映画『日本沈没(1973)』の概要:地球物理の専門家である田所は、大規模な地殻変動により日本が沈没の危機に瀕しているとの仮説に至った。それを裏付けるように各地で火山が噴火し、マグニチュード8以上の大地震が次々に起こった。1億人の日本人の未来は、政府の判断に委ねられた。
映画『日本沈没』の作品情報
上映時間:140分
ジャンル:SF
監督:森谷司郎
キャスト:藤岡弘、いしだあゆみ、小林桂樹、滝田裕介 etc
映画『日本沈没』の登場人物(キャスト)
- 田所雄介博士(小林桂樹)
- 地球物理の専門家。小笠原諸島の無人島が消えた原因を調査するべく、小野寺の操縦で潜水艇「わだつみ」に乗って深海へ潜る。地殻変動により日本が沈没する可能性を示唆し、警鐘を鳴らした。
- 小野寺俊夫(藤岡弘、)
- 海底開発興業に勤める潜水艇の操縦士。現場に出ることを好む仕事人間だが、所長から結婚を勧められ玲子と出会う。後に田所研究所へ引き抜かれる。
- 山本総理(丹波哲郎)
- 気象庁に勤める知人から日本海溝での異常を聞かされると共に、田所からの忠告や渡老人の助言を真摯に受け止め災害対策に力を入れる。しかし、周囲の大臣達は未曾有宇の災害予測を真に受けず、山本は秘かに調査チームを立ち上げた。
- 阿部玲子(いしだあゆみ)
- 父が、友人である海底開発興業の所長に泣き付いたため、小野寺と引き合わされた令嬢。一目で彼を気に入り結婚する運びとなったが、既に日本は度重なる噴火と地震でパニック状態に陥っていたため、二人で海外へ逃げようと決めた。
- 渡老人(島田正吾)
- 財政界の黒幕とされる老人。100歳を超えても尚強い影響力を持つ。山本が総理になれたのも彼の力添えがあったからだという噂がある。日本の危機に一早く気付いた田所を気に入り、彼の研究所を支援する。
映画『日本沈没』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『日本沈没』のあらすじ【起】
田所は、小笠原諸島の無人島が消えた原因を探るため、神奈川県三崎港に停泊している海底開発興業の調査船を訪れた。潜水艇「わだつみ」の操縦士、小野寺と共に深海へ潜った田所は、海底に地滑りのような跡があることに気付いた。田所が、何が理由で地滑りが起きたのか調査しようとした時、日本海溝で異常があったとの報せが入り、「わだつみ」は日本海溝へ潜った。
危険を顧みず海底まで潜った彼らは、一番深い海溝へ地面が吸い込まれている場面を目撃した。
調査を終え事務所に戻った小野寺は、吉村所長から阿部玲子との結婚を勧められた。玲子は葉山の別荘に一人で暮らしており、彼女の父に泣き付かれたため一目会って欲しいと言うのだ。吉村の紹介で出会った二人は、すぐに惹かれ合った。彼らが愛し合おうとしたその時、火山の噴火による大きな揺れが起こった。
専門家会議を行う総理官邸では、236人の死者、行方不明者が出たとの報告が上がった。田所は山本総理へ、今後こうした災害が増えるため、犠牲者はさらに大きくなるのを覚悟するよう警告したが、他の大臣や専門家達は彼の意見を杞憂だとして取り合わなかった。
映画『日本沈没』のあらすじ【承】
内閣調査室の邦枝と中田、山本の秘書である三浦は、政府の調査に協力して貰うため、田所の研究所を訪れていた。彼らは海外から数機の潜水艇を購入しており、研究所に一切の管理を任せた。田所は、潜水艇を操縦するなら小野寺しかいないと彼を推薦し、海底開発興業へ一方的に彼の辞表を送りつけた。
海洋観測艦へ乗り込んだ田所と小野寺は、長期に渡る船上での調査に疲弊していた。調査結果を聞きに来た邦枝と中田は、田所から、コアの拡大に伴って太平洋マントルの変動速度が上がっていると聞かされた。彼は、これから起こることに対して、これまでのデータや知識は歯が立たないと声を荒げた。彼の出した結論は、日本列島の沈没であった。
その時、田所の説を証明するように、マグニチュード8を超える大地震が日本を襲った。関東は大打撃を受け、ダムの決壊や火災、津波によって日本中がパニックに陥った。
