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映画『ロープ』あらすじとネタバレ感想

映画『ロープ』の概要:「サイコ」を産んだアルフレッド・ヒッチコック監督のクライム・サスペンス。パトリック・ハミルトンの戯曲を脚色化。出演者はジェームス・スチュアート等。1948年米国映画。

映画『ロープ』 作品情報

ロープ

  • 製作年:1948年
  • 上映時間:80分
  • ジャンル:サスペンス
  • 監督:アルフレッド・ヒッチコック
  • キャスト:ジェームズ・スチュワート、ファーリー・グレンジャー、ジョン・ドール、セドリック・ハードウィック etc

映画『ロープ』 評価

  • 点数:80点/100点
  • オススメ度:★★★★☆
  • ストーリー:★★★★☆
  • キャスト起用:★★★★★
  • 映像技術:★★★★☆
  • 演出:★★★★★
  • 設定:★★★★☆

[miho21]

映画『ロープ』 あらすじ(ストーリー解説)

映画『ロープ』のあらすじを紹介します。

摩天楼が見える、ある1室。自信家のブランドンとピアニストのフィリップ、そしてデイビットは大学時代の友人。ところが、ブランドン(ジョン・ドール)とフィリップ(ファーリー・グレンジャー)の2人は結託して、ディビットを絞殺。遺体をチェストの中に隠す。
自分たちの優秀さをみせつけようと殺したらしい。これから、フィリップの送別会が行われるため、部屋には何も知らない招待客が集まってきた。送別会には、ディビットの両親であるケントリー夫妻(妻は風邪で欠席。)、デイビットの婚約者ジャネット、大学時代の寮監ルパートなどが出席。
家政婦ウィルソンは、ブランドンとフィリップのいつもとは違う様子に気が付いていた。奇妙なことに、食事はいつものテーブルではなく、チェストをテーブル代わりにして始められます。ところが、いつまで経ってもディビットは来ない。心配した父親が息子と連絡を取ろうとするが。

皆より少し遅れて、大学の寮監だったルパート・カデル(ジェームズ・スチュアート)が登場。ルパートは、冗談っぽく”ニワトリを絞殺した事はない?”と質問を重ねてゆくうちに、小心者のフィリップの動揺が激しくなります。なんとか落ち着かせようとするブランドン。
ルパートは、”殺人とは芸術だ。人には見せない芸術だ。”と暗にほのめかす。招待客は、映画談議などで楽しく過ごす。しかし、ディビットの婚約者ジャネット(ジョアン・チャンドラー)は、主宰したブランドン達が元カレに”復縁のチャンスがあるらしい”と吹聴した事実を知り怒ります。
ブランドンは、ディビットを殺したロープで本を縛り、ディビットの父親に渡す。そのロープが凶器だと知ってか知らずか、こんなおかしなパーティはつまらないと、送別会は解散。招待客が帰るなか、この場にいないディビットのイニシャル入りの帽子を間違えて出されたルパートは、ディビットの死を確信します。

”タバコ入れを忘れたので部屋に入れて欲しい”とルパートが1人戻ってきます。動揺するフィリップを尻目に、タバコ入れを探す振りをするルパート。隠し持った銃で襲おうとする、ブランドン。ついに、チェストを開きます。そこには、ディビットの遺体が。ルパートはこの事実を警察に知らせるために、銃声を3発、窓に向かって放つ。
殺しの口実として、”優秀な人は劣っている人に何をしてもいいんだ”と話すブランドン。ニーチェの超人理論を誤解して自分達が優秀だと自慢したいらしい。ルパートは”何の権利で自分を優秀だと言うんだ?”と怒りをあらわにします。こうして拙い犯罪はもろくも崩れたのであった。

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映画『ロープ』 感想・評価・レビュー(ネタバレ)

