映画『ペコロスの母に会いに行く』のネタバレあらすじ結末と感想 | MIHOシネマ

「ペコロスの母に会いに行く」のネタバレあらすじ結末と感想

ペコロスの母に会いに行くの概要:漫画家の岡野雄一が、自分の母親の介護体験を基にして描いた同名コミックが原作。認知症が進行していく母親役を演じた赤木春恵は、88歳にして映画初主演を務め、魂のこもった名演技見せている。岩松了もユニークな人柄の息子役を好演しており、長崎弁で交わされる2人の会話を聞いているだけで、なぜか目頭が熱くなる。

ペコロスの母に会いに行くの作品情報

ペコロスの母に会いに行く

製作年:2013年
上映時間:113分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:森崎東
キャスト:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮 etc

ペコロスの母に会いに行くの登場人物(キャスト)

岡野ゆういち(岩松了)
長崎在住の漫画家。漫画では食べていけないので、サラリーマンをしながら、執筆活動や趣味の音楽活動を続けている。離婚後、故郷の長崎で認知症になった母親と同居していたが、母親の症状が進んだため、施設に預ける。マイペースに人生を楽しむタイプ。
岡野みつえ(現在:赤木春恵 / 若かりし頃:原田貴和子)
ゆういちの母親。天草の貧しい農家で5人兄妹の長女として生まれ、幼い頃から苦労を重ねてきた。ゆういちの明るい性格は母親譲り。夫が亡くなってから認知症を発症し、徐々にいろいろなことを忘れていく。
岡野さとる(加瀬亮)
ゆういちの父親。10年ほど前に他界した。しっかり者のみつえとは正反対の神経質な性格で、若い頃から心を病んでいた。酒を飲むと人格の変わる酒乱で、みつえには随分苦労をかけた。
岡野まさき(大和田健介)
ゆういちの息子。東京にいたが、最近になって長崎に戻ってきた。すでに成人しており、ゆういちも頼りにしている。みつえに対してとても優しい。
本田(竹中直人)
みつえと同じ介護施設に認知症の母親を預けている。長い間、仕事で海外にいたため、母親に忘れられている。ゆういちと同じくハゲているが、カツラで隠している。母親の介護を通して、ゆういちと親交を深めていく。
ちえこ(原田知世)
みつえの幼馴染。幼い頃に天草から長崎へ奉公に出され、長崎で被曝する。成長してからは、花街で娼婦になっていた。認知症になったみつえが、ちえこのことばかり思い出すようになる。

ペコロスの母に会いに行くのネタバレあらすじ

映画『ペコロスの母に会いに行く』のあらすじを結末まで解説しています。この先、ネタバレ含んでいるためご注意ください。

ペコロスの母に会いに行くのあらすじ【起】

長崎在住の岡野ゆういちは、サラリーマンをしながら漫画の執筆と音楽活動を続けている。ハゲ頭の形が小型の玉ねぎのペコロスに似ているため、ペンネームは「ペコロス岡野」と名乗っていた。

神経質だった父親のさとるが10年ほど前に亡くなり、その頃から母親のみつえに認知症の症状が出始める。ひとり息子のゆういちは、離婚後に実家へ戻ってみつえと同居を開始し、母親の面倒を見ながらサラリーマン生活を続けていた。みつえの認知症は徐々に進行し、夜中に徘徊することがあるので家にいても気を抜けない。最近になって東京から息子のまさきが戻ってきてくれたが、それでもゆういちは家での介護に限界を感じつつあった。

昼間はゆういちもまさきも仕事があるため、みつえは家で1人になる。ゆういちは、電話を使ったら受話器を戻しておくこと、勝手に家の外へ出ないこと、知らない人を家に入れないことなど、何度も同じことをみつえに言い聞かせて会社に向かう。みつえは「わかっとる、また親をバカにしてから」と気丈に答えるのだが、すぐに注意されたことを忘れてしまい、同じ失敗を繰り返す。大変なことも多かったが、のんびり屋のゆういちは、どこか愛嬌のあるみつえのことを、本気で叱る気にはなれなかった。

ある日、仕事に行こうとしていたまさきは、道を歩いているみつえを見つけ、どこへ行くのか聞いてみる。みつえは「あの人が帰ったら飲むやろう」と言って、死んださとるの酒を買いに行こうとしていた。まさきはみつえを家に帰し、この一件をゆういちに伝えておく。馴染みの喫茶店で仕事をサボっていたゆういちは、会社へ戻ってからすぐに家へ帰る。ゆういちは広告代理店の営業をしていたが、全くやる気がないので、会社では白い目で見られていた。

ゆういちの家は細い坂道の上にあるため、車は坂の下の駐車場に停めていた。駐車場に車を入れようとしたゆういちは、そこにみつえがいたのでびっくりする。みつえは夕方から何時間もここに座り、ゆういちが帰るのを待っていた。ゆういちが注意すると、みつえは「怒らんで、何もせんけん怒らんで」と何度も繰り返す。ゆういちはそんな母が愛しくなり、きついことは言えなくなる。