非常災害対策本部が設立されると、大臣達はインフラが全て機能しなくなる甚大な被害に右往左往し、霞が関を死守するため千葉、神奈川、埼玉への救援活動を打ち切り、東京都の火災鎮火へ全勢力を宛てた。一晩にして、死者、行方不明者は360万人に上った。
映画『日本沈没』のあらすじ【転】
それから3ヶ月が経ち、群衆のパニックも落ち着きつつあった。田所はさらなる災害を危惧し、国民を海外へ避難させる“D2計画”を山本へ提言した。山本は彼の計画を真剣に捉えたが、他の大臣は地震が起こらない可能性を支持、山本は「少なくとも何らかの対策をしていたら360万人が死ぬことはなかったんだ!」と叫んだ。外交官の野崎は、秘密裏に各国へ避難民の受け入れを打診して回った。
そんな中、中田はD2計画をメディアにリークしてしまい、田所は大げさな仮説を立てたとして世間から嘲笑された。中田は、どの道国外のメディアから情報が入ってきてしまうため、民衆がパニックを起こす前に反応を見る必要があったと主張した。この一件で、田所は自らの研究所を退所した。
渡老人は、風当たりの強いD2計画を進めるため海外の専門家に協力を仰ぎ、具体案を作成し山本に渡した。しかし、その内容は「何もしない方がいい」と結論付けられたものだった。涙を流す山本は、たった一人の日本人でも生き残らせると決意を固め、自ら諸外国へ避難民の受け入れを交渉し始めた。
中田は、田所が去った研究所へ山本や大臣達を招き、彼が残した研究データを開示した。田所の予測したモデルケースでは、分断した関東周辺から地面が海底へ引きずり込まれ、およそ10ヶ月で日本の国土が全て消えていた。どうあっても混乱は避けられないと悟った政府は、国民に緊急会見を行った。
映画『日本沈没』の結末・ラスト(ネタバレ)
小野寺は田所が退所したことを受け、玲子とスイスへ逃げようとしていた。しかし、彼女は富士山の噴火に巻き込まれてしまい、小野寺は火山灰の降り注ぐ中玲子を探しに行った。
国連では、日本救済特別委員会が設立されたが、現状840万人の受け入れ先しか決まっていなかった。各国の代表達は良案を出しあぐねていた。
山本の元に、地殻変動のスピードが速まったとの報告が入った。四国の紀伊半島では山が割れ、大阪は海に沈んでしまった。この段になって、ようやく米空軍は応援をよこした。山本の努力によって中国やロシアからも救援部隊が到着したが、国連は、日本大陸の背骨である中央破砕帯が断裂したら救援作戦を打ち切ると決めていた。
山本は、自らも街へ出て救助にあたった。玲子を探す小野寺も、絶望的な状況にある日本で必死の救助活動を行っていた。そんな彼らの姿は海外誌に取り上げられ“カミカゼ”と呼ばれた。
しかし、ついに山本は、海上へ拠点を移した田所研究所へD2計画の中止を伝えた。邦枝と中田は甲板から水平線を眺め、「日本はもう沈んでしまったのか」と呟いた。
渡老人の元へ最後の挨拶へ訪れた山本は、そこで田所と再会した。一緒に逃げようと言う山本に、田所は「日本と心中する。日本人は民族としてはまだ若い。日本人を頼みます」と言い残し、火山灰の中へ消えた。
生き延びていた玲子は、列車の窓から外国の風景を眺めていた。同じ頃、小野寺も地球のどこかで、列車の窓から外を眺めていた。
映画『日本沈没』の感想・評価・レビュー
名作だ、とは伝え聞いていたものの、今回が初見であった。名作であった。
先の東北の震災や近年の自然災害と大きく重なる部分があり、日本人がほとんど全員「被災者」になることを予見していたのかと疑ってしまう。と言うより、この当時から大災害へ警鐘が鳴らされていたというのに、我々は何をしていたのだろう。
日本のみならず地球にも必ず最期の瞬間が来るというのに、それは今ではないと錯覚することのなんたる高慢なことか。現在のコロナ渦にあっても、自分は大丈夫と過信した者が辛い思いをするのである。明日は我が身、防災バッグの見直しをするのに最適な映画だ。(MIHOシネマ編集部)
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