『ドライヴ』のニコラス・ウィンディング・レフンが母国デンマークで監督したサスペンス映画。麻薬密売人(プッシャー)が仕事のミスをきっかけに追いつめられていく姿を追う。キム・ボドゥニア主演。
映画『プッシャー』 作品情報
- 製作年:1997年
- 上映時間:105分
- ジャンル:サスペンス
- 監督:ルイス・プリエト
- キャスト:リチャード・コイル、ブロンソン・ウェッブ、メム・フェルダ etc…
映画『プッシャー』 評価
- 点数:40点/100点
- オススメ度:★★☆☆☆
- ストーリー:★★☆☆☆
- キャスト起用:★★★☆☆
- 映像技術:★★★★☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★☆☆☆
[miho21]
映画『プッシャー』 あらすじ(ストーリー解説)
映画『プッシャー』のあらすじを紹介します。
麻薬密売人のフランク(キム・ボドゥニア)は相棒のトニー(マッツ・ミケルセン)と共に麻薬を売って歩く生活を送っていた。それなりに羽振りもよく、麻薬の隠し場所を提供する娼婦のヴィクからも慕われていた。しかしある日、警察の手入れにあって仕入れた麻薬を全て失ってしまったことで窮地に立たされる。普段は良くしてくれていた組織のボスであるミロも、フランクの状況が分かると激しく借金の取り立てをするようになる。返済できないと命が危ないフランクは必死に金策に走るが上手くいかない。麻薬の借金を取り立てに行っても相手に自殺されてしまう始末で、挙げ句の果てにはトニーにまで愛想を尽かされ裏切られてしまう。
追いつめられたフランクだが、それでも何とか金を集め、ミロにも借金額を下げてもらい返済の目処が立った。しかし最後の最後でヴィクに資金を持ち逃げされてしまう。自分を慕ってくれていたヴィクを散々冷たくあしらってきたツケが回って来たのだった。全てを失ったフランクは1人ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
映画『プッシャー』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)
映画『プッシャー』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む
駄目男の堕落した日常
麻薬の売人を主人公とした映画は数多くあり、裏社会の闇を鋭くスリリングに描いた傑作も存在する。それに引き換え本作で描かれる売人は何とも駄目なやつらだ。強面で睨みを効かせてみても頭の中では何も考えていない、その場凌ぎの連続だ。仲間も彼女も大事にできない、裏の仕事すらロクにできないまさに堕ちた人間と言える。そんな男の生活をリアルに描くということが本作の目的だ。それ故に物語の起伏は乏しく、特に中盤からは殆ど話が進行しない。その代わりに、虚無的で刹那主義な男の生活をカメラはリアルに切り取ってみせる。ほぼ全編手持ちで展開される荒々しいドキュメンタリータッチのカメラワークは、登場人物たちがまるでそこで本当に生活しているかのように錯覚させる。
レフンの暴力演出
レフンは日常の中に暴力を潜ませるのが上手い監督だ。馬鹿みたいな下らない会話が披露されたかと思うと、突如として暴力が挿入される。その緩急の差に観客はハッとさせられるのだ。暴力描写そのものもかなりのリアリティーをもって描かれる。ねちねちとした言葉攻めの後に展開される、隠すことなくワンショットで描かれる暴力。前述の撮影手法もあって極めて生々しい。
映画『プッシャー』 まとめ
スタイリッシュな色使いやカメラワークなど、レフンらしさを感じられる作品にはなっている。だが画面の暗さや酔いそうな手持ち撮影は観る人を選ぶだろう。ストーリーに関しては起伏が少なく冗長に感じざるを得ない。ただ転落していくフランクの姿が生々しく描かれていくのみだ。誰が見てもクズな男に感情移入することもなかなか難しいだろう。ただ全編通してどうしようもない閉塞感が漂っており、恋人にまで裏切られ全てを失ったフランクの姿からは哀愁を感じる。ある意味カタルシスとも言えるだろう。相棒のトニーやボスのミロはクズなりに魅力的なキャラクターなのだが、彼らにスポットが当たるのは続編、続々編だ。ちなみにイギリスでリメイクもされている。こちらはもう少し「一般的な」映画に仕上がっているので、レフンの作風が肌に合わない方にはこちらをオススメしたい。
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- プッシャー2 次作
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