その夜、帰宅したまさきにも「ちゃんとした施設で見てもらった方がいい」と言われ、ゆういちの心は揺れる。なるべく施設に預けることは避けたいが、これ以上認知症の症状が進むと、どんな事故が起こるかわからない。ゆういちは憂鬱だった。

ペコロスの母に会いに行くのあらすじ【承】

認知症の症状が出始めてから、みつえは遠い昔のことばかり思い出すようになっていた。天草の貧しい農家で、5人兄妹の長女として生まれたみつえは、幼い頃から苦労を重ねてきた。幼馴染のちえこも似たような境遇で、2人の唯一の楽しみは、女学校の合唱練習を覗いて歌を覚え、一緒に歌を歌うことだった。10歳前後の頃、ちえこは口減らしのため長崎に奉公へ出されることになり、2人は会えなくなる。別れる前、2人は手紙を出し合おうと約束していた。みつえは急にそのことを思い出し、夜中に起き出して、ちえこへの手紙を書き始める。

何度注意しても、みつえは毎日駐車場でゆういちの帰りを待つようになる。近所では、「暗くなると、オババ妖怪が子泣き爺に連れられてどこかへ行くらしい」と、子供たちが噂していた。そんなある日、ゆういちはタンスの引き出しに詰め込まれた大量の下着を発見する。みつえが、汚してしまった下着を隠していたのだ。ケアマネージャーさんに相談すると、それは認知症がかなり進行した人の典型的な行動パターンなので、施設に預けた方が安心だと助言される。

ゆういちはみつえを施設に預けるため、まさきと一緒にグループホームの「さくら館」を見学する。さくら館は、アットホームな雰囲気の清潔な介護施設で、職員たちの人柄も良かった。ゆういちは、ここにみつえを預ける決断をする。

施設へ行く日。みつえは朝から機嫌が悪かった。ゆういちは、そんなみつえを気遣いながら、さくら館へ向かう。さくら館には、みつえと似たような症状のお年寄りが何人もいた。比較的しっかりしているゆりさんや女学校時代に戻っているまつさんなどは、みつえと仲良くなれそうだった。職員たちも明るく接してくれるが、みつえは何も喋ろうとせず、ゆういちと一緒に帰りたがる。みつえを残して帰る時、バックミラーに映る母親の寂しげな姿を見て、ゆういちの胸は締め付けられる。

みつえは、職員が声をかけても部屋から出ようとせず、「ここでゆういちを待っている」と言って、童謡ばかり歌っていた。みつえは歌を歌いながら、長崎に原爆が落ちた日のことを思い出していた。あの日、みつえは対岸の天草から長崎の原爆雲を見て、ちえこの身を案じていた。

ゆういちもまた、家にみつえがいない寂しさをヒシヒシと感じていた。みつえの部屋でぼんやりしていたゆういちは、みつえと2人の妹の写真を見て、姉妹を会わせてやろうと思いつく。

ゆういちはみつえの2人の妹を連れ、さくら館へ行く。みつえは、たかよという妹はどうしたのかと尋ねる。たかよは、終戦の翌年にわずか8歳で病死した妹だった。みつえは、具合が悪いと言っても信じてもらえず、農作業に駆り出されていた可哀想な妹のことを思い出して涙ぐむ。

ペコロスの母に会いに行くのあらすじ【転】

みつえは過去の記憶の中で生きる時間が増えていく。みつえとさとるは長崎の小さな借家で結婚生活をスタートさせ、しばらくしてゆういちを授かった。ゆういちがまだ赤ん坊の頃、みつえはさとるに付き添ってもらい、ちえこがいるという長崎の花街を訪ねたことがある。そこは赤線と呼ばれている場所で、さとるは早く帰りたがるが、世間知らずのみつえは、その意味をあまり理解していなかった。みつえはちえこらしき女性とすれ違い、「ちーちゃん!」と声をかける。しかし、ちえこは逃げるようにして立ち去ってしまう。その後、みつえは何度もちえこに手紙を出したが、ちえこからの返事はなかった。

ゆういちは会社をクビになり、頻繁にさくら館を訪れるようになる。みつえは、ゆういちが帽子を被っていると誰だかわからなかったが、帽子を脱いでハゲ頭を見せると、ゆういちを認識してくれる。まつさんの息子の本田は、長いこと海外で仕事をしており、母親からすっかり忘れられていた。女学校時代に戻っているまつさんは、ゆういちを坂本先生と呼び、彼に懐いていた。本田を怖がっているまつさんに、ゆういちが「仲良くせんといかんよ」と声をかけると、まつさんは素直に「はい!」と答える。

