映画『Dr.パルナサスの鏡』の概要:「12モンキーズ」(95)や「未来世紀ブラジル」(85)の奇才テリー・ギリアム監督のファンタジー。トニー役のヒース・レジャーが撮影中に死亡した呪いの作品?鏡の向こうのトニー役でジョニー・デップも出演。
映画『Dr.パルナサスの鏡』 作品情報
- 製作年:2009年
- 上映時間:124分
- ジャンル:ファンタジー
- 監督:テリー・ギリアム
- キャスト:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ etc
映画『Dr.パルナサスの鏡』 評価
- 点数:55点/100点
- オススメ度:★★★☆☆
- ストーリー:★★★☆☆
- キャスト起用:★★★★☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★☆☆
[miho21]
映画『Dr.パルナサスの鏡』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『Dr.パルナサスの鏡』のあらすじを紹介します。
イギリス。遊園地の片隅に移動劇団が現れ、今夜も一晩限りの夢を魅せます。演目は、「パルナサス博士の鏡」。この不思議な鏡は、人の心の奥底にある欲望を映し出す魔法の鏡だという。面白い趣向なのだが、怪しすぎて客がなかなか入らない。パルナサス博士(クリストファー・プラマー)は仙人の姿をして舞台上で浮かんでいるが、瞑想中。
時には、酔っぱらった若者や子供が誤って、鏡の中に入ってしまう。そんな時、急いで鏡の世界から追い出すのだ。パルナサス博士には秘密があった。移動劇団をする前は徳のある僧で、空中遊泳の術を体得。また不死で齢1000才なこと、娘ヴァレンティナ(リリー・コール)が16才になったら、契約どおり悪魔に引き渡さなければならないことです。
ヴァレンティナの16才の誕生日が近づいており、いつ悪魔が現れるのか気が気でならない。
娘ヴァレンティナの16才の誕生日、3日前。悪魔がついに現れ、”娘を貰いに来た!あと3日だ。”と告げます。そして、”娘を取られたくなければ、鏡のなかに5人、先に獲得しなければダメだ”と難問を突き付けるのです。一人では秘密の重さに耐えかね、ついにヴァレンティナに秘密を打ち明けます。驚き、父を避ける娘。その夜、橋の近くで首つり自殺をする男、トニー(ヒース・レジャー)を見つけます。
ヴァレンティナは、劇団員のパーシィ(バーン・トロイヤー)とアントン(アンドリュー・ガーフィールド)と協力して、トニーを助けます。トニーは、記憶を失くした振りをしていたが、実は福祉慈善家。表は、子供を助ける活動をし、裏では子供の臓器売買に関わっていたのだ。そうとも知らず、ヴァレンティナは彼に惹かれてゆきます。
娘ヴァレンティナを助けるために、トニーのお金儲けのアイデアに劇団員みんなで挑戦することに!不思議な鏡を使って客寄せをするのだが、お金持ちの女性客をターゲットにします。商店街の通りで始めるとすぐに女性客がいっぱい集まってきます。そして、お金持ちそうな人に”パルサナスの鏡”を体験してもらう。すると、皆、上気した顔で素晴らしいと言いながら、自らのお金やアクセサリー、コートなどをその対価として差し出すのでした。
トニーも女性たちに乗じて、鏡のなかへ。殺し損ねたと追ってきたギャングたちを巻くつもりが、自らの欲望にハマってしまう。幻想の世界で、トニーの顔は変わってゆきます。(演じているのは、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、そしてコリン・ファレル)。しかし、悪魔はなおも要求を突き付けるのです!ヴァレンティナの運命は?幸せになれるのか?
映画『Dr.パルナサスの鏡』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『Dr.パルナサスの鏡』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
テリー・ギリアム劇場の幻~本当は悪魔との契約は存在しない
娘ヴァレンティナが16才になったら、悪魔との契約により、娘を引き渡さなければならない・・とパルナサス博士はあせるが、本当は親が子離れできないだけなのではないだろうか。心理学的にこの映画を考えると、娘と父親の思春期特有の悩みや自立しようとする娘の成長を描いているのだと思う。
では、悪魔という存在は?それぞれが内に秘めた欲望ではないだろうか。パルナサス博士が持つ不思議な鏡は、”人の奥底にある欲望”を見せてくれるらしい。劇団員のアントンは入ってもいいが、娘が鏡のなかに入ることをパルナサス博士は禁じていた。また自分の欲望を知った人は皆、とても満足そうにしているのが興味深い。
”あなたの考えのままでいいのだよ”と肯定してもらえるのだろうか。欲望を見せられて恐怖を感じたりはしないのだろうか。いくつもの疑問が浮かんでくる映画です。テリー・ギリアムの作品を観て思うのは、趣向やストーリーはとても面白いが、たくさんの思いを詰め込みすぎているように感じます。
映画の美術も凝っているのだが、レトロな映画を観ているようで時々、居心地が悪くなります。ただ撮影中の不幸(トニー役の俳優が急死)を乗り越えたという点で、代役の活用は良かったと思います。トニー役の代役として、ジョニー・デップやジュード・ロウ、そしてコリン・ファレルの起用は成功しています。
筆者は自信を持って、鏡の中のトニー#1を演じる、ジョニー・ディップの登場シーンをおすすめします。途中で、顔が変わるので、よく注意してご覧下さい。
夢みる力~劇場から小さな箱へ
遊園地の片隅や商店街で、興行する芝居もいいが、小さな箱で紙芝居のように見せる劇がかわいくて好きです。映画の最後で、パルナサス博士は再会した劇団員パーシーと共に街角で、小さな劇を見せます。ささやかですが、立ち止まって観てくれるお客もいます。その中にお金を入れて、何も言わず去ってゆく女性の姿が!
パルナサス博士がその女性を追いかけてゆくと、娘ヴァレンティナだったのです。結婚をし、娘が生まれていました。ラストはこの様に幸せです。娘の幸せを願う物語でした。気持ちの悪い結末が多い、テリー・ギリアム作品の中ではまともです。安心して観られる映画。幸せになろうとする欲望こそ、大切なのです。
映画『Dr.パルナサスの鏡』 まとめ
数あるテリー・ギリアム作品の中では、子供も安心して観れる作品です。少々エグいシーン(首吊り自殺の場面など)もありますが、全体的には大丈夫だと思います。やはり、見どころは、不思議な鏡のなかに入って登場人物たちが自らの欲望に振り回されるシーンです。
トニー役の俳優が急死した事実は残念ですが、その代役として、ジョニー・デップやジュード・ロウ、そしてコリン・ファレルの演技が観られるのですから、”禍い転じて福と為し”たわけです。特にジョニー・デップの登場シーンは必見!ずるくってカッコよく最高!
テリー・ギリアムの世界とも、ジョニー・デップの演技や存在感の相性はいいと思うのですが、不幸も多い現場なので起用も難しいと思います。自らの欲望を知り、幸せになろうとする努力が大切なのだと本作は教えてくれます。パルナサスの鏡に入るのも勇気がいりますね。筆者は入りません。
代わりに友人に体験してもらい、感想を聞こうと思います。
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