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映画『さがす』のネタバレ・あらすじ・考察・解説

この記事では、映画『さがす』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説し、この映画の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。

映画『さがす』の作品情報


出典:U-NEXT

製作年 2022年
上映時間 123分
ジャンル サスペンス
監督 片山慎三
キャスト 佐藤二朗
伊東蒼
清水尋也
森田望智
製作国 日本

映画『さがす』の登場人物(キャスト)

原田智(佐藤二朗)
日雇い労働者の中年。娘の楓と2人暮らしで、近所のスーパーで、おにぎりなどせこい万引をしては、娘が店に謝罪に来る。貧しいながら娘と寄り添い、幸せな生活を送っている。かつて卓球場を経営していた。
原田楓(伊東蒼)
智の娘。しっかり者の中学生。母が亡くなってからは、智を支え、家庭を切り盛りする。
山内照巳(清水尋也)
懸賞金付きの指名手配犯で、快楽殺人犯。SNS上で自殺志願者とつながり、報酬を得て自殺志願者を殺害する。
ムクドリ(森田望智)
SNS上で山内とつながった自殺志願者。「私は、いらない人間」と呟く。
原田公子(成嶋瞳子)
智の妻。卓球が得意で、夫の智が経営する卓球場で娘の楓に卓球を教える。3人で幸せに暮らしていたが、難病ALSを患う。

映画『さがす』のネタバレ・あらすじ(起承転結)

映画『さがす』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『さがす』のあらすじ【起】

大阪市で日雇い労働をしている、中年の原田智は、中学生の娘・楓と2人暮らし。小腹が空いたらスーパーでおにぎりを万引きし、楓がスーパーに謝罪のために駆けつける。2人で帰宅し、家事をしながら父を説教する楓。しゅんとした後、唇を歪めて「チュウ、チュウ」と音を立てつつ変顔をする智の姿に、こらえきれずに楓が吹き出すと「俺の勝ちや」と智はドヤ顔。「何の勝負やねん」と呆れつつも父を許す。父娘はささやかだが幸せに暮らしていた。

ある日、智は楓に、懸賞金付きの指名手配犯を見かけたと話す。
「こいつを捕まえて賞金を手に入れたら、金持ちになれる」と言う智を、楓は相手にしなかったが、次の日、智は失踪する。

楓は、智の写真付きのビラを作り、駅前で配る。警察にも相談したが、万引きの常習犯である智の捜索に、警察は乗り気ではない。

父が働いていた日雇いの仕事場に出向いた楓は、その日の勤務者の名簿に父の名を見つけ、現場に向かう。しかし、「原田智」と言う名の労働者は父とは別人である上に、父が言っていた「賞金付き指名手配犯」にそっくりだった。

映画『さがす』のあらすじ【承】

父と同じ名の男を追う楓は、かつて智が経営していた卓球場で、いびきをかいて寝るその男の姿に遭遇する。男は、父の言っていた指名手配犯・山内照巳だった。

遡ること3ヵ月。連続快楽殺人犯の山内は、次の獲物を探していた。彼はネット上で自殺志願者とつながり、報酬を得て「死にたい」という望みを叶えていた。

その日は「ムクドリ」という女性を殺めるところで不測の事態が起こり、警察が乗り込んで来る。何とか逃れた山内は、人気のほぼない離島に漂着。
空腹感が限界に近づいていた頃、偶然、年老いた農夫が通りがかり、山内にみかんを与える。

親切な農夫は山内を自宅に招き入れ、夕食を振る舞った後、AVのコレクションを披露。
性癖を尋ねられた山内は「動いている女の子って、だめなんです」と答える。
山内は農夫を絞殺し、動かなくなった身体を浴室で解体、それを見ながら自慰行為をする。

山内は、農夫のパソコンで複数のアカウントを作り、ネット上で次の獲物となる自殺志願者を選び始める。

次に山内が向かったのは大阪市。目的は原田智を探すことだった。

映画『さがす』のあらすじ【転】

智と山内の出会いは、更に13ヵ月前に遡る。
智は、難病ALSと闘う妻・公子を自宅で看病していた。楓に卓球を教えたのも公子で、公子の笑顔は、3人家族の幸せの象徴だったが、病に冒されてからの公子は、自分の意志通りに動かなくなっていく身体を持て余し、自発呼吸さえ難しくなっていく進行性の病に、絶望するしかなかった。
智は気丈に振る舞い、笑顔で懸命に公子を看病するが、公子は「人間として死にたい」と訴える。辛うじて動く指で「安楽死」を検索し、日々自殺の方法を模索する公子を見た智は、自身の心の限界を感じた。