仕事一筋で生きてきた本田は、1年前にリタイアし、コペンハーゲンから日本へ帰国した。帰国後、認知症の進んだ母親から不審者のように扱われ、本田はショックを受けていた。実は本田もゆういちと同じくハゲているのだが、それを隠してカツラを被っていることも、まつさんから怖がられる要因だった。しかし、デリケートな問題なので、ゆういちも「カツラを取れば?」とはなかなか言えない。ゆういちは、馴染みのライブハウスに本田を誘い、ステージで1曲歌う。認知症の母親を持つ息子同士、2人は親交を深めていく。

みつえの部屋を掃除していたゆういちは、仏壇の引き出しに仕舞われた95年のランタン祭りのパンフレットを見つける。まだ元気だったさとるが、8歳だったまさきを連れて行ってくれた年だ。ゆういちはまさきを飲みに誘い、自分が幼かった頃の話をする。

さとるは真面目なサラリーマンだったが、酒を飲むと人格が変わる酒乱で、みつえは随分苦労した。飲み屋で仲間に奢らされて、給料日にすっからかんで帰ってくることもあったし、みつえに暴力を振るうこともあった。もともと繊細だったさとるは、神経症を発症し、幻覚や幻聴に怯えるようになる。それでも、さとるは心から家族のことを愛しており、その不器用な愛情は、幼いゆういちにも伝わっていた。だから、ゆういちは酒乱で神経症だった父親のことが、今でも大好きだった。

ペコロスの母に会いに行くのあらすじ【結】

みつえの症状はさらに進行し、ついにハゲ頭を見せてもゆういちのことがわからなくなる。あれほど自分のことを慕ってくれていた母親に怖がられ、ゆういちは強いショックを受ける。職員は、「たまたま調子が悪かっただけですよ」と慰めてくれるが、ゆういちはみつえの寝顔を見ながら、涙が止まらなくなる。目を覚ましたみつえは、枕元で泣いているゆういちを見て、「ゆういち、泣かんとって」と頭を撫でてくれる。ゆういちは、ただただ切なかった。

本田の誘いで飲みに出かけたゆういちは、以前に本田をからかったことを詫びる。親から忘れられる辛さは、ゆういちの想像をはるかに超えていた。本田とゆういちは、父親のことで苦労した母親の思い出話をする。

幼い頃、ゆういちはみつえと真夜中の埠頭に立ち、暗い海を何時間も見つめていた記憶がある。その時、なぜか真夜中にも関わらず郵便屋さんがやって来て、みつえに手紙を渡した。みつえは手紙を読んで号泣し、正気に返ったようだった。あの手紙がなければ、みつえはゆういちを道連れにして、海に身を投げていたのだろう。

みつえはぼんやりしていることが多くなり、ゆういちの問いかけにも、あまり反応しなくなる。みつえのために何かできないかと考えたゆういちは、みんなでランタン祭りに行く計画を立てる。

ランタン祭りの日。みつえの2人の妹やまさきと共に、ゆういちはみつえを車椅子に乗せ、ランタン祭りを見物する。会場には、本田とまつさんも来ていた。本田が思い切ってカツラを外すと、まつさんは本田のことを坂本先生と呼ぶようになり、2人は良好な関係を築けていた。

人混みの中を歩いているうちに、おばさん2人の姿が見えなくなり、まさきたちは2人を探しに行く。みつえと待機していたゆういちは、おばさんたちを見つけ、ほんの一瞬みつえから目を離す。その間に、みつえが迷子になってしまう。

みつえは、あの日ちえこから届いた手紙のことを思い出していた。ちえこは手紙で長い間の不義理を詫び、「みっちゃんの手紙を読んで、生きんばいかんと思いました」と書いていた。心中を考えていたみつえは、ちえこの手紙に救われ、歯を食いしばって生きる道を選んだ。

その後、花街のちえこを訪ねたみつえは、彼女の同僚から、ちえこが原爆症で最近になって死んだと聞かされる。その同僚の女性が、ちえこの枕の下にあった手紙に気づき、切手を貼って出してくれたのだ。残されたちえこの持ち物は、小さな箱だけだった。箱の中には、みつえから届いた手紙とちえこの写真が大事に保管されていた。みつえはその箱を抱きしめ、ちえこの薄幸な生涯を想い号泣したのだった。

フラフラと歩いてめがね橋にたどり着いたみつえは、幼い頃、ちえことよく歌った歌を口ずさんでいた。みつえは記憶の中で、ちえこや妹のともよ、そして夫のさとると再会していた。ようやくみつえを発見したゆういちは、母親の嬉しそうな笑顔を見て、母親はずっと会いたかった人に会っているのだと悟る。ゆういちは思わず涙ぐみ、「よかったな、母ちゃん」と声をかける。認知症が進行するのは切ないことだが、どんどん穏やかな表情になっていくみつえを見ていると、「ボケるのも悪かことばかりじゃなかね」と、ゆういちは思うのだった。

この記事をシェアする