映画『戦慄の絆』の概要:生まれた時から統合双生児のようにして生きてきた双子の兄弟が、ある女性の出現によって分離を望むようになる。それは悲劇の始まりだった。一人二役で一卵性双生児を演じたジェレミー・アイアンズの熱演が光る心理サスペンス。1988年公開のカナダ映画。
映画『戦慄の絆』の作品情報
上映時間:116分
ジャンル:サスペンス
監督:デヴィッド・クローネンバーグ
キャスト:ジェレミー・アイアンズ、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド、ハイジ・フォン・パレスケ、バーバラ・ゴードン etc
映画『戦慄の絆』の登場人物(キャスト)
- エリオット・マントル / ビバリー・マントル(ジェレミー・アイアンズ)
- 一卵性双生児の兄弟。ともに産婦人科医。姿形は瓜二つだが兄のエリオットは社交的なビジネスマンタイプで、弟のビバリーは内向的な研究者タイプ。不妊治療専門のクリニックを共同経営しており、今も一緒に暮らしている。
- クレア・ニボー(ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド)
- テレビシリーズや映画に出演する人気女優。未婚だが子供が欲しくてマントル兄弟のクリニックを訪れる。珍しい子宮の持ち主。
映画『戦慄の絆』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『戦慄の絆』のあらすじ【起】
一卵性双生児のマントル兄弟はカナダのトロントで少年時代を過ごした。生まれた時から2人はいつも一緒で、なんでも分けあっていた。
1967年、マサチューセッツ州ケンブリッジ。マントル兄弟は同じ大学の医学部に進学し、産婦人科医への道を歩んでいた。弟のビバリーは研究熱心で、マントル開口器と名付けられた医療器具を発明する。しかし人前に出るのはいつも兄のエリオットだった。
1988年、カナダのトロント。マントル兄弟は共同で不妊治療専門のクリニックを開いていた。営業能力に長けたエリオットと高い技術力を持つビバリーのバランスは絶妙で、クリニックの評判は上々だった。ある日、その評判を聞きつけて有名女優のクレアが極秘でクリニックを訪れる。
クレアを診察したビバリーは彼女が特殊な子宮を持っていることに驚く。クレアの子宮は戸口が3つあり、それが別々の小部屋に通じていた。その話を聞いたエリオットはクレアに興味を持ち、すぐに彼女と関係を持つ。そして弟にも彼女を勧め、ビバリーもクレアと関係を持つ。しかしクレアは2人を同一人物だと思っていた。
映画『戦慄の絆』のあらすじ【承】
女たらしのエリオットは遊びだったが、女慣れしていないビバリーは本気でクレアに惹かれてしまう。自分が妊娠できないことを知ったクレアは深く傷つき、ビバリーを頼るようになる。エリオットはビバリーにクレアとのことを聞きたがるが、ビバリーは彼女のことを話したがらなかった。
クレアは精神的に不安定な面があり、抗うつ剤や睡眠薬を常用していた。エリオットはそんなクレアを危険な女だと感じ、ビバリーに別れて欲しいと思っていた。しかしいつも従順なビバリーが、クレアのことになると言うことを聞かない。
友人からビバリーに双子の兄がいることを聞いたクレアは、彼に感じてきた違和感の理由がわかる。自分が2人と関係を持っていたことに気づき、クレアは怒ってビバリーのもとを去る。
クレアを失ったビバリーは精神的に参ってしまう。そんな中、エリオットは大学の助教授の地位を得て出張の機会が増える。ビバリーはクレアと偶然再会し、彼女と復縁する。クレアの出現でビバリーは兄との依存関係を断ち切りたいと思うようになる。しかしそのせいで精神的に追いつめられ、薬に頼り始める。
映画『戦慄の絆』のあらすじ【転】
ビバリーはクレアのマンションで暮らすようになるが薬物への依存はますます酷くなっていく。クレアもそんなビバリーを心配する。エリオットはクレアのせいで兄弟は破滅的な影響を受けたと考えていた。
クレアはビバリーを心配しつつ映画のロケへ旅立つ。残されたビバリーはクレアの男性秘書を浮気相手だと勘違いして完全に正気を失う。自分ではどうしようもなくなったビバリーはエリオットを頼り、ついに発作を起こして倒れてしまう。何とか一命は取り留めたがエリオットはリアルに弟を失う恐怖を感じる。薬物中毒者だという自覚のないビバリーを立ち直らせるため、エリオットはビバリーの薬抜きを始める。
しかしビバリーは禁断症状と幻覚に苦しみ、自分でデザインした凶器のような医療器具を金属作家に作らせ、それを実際の手術で使う。患者は大量出血し、手術室は大騒ぎとなる。エリオットは何とかビバリーの薬物依存を隠そうとしていたが、それも限界だった。自分たちは統合双生児のように死ぬ時も一緒だと信じているエリオットは、自分もビバリーと同じだけの薬を同じ時間に飲み始める。
映画『戦慄の絆』の結末・ラスト(ネタバレ)
自宅マンションに監禁されていたビバリーはロケから帰ったクレアに電話をもらい、浮気が誤解だったことを知る。ビバリーは朦朧としながらも身支度を整え、管理人に嘘をついて鍵を開けてもらい、クレアに会いにいく。
クレアはビバリーが以前よりもおかしくなっていることに胸を痛める。ビバリーはあの凶器のような医療器具を隠し持っており、クレアに“これは統合双生児を分離する器具だ”と説明する。ビバリーを探しているはずのエリオットからは全く連絡がなかった。少し落ち着いたビバリーは兄が心配になり“また戻る”と言い残してマンションへ帰る。
自宅マンションは凄まじい状態になっていた。ビバリーは風呂場でずぶ濡れになっているエリオットを見つける。今度はエリオットが重度の薬物中毒者となって、正気を失っていた。そして2人は完全に壊れていく。ビバリーはエリオットを診察台に乗せ、あの器具を使って統合双生児の分離手術を行うと言い出す。エリオットも喜んでそれに従う。
目を覚ましたビバリーは診察台の上で血まみれになって死んでいるエリオットを見つける。荷造りをして一旦外へ出たビバリーはクレアに電話をかけるが何も話さない。そしてすぐにマンションへ戻る。その後、ビバリーもエリオットの死体にすがりつくようにして死んでいた。
映画『戦慄の絆』の感想・評価・レビュー
本作は、生まれながらにして統合双生児のように生きてきた一卵性双生児のマントル兄弟がある女性との出会いがきっかけで分離を望んだことによって起こった悲劇を描いたカナダの心理サスペンス作品。
真っ赤な手術着やオリジナルの手術器具が印象的で狂気や不穏な雰囲気を感じさせ、もっと観たいと思った。
狂気的で気の滅入るような結末はクローネンバーグらしくて期待通りで、何より双子を一人二役で演じたジェレミー・アイアンズの熱演が素晴らしかった。(女性 20代)
予想外の展開でかなり衝撃的だった今作。双子って同じタイミングで同じ事を言ったり、離れているのに同じことを考えていたりと少し不思議な力があるように感じます。その、双子が持つ不思議な力を少し歪んだ考えで煮詰めてしまうとこの作品が出来上がってしまうのかなと思いました。
双子だからいやでもお互いのことが分かってしまうし、双子だから最期まで一緒じゃないと…と言う衝撃のラストには言葉を失いました。
天才脳外科医がオリジナルの手術道具を使用しているのをテレビで見たことがありますが、今作に登場する特殊な手術道具はちょっと不気味でしたね。(女性 30代)
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