映画『人間失格』の概要:太宰治の「人間失格」を生田斗真主演で映画化。共演は伊勢谷友介、寺島しのぶ、石橋蓮司。「赤目四十八心中未遂」(03)の荒戸源次郎監督作。2010年日本映画。
映画『人間失格』 作品情報
- 製作年:2009年
- 上映時間:134分
- ジャンル:ラブストーリー
- 監督:荒戸源次郎
- キャスト:生田斗真、伊勢谷友介、寺島しのぶ、石原さとみ etc
映画『人間失格』 評価
- 点数:70点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト起用:★★★★★
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
映画『人間失格』 あらすじネタバレ(ストーリー解説)
映画『人間失格』のあらすじを紹介します。※ネタバレ含む
映画『人間失格』 あらすじ【起・承】
青森の大地主の家に生まれた、大葉葉蔵(生田斗真)。少年期から、ゴッホやモジリアニの絵画に親しみ、絵を描くのが好きだった。そこで、高校時代の友人にお化けを描いた絵を見せると驚嘆されるのだった。
ある日、”不忍池”で絵を描いていると、堀木正雄(伊勢谷友介)から声をかけられた。”なぁ、5円貸してくれないか?”と。堀木は、葉蔵よりも年上で、酒や煙草、女遊びなど悪い遊びは全て彼に教わったといっていい。
堀木に教えてもらったバーで、葉蔵は酔いつぶれることが多くなった。バーには、小柄で気さくなマダムがいた。同時期に活躍する、詩人の中原中也(森田剛)や作家の壇一雄などもそのバーの常連客だった。
次に、堀木と共に”カフェ ハリウッド”に行った。女を口説く堀木の隣で、幸薄い感じのカフェの女給・常子(寺島しのぶ)と出会う。常子には夫がいたが、もう3年も会っていないらしい。
葉蔵は日々の生活に倦んでいた。そして、堀木に”どうしょうもなく、女に好かれる時があるんだ・・。”と告白した。心中願望を抱く、葉蔵は、常子を鎌倉に誘う。
2人は互いの体を赤い糸で結び、鎌倉の海に入水自殺を試みた。しかし、葉蔵は助かり、常子だけ死んでしまう。
映画『人間失格』 結末・ラスト(ネタバレ)
病室で目覚めた葉蔵は、葉蔵の身元引受人・平目(石橋蓮司)から、心中事件について勘当処分であることや女の実家には見舞金を送った等を聞く。ヒラメに将来の希望を尋ねられ、”画家になりたい。”と答える葉蔵。
ある日、古本屋に美術書を売りに行った葉蔵は、その店で中原中也に会う。彼の詩集「山羊の歌」が本棚にあるのを見た。中原中也は、葉蔵に”道化の役は、僕だけでいい。鎌倉まで付き合わないか”と言う。
2人は鎌倉へ。中原中也の文学への激しい情熱を見た。
彼は、”ぼう羊、ぼう羊・・”と呟きながら去ってゆく。東京に戻り、堀木の家を訪ねた葉蔵は、編集者の武田静子(大楠道代)と出会う。
彼女が挿絵画家を探していると知り、”堀木よりも僕の方が絵が上手い。”と売り込んで、漫画家の仕事を得た。数日後、常連のバーに行くと、マダムから中原中也が死んだと聞く。葉蔵は、中也の死を悼んだ。
葉蔵は、行きつけのたばこ屋で店番をする、良子(石原さとみ)と仲良くなった。
”もう酒は飲まない。”と彼女と約束し、やがて2人は結婚した。
ある日、堀木が久しぶりに訪ねてきた。酒を飲みながら、昔の女の話をしていたが酒の肴が欲しくなった。そこで、1階に降りてゆくと、妻・良子が中年男性と関係を持っているところを2人は目撃してしまう。
夫に見られたと知った良子は、そら豆を持ってきた。花火を見ながら酒を飲む葉蔵。その後、葉蔵は良子と別れ、酒と薬ばかりの毎日を送るようになった。薬を大量に飲み、病院に運ばれた。
病室で、平目に”僕は女のいないところに行くんだ・・。”と呟く。雪が降る頃、葉蔵は吐血した。薬局の店主・寿(室井滋)は、葉蔵に迫られ、言うままにモルヒネなどの薬を渡してしまう。
