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映画『千年の愉楽』のネタバレあらすじ結末と感想

映画『千年の愉楽』の概要:紀州の路地。美しい容姿を持ちながら、不幸な運命を歩み短命で終わる特殊な血筋である中本家。彼らの誕生から死を見つめ続けた産婆が今わの際で今一度、彼らと関わった自分の人生を振り返る。2012年に急逝した若松孝二監督の遺作。

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映画『千年の愉楽』の作品情報

千年の愉楽

製作年:2012年
上映時間:118分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:若松孝二
キャスト:寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑、染谷将太 etc

映画『千年の愉楽』の登場人物(キャスト)

オリュウノオバ(寺島しのぶ)
被差別部落の路地にて産婆をしており、地元の子供のほとんどを取り上げる。地元では第2の母親として慕われ、穏やかで心が広く子供達を温かい目で見守る。2歳の息子を亡くした折に産婆となる。地元民にはオバァとか、オリュウさんと呼ばれている。
礼如(佐野史郎)
毛坊主でオリュウノオバの夫。2歳の息子を亡くした折に坊主となる。厳しく真面目な人物だが、妻がやることには一切の口出しをせず見守っている。
中本彦之助(井浦新)
半蔵の父親。高貴な血筋ではあるが、中本の血は汚れていると言い、先祖が犯した罪を清めようと自らが罰を受け、森の奥に姿を消す。容姿が優れた人物で、浮名を流している。
中本半蔵(高良健吾)
彦之助の息子。美しい容姿を持ち来る者を拒まず、身持ちが軽い。性格は明るく軽率な面があり、色欲に流されやすい。下ネタ好き。
田口三好(高岡蒼祐)
苗字は違えど、中本の血を引く青年。盗みを働いたりヒロポンを売ったりと、あくどい商売をしており、半蔵のようには死なないと中本の血に抗う。根は素直で良い子だが、粋がっている。

映画『千年の愉楽』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)

映画『千年の愉楽』のストーリー(あらすじ)を結末・ラストまでわかりやすく簡単に解説しています。この先、ネタバレを含んでいるためご注意ください。

映画『千年の愉楽』のあらすじ【起】

被差別部落の路地。産婆オリュウノオバは、毛坊主の夫礼如と共に地域の人々を見守りながら生きてきた。
中でも特殊な血筋を受け継ぐ中本半蔵は、オリュウノオバが産婆として初めて取り上げた、特別な子供だった。

数十年前のその日、半蔵の父である彦之助は、浮気相手に刺され森の廃墟へ逃げ込む。奇しくも彦之助の妻が産気づいた時で、礼如が見つけた時には血塗れの状態だった。彦之助は中本家の先祖が犯した罪のせいで、一族は穢れを背負っている。その罪を自身が受けることで汚れた血を清めるのだと言い直後、大怪我を負ったまま森の奥へ姿を消した。

数奇な一族である中本家は、容姿の優れた男子ばかり産まれるが、不運な運命を辿ることで有名な一族である。それでも、産婆であるオリュウノオバは、産まれる子に罪はないと半蔵を取り上げたのであった。

産まれた日が父親の命日となり、産まれてすぐに母子家庭となった半蔵。母親に育てられるも5歳の時、母親もまた別の男を追って姿を消してしまう。その後、幼い半蔵は親戚の家を転々として育てられ、立派な青年に成長。彼もまた優れた容姿を持っていた。

そんなある日、半蔵が不倫をしているという噂を耳にしたオリュウノオバ。道端で会った折、彼自身から不倫がばれて大阪の工場へ行かされるという話を聞く。彼は黙っていても女が寄ってくるのだから、仕方ないと笑うのだった。

数年後、立派な成りをした半蔵が妻となる女性を連れて、オリュウノオバへ挨拶に来る。彼女と所帯を持ち地元で仲間達と山仕事をすると言う彼に、オリュウノオバは大喜び。半蔵の妻はすでに身籠っていたが、中本家の宿命は知らなかった。

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映画『千年の愉楽』のあらすじ【承】

だが、所帯を持ちじきに子供も生まれるというのに、半蔵は路地の女達と浮名を流して歩くばかり。女が寄ってくるから仕方ないと身持ちの軽い半蔵は、第2の母親のような存在であるオリュウノオバにも粉をかけてくる始末。
しかも、産まれた子供を抱き上げることもなく寧ろ、嫌悪する表情を見せ自宅に近寄らなくなる。

狭い地域では噂はすぐに広がる。自分の子供が生まれたというのに、家へも帰らない半蔵が色狂いの後家の元へ通い詰めているという噂が聞こえ始める。オリュウノオバは半蔵に対し、女を甘くみないようにと忠告するのだった。

すると、半蔵は心を入れ替え、後家と別れて妻の元へと戻って来る。そんな折、仕事中に榊の木を伐り取ってしまう半蔵。榊は神様の木だと言われており、伐ったら天罰が下ると言い伝えられていた。仲間達は慌てて木を酒で清め山の神様へ謝罪をするも、夕方になって仲間が怪我をしてしまう。責任を感じた半蔵は治療費を肩代わりすると言い、後家の元へ向かって金を借りるが、その場にいた男と共に後家を弄ぶのだった。

