この記事では、映画『LAMB/ラム』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『LAMB/ラム』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『LAMB/ラム』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2021年 |
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上映時間 | 106分 |
ジャンル | ホラー ファンタジー |
監督 | ヴァルディマル・ヨハンソン |
キャスト | ノオミ・ラパス ヒルミル・スナイル・グドゥナソン ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン イングヴァール・エッゲルト・シーグルソン |
製作国 | アイスランド スウェーデン ポーランド |
映画『LAMB/ラム』の登場人物(キャスト)
- マリア(ノオミ・ラパス)
- ノルウェーの山あいで、夫のイングヴァルと共に羊の農家を営んでいる女性。
- イングヴァル(ヒナミル・スナイル・グヴズナソン)
- マリアの夫。
- ペートゥル(ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン)
- イングヴァルの弟。
- アダ(ララ・ビョーク・ホール)
- 厩舎で産まれた羊の子供。
映画『LAMB/ラム』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『LAMB/ラム』のあらすじ【起】
イングヴァルとマリアの夫婦は、アイスランドの山あいにある牧草地で、羊を飼育する農家を営んでいた。ある日、厩舎で羊の出産に立ち会った2人は、生まれて来た赤子の羊が異様な姿をしていることに気付く。
マリアは羊の赤子を人間の赤ん坊のように抱きかかえ、他の羊と一緒に厩舎で育てるのではなく、ベビーベッドに寝かせる。2人はその赤子に「アダ」と名付け、自分達と一緒に家の中で育てることにする。やがてその赤子を産んだ母親の羊が厩舎を抜けだし、ベビーベッドのある部屋にいる自分の子供をいとおしむように、窓の外で鳴き出す。
マリアは母親の羊を追い払うが、母親羊は何度も窓の外に来るようになる。そして夫婦が外出から戻った時、ソファで寝かせていたアダの姿が見えないことに気付く。2人は広大な牧草地の中を探し回り、草地の外れで母親羊がアダと一緒にいるところを発見する。
2人は裸で草地に寝かされていたアダを抱き起こし、冷えないようにと毛布でくるむ。マリアに抱かれたアダは、頭部だけは羊だったが、首から下は人間という姿をしていた。
映画『LAMB/ラム』のあらすじ【承】
マリアは連れ帰ったアダを再びベビーベッドに寝かせるが、母親羊は相変わらず部屋の外で鳴き続ける。マリアは母親羊がまたアダを連れ出すのを恐れ、猟銃で撃ち殺し、家から離れた牧草地に死体を埋める。
アダが幼稚園児ほどの身長に成長した頃、イングヴァルの弟・ペートゥルが夫婦の家を訪ねて来る。ペートゥルは以前夫婦と一緒に羊飼いの仕事をしていたのだが、今は町に出て1人暮らしをしていた。
ペートゥルは金銭面でルーズなところがあり、トラブルに巻き込まれることも多かった。今回もそんなトラブルの末に夫婦の元を訪れたのだが、そのことは口にせず、再び夫婦と共に働くと申し出る。
そしてペートゥルはマリアが4人分の食事を用意しているのに気付き、誰か客がいるのかと問いかけるが、人間の子供のように服を着て、頭だけが羊のアダを見て愕然とする。
映画『LAMB/ラム』のあらすじ【転】
ペートゥルはマリアが留守の間に、「あれはいったいなんだ」とイングヴァルを問い詰めるが、イングヴァルは「あれは、俺たちの幸せだ。ここには好きなだけいていいが、俺たちのことに口を出すな」と、ペートゥルに言い聞かせる。
ペートゥルにはアダが羊にしか見えず、夜の間にアダを連れ出し猟銃で殺そうとするが、果たせずにそのまま家に連れ帰る。そしてマリアは、牧草地の外れに建つ小さなお墓に花を添える。その墓には、「我が娘アダ、ここに眠る」と記されていた。
イングヴァルとマリアの実の娘・アダは、牧草地で行方不明になり、死体で発見されていた。そんな過去があったため、2人は「羊から産まれた、羊と人間の混血児のようなアダ」を、我が子のように育てていたのだった。そしてペートゥルもそんな2人の想いをくみ取ったのか、アダと自然に触れ合うようになっていく。
映画『LAMB/ラム』の結末・ラスト(ネタバレ)
ペートゥルは牧草地での平和な日々を過ごすうち、イングヴァルの留守中にマリアを誘惑するようになる。マリアはそんなペートゥルを拒絶し、車に乗せて町行きのバスが来る停留所まで連れて行くと、金を渡してこの地を去るように告げる。
