この記事では、映画『サニー/32』のあらすじをネタバレありの起承転結で解説しています。また、累計10,000本以上の映画を見てきた映画愛好家が、映画『サニー/32』を見た人におすすめの映画5選も紹介しています。
映画『サニー/32』の作品情報
上映時間:110分
ジャンル:サスペンス、コメディ
監督:白石和彌
キャスト:北原里英、ピエール瀧、門脇麦、リリー・フランキー etc
映画『サニー/32』の登場人物(キャスト)
- 藤井赤理(北原里英)
- 中学校の教師。14年前に世間を騒がせた少女殺人事件の犯人と間違えられ、誘拐されてしまう。静電気に強い。
- 柏原(ピエール瀧)
- サニーの信者。サニーを生きがいにしており、そのために、仕事も家庭もすべて犠牲にしてきた。赤理を誘拐し、サニーだと信じて疑わない。暴力的な男。
- 小田(リリー・フランキー)
- 柏原と共に赤理を誘拐した。ビデオ録画が趣味で、人が死にかけている時でもお構いなしにビデオを回す。
- 二人目のサニー(門脇麦)
- ネットの動画サイトを通じて現れたサニーだと名乗る人物。
- 向井純子(蒼波純)
- 赤理の学校の生徒。友達から仲間はずれにされており、ストレスを溜めている。
映画『サニー/32』のネタバレあらすじ(起承転結)
映画『サニー/32』のあらすじ【起】
藤井赤理は北海道で中学の教員をしていた。生徒たちの力になりたくて日々、奮闘している。最近、気になっているのは、向井純子という女子生徒。明らかにイジメにあっていそうなのだが、彼女に尋ねても、先生にだけは話さないと言われてしまう。悩みのタネは他にもあった。近頃、赤理のSNSに気味の悪いメッセージが届き、ストーカー被害も発生していた。
24歳の誕生日、アパートに帰宅した赤理は、そこで警察がストーカーを逮捕しているのを目撃。犯人は同じ学校に勤める男性教師だった。犯人が逮捕されてほっとする赤理だったが、“冒険が終わっちゃった”と、少し物足りなそうな発言をする。だが、その直後に赤理は何者かによって誘拐されてしまった。
赤理が目を覚ますと、古い日本家屋の中で縛られていた。目の前には柏原と小田という男たちがいた。二人は14年前に起きた女子小学生殺人事件の犯人、通称“サニー”を崇拝する信者で、赤理のことをサニーと思い込み、誘拐したのだった。

映画『サニー/32』のあらすじ【承】
2003年2月28日。小学生の女子が、同級生の女子をカラオケボックスにてカッターナイフで殺害。ネットの住民たちは犯人の特定に躍起になり、その結果、クラスの集合写真から顔がバレてしまう。加害者の女子であるフジイアカリは、その写真の中で右手を三本指、左手を二本指でピースサインを作っていたことから、3と2で“32=サニー”という名前で呼ばれ“犯罪史上最もかわいい殺人者”とも呼ばれていた。ネットによってサニーは神格化され、崇拝者も数多く存在した。柏原と小田は、そんなサニーと一緒に居たくて、誘拐を実行したのだった。
赤理は、自分はサニーではないと言うが、二人は全く信じてくれない。ピンクのドレスに着替えさせられ、三人で誕生日を祝わされる。その様子は録画され、サニーのファン掲示板にアップされた。
柏原たちは、サニーの崇拝者たちを連れてきた。医者の寺脇、大学生の田子、熱狂的信者のシズカ、そして髭面の男。彼らは金を払ってサニーに会いにきたのだった。赤理とふたりきりになった寺脇は、あの事件で自分の価値観が180度変わったと言う。赤理は寺脇に、自分はサニーではないので、ここを出たら警察を呼んでくれと耳打ちする。そこに、髭面の男が入ってきた。彼は突然、手にしたナイフで赤理を刺そうとするが、助けようとした寺脇が代わりに刺されてしまう。
外から変な音が聞こえるので様子を見てみると、ドローンが飛んでおり、彼らの家がライブ中継されていた。場所を替えることにした柏原たちは、深夜、車を走らせる。その最中、寺脇は“サニー、ありがとう”と呟くと息を引き取った。
海辺の小屋を新しい隠れ家にした柏原たち。髭面を縛りつけていると、性行為をしている前川とミチルに遭遇。顔を見られたこともあり、彼らも柏原たちと行動を共にするようになる。
寺脇を埋めるため、穴を掘らされる田子。田子は卒論のためにサニーに会いに来たが、想像と違ったためシズカの前でサニーをディスっていた。それを柏原に告げ口され、皆から袋叩きにあう。後に、外に縛られたまま、極寒の夜に放置されて死亡。
