映画『ラヴ・ストリームス』の概要:女を深く愛することができない作家が、男を愛しすぎて精神のバランスを失っていく姉と久々に再会し、愛の難しさを突きつけられる。インディペンデント映画というジャンルを確立したジョン・カサヴェテス監督の遺作。
映画『ラヴ・ストリームス』 作品情報
- 製作年:1983年
- 上映時間:139分
- ジャンル:ヒューマンドラマ
- 監督:ジョン・カサヴェテス
- キャスト:ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ダイアン・アボット、リサ・マーサ・ブルイット etc
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映画『ラヴ・ストリームス』 評価
- 点数:90点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★★
- 設定:★★★★☆
[miho21]
映画『ラヴ・ストリームス』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『ラヴ・ストリームス』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『ラヴ・ストリームス』 あらすじ【起・承】
ハリウッド郊外で暮らす作家のロバート(ジョン・カサヴェテス)は、愛と孤独を描いた著書で人気を博している。彼の家には秘書とその娘、さらに複数の若い女性たちが寝泊まりしており、退廃的な空気に満ちていた。ロバートは特定の女を作らず、奔放な恋愛を楽しんでいる。
ロバートにはサラ(ジーナ・ローランズ)という姉がおり、彼女は15年連れ添った夫と離婚協議中だった。サラは13歳になる娘と夫を心から愛していたが、2人には彼女の強烈な愛が窮屈で、娘まで父親と暮らすと言い出す。ショックのあまり倒れてしまったサラは、医者の勧めでフランスへ行く。しかしフランスにもサラの求める愛はなく、疲れ果てて帰国する。
ロバートの2度目の結婚相手がアルビーという8才の息子を連れて訪ねてくる。アルビーは生まれて以来会ったことのないロバートの息子で、突然子守を任されたロバートは子供にどう接していいかわからない。とりあえず女性たちに帰ってもらい、アルビーとベガスへ行こうとしていたところに、行き場をなくしたサラがやってくる。ロバートは姉のサラが大好きで、彼女の訪問を大歓迎する。
ロバートはアルビーとベガスへ行くが、1人で遊びに出てしまい、アルビーは家へ帰りたいと言って泣き出す。アルビーを母親のもとへ送り届けると、ロバートは現在の夫から手酷く殴られ、ボロボロになって帰宅する。
映画『ラヴ・ストリームス』 結末・ラスト(ネタバレ)
安定した生活ができず継続して女性を愛することができない弟と、家族を愛しすぎて精神まで病んでしまった姉は、どちらも孤独に打ちひしがれていた。ロバートは帰宅後すぐにまた外出し、サラは生まれて初めて男を探すため、ボーリング場へ行く。
サラはそこでケンという年下の男性と知り合い、気晴らしをしてくる。先に帰宅していたロバートは、若い男に送られてきたサラの姿を見ていた。その夜、サラの娘から電話があり、サラは娘からも夫からも再び拒絶される。ロバートは電話に横槍を入れ、サラの夫に抗議するが、かえってサラを怒らせてしまう。
翌日、サラはロバートには愛情を注ぐ対象が必要だと言い出し、ポニーやヤギや鶏にアヒル、さらに犬まで買い込んで帰ってくる。ロバートの呆れた様子を見て、サラは倒れてしまい、意識を失う。サラは夢の中で娘や夫と会い、2人の愛を取り戻していた。
その夜はひどい嵐で、ロバートは動物たちを家へ避難させるのに必死だった。どんどんおかしくなる姉を心配し“動物の世話もするからここにずっといてくれ”とサラを説得するが、彼女はすでに夢と現実の区別もつかなくなっていた。サラは“今夜発つ”と言って聞かず、ケンを呼び出す。ロバートはサラを抱きしめ“行かないでくれ”と頼む。しかしサラにその言葉は届かず、彼女はケンと出て行ってしまう。ロバートは外を見つめ、寂しく手を振る。
映画『ラヴ・ストリームス』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『ラヴ・ストリームス』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
愛
本作のテーマは間違いなく“愛”だ。愛というのは人生に最上の幸福感を与えてくれるが、同時に孤独や狂気も否応なく運んでくる。その愛の狂気をこの映画はとことん掘り下げていく。だからとても重い。
作家であるロバートはおそらく過去に何度か手痛い目に遭い、現在は女性と真剣に向き合うことを避けている。お金で解決できる程度の広く浅い女性関係を楽しみ、相手に深入りしないし、させない。臆病な生き方だが、それで本人も相手の女性も満足なら、こんなに楽なことはない。つまりロバートは楽な道を選んでいる。ただその虚しさも自覚しており、自己嫌悪を繰り返している。
一方、姉のサラは夫と娘を愛しすぎてとことん苦しんでいる。夫と娘はサラの愛の重さに耐え切れず、彼女から逃げていく。そのことでサラは傷つき、精神を病む。ロバートのように愛に見切りをつけ、諦めることができたなら、サラも楽になれるのだろうが、彼女にはどうしてもそれができない。最後には現実と妄想の区別もつかないほど狂い始めており、目を背けたくなるような痛ましさだ。
ロバートが心の底から愛しているのは多分この姉だけで、サラのことに関してだけ彼は冷静でいられない。サラを心配するあまり、ロバート自身までおかしくなりかけている。ロバートは行こうとするサラを必死で引き止めるが、結局サラは出て行く。ロバートは、愛の狂気に取り憑かれ正気を失った姉を助けることができない。この展開には徹底的なリアリティーと説得力があるので、ロバートも観客も悲しいけどこの事実を認めざるをえない。
諦めたように手を振るロバートから、底知れぬ絶望感と虚無感が伝わってくる。その瞬間、映画は唐突に終わりを迎え、私たちは重苦しい余韻の中に取り残される。“愛は生易しいものじゃないんだぞ”というジョン・カサヴェテス監督の強烈なメッセージが、頭の中でぐるぐる回り、しばし言葉を失う。愛をつきつめて考えるのは、苦しいから嫌なのに、これを見たら考えずにはいられない。ズシッと重い。すごい余韻だ。
映画『ラヴ・ストリームス』 まとめ
この映画を手短に語るのは難しすぎる。これは愛についての映画だが、ラブストーリーではない。話が面白いとか、あのシーンが良かったとか、そういう類のことではなく、映画全部が大きな塊となってこちらの感情をグラグラと揺さぶってくるような作品なのだ。それも根元から揺さぶられるので、こちらは真っ直ぐ立っているのがつらくなる。
完全に正気を失っている(ように見える)ジーナ・ローランズの最後の表情が胸に迫る。ジョン・カサヴァテス監督、恐るべし。書いておいてこんなことを言うのも何だが、あらすじや解説など読んでもあまり意味がない。多少なりとも興味があるなら、自分自身でこの映画と対峙するべき作品だ。その価値は大いにある。
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