映画『ロープ』について、感想・レビュー・解説・考察です。※ネタバレ含む

おかしな殺人パーティ!死体を見つけるまでの55分間

なんとも奇妙なサスペンスです。冒頭で、自らのエリートさを見せつけるために殺人事件が起こります。その後は、いつ死体が見つかるのか、どう犯人を追いつめてゆくのかが焦点になります。ヒッチコックの作品の中でも、評価が分かれるらしく興味深い作品。

仕掛けはとてもシンプルなのに、観だすと止まらない面白さ。単純明快なストーリーなのに複雑化して見えるのが本作の魅力です。ワン・シーン、ワン・カットで撮影され、まるで舞台上の出来事をリアルタイムで観ているかのよう。本作では、探偵役ルパートを演じたジェームズ・スチュアートの演技も素晴らしい。

殺人者の視点から、探偵役の視点へと移りますが、死体を見つけるまでの緊張感はたまりません。パーティの客に気づかれないのかしら?筆者は、ジェームズ・スチュアートが好きで観たのですが、彼の登場までの時間が長い!家政婦のウィルソンさんが、ルパートに熱を上げていたりと彼の説明はあるのですが、この時間差や何も知らない招待客がパーティに集まる状況にニンマリします。

小道具の使い方も滑稽で、凶器として使われたロープで大切な本を束ねてあったり、帰り際、この場にいないハズのデイビットのイニシャル入りの帽子が出て来るシーンなどにも注目して下さい。現代の映画がCGなどを駆使して多くの事柄を詰め込みすぎている作品ばかりであるが、ヒッチコック作品は、センスある撮影技法や小道具で多くの仕事を可能にしている点を改めて評価したいと思います。

ニーチェの超人理論と殺人

ニーチェの哲学は面白い。キリスト教精神が根幹を成すヨーロッパ世界において、”神は死んだ!”といい、優れた観察眼によって、神ではなく人間主義を貫いた哲学者だったと考えています。本作では、自分の優秀さを見せつけるために殺人が行われますが、その動機の元になったかのようにニーチェの哲学が使われていますね。どうも誤解をあたえかねないと思うのですが、決してニーチェの哲学のせいではありません。

昔から、ニーチェの哲学はナチスの思想と関連が深いように思われて危険だとみなされてきた。その背景から、殺人のきっかけになったと思わないでほしい。優れているから、人を殺してもいいという理論は通じない。劇中でルパートは、2人に殺人を告白させようと言ったのだ。また、ヒッチコック作品にはあらゆる古典からの名言がたくさん散りばめられています。知的な会話を見逃さないで。


冒頭の一部を除いて、ほぼ一つの部屋で全てが進行する舞台演劇のような映画。ワンカットに見える編集がされており、観客は登場人物達が実際に過ごす時間を一緒に過ごす。
映像に派手さはないが、前述の通りワンカットに見える編集の為のつなぎの部分を探す楽しみや、こちらの部屋からドア越しに向こうの部屋の出来事を見る感覚が楽しい。ストーリーは会話やその反応を中心に進む。隠された秘密が徐々に暴かれていくドキドキ感こそ、ヒッチコックの真骨頂。時間も集中力が途切れない程よい長さ。時代を超えてお勧めできる1本。(男性 40代)

映画『ロープ』 まとめ

数あるヒッチコック作品の中で、本作ほど変なサスペンスもないだろう。多くの人が、ヒッチコックの映像技法に目がゆくのだけど、それ以外の精神性も見てほしい。単純明確なストーリーと知的な会話、2人の殺人者の対照的な態度など見どころが満載です。ジェームズ・スチュアートをはじめとして、ヒッチコック作品の常連俳優が出ている点にも注目してほしい。

例えば、ピアニストで小心者を演じたファーリー・グレンジャーがヒッチコックの「見知らぬ乗客」(51)に出演など、各々の俳優を追いかけてみるのも面白い。きっとヒッチコックの意図するものが見えてくるはずです。本作にもし違和感を感じる観客がいるとしたら、カラー映像だからではないでしょうか。それから、ヒッチコック監督がちらりと写っているシーンに気が付きましたか?

とても小さく映っているので気づき辛く、最後までファン泣かせの作品です。

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