マリアが出かけている間、イングヴァルはアダを連れ、壊れたトラクターの修理をするため牧草地へと向かう。するとそこで、全身を体毛に覆われた、頭だけが羊で大人の体格をした羊男に遭遇する。羊男はイングヴァルを猟銃で撃ち、アダを連れてどこかへ去って行く。羊男は以前にも何度か厩舎に来ていて、母親羊にアダを身ごもらせたのもこの羊男だった。
外出から戻ったマリアはイングヴァルとアダを探しに行き、血を流して倒れているイングヴァルを見つける。そしてアダの姿がどこにも見えないことに気付くが、自分にはどうにもならないのを悟ったかのように、イングヴァルを抱きしめ「大丈夫、なんとかなるから」と囁くのだった。
映画『LAMB/ラム』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
自然と人間の境界が曖昧になる不思議な世界観に圧倒されました。アダという“子羊”が登場した時点で異様な空気が漂っていましたが、両親が自然に彼女を受け入れていく流れが逆に不気味さを増していました。マリアの母性は強いけれど、その裏には失ったものを埋めようとする狂気が見えて切ない。ラストの“父親”の出現は神話的で、人間が背負う罪と罰を突きつけられたように感じました。(30代 女性)
この映画の怖さはホラーというより、異常を異常と感じなくなる人間の心理にありました。アダが登場する瞬間は驚きましたが、それ以上にその存在を「当然」として扱い続けるマリアたちの姿が本当に怖かった。静けさと風景の美しさが、逆に不穏さを引き立てていて、最後の一撃には鳥肌。まさに“詩的な恐怖”です。(40代 男性)
羊と人間のハイブリッドという時点で突飛な話かと思ったけれど、全編を通して非常に静かで淡々と進むのが印象的。無言の中に秘められた悲しみや愛情が、映像と音でじわじわ伝わってきました。アダは可愛い存在でありながら、同時に“異物”でもあり、観る者にさまざまな感情を呼び起こします。あのラストはずっと忘れられないと思います。(20代 女性)
全編にわたってセリフが少なく、画で語るスタイルに引き込まれました。羊小屋の空気や山の静けさがリアルで、まるで自分がその場にいるような感覚。アダの存在が持つ神話的な意味も気になり、ラストの“父なる存在”が現れた瞬間、これが因果応報の物語だったと悟りました。アイスランドの自然と神話が交差する独特の映画でした。(50代 男性)
悲しみに耐えられず、自然の理さえねじ曲げてしまった夫婦の物語として観ました。アダが可愛くて切なくて、本当に愛着が湧きました。でも、それが“代償”として何かを招くと分かっているからこそ、後半は胸が苦しかったです。母性が持つ力と、それが他者からどう見えるか、非常に深いテーマを含んだ作品です。(30代 女性)
映画館で観ましたが、終始静まり返った客席の空気が映画の空気と完璧に一致していました。異形の存在を受け入れてしまう人間のエゴ、それを咎めるかのように登場する“存在”。説明の少なさが逆に観る側の想像を広げてくれて、終わってからもずっと考えさせられる映画でした。余白のある作品って、いいですね。(20代 男性)
最初は牧歌的な雰囲気だったのに、気づけばどこか不穏な空気が支配していて、気が付いたら画面に釘付けになっていました。アダの存在はシュールなのに妙にリアルで、母として接するマリアの姿に複雑な感情を抱きました。ラストの“父親”が現れた瞬間、「これで物語は完結した」と感じたのがとても印象的でした。(40代 女性)
ホラーでもファンタジーでもない、でもどちらの要素も持っている非常に不思議な映画でした。アダという存在は“奇跡”のように見えるけれど、それが本当に祝福だったのか、最後には考えさせられます。自然と人間の関係、失ったものを取り戻そうとする欲望、それが生む悲劇。短いセリフに込められた重さがずっしり残ります。(30代 男性)
アダが登場するまでのテンポが遅いと感じる人もいるかもしれませんが、その“静けさ”こそが本作の醍醐味。自然を神聖なものと感じさせる演出がとてもよくできていて、その中に突如現れる“人間による罪”が浮き彫りになります。母としてのマリアの選択が、最後にどんな結果をもたらすのか…観終わっても考え続けています。(50代 女性)
一見不思議で幻想的な話のようで、実はとても現実的な“喪失”の物語だと感じました。アダは亡くなった子どもの代わりというだけでなく、“赦されざる希望”の象徴でもあるのかもしれません。あのラスト、父親の存在が現れることで、マリアの選択がどれだけ重いものであったか突きつけられます。まさに静かな地獄の映画でした。(20代 男性)
映画『LAMB/ラム』を見た人におすすめの映画5選
ミッドサマー
この映画を一言で表すと?
