映画『アウト&アウト』の概要:訳アリの少女を預かるため、ヤクザから足を洗った主人公。彼は少女と共に私立探偵を営んでいる。ある日、取引の場に立ち会って欲しいという依頼にて依頼人の元へ向かった彼は、依頼人の殺害現場へと遭遇。そこから壮大な陰謀へと巻き込まれていく。
映画『アウト&アウト』の作品情報
上映時間:106分
ジャンル:サスペンス
監督:きうちかずひろ
キャスト:遠藤憲一、岩井拳士朗、白鳥玉季、小宮有紗 etc
映画『アウト&アウト』の登場人物(キャスト)
- 矢能政男(遠藤憲一)
- 元ヤクザで現在は私立探偵。強面の容貌だが、人情に厚い。栞を厭っているようでもありながら、実はとても気を遣っている。ヤクザで培った人脈を使い、調査を行っており多少の揉め事やトラブルには動じない。
- 池上数馬(岩井拳士朗)
- 天涯孤独の身の上で、武闘家が開く道場の門下生。実は師匠の頼みを達成するため、暗殺を行う。人柄も良く花屋の娘と良い雰囲気となる。鶴丸に裏切られ抵抗した挙句、銃弾に斃れる。
- 黒木栞(白鳥玉李)
- 矢能が養っている娘。非常にしっかりした少女で推定6歳。矢能には敬語で話し、時に諫めるような言葉を放つ。お利口さんだが、実は矢能を頼りにしており寂しさを抱えている。身寄りがなく天涯孤独。
- 情報屋(竹中直人)
- 矢能とは長い付き合いで、栞にはメロメロ。非常に広い情報網を持ち、調査力にも長けている。矢能には栞のために、危険な賭けに出るのはやめろと注意している。
- 婆さん(高畑淳子)
- 矢能の避難場所を管理している人物。血のつながりはなく、いつ来ても矢能を歓迎して労わる。スーツをクリーニングに出すなど、隠し持っている銃の管理もしている。
- 鶴丸清彦(要潤)
- 衆院議員。3年前まで議員になるには危ない状況であったが、カンボジアへ訪問中にバスの転落事故に遭い、奇跡の生還を遂げる。当時の写真が話題となり、議員当選を果たす。爽やかな容姿とは逆に非常に卑怯な性格。
映画『アウト&アウト』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『アウト&アウト』のあらすじ【起】
元ヤクザの矢能政男は私立探偵事務所を営み、預かっている黒木栞という少女と暮らしている。矢能は仕事を選り好みする強面の男で、栞は幼いながらもしっかり者。どんな相手でも怯むことのない理知的な少女だった。
ある日、矢能の元に安田という男から取引の場に立ち会って欲しいという依頼が入る。高額報酬であることと安田が多少強引であったことから、仕方なく指定の場所へ向かった矢能。ところが、中へ入ると安田はすでに死亡している。背後から襲われた矢能は、犯人と思われる仮面を被った男に銃を向けられ、銃に指紋をつけられた。犯人は矢能を犯人に仕立て上げようとしているようで、颯爽と部屋から去って行った。
残された矢能は、死んだ安田の遺体の処理を裏の専門業者に頼む。その間、男の荷物を漁りパスポートなどを入手。遺体が運ばれた後、彼は協力者である婆さん宅へ向かい、預けていたスーツへと着替える。迷惑料に多少金を置いて来た。
安田の姉という人物に連絡を入れると、弟はカンボジアで3年前に亡くなっていると言う。自宅へ戻ると、警察が待っていた。矢能が犯人だと疑われているようだが、彼は今や一般市民である。そのことを強調した上で殺人は犯していないと断言した。
夜も遅くなってから事務所へ戻ると、栞が鍋の準備をして待っている。幼いながらも矢能へと久しぶりに仕事が舞い込んだことを喜んでいる様子。食事の後、情報屋へとカンボジアで死んでいた安田の調査を頼む。恐らく彼を殺した人物の手口から殺し屋であろうと思われる。だが、情報屋は栞がいるため、矢能に無茶をして欲しくないと言う。栞は探偵社の前任者が救い出した少女だったが、事務所を受け継ぐ時に任された娘でもあった。栞には身寄りがなく天涯孤独であるため、矢能は何があってもその身を守る責任があるのだ。