そこに、公子の通うリハビリ施設の職員として山内が現れる。智に「奥様を楽にして差し上げます」と、公子の『死ぬ権利』を語る山内に初めは否定的だった智も、次第に心が傾く。
回復の見込みのない病を抱える妻に出来ることは、妻の望みを叶えることだと決心した智は、山内に妻の殺害を依頼する。

山内は、智の経営する卓球場で公子を絞殺した後、智にその報酬を求める。
智が報酬を支払うと、山内は「この金で、奥様のような人を救済しましょう」と持ちかける。

映画『さがす』の結末・ラスト(ネタバレ)

山内にそそのかされるまま、智は山内と、山内のターゲットを繋ぐ連絡係となる。

以前、不本意ながら山内の手を逃れてしまった自殺志願者のムクドリは、自殺に失敗して半身不随となり、東京で車椅子生活を送っていた。「今度こそ殺して」と、ムクドリは山内に、高報酬で自分の殺害を依頼、山内は承諾する。

智がムクドリを東京に迎えに行き、大阪市の智の卓球場で、山内がムクドリを殺す計画だった。
智は楓に、懸賞金付きの指名手配犯を追う話をした後、大阪市にいる山内に自分の職業カードを渡し、原田智として身を隠すよう指示。自身は楓の前から姿を消した。

父の名を語り、父の職場で働く山内を追及した楓は、彼を追ううちに、山内が農夫を殺害した離島に辿り着く。

農夫の家で、山内がムクドリを殺す間、智は見張り役を務める約束だった。
しかし、智は山内をハンマーで殴り殺す。山内がとどめをさせなかったムクドリを殺し、自分の腹を包丁で刺して、被害者として事件を偽装する。

父の犯した罪を解明した楓は、警察に告発。
卓球場で父とふざけ合う中、パトカーのサイレンが聞こえた。

映画『さがす』の考察・解説(ネタバレ)

映画『さがす』の疑問や謎をわかりやすく考察・解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『さがす』で娘は父親の罪になぜ気づいたのか?

映画『さがす』において、娘の楓が父親・智の罪に気づくまでの過程は、物語の重要な要素となっています。父親は失踪しましたが、それには自殺志願者を殺害する連続殺人犯との関連性が隠されていました。楓は父親の行方を追う中で、単なる失踪ではなく、もっと深刻な事情があることを徐々に感じ取るようになります。

最初に楓が父親の罪に気づくきっかけとなったのは、父親の不可解な行動でした。いつもは優しく穏やかな父親が突如として姿を消し、その後に残された痕跡や行動が不自然であったことが、楓の疑念を呼び起こしました。さらに、父親の秘密を調べていく過程で、殺人事件への関与の可能性が浮上してきます。物語が進展するにつれ、楓は父親の言動に隠されたメッセージや、行動の背後にある真意を読み取るようになります。

加えて、楓は父親の過去についても少しずつ明らかにしていきます。父親が抱えていた罪悪感や負い目が、現在の行動に影響を与えていることに気づくのです。こうして娘は、父親の罪を徐々に認識し、その背景にある複雑な感情や状況を理解していきます。最終的には、父親が選択した道とその行動に込められた思いが明らかになります。

映画『さがす』に気まずいシーンはあるか?

映画『さがす』には、いくつかの「気まずいシーン」が存在します。父親と娘の関係が次第に緊張感を帯びていく中で、真実に近づくシーンでは、その不穏な雰囲気が視聴者にも伝わってきます。例えば、娘の楓が父親・智の不可解な行動に疑問を抱き始めた時、直接父親を問い詰めるシーンでは、二人の間に緊張感が走ります。

また、父親が何かを隠していることを示唆するような場面では、観客は父親の本当の動機に気づき始めるため、秘密が明かされる前のシーンには「気まずさ」や不安感が漂います。智が娘に優しさを見せる一方で、内心では別の計画を抱いていることが垣間見えるシーンでは、観客は智の二面性を感じ取り、それが緊張感を生み出すのです。

さらに、殺人犯との関わりが描かれるシーンでは、智が自らの罪と向き合わざるを得ない状況が展開され、そこでの彼の行動が娘にどのように映るかが重要になります。このようなシーンでは、父親の真意や行動に対する視聴者の理解と、娘の反応が交錯し、非常に気まずい空気が漂うのです。

映画『さがす』は実話に基づいて作られているか?

