この記事では、映画『万引き家族』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『万引き家族』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『万引き家族』の作品情報
出典:U-NEXT
製作年 | 2018年 |
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上映時間 | 120分 |
ジャンル | ドラマ |
監督 | 是枝裕和 |
キャスト | リリー・フランキー 安藤サクラ 樹木希林 松岡茉優 |
製作国 | 日本 |
映画『万引き家族』の登場人物(キャスト)
- 柴田治(リリー・フランキー)
- 日雇い労働者として働いているが、やる気はない。息子の祥太と共に万引きを行っている。
- 柴田信代(安藤サクラ)
- クリーニング屋の工場で働いている。子供を産むことができない。口が悪いが、家族に対しては優しい。
- 柴田亜紀(松岡茉優)
- 治と信代と一緒に暮らしているが、2人と血の繋がりはない。初枝の夫の後妻の息子夫婦の娘。初枝のことを慕っている。「さやか」という名前でJK見学店で働いている。柴田家の中で唯一万引きを行っていない。
- 柴田祥太(城桧吏)
- 治と信代と一緒に暮らしているが、2人と血の繋がりはない。学校には行っていない。愛読書は絵本の『スイミー』。幼い頃、車に放置されていたところを治達が誘拐した。本当の両親のことを覚えていない。
- 柴田初枝(樹木希林)
- 治達と一緒に暮らしているが、血の繋がりはない。年金を受給しており、治達との生活費に充てている。万引きなどの犯罪を行っている。
- ゆり(佐々木みゆ)
- 本名、北条じゅり。父親からは暴力を振るわれ、母親からは育児放棄されている。ひょんなことから柴田家で暮らすようになり、家族として打ち解けていく。
映画『万引き家族』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『万引き家族』のあらすじ【起】
柴田治は息子の祥太とスーパーに行き、万引きをさせて商品を手に入れた。そして、商店街のコロッケ屋さんでコロッケを購入し、帰路に就いた。家の近所にある団地の外廊下で、少女が震えながら立っていた。それは度々見る光景だった。治は放っておくことができず、少女を連れて帰った。
少女はゆりと名乗った。治の妻の信代は文句を言い、食事をさせたら帰すよう治に指示した。祖母の初枝は、ゆりの体に虐待の跡があることに気づく。治と信代はゆりのことを気にしながらも、通報される前に自宅に帰すことにした。家まで送っていくと、ゆりの家の中から男女の言い争う声が聞こえてきた。結局、信代達はゆりを自宅に帰すことができず、家に泊めた。
治はやる気がないながらも日雇い労働者として働き、信代はクリーニング屋の工場で働いていた。2人が働いている間、初枝はゆりの傷の手当てを行い、学校に通っていない祥太と一緒にいた。市の職員が家を訪ねて来た。実は、初枝は1人で住んでいることになっており、祥太達の姿を見られるわけにはいかなかった。祥太とゆりはこっそり家を出た。
柴田家の長女である亜紀は、ゆりを勝手に連れてきたのは誘拐に当たるのではないかと心配していた。だが、身代金を要求しているわけではないからと、信代は聞く耳を持たなかった。皆で夕飯を食べていると、工事現場で足を怪我した治が帰ってきた。1ヶ月ほど仕事ができない状態だった。治達は労災が下りることを期待した。だが、結局労災は下りなかった。
映画『万引き家族』のあらすじ【承】
亜紀は「さやか」という名前を使い、JK見学店で働いていた。常連客の中には、亜紀が「4番さん」と名付けた人物がいた。初枝は年金を家に入れている傍ら、パチンコ店で他の客のドル箱を盗んでいた。治は祥太だけではなく、ゆりにも万引きを手伝わせた。祥太は男だけの方が良いと思いゆりに手伝わせることに反対だったが、治は聞く耳を持たなかった。治は家にいやすくするため、ゆりにも協力させた方が良いと考えたのだ。祥太は治に説得され、ゆりが手伝うことに納得した。
