な人との時間が何よりもかけがえのないものだと、観終わったあと強く感じさせられる映画です。『娚の一生』の静かな情感が好きな方にぴったり。
そして父になる
この映画を一言で表すと?
“血のつながり”か“過ごした時間”か──親としての本質を問う感動作。
どんな話?
6年間育てた息子が実は他人の子だったという衝撃の事実から始まる、2つの家族の葛藤と再生の物語。家族とは何か、親としての在り方とは何かを深く問いかける是枝裕和監督の名作。
ここがおすすめ!
感情を押しつけることなく、淡々と丁寧に描かれるからこそ心に響く。小さな仕草や表情で語る人間関係の機微は見応えたっぷりで、『娚の一生』のような静かで深いドラマを求める方におすすめです。
恋文 〜私たちが愛した男〜
この映画を一言で表すと?
ひとりの男を愛した、三人の女たちの優しく切ない物語。
どんな話?
突然亡くなった男性をめぐって、彼に深く関わっていた三人の女性が出会い、やがて互いの人生と向き合っていく。ひとつの死を通して浮かび上がる、それぞれの愛と喪失、再生を描いたヒューマンラブストーリー。
ここがおすすめ!
登場人物それぞれの視点で語られる構成が美しく、静かで情緒的な映像が心を打ちます。大人の恋愛と人生の選択に揺れる女性たちの姿は、『娚の一生』と同じくリアルで共感できる魅力があります。
海よりもまだ深く
この映画を一言で表すと?
「なりたかった大人」になれなかった人々の、ささやかな再生物語。
どんな話?
元作家で今は探偵をしている良多が、母と過ごすある台風の夜に、かつての家族と再会。小さな出来事を通じて、家族の絆や自分の過去と向き合う姿を静かに描いていく。
ここがおすすめ!
日常の中にある愛しさと痛みを、是枝裕和監督ならではの繊細なタッチで描いています。人生に行き詰まった時にふと観たくなる、優しさに満ちた一本です。『娚の一生』の空気感が好きな方に特におすすめ。
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