髭面は赤理に、寺脇には悪いことをしたが、俺にはサニーを殺す権利があると言いだした。彼はサニーが殺した同級生、恵の兄だと言った。
ドローンによって海辺の隠れ家が発見される。ドローンの主は、動画配信で視聴者を稼ぐ少年・モモセ。彼は柏原たちの所へとやってきて、スタンガンで全員を気絶させた。モモセは全員を柱に縛りつけると、サニーの配信を始める。だが、視聴者は全く増えない。イライラを募らせる中、赤理にバカにされたことで逆鱗に触れ、スタンガンで攻撃を仕掛けてきた。だが、静電気に耐性のあった赤理は、気絶しなかった。
スタンガンの電流を食らったことで、赤理の中で何かが弾けた。ライブ動画の視聴者たちは“神降臨”と騒ぎ立てる。赤理はモモセに説教を始め、平手打ちをする。だが、その後、すぐにモモセを強く抱きしめた。赤理は皆の心に潜むコンプレックスを露にし、それを一人ひとり癒していった。視聴者はどんどんと増えていった。“32”“神”“キタコレ”とコメントが続く中で、“センセー”と呟いた者がいた。発信者は向井だった。赤理の姿に勇気づけられた向井は、友達に仲間はずれにされていることを告白してくれた。
皆、口々に赤理のことをサニーと称賛する声を聴いて、赤理は思った。“なぜか、すごく嬉しい。みんなが私をサニーと呼ぶなら、私はサニーだ”
映画『サニー/32』のあらすじ【転】
赤理はすっかりサニーとして存在し、神格化され、まるで教祖のようになっていった。ライブ動画で“説法”という名の人生相談を始める。柏原たちはすっかり従順な信者となり、皆、仲良く暮らし始めていた。赤理の元へは、全国からお布施として、現金や贈り物が多数届いていた。
動画サイトにサニーだと名乗る“二人目のサニー”が現れ、恵を殺したのは自分だと言いだした。動揺した赤理は、恵の兄を連れてきて、本物のサニーかどうか問いつめるが、柏原は“どっちでもいい。俺たちにとっては、ここにいる赤理がサニーだ”と言う。だが、シズカは、どっちでもいいわけがないと否定的な反応をした。
2月28日が明日に迫った。その日は、サニーが恵を殺した日だった。教え子の向井は、この日に何かをしようとしているようだった。赤理はそのことが気がかりだった。
二人目のサニーとライブカメラで繋がることができた赤理。サニーに、なぜ恵を殺したのかと尋ねた。担任からひどいことを言われた恵は、サニーと二人で遠くに逃げようとして、隣町のカラオケボックスに辿り着いた。その時、恵がやっぱり帰ろうと言いだす。サニーは自分が一番じゃないと感じて傷ついたから殺したのかもしれないと答えた。ライブカメラは、そこで切れてしまった。
向井と電話が繋がり、カラオケボックスに向かっているという。赤理は不安を募らせるが、電話は切れてしまう。
お布施を受け取る際、警察に発見された小田、前川、ミチルは、警官と乱闘になる。小田は逃走、前川は警官に撃たれ重傷を負ってしまう。ミチルは警官の拳銃を奪うと、前川を連れて隠れ家へと向かった。
映画『サニー/32』の結末・ラスト(ネタバレ)
二人目のサニーともう一度、繋がることができた赤理は、どうして殺したのかちゃんと思いだせと言った。サニーは“分からない。忘れたわけでも、思いだせないわけでもなく、本当に分からない”と答えた。赤理は、あなたと同じように押しつぶされそうな教え子がいる、その子を助けたいと伝えた。“人を殺すと、罪は償えなくなる。罪を償う権利を失ってしまう”サニーはそう言うと、私みたいになる前に、向井を救ってあげてと続けた。
赤理が本物のサニーではないことに気がついたシズカはショックを受ける。そこに、前川とミチルがやってきた。死にそうな前川に動揺したミチルは、全て赤理のせいだと拳銃を向ける。しかし、赤理を守った柏原によって、逆に撃ち殺されてしまう。
隠れ家に警察が向かってきていた。モモセと恵の兄は脱出していく。柏原はシズカによって銃殺され、赤理に銃口を向けたシズカもまた、突入してきた刑事に撃ち殺された。
警察から逃げながら、向井に電話をかける赤理。カラオケボックスにいるという向井に、早まるなと叫ぶが、向井は“サニー、ありがとう”とだけ言うと電話を切った。
