映画『孫文の義士団』の概要:1906年10月1日。孫文は革命についての会談を行うため、東京から香港に向かっていた。朝廷側はこの会談を阻止するため、暗殺団を差し向ける。革命軍の一員であるチェン・シャオバイは孫文を守るため、仲間を募った。
映画『孫文の義士団』の作品情報
上映時間:138分
ジャンル:アクション、サスペンス
監督:テディ・チャン
キャスト:ドニー・イェン、レオン・ライ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン etc
映画『孫文の義士団』の登場人物(キャスト)
- シェン・チョンヤン(ドニー・イェン)
- 警察官。博打好きで家庭を顧みなかったため、離婚される。お金のために暗殺団の手助けをする。
- リウ・ユーバイ(レオン・ライ)
- 王族の若君。父の妻を愛してしまう。父は憤死し、妻はユーバイの前で絶命した。そのことに苦悩し、ホームレスとなった。鉄扇を使って戦う。商人のリー・ユータンとは知り合い。
- ダン・スーダイ(ニコラス・ツェー)
- 通称アスー。商人リー・ユータンの元で10年以上働いている。ユータン専属の車夫。写真屋の娘に恋をしているが、身分を気にして相手の親に結婚を申し込めないでいた。素直で実直な性格。
- ユエル(ファン・ビンビン)
- 商人リー・ユータンの妻。シェン・チョンヤンは元夫。チョンヤンとの間に娘が1人いる。
- リー・ユータン(ワン・シュエチー)
- 商人。40歳で授かった息子のチョングワンを溺愛している。革命軍に資金を提供している。
- チェン・シャオバイ(レオン・カーフェイ)
- 新聞記社・中国日報の社長。中国同盟会(政治結社)・香港支部長。リー・ユータンの友人で、兄のように慕っている。孫文を先生と仰ぎ、革命を起こすために奮闘する。
- イエン・シャオグオ(フー・ジュン)
- 暗殺団を率いる将軍。チェン・シャオバイの元教え子。西洋の考えが受け入れられず、朝廷側に付く。
- ファン・ティアン(サイモン・ヤム)
- 6年前に罷免され、仲間と共に朝廷を追われている。娘のホンは逃亡生活に嫌気がさしており、革命軍に力を貸す父に反発する。
- リー・チョングアン(ワン・ポーチエ)
- 17歳。リー・ユータンの息子。アメリカの大学に入学が決まっている。チェン・シャオバイの教え子。父に内緒で、密かに反朝廷運動を行っている。
- ワン・フーミン(メンケ・バータル)
- 少林時にいたが追い出されてしまう。実践経験はない。少林寺に戻ることを願っている。現在は豆腐を売って生活している。
映画『孫文の義士団』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『孫文の義士団』のあらすじ【起】
1901年1月10日、香港初の政治暗殺事件が起こり、興中会・前会長、ヤン・チューユンが死去した。当時英国統治下の香港は政治亡命者の避難所であり、革命の震源地であった。ヤンは教師として、リンカーンの言葉(人民の人民による人民のための政治)を用い、民主国家について子供達に教えていた。暗殺事件以降、香港を暗雲が覆った。
1906年10月1日、孫文は日本の東京から、香港へ向かっていた。北京・紫禁城にいる皇太后は、国賊の孫文を始末するため、イエン将軍を差し向けた。イエンは警官のシェン・チョンヤンを使い、中国同盟会(政治結社)・香港支部長、チェン・シャオバイを探らせた。
シャオバイは孫文が来ることを聞きつけ、商人のリー・ユータンの元に向かった。孫文は分散している革命軍の力を1つに集め、蜂起計画を立てるつもりだった。孫文はその費用として3000香港ドル貸してくれとユータンに頼んだ。だが、ユータンも二つ返事で出せる額ではなかったため、一旦返事を保留にした。
シャオバイは元将軍のファン・ティアンにも声を掛けに行った。ティアンは6年前に罷免され、仲間と共に朝廷を追われていた。朝廷に対しての憎しみも強く、清朝を倒して汚名をそそごうとしていた。だが、ティアンの娘のホンは、朝廷から逃げる生活に嫌気がさしており、また戦いの場に向かおうとしている父を受け入れられなかった。
ユータンは息子のチョングワンが反朝廷の運動を行っている現場に遭遇し、殴ってでも連れて帰ろうとした。だが、チョングワンは拒み、車夫のアスーがチョングワンを庇って怪我をしてしまう。ユータンはシャオバイに会いに行き、お前のせいだと責め立てた。だが、シャオバイは寄付をした日からユータンも革命軍の仲間の1人ではないのかと反論し、なぜ自分と同じ考えなのに息子を許さないのだと問い掛けた。ユータンは一度言葉を詰まらせたものの、息子が革命軍の一員になることは許せなかった。
映画『孫文の義士団』のあらすじ【承】
シャオバイは暗殺団が九龍城砦に潜んでいるとの報告を受けて、ティアンに知らせに行った。だが、時すでに遅く、逃げる前に襲撃されてしまう。ティアンはホンを気絶させ、物陰に隠した。ティアンは戦いの場に戻るが、反撃も虚しく殺されてしまう。