この一件から彼は、自分はやはり中本家の血筋なのだと心を倦み、再び不倫を開始。半蔵は恨みを抱えた不倫相手の夫に刺され、若い身空で命を落としてしまうのだった。

映画『千年の愉楽』のあらすじ【転】

半蔵の惨めな死を見つめる男が言う。これが中本の血を引く男の最期かと。かく言う彼、田口三好も中本の血を引く男であった。そして、彼もまたオリュウノオバが取り上げた赤子である。三好は母親の実家の田口へ引き取られ育てられるも、荒い気性からか悪さばかりをして歩くようになる。それでも、オリュウノオバと礼如の元には良く通い、軽口を叩いては帰って行くのだった。

しみったれた人生は送りたくないと悪たれる三好。ある夜、町で会った男から女をあてがわれ、その見返りとばかりに金持ちの家へ盗みに入る話を持ち掛けられる。彼は大喜びで仕事を受け、男の仲間と一緒に金持ちの家へ侵入し金庫を盗み出した。

翌日の夜、居酒屋に来た客から、夕べ盗みに入った屋敷の主人が殺されていたと聞いた三好。更に、声をかけて来た男達ならやりかねないという話に怖気づいてしまう。彼は普段から中毒性の強いヒロポンという薬物を打っては、強い不安や恐怖から逃れようとしているのだった。

その後、三好と会ったオリュウノオバは、背中に入れられた入れ墨を見せてもらい、この入れ墨は三好のお守りになると言う。すると、彼は半蔵のようには死なない。中本の血には負けないと言い、去って行くのであった。

映画『千年の愉楽』の結末・ラスト(ネタバレ)

しかし、盗みに入った時の報酬も貰えず、話をくれた男とも会えず、ようやく見つけた仲間の男からはもう盗みはしないと言われ拒絶された三好。仕方ないので真面目に働こうと思ったが、仕事の初日に美しい人妻を発見してしまい、仕事へは行かずに人妻を誘惑し関係を持ってしまう。
ある夜中、人を殺してしまったと言う三好と人妻がオリュウノオバを頼ってやって来る。オリュウノオバはひとまず、返り血を浴びた三好の身なりを整え事情を聞いた。

逢瀬を続けていた三好と人妻は、面白半分に自分の家へ盗みに入ったらどうかと計画。どうせなら夫がいる夜がよかろうと実行した。しかし、物音に気付いた夫に発見され、取っ組み合いになった三好は誤って夫を刺し殺してしまう。逃走した三好を動転した人妻も追って来たため、今に至るという話だ。
オリュウノオバは一晩だけ宿を貸すから、朝になったら帰れと言った。

翌朝、人妻と別れた三好は近頃、目が掠れるのは中本の血のせいかと言いつつ、今度こそ真面目に働くとダムの建設工事へ向かう。それから1年、汗水たらして肉体労働に勤しんだ三好だったが、とうとう失明してしまい怪我をしてしまう。山から下りて病院へ向かったが、翌朝になって港で首を吊っているのが発見されるのだった。

オリュウノオバは死の間際になって、産まれては死んでいく中本家の命の話を遺影となった夫礼如と語り合い、命が産まれ死んでいくと呟き、そうして息を引き取るのであった。

映画『千年の愉楽』の感想・評価・レビュー

原作は作家、中上健次の同名連作短編集。2012年10月に亡くなった若松孝二監督の遺作となっている。原作での舞台は和歌山県新宮市の「路地」という被差別部落だが、ロケでは三重県のとある地域で撮影が行われている。
優れた容姿を持つが、短命の呪いを持つ中本家の数奇な運命を、その地に長年暮らす産婆の視点から描いている。作中では、中本家の先祖が罪を犯したことで一族の血が穢れ、呪いとなったことが語られているが、その罪がどのようなことであったのかまでは明らかにされない。末代までの祟りとして考えるならば、神的な存在に害を成したかもしれない。一滴でも血が入っていることで、呪いは発動するらしく若くして亡くなっていく。産婆は今わの際で自分ではどうにもならない虚しさを覚え、ラストシーンでのあのセリフを呟いたのだろうと思う。(女性 40代)


本作は、紀州を舞台に逃れられない不吉な血を引く色男達とその行く末を見てきた産婆を描いた若松孝二監督の遺作であり中上健次小説原作のヒューマンドラマ作品。
高良健吾の麗しい色男役がとても魅力的だった。また、劇中の島唄も良かった。
そして、時間軸を駆使した映像が印象的で、小説ではどのように表現されているのか気になって読みたくなった。
救いようのない重たい雰囲気だが、愛や憎しみが鮮烈に表現されていて好みだった。(女性 20代)


キャストがとにかく最高すぎる今作。寺島しのぶと佐野史郎で謎めいた雰囲気は出来上がっているし、中本の血を引く男たちは高良健吾に高岡蒼甫、井浦新とイケメン揃いでそれぞれ違う性格のキャラクターなので見応えがあります。
芸術性さえ感じさせるエロスはさすが若松監督と言わざるを得ない魅力的すぎる描写で、全てを見せない美学を教えてもらったような気がします。
それにしても高良健吾の美しさは半端じゃなかったです。ファンならずとも大満足の作品でしょう。(女性 30代)

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