モモセ、小田の助けで警察の追手を撒いた赤理は、カラオケボックスへと車を走らせた。向井は友達をカッターナイフで切りつけようとするが、寸前で思いとどまった。泣きじゃくる向井の元に赤理が駆けつけ、強く抱きしめた。その様子はライブ配信され、多くの視聴者がその様子を見守っていた。
映画『サニー/32』の感想・評価・レビュー(ネタバレ)
実際に起きた事件に着想を得て制作されたらしいのだが、それならもう少しシリアスに描いて欲しかったなと思う。演技派俳優達が多数出演しているのに、もったいない。終始バタバタと騒々しい映画で、誰に注目して見ればいいか分からなかった。物語の途中で、皆がサニーと呼ぶならサニーになろうと吹っ切れる藤井赤理の心情がよく分からなかった。コントのような作品だったが笑うことができず、最後まで消化不良のまま終わった。(女性 30代)
もっとシリアスでサスペンス要素のある作品を期待していたので、少し物足りなさを感じてしまいました。赤理を演じた北原里英はアイドルということもあり演技力がかなり低く学芸会レベルと言われてしまっても仕方ないでしょう。そんな彼女が真面目な教師から、教祖様的な存在のサニーになっていく姿は現代のネット社会の闇を描いているようで怖くなりました。
ラストも盛り上がりきらずに終わってしまった印象があるので少し残念に感じました。(女性 30代)
冒頭から不穏な空気が漂い、最後まで不快感と緊張感が張り詰めた作品でした。無差別殺人の加害者だった少女「サニー」を神格化する狂信者たちに拉致されるという展開はあまりに衝撃的で、人間の狂気とメディアによる神話化の怖さをひしひしと感じました。北原里英さんの演技も素晴らしく、リアリティを増していたと思います。(30代 男性)
アイドル出身の主演に不安があったけど、予想を裏切るほど良かった。極寒の新潟の景色と相まって、終始救いのない展開に心が凍るような気持ちに。特に、殺された子どもの加害者を「神様」にするという歪んだ思想には背筋が凍った。人の弱さと、拠り所のなさを突きつけられた気がする映画でした。(20代 女性)
途中まではサスペンスだと思って観てたけど、だんだんと宗教的というか、信仰に近い狂気を感じて恐ろしくなった。犯人たちの信念の異常性にゾッとしたし、被害者と加害者という構図では語れない深さがある。北原里英さんの等身大の演技が効いてて、感情移入しやすかったです。観終わってからも余韻が残る作品。(40代 男性)
被害者遺族の心情がほとんど語られないまま、加害者を巡る物語が進んでいくことに対して最初は違和感を覚えました。でも、物語が進むにつれて「これは狂信の話」なんだと理解したとき、恐怖の質が変わりました。社会が生み出したモンスターに翻弄される現実は、フィクションで済まされないリアルさを感じました。(30代 女性)
“サニー”という言葉のイメージとは真逆の、暗く重たい映画だった。加害者の名前や事件がネットで神格化され、歪んだ正義が作り出されるという設定は現代的でとてもリアル。観ている間ずっと気分が重かったけど、これが監督の狙いなんだろうなと思う。エンタメというより、現代社会への問いかけとして観るべき映画。(20代 男性)
新潟の雪景色が、静かに狂気を包み込むような背景になっていて、演出がとにかく巧みだった。サニー=神という思想は理解しがたいけど、その危うさに取り憑かれてしまう登場人物たちの心理には妙な説得力があり、怖かった。見終わった後、心に冷たい水をかけられたような感覚がずっと残っています。(40代 女性)
最初は誘拐事件モノのような軽い感覚で見始めたけど、どんどん精神的に追い詰められていく展開に心が折れそうになった。SNSで誰でも“神”になれてしまう現代社会への皮肉も含まれていて、単なるホラーではない深さがある。演出も音楽も最小限で、逆にそれが不気味さを増していた。(30代 男性)
女性として観ていて本当に苦しくなる場面が多かったです。監禁された女性教師が、自分の存在を“神格化”されるというあまりにも理不尽な展開。それに抗うことすらできないほどの狂気に囲まれている感じがリアルでした。正直、観ていて楽しい映画ではないけど、「現実にこういう崩壊は起こりうる」と思わせる怖さがあります。(20代 女性)
映画『サニー/32』を見た人におすすめの映画5選
冷たい熱帯魚(2010)
この映画を一言で表すと?