葉蔵の父が死んだ。葉蔵は、精神病院に入れられていたが、津軽で療養することに。
死んだ父の愛人だった鉄(三田佳子)が葉蔵の世話をしてくれることになった。まるで、親子以上の愛を注がれる葉蔵。
荒れる海を見ながら、葉蔵は絵を描き続けていた。ところが、その後、葉蔵は再び東京へ戻った。いつしか常連のバーで酔いつぶれながら、夢を見るのだった。
”今の自分には、幸福も不安もありません。ただ一切は過ぎてゆきます。”と。
映画『人間失格』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『人間失格』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
耽美的なラブストーリーで魅せる、太宰治の世界
太宰治の「人間失格」を読んだことはありますか?「第1の手記、恥の多い生涯を送ってきました。」という文章から、無頼派文学が好きな人は読むと一気に太宰治の世界にハマりますよ。
この映画は、そんな太宰治の自伝的小説を耽美的に描いています。ほぼ原作どおりの展開ですが、原作には出てこない中原中也の姿があったり、昭和初期の時代感がいまひとつ微妙です。
主人公・大葉葉蔵の女たらしな一面や自堕落な生活は、生田斗真の演技から色気を感じさせます。また、大葉葉蔵を悪の道へ引きずり込む青年、堀木も常に葉蔵の影となってつきまとっているのです。
なぜ、葉蔵はこんなにも女にもてるのだろう?彼には黙っていても、母性本能をくすぐるような弱さと寛容さがあるからです。それはまた、作者太宰治の魅力でもあります。
映画では、葉蔵が6人の女性と関係し、時に女にもてることを後悔するような素振りを見せます。それでも女から離れられない。本当に厄介な男です。
多くの女性が出てきますが、心中相手となった常子とのシーンが好きです。ミルクを買う時、葉蔵はお金が足りなくて落ち込んでしまいます。”金の切れ目は縁の切れ目というけれど・・。”と語る葉蔵にキュンとなってしまいます。
原作を読んだ時は、映画化するなら、もう少し年齢のいった俳優がふさわしいと思っていましたが、生田斗真版を観ると、もう彼以外の葉蔵は考えられません!
ジャニーズの異端児~生田斗真の魅力
舞台を中心に活動し、2007年のドラマ「花ざかりの君たちへ」で大ブレイクした生田斗真。ジャニーズ所属ながら、実力派俳優として期待されています。そんな生田斗真の魅力に迫ってみたい。
まじめで明るい役柄を演じることが多いが、彼自身は根暗な性格なんだそう。そうした影がある部分に女子は惹かれてしまうのかもしれない。
「人間失格」で演じた葉蔵も、明るく振る舞いながら実は道化師役を演じているキャラクター。まだ若いのに、昭和の香りがするのもいい。そして目を閉じ、柔らかく話す彼の声を聴いてみて欲しい。
顔もイケメンなら、声もイケメンだ。優しく包まれてしまう。この映画を撮った荒戸監督から、”生田斗真は50年に1人の逸材だ!”と絶賛されたらしい。声を聴いているだけでも、その魅力を体験できます。
映画『人間失格』 まとめ
生田斗真が不朽の名作「人間失格」の葉蔵をどう演じるのか?とても興味がありました。
太宰治の分身である葉蔵が、女に惑い人生に傷つく様は時代を超えて愛されています。
私も大好きな作品であり、映画化は難しいだろうと思っていましたが、生田斗真が演じるなら安心して物語に集中できます。特に心中相手となった常子とのシーンが目に焼き付いて離れません。心中がとても美しく尊いもののように感じるのです!
この映画が気に入った方はぜひ、原作を読んでみて下さい。またこの映画は、葉蔵を取り巻く6人の女性たちも面白い!地味な女性から、父の愛人だった女性までトリコにするのですから。
豪華な女優陣の演技にも注目です。
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