映画『さがす』は、フィクション作品であり、特定の実話を基にしているわけではありません。しかし、作品で扱われるテーマや描写される事件には、現実に起こり得る社会問題や人間の内面に関する真実味のある要素が織り込まれています。特に、自殺志願者を巻き込む連続殺人という設定は、実際の事件や社会的な問題と関連性があります。

この作品では、家族の絆や親子愛がテーマとなっている一方で、現代社会における孤独や人々の心の闇も描かれています。こうした描写が、まるで現実の事件を彷彿とさせるリアリティを持っており、観客に「もしかしたら実話がベースになっているのでは?」と感じさせる要因となっているのです。実際、映画の中で描かれる自殺や殺人事件の背景には、現代社会が抱える深刻な問題が反映されているのです。

さらに、映画の展開やキャラクターの行動には現実味があり、人間の感情や行動の複雑さが巧みに表現されているため、実話に基づいた作品のような緊張感や切実さを感じさせます。結果的に、『さがす』はフィクション作品でありながらも、現実の問題と深く結びついているように見える作品となっているのです。

映画『さがす』と座間9人殺人事件は関係あるのか?

映画『さがす』と座間9人殺人事件の間に直接的な関連はありませんが、両者が扱うテーマには共通点があるため、観客やメディアが結びつけて考えることがあります。

座間9人殺人事件は、実際に自殺願望を抱えた人々を標的にした連続殺人事件であり、犯人がSNSを通じて被害者と接触し、最終的に複数の命を奪ったという衝撃的な事件です。一方、映画『さがす』でも、自殺志願者を狙った連続殺人が描かれており、このテーマの類似性から、事件との関連性が疑問視されることがあります。

しかし、映画はあくまでもフィクションであり、特定の実際の事件をモデルにしているわけではありません。脚本や物語の展開も、座間事件とは異なる形で進行します。ただし、自殺や人との孤立、そしてその隙間を狙った犯罪といった、現代社会が抱える共通の問題が描かれているため、視聴者が座間事件を連想することは不思議ではありません。

映画『さがす』は、独自のストーリーを展開しており、特定の実際の事件を再現することを目的としてはいませんが、現実の事件と通じるテーマを含んでいるため、観客にとってはよりリアルに感じられる部分があるのです。

映画『さがす』のラストの口パクでは何と言っているのか?

映画『さがす』のラストシーンで、楓が父親・智の写真を見つめながら口パクで何かを言うシーンは、非常に印象的で、観客の心に深い感情を残します。しかし、具体的に彼女が何を言ったのかは明確には描かれていません。監督や脚本家も、彼女の言葉について明言を避けているため、観客の想像力に委ねられているのです。

多くの観客や映画ファンの考察によると、楓は父親に向けて「ありがとう」や「ごめんなさい」といった言葉を口にしているのではないかと解釈されています。彼女は父親の行動を理解し、彼の苦しみや思いを汲み取った上で、最後に感謝や謝罪の気持ちを伝えているのかもしれません。

この口パクシーンは、物語全体の感情的なクライマックスであり、娘が父親の真実を知った後、彼への想いを表現する象徴的な瞬間なのです。観客に対して、彼女の心情が明確に伝わるようには演出されていませんが、それこそがこの映画の余韻を強く残す要素となっています。具体的な言葉が分からないからこそ、このシーンには深い感情的な解釈が可能であり、観る人それぞれが自分なりの答えを見出すことができる仕掛けになっているのです。

映画『さがす』のラストシーンでピンポン玉がない理由

映画『さがす』のラストシーンで、娘・楓が父親の遺品のピンポン玉を探すシーンがありますが、彼女はそれを見つけることができません。このピンポン玉は、父親と楓の過去の思い出を象徴するものであり、彼女にとって父親とのつながりを表す大切なアイテムです。ラストでピンポン玉が見つからないという演出には、いくつかの意味が込められていると考えられます。

まず、ピンポン玉が見つからないということは、父親との完全な別れや、過去の思い出との決別を示唆しているのかもしれません。ピンポン玉は、彼女にとって父親との絆を象徴するものですが、それが手元にないことで、父親との思い出を完全に抱きしめることはできないという現実を表しているのです。父親が犯した罪や彼の選択を理解しながらも、娘としての複雑な心情を整理しきれない心境が表現されています。

また、ピンポン玉が見つからないことで、物語は一種の未完の状態を象徴しているとも言えます。父親が選んだ道や彼の行動に対して、楓は完全には納得できないまま、それでも前に進まざるを得ないというテーマが込められているのです。このシーンは、父親との絆を完全に断ち切ることなく、娘がこれからの未来に一歩を踏み出すための象徴的な演出として捉えることができます。

映画『さがす』はどれぐらい怖い映画なのか?