ゆりの失踪事件がテレビで報道された。テレビを見て、ゆりの本名が「じゅり」だと知る。2か月経っても捜索願が出されていなかったことから、じゅりの両親は重要参考人として事情聴取を受ける予定だった。じゅりを殺害したのではないかという疑いを持たれているのだ。じゅり本人が柴田家にいることを選んだため、信代達はじゅりの髪を切って「りん」という偽名で呼ぶことにした。
信代と初枝はりんのために水着を選ぶが、りんは水着が欲しくないと首を横に振った。りんは暴力を振るわれることを恐れていた。信代は優しい声で暴力を振るわないことを教えた。その後、信代は水着を着たりんと一緒にお風呂に入った。信代の腕にはアイロンでついた火傷の跡があった。そして、りんの腕にも似たような火傷の跡があった。りんは信代の腕の火傷の跡を優しく摩った。
映画『万引き家族』のあらすじ【転】
祥太はりんと一緒に、よく万引きをする駄菓子屋を訪れた。りんが万引きを行うと、店主に呼び止められる。店主は祥太に駄菓子を渡し、妹にはさせるなと忠告した。一方、信代は同僚と一緒に上司に呼び出され、どちらか辞めてもらいたいと言われる。同僚は信代がじゅりと一緒にいるところを目撃しており、黙っている代わりに辞めて欲しいと頼んだ。信代は退社を受け入れた。
初枝は亡くなった夫の月命日に、後妻の息子夫婦(譲、葉子)の家を訪ねた。そこには「さやか」という娘がおり、姉の「亜紀」はオーストラリアに留学していることになっていた。両親は亜紀が初枝と一緒にいることを知らないのだ。初枝は素知らぬ顔で話を合わせた。譲は母が夫を奪ったことについて初枝に対して申し訳なく思っており、度々お金を渡していた。初枝は殊勝な態度を取りながらも、そのお金を当てにしていた。
亜紀は4番さんと店のトークルームに行き、顔を合わせた。その時、4番さんの手に傷があることに気づく。4番さんは自分を殴ったときに出来た傷だと教えた。亜紀も自分を殴ったことがあり、4番さんの辛い心情に共感した。亜紀は4番さんを抱き締めた。
映画『万引き家族』の結末・ラスト(ネタバレ)
柴田家は皆で海水浴に出かけ、楽しいひと時を過ごした。それからすぐ、初枝が家で亡くなった。治達は遺体を埋め、初枝の年金を受け取ることにした。祥太は治達と仲良くしながらも、彼らが行う犯罪行為に疑問を持ち始めていた。治が車上荒らしを行っても、祥太は手伝わなかった。
祥太がりんと駄菓子屋に行くと、「忌中」の紙が貼られていた。祥太はスーパーに移動すると、りんを店の前に残して万引きを行うことにした。だが、りんが祥太の言いつけを破り、店に入ってきて万引きをやろうとしてしまう。祥太はりんの行為を止めるため、物音を立てて商品を盗み店員の注意を引いた。祥太は店員の追跡から逃れるため高いところから飛び降り、足を骨折してしまう。
祥太の件で警察が介入してきたため、治達は祥太を見捨てて夜逃げしようとした。だが、警察に捕まってしまう。りんは保護され、全員事情聴取を受けることになった。治の本名は「えのきしょうた」、信代の本名は「たなべゆうこ」だった。2人はゆうこの前夫を刺殺して埋めていた。亜紀は治達の罪や初枝が両親からお金を受け取っていた事実を刑事から教えられ、ショックを受ける。信代は全ての罪を自分が被り、祥太は施設に行くことになった。そして、りんは本当の両親の元に戻った。
祥太は治と一緒に釣りを行い、刑務所にいる信代に会いに行った。祥太は捕まったことを謝罪すると、学校に通ってテストの成績が良いことを話した。信代達は祥太を責めることはなかった。信代は本当の両親を探し出せるようにするため、祥太が置き去りにされていた車の特徴と拾った場所を教えた。信代は祥太を手放すことを受け入れ入ていた。
祥太は治の家に泊まり、見捨てて逃げようとしたのか確認した。治はそれを認めて謝罪した。そして、「父」から「おじさん」に戻ることを伝えた。治もまた祥太を手放すことを受け入れたのだ。別れる間際、祥太はわざと捕まったことを治に打ち明けた。その後、りんは団地の外廊下で、1人で遊んでいた。