映画『アウト&アウト』のあらすじ【承】
今回の件について、何かが引っかかる矢能。殺し屋の出現や、身元を偽っていた安田の死。更に犯人にされそうになったことにも、少々拘っている。栞は仕事がダメになったことで事務所の存続を気にしているようだ。そんな時、死んだ男について話したいという女性が探偵社へと訪れる。女性は安田を殺した犯人の捜索を矢能に依頼するのだった。
その日の午後、出かけて帰宅すると知り合いの刑事が訪れている。彼には携帯電話の通話記録を調べてもらっていた。タケオという名前の連絡先の場所を聞くと、国会議員の事務所だと言うが、どの議員かまでは分からず。刑事が帰った後、直接電話してみると衆院議員、鶴丸清彦の議員事務所だった。試しに安田が生きていると仄めかす伝言を残した。
矢能は鶴丸が安田を殺害したと考えている。案の定その夜、情報屋からも鶴丸の名前が挙がった。安田は一時期、カンボジアへとボランティア活動に行っている。3年前、同時期に鶴丸もカンボジアを訪れており、乗っていたバスが崖から転落するという大事故に遭っていた。鶴丸は赤子を助け唯一、事故から生還している。その時に秘書が撮影した写真により、議員への当選を果たしていた。安田を殺害したのは、鶴丸家のSPを長年務めて来た人物ではないかと思われる。そのSPは武闘家で父親の代から警護の任に就いていたらしい。
そこで、矢能は紹介者から若者を一人借りて、武闘家の道場を訪ねることにした。すると、その道場にて稽古をつけてもらっていた青年が矢能に対して突っかかって来る。殺害現場にいた犯人と同じ声であったことから青年、池上数馬が安田を殺害した犯人だろう。矢能は彼の左足を銃で撃ち、道場主の武闘家へと鶴丸とよく相談してから連絡しろと話をつけた。栞には婆さんの家に避難するよう話して見送る。
確かに殺したはずだと焦る数馬は、鶴丸と直接話し自分の正当性を認めてもらおうと必死である。鶴丸はシンポジウムが行われるホテルに来るよう彼に話した。鶴丸の秘書と合流した数馬だったが、地下駐車場へ案内される。足の怪我により松葉杖をついていたが、案内された場所に鶴丸は現れず、銃を渡せと言われる。その場で待てと言われるも、秘書が運転する車に轢かれてしまう。秘書は鶴丸が数馬を消そうとしていたのだ。数馬は酷い裏切りに逆上し、秘書を殺害してしまうのだった。
映画『アウト&アウト』のあらすじ【転】
矢能がシンポジウムに参加し、鶴丸との面会を許されていた頃、数馬は秘書から銃を奪い返し矢能の事務所を訪れていた。彼は缶コーヒーを窓へと投げつけ、矢能が窓を開けた瞬間を狙い、銃を構える。ところが、窓を開けたのは栞だった。驚愕した数馬は咄嗟に身を隠し、買い物に出掛けた少女の後を尾行。
同じ頃、矢能は鶴丸の秘書が駐車場で死体となって発見されたことを知る。ビルから出ようとしたところへ栞から着信が入り通話を押した矢能だったが、相手は栞ではなく数馬だった。指定した場所に来なければ、栞に危害を加えると言う。矢能は急いで指定の場所へと向かった。
ところが、数馬はパトカーの警官から職務質問され、警官へと発砲。反撃され腹部に銃弾を受けてしまう。銃声を聞き付けた矢能は虫の吐息となった数馬を発見。数馬は現在、所持している100万円で鶴丸を地獄に落として欲しいと依頼し、息を引き取るのであった。
数馬の師匠の元を訪れた矢能は数馬の最期の言葉を聞かせたが、師匠は自ら銃を頭部に放ち自殺してしまう。
帰宅した矢能は栞が言いつけを守らず、探偵事務所に帰宅していることを咎めるも、栞は矢能のことを酷く心配していたのだと泣き叫ぶのだった。
映画『アウト&アウト』の結末・ラスト(ネタバレ)
数馬からの遺言でもある依頼を達成するには、証拠がなさすぎる。そこで、矢能は一計を案じることにした。鶴丸へと直接連絡を入れ、1臆円を餌に寝返ると仄めかしたのである。鶴丸はまだ安田が生きていると信じているため、前金5千万円を受け取って安田の殺害を請け負うことにした。