映画『さがす』は、ホラー映画ではありませんが、サスペンス要素が強く、精神的な恐怖を感じさせるシーンが多く含まれています。直接的な恐怖やホラー的な演出は少ないものの、人間の心理的な深い闇や不安感をじわじわと高めていく演出が特徴的です。特に、家族の愛と信頼が崩れていく過程や、父親の秘密が明らかになるシーンでは、視聴者に強い不安感を抱かせることがあります。

この映画の怖さは、主に「普通の人間が抱える恐怖」に焦点を当てています。物語の中で描かれる父親・智の行動や、彼が抱える罪の重さが、観客にとってもリアルな恐怖を感じさせるのです。日常の中で人々が抱える悩みや苦しみ、そしてその中で起こりうる予測不可能な行動が、映画を観る者に心理的な不安を植え付けます。

また、娘・楓が父親の行動に疑念を抱き、彼を追い詰める過程でも、緊張感や不安感が高まります。観客は、父親の真実に少しずつ近づく楓の姿を見守りながら、彼女がどのような結末にたどり着くのか予測できない恐怖を感じるでしょう。このように、映画『さがす』は、直接的な恐怖よりも、じわじわと心に迫る心理的な怖さが特徴の作品なのです。

映画『さがす』の山内がモルツを用意していた理由を考察

映画『さがす』の中で、山内がモルツを用意していたシーンがありますが、これにはいくつかの解釈が可能です。モルツ(ビール)は、一般的に日常的な飲み物であり、家族や友人とのくつろぎの時間を象徴するアイテムとして描かれることが多いですが、この場面ではそれとは異なる意味合いが込められていると考えられます。

山内は、自殺志願者を狙う連続殺人犯であり、彼がモルツを用意していた理由は、一見すると普通の日常生活を装うための偽装とも解釈できます。彼は冷酷な殺人者でありながら、表向きには穏やかで人当たりの良い人物として振る舞っているのです。モルツという日常的な飲み物を用意することで、彼は自分の異常な行動を隠し、普通の生活を送っているように見せかけていたのかもしれません。

また、モルツを用意する行為には、彼が自らの犯罪行為に対して罪悪感を抱かず、むしろ淡々とした日常の一部として捉えていることを示唆しているのかもしれません。つまり、彼にとっては、罪を犯すことも日常の延長であり、特別な感情を伴わない行動だったということが伺えます。

このモルツが象徴するのは、表面上の日常と、裏に隠された残酷な真実とのギャップであり、山内の二面性を強調する重要な要素として描かれているのです。

映画『さがす』には元ネタになった事件があるの?

映画『さがす』は、完全なフィクション作品であり、実際に起きた特定の事件を基にしているわけではありません。しかし、この映画で扱われているテーマや描写されている事件は、現実社会で起こり得る問題や犯罪と密接に関連しています。自殺願望者を標的にした殺人事件や、家族の失踪を巡るミステリーなど、映画の中で描かれる出来事は、現実世界でもしばしば見聞きするテーマなのです。そのため、この映画を観た人の中には、実際の事件を連想する人も少なくないでしょう。

映画で取り上げられている自殺願望者の問題は、現代社会が抱える深刻な課題の一つです。特に、SNSやインターネットの普及により、他人とつながることが容易になった現代では、類似した事件が報道されることも珍しくありません。その意味で、『さがす』のストーリーは、現代社会の問題を反映しているとも言えます。ただし、この映画は、実在する特定の事件を再現したわけではなく、あくまでもオリジナルのフィクション作品として制作されたものなのです。

また、家族愛や失踪者の捜索、そしてその背後に潜む犯罪といった、映画のテーマは、実際の社会問題と深く結びついています。そのため、この映画は、観る人にとってリアルに感じられるのかもしれません。フィクションでありながらも、現実社会で起こり得る問題を巧みに描き出した点が、『さがす』の物語に衝撃を与え、印象的なものにしているのです。

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