映画『万引き家族』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
“家族とは何か”という問いに、これほどまでに静かで深い答えを投げかける作品はなかなかありません。血のつながりではなく、“一緒にいた時間”が絆を形作っていた柴田家。特にラスト、祥太が万引きを拒否し、あえて警察に捕まるシーンは成長と自立の象徴のようで胸が熱くなりました。是枝監督らしい、余白の多い語り口が心に残ります。(20代 男性)
見終わった後、ずっと胸が苦しくなる映画でした。ゆり(りん)を「拾ってきた」と言うシーンの衝撃、そして本当の“家族”よりもこの家族のほうが彼女にとって温かかったことが、皮肉でありながら美しかったです。最後にゆりが団地のベランダに立ち、遠くを見る姿が切なくて、何度も思い返してしまいました。社会の冷たさを突きつけられた気がします。(30代 女性)
家族の“偽り”を描きながら、逆に“本物の愛”を見せてくれる映画でした。血のつながらない者たちが寄り添い合い、貧しさの中でも笑い合って生きていた日々。その幸せが、ある日突然崩れてしまう儚さ。安藤サクラさん演じる信代の「連れてきたんじゃなくて、置いていけなかったんです」というセリフには、思わず涙が溢れました。(40代 男性)
子どもを持つ親として、ゆり(りん)を巡る描写には胸が締め付けられました。虐待されていた少女を救い出すことが“誘拐”になるのかという問いに、法律と倫理のはざまで揺れる自分がいました。犯罪を重ねながらも、そこに愛があるという矛盾が、逆にリアリティをもって迫ってきました。社会のセーフティーネットがいかに脆いかも描かれていて、考えさせられました。(40代 女性)
“万引き”という行為を通して、家族の在り方や社会の制度の矛盾が浮き彫りになる作品。祥太が初めて「ありがとう」と言ったときの笑顔は、彼が初めて“父親”を心から受け入れた瞬間だったと思います。最後に一人取り残された彼の目が、寂しさと成長を同時に映していて印象的でした。静かながら、ものすごく力のある映画です。(20代 女性)
是枝監督の作品はいつも“余白”が魅力ですが、本作は特にその空白が痛みを伴って迫ってきます。言葉で語られない関係性が、画面の隅々から伝わってきて、見逃せない。リリー・フランキーと安藤サクラの夫婦の距離感、子どもたちの自然な演技、どれもリアルで、まるでドキュメンタリーを観ているような感覚でした。日本社会の闇と希望を同時に感じる一本。(30代 男性)
この作品は、観る人の立場や経験によってまったく違う印象を残す映画だと思います。貧困、虐待、教育、法といった問題が複雑に絡み合っていて、「正解」のない物語。それでも、柴田家に流れていた“家族らしさ”は確かに存在していて、それが壊れていく過程がとても切なかった。社会からこぼれ落ちた人々の声を代弁するような映画です。(50代 男性)
高校生の自分には、最初は難しいテーマかと思ったけど、すごく心に刺さった。みんな貧乏で、犯罪もしてるのに、家族としてちゃんと機能してて、その温かさが嘘じゃないことが分かった。最後にバラバラになるのが本当に悲しくて、特に祥太が一人で走るシーンは泣きそうになった。大人になってから、もう一回見直したい映画です。(10代 男性)
映画を観終わってからずっと「家族って何だろう」と考えさせられた。法律や血縁よりも、誰とどんな時間を過ごしたかが“家族”を形作るのかもしれないと感じた。ゆりを本当の家族のもとに返すという行為が“正義”なのかは、簡単には言えない。是枝監督の描く世界は、正解を押しつけてこないからこそ深く刺さるのだと思います。(20代 男性)
日本映画ってこんなに深くて、優しくて、でも厳しいものなんだと驚かされました。“貧しさ”を描いているけど、それ以上に“生きていくこと”そのものを丁寧に描いていて、心が締め付けられる。祖母役の樹木希林さんの「年金をもらうための家族」というセリフに笑ってしまったけど、その裏にある苦しさや孤独を感じてしまって、涙が出ました。(60代 女性)
映画『万引き家族』を見た人におすすめの映画5選
誰も知らない
この映画を一言で表すと?