真昼の太陽の下で繰り広げられる、美しくも恐ろしい祝祭ホラー。
どんな話?
恋人と友人たちとスウェーデンの夏至祭に参加したダニーは、開放的な空気の中で精神のバランスを崩し始める。祭りの奥に隠された狂気の儀式が徐々に明らかになっていく、異文化ホラーの傑作。
ここがおすすめ!
『LAMB/ラム』と同様に、自然と人間の関係性、喪失と再生をテーマにした作品。異様な静けさと視覚的美しさが、心理的恐怖と見事に融合しています。不穏なのに目が離せない体験が待っています。
ヘレディタリー/継承
この映画を一言で表すと?
“家族”に巣食う呪われた血の系譜が静かに狂気を生む。
どんな話?
母親の死をきっかけに、次々と不気味な出来事に見舞われる一家。家族の秘密と血筋にまつわる恐怖が少しずつ明らかになる中で、避けられぬ運命に巻き込まれていく心理ホラー。
ここがおすすめ!
家族という密室の中で生まれる異常と“継承”というテーマは、『LAMB/ラム』と深く重なります。恐怖の正体を明かすことなくじわじわと追い詰める演出は、極上の緊張感を味わえます。
ウィッチ(原題:The VVitch)
この映画を一言で表すと?
神と魔と自然が交錯する、17世紀のダーク・フォーク・ホラー。
どんな話?
信仰に生きる家族が森の奥に移住した矢先、赤ん坊が消える事件が発生。そこから家族の絆は崩れ始め、次第に“魔女の存在”が現実味を帯びてくる…。
ここがおすすめ!
自然との対峙や宗教的テーマ、そして閉鎖的な空間に宿る狂気など、『LAMB/ラム』と通じる静かなる恐怖が秀逸。緊張感に満ちた映像美と演技が際立ち、神話的でゾクっとする余韻を残します。
ボーダー 二つの世界(原題:Border)
この映画を一言で表すと?
自分が“人間”だと信じていた者が知る、本当の自分の正体とは。
どんな話?
異常な嗅覚を持つ税関職員ティーナは、ある日不審な男と出会うことで、自分の出生と“本当の種”に関する秘密を知ってしまう。北欧神話的要素を背景に描かれる異色のヒューマン・ドラマ。
ここがおすすめ!
『LAMB/ラム』と同様に、“人間ではない何か”と暮らす物語がテーマ。ヒューマンドラマの皮をかぶったファンタジーとサスペンスの混在が唯一無二の体験をもたらします。自然描写と心理描写が秀逸です。
アンチクライスト(原題:Antichrist)
この映画を一言で表すと?
悲しみの果てに辿り着くのは、狂気か、それとも救済か。
どんな話?
子を亡くした夫婦が、傷を癒すために山荘へ向かうが、自然の中で次第に精神を蝕まれていく。ラース・フォン・トリアー監督による極限の心理ホラー。
ここがおすすめ!
静けさと不穏の対比、そして「喪失」がもたらす心の崩壊というテーマが『LAMB/ラム』と深く共鳴します。強烈な映像表現で賛否は分かれますが、魂を揺さぶる一本です。
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