日常が地獄に変わる狂気の連鎖、園子温による衝撃のバイオレンスドラマ。
どんな話?
小さな熱帯魚店を営む男が、巨大なアクアリウム業者と出会い、徐々に不可解な事件に巻き込まれていく。表面は穏やかで善良に見えた人物が、裏ではとんでもない狂気を隠しており、その本性が次第に明らかになる。
ここがおすすめ!
『サニー/32』と同様、静かに始まりながらも、人間の裏側にある狂気を暴き出していく展開が見どころ。暴力描写は強烈ですが、それ以上に人間の“壊れる瞬間”が恐ろしい。心理的恐怖に惹かれる方におすすめです。
愛のむきだし(2008)
この映画を一言で表すと?
宗教・性・家族の愛が交錯する、4時間を超える衝撃のエンターテインメント。
どんな話?
盗撮常習犯の少年が、謎の少女と出会い、そしてカルト宗教に引きずり込まれていく。登場人物たちは皆どこか傷つき、愛を求め、やがて壮絶なドラマへと発展していく。実話をモチーフにした奇想天外な展開が魅力。
ここがおすすめ!
『サニー/32』と同様に、“正義”や“信仰”が人をどこまで狂わせるかを描いた作品。衝撃的なシーンの連続ながら、どこかユーモアもあり、人間の業に迫る物語として唯一無二のインパクトがあります。
ミスミソウ(2018)
この映画を一言で表すと?
いじめの果てに少女が辿る、血塗られた復讐の物語。
どんな話?
田舎町の学校で転校生の少女が壮絶ないじめを受け、家族を焼き殺されたことで、復讐に走るホラーリベンジドラマ。表面的には静かな雪景色と純粋な瞳、だがその奥に潜む怒りと哀しみが次第に解き放たれる。
ここがおすすめ!
『サニー/32』が持つ少女の「受難」と「変貌」を、より残酷かつ直接的に描いた作品。トラウマ級の展開ながら、緻密な映像と演技が見る者の心を掴む。静と動の対比が美しくも残酷な余韻を残します。
罪の声(2020)
この映画を一言で表すと?
過去の事件に翻弄される“声”が、今も誰かを縛り続けている。
どんな話?
昭和の未解決事件「ギンガ・グループ事件」の真相を追う新聞記者が、ある日、自分の声が脅迫に使われていたことを知る青年と出会う。事件の真相に近づくほど、彼らは社会の闇と人間の罪に向き合うことになる。
ここがおすすめ!
『サニー/32』と同じく、過去の犯罪が現代に影を落とす構図が特徴的。静かな筆致で進みながら、確実に心を抉ってくる展開。“罪”と“贖罪”を正面から扱った社会派ミステリーとしての完成度も高いです。
凶悪(2013)
この映画を一言で表すと?
人間の“本性”をえぐり出す、実録犯罪サスペンスの最高峰。
どんな話?
ある死刑囚から届いた手紙をきっかけに、記者が未解決の凶悪殺人事件を追うことに。その取材で浮かび上がるのは、表向きは善人だが、裏では残虐な犯行を繰り返す“真の凶悪犯”の存在だった。
ここがおすすめ!
『サニー/32』にも通じる、実際にありそうな狂気と暴力の存在がリアルすぎて恐ろしい。山田孝之とピエール瀧の怪演は鳥肌もの。人間の「悪」のリアリティを知りたい人には外せない一作です。
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