静かに、しかし確実に胸を締めつける“見捨てられた子どもたち”のリアルな記録。
どんな話?
母親に置き去りにされた4人の子どもたちが、ひっそりとアパートで暮らしながら日々を生き抜こうとする。社会の目から完全に隠された生活の中で、長男が家族を守ろうと奮闘する姿を描いた実話ベースのドラマ。
ここがおすすめ!
是枝裕和監督による作品で、『万引き家族』と同様に“見えない場所で生きる人々”の存在を丁寧に描いています。台詞よりも表情や間が語る演出が光り、静かながら強烈な余韻が残る名作です。
そして父になる
この映画を一言で表すと?
「血」と「時間」――どちらが“本当の親子”を作るのかを問う感動作。
どんな話?
6年間育てた息子が、実は病院で取り違えられた他人の子だった――そんな衝撃的な事実から始まる2組の家族の葛藤と再生の物語。父親としての自分に向き合いながら、愛のあり方を模索していく姿を描く。
ここがおすすめ!
『万引き家族』と同じく家族の定義に切り込む作品で、見る人に“家族とは何か”を深く問いかけてきます。福山雅治とリリー・フランキーの対照的な演技にも注目で、観終わった後に語りたくなる映画です。
幸せのパン
この映画を一言で表すと?
心に疲れた人に、そっと寄り添うような北海道発の癒し系ヒューマンドラマ。
どんな話?
北海道の自然に囲まれた小さなカフェを舞台に、そこを訪れる人々と店主夫婦の交流を描く。何かを抱えた登場人物たちが、パンと会話を通じて少しずつ自分を取り戻していく優しい物語。
ここがおすすめ!
『万引き家族』の後味の重さを癒してくれる、温かい人間ドラマ。家族や人生に悩むすべての人におすすめできる、映像・音楽・ストーリーの三拍子が揃った、心に染みる作品です。
東京ゴッドファーザーズ
この映画を一言で表すと?
大晦日に起こる奇跡と再生の物語、笑いと涙が詰まった人情アニメ。
どんな話?
ホームレスの3人が、ゴミ捨て場で捨てられた赤ん坊を拾ったことから始まる一夜の冒険劇。赤ん坊の親を探す旅の中で、それぞれが自らの過去と向き合い、再び人と繋がる希望を見つけていく。
ここがおすすめ!
アニメながらリアルな社会描写と、温かな人間模様が絶妙に融合。『万引き家族』同様、“社会の外側にいる人たち”が描かれており、血縁を超えた“絆”の力を信じたくなる映画です。
パラサイト 半地下の家族
この映画を一言で表すと?
社会の格差と欲望が交錯する、ユーモアと悲劇の入り混じる衝撃作。
どんな話?
半地下住宅に暮らす貧しい家族が、裕福な家庭に次々と“寄生”していく中で、次第に社会のひずみが露呈していく。笑えるのに怖い、そして考えさせられるブラックコメディドラマ。
ここがおすすめ!
『万引き家族』同様、家族というテーマを通じて“社会からはみ出た存在”を描いています。貧困や身分差、道徳観の揺らぎなど、現代社会の闇に鋭く切り込んだエンタメ性の高い問題作です。
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