鶴丸との通話を終えた後、方々へ手配の連絡を入れる。探偵社には情報屋と刑事、紹介者のヤクザが集まった。ヤクザから若手を借りていた矢能だったが現在、安田の遺体を受け取りに行かせている。ところが、若者の言う話では遺体を冷凍保存していたため、車のトランクに入らないと言う。解凍するには2日はかかるらしい。鶴丸と会う約束はその日の深夜であったため、計画を実行するには間に合わない。
矢能は安田の遺体を鶴丸の車のトランクへ隠そうと考えていた。そこで、再び計画を練り直した矢能。鶴丸には予定が変わって会いに行けないと告げ、それでも安田は殺害済みであること、車のトランクに遺体を隠したことを告げた。実際にはまだ遺体は隠されていない。すると、鶴丸は焦って車で逃げようとする。時間稼ぎに駐車場で刑事が足止めし、道の途中で若者に接触事故を装わせた。車が故障してしまい、エンジンがかからなくなってしまった鶴丸は矢能に助けを求める。そこへ、パトカーのサイレン。鶴丸は5千万円を抱え逃走した。
翌朝、車のトランクから遺体が発見されたとして、逮捕されてしまった鶴丸。事情聴取にてカンボジアでの事故が、自分を暗殺するために計画されたことだったと告げる。彼は正しく嘘八百を並べ、辻褄合わせをしようとした。ところが、鶴丸のトランクに隠されていた遺体はヤクザの遺体。紹介者のヤクザが抱えていた問題で始末した人物だった。しかも、その遺体に刑事が隠れて盗んだ金庫を抱かせるという、一石二鳥どころか三鳥にもなる妙案だったのである。
金庫の中には幼女売春の顧客リストも入れ込むという徹底さ。鶴丸はしたこともない幼女売春の罪にも問われることになり、失脚どころか人生を破滅に追いやられるのであった。鶴丸は矢能に嵌められたと叫んだが、証拠も信憑性もない。
矢能は後日、依頼人の女性に結果を報告し、亡くなった安田の遺骨を渡した。婆さんの家に避難していた栞が帰宅。少女は良くしてくれたと笑顔を見せるのであった。
映画『アウト&アウト』の感想・評価・レビュー
元ヤクザの私立探偵と訳アリで預かっている少女の異色タッグ。私立探偵役を遠藤憲一が演じており、これがまたはまり役。少女は言葉遣いが非常に丁寧なしっかり者で、元ヤクザの養い親をも言い負かしてしまう。2人のやりとりがちぐはぐながら、面白さを倍増させている。
探偵は元ヤクザであるため、裏稼業への伝手が広い。依頼調査で忙しいのに、元部下や知り合いの刑事からも問題を相談され、終盤の始め辺りで問題が乱立して大混乱に陥る。相談されるということは、元々彼が非常に賢くやり手だからである。そして、彼は全ての問題を解決する妙案を計画、実行し見事、解決へと導く。終盤のその流れがとても軽妙で面白い。見応えのある作品。(MIHOシネマ編集部)
遠藤憲一って本当にこういう役がハマりますよねえ。怖さとか雰囲気が本物っぽいのがいいんです。最近はコメディ要素がある役も多いですが、やはり遠藤憲一と言ったら「ヤクザ」「強面」。堅気では無い役どころが本当にしっくりきます。
少女のために、ヤクザから足を洗った男。その「元ヤクザ」という役どころを本当に上手く演じていました。子役の女の子も演技が素晴らしく、違和感を感じることなく見ていられました。とてもバランスのいい作品です。(女性 30代)
ヤクザを抜けて探偵業を営む強面男の矢能。矢能と暮らす少女栞。二人の関係は何故か長年連れ添った夫婦のようで非常に不思議です。この関係性の理由は当然語られますが、まぁかなり「レオン」に似てるコンビでしたね。物語の前半はイマイチでした。その代わり後半は加速していきます。荒い仕事ぶりの矢能に周囲の人間が協力できるのは仁義からですよね。ヤクザの渋さが良く出ていました。ラストは見事などんでん返しです。(男性 20代)
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