チョンヤンは自分が軍に革命軍のアジトの場所を報告したせいで、多くの人が亡くなったことを知り衝撃を受ける。目を覚ましたホンは、父の遺体を見て泣き崩れた。そして、父の手に、犯人の切り落とされた指が握られていることに気づく。騒ぎを聞いてチョングワンと共にやって来たユータンは、シャオバイの姿を探すが見つからなかった。しかし、シャオバイが持っていたペンを発見する。その後、ユータンはシャオバイのオフィスで、自分に宛てた手紙を発見する。それには、怒らせてしまったことへの謝罪と、自分に何かあれば孫文を守って欲しいということが綴られていた。
警察は孫文訪問を宣伝し学生を扇動したとして、新聞記社の中国日報を閉鎖しようとした。ユーリンは香港警察のシー・ミーフ警部に立ち向かい、中国日報を守ることを宣言した。シャオバイの思いを受け、孫文を守ることを決意したのだ。中国日報の事務所が警察の襲撃に遭い滅茶苦茶になってしまうが、ユーリンに賛同した者達は孫文についての記事を書き上げた。
ユーリンは孫文を守るため、仲間を集めることにした。ホームレスのリウ・ユーバイ、怪力だが心優しい豆腐売りのワン・フーミン、アスーも自ら名乗りを上げた。ユーリンは危険な仕事のため、アスーが加わることに苦渋の表情を見せた。だが、アスーの意思は固かった。アスーは見返りとして、好きな女の子の親との間を取り持って欲しいと頼んだ。ユーリンは了承し、すぐに相手の親に会いに行って結納金を渡した。相手の親は戸惑いながらも、すぐに了承した。アスーも相手の女の子もすごく幸せそうだった。ユーリンはそのまま、皆で家族写真を撮った。
ホンは父の代わりに孫文を守るため、ユーリンの元を訪れた。ユーリンは集めた仲間達と共に作戦会議を行った。孫文は船によって埠頭に来る予定だった。そこは労働者・商人・旅行者など多くの人で溢れ返り、暗殺者も紛れていることが予想できた。逃走経路や注意点などを話し合った。
ユーリンはミーフ警部から銃を受け取る。それを見た妻のユエルはユーリンを守るため、元夫のチョンヤンに護衛をして欲しいと頼んだ。チョンヤンは嫌がり、ユエルを追い返そうとした。ユエルは娘のためにも、良い行いを1つでもいいからしてくれと頼んだ。チョンヤンは博打に明け暮れ、家庭を顧みなかったのだ。ユエルはこの件を引き受けてくれたら、娘に父親が「シェン・チョンヤン」であることを伝えると約束し、立ち去った。チョンヤンは後を追いかけ、娘の顔を涙ながらに眺めた。
映画『孫文の義士団』のあらすじ【転】
シャオバイは自分の腹を刺し、死んだふりを装って捕らわれていた部屋から逃げ出し、ユーリンの屋敷へと戻った。そして、ユーリンに計画の変更を申し出た。見えない敵から孫文を守るため、影武者を立てるのだ。ユーリンは仲間を犠牲にすることなど許されないと嫌がるが、シャオバイの決意は固かった。ユーリンはその思いを受け、シャオバイに後のことを任せることにした。
影武者の役目は、何が起こったとしても1時間敵を引きつけることだった。影武者はクジ引きによって決定されることになり、引き当てたのはチョングワンだった。シャオバイは引き直しを求めるが、チョングワンの決意は固かった。シャオバイはチョングワンを抱き締め、泣くことしかできなかった。
船が到着し、シャオバイは孫文を出迎えた。暗殺団、革命軍がそれぞれ配置についていた。孫文を乗せた人力車が通りを走っていると、ビルから矢が放たれ攻撃される。ホン達が暗殺団と戦っている間、人力車は走り続けた。チョンヤンもホン達に加勢し戦った。ホンは指が欠けた男を発見し、後を追いかけた。フーミンはめった刺しにされても立ち上がり、人力車を守って絶命した。孫文を乗せた人力車は、無事に会談の場所に辿り着いた。
これから1時間、時間稼ぎのためにチョングワンを乗せた人力車が町の中を走ることになった。アスーはチョングワンを思い人力車を引くことを嫌がるが、チョングワンの国を思う気持ちは強かった。アスーは涙ながらに、チョングワンを乗せた人力車を引いた。一方、ホンは指の欠けた男を追って、暗殺団の仲間の男が爆弾を用意している現場に遭遇する。男達を部屋の中に閉じ込め、人力車に危機を知らせた。ホンはそのまま爆弾の爆発に巻き込まれ、亡くなってしまう。
映画『孫文の義士団』の結末・ラスト(ネタバレ)
人力車は暗殺団に囲まれてしまうが、そこにミーフ警部率いる警察隊が現れる。ミーフ警部は護送と言う名の元に、人力車を安全な場所まで連れて行った。一方、チョンヤンは裏切りがバレてしまい、襲われていた。ボロボロになりながらも必死に戦い、何とか相手を倒した。
警察隊が離れた途端、暗殺団が現れる。シャオバイやユーリンの表情が固まる中、通りの向こうにユーバイが立っているのが見えた。皆ユーバイの横を急いで走り抜け、孫文の母親の家に向かった。ユーバイは家宝の鉄扇を使い、暗殺団を迎え撃った。孫文の家の中で、後15分持ち堪える必要があった。孫文の母は震えるチョンヤンの手を握り締めた。家の中にはユーバイの苦しむ声が聞こえており、皆涙を流して悲しんだ。
シャオバイ達は家の地下道を通って逃げた。ユーリンは最後まで窓から外の様子を眺め、ユーバイがイエンに殺されるのを見ていた。その後、ユーリンは急いで皆の後を追いかけるが、孫文の身代わりをしているのが自分の息子と知り衝撃を受ける。シャオバイはユーリンを待たず、人力車を発進させた。チョンヤンはユーリンの姿を見かけ、娘に人形を渡してくれと頼むと、イエンの馬とぶつかり絶命した。馬を弾き飛ばされたイエンは、徒歩で人力車を追いかけることになった。
イエンは人力車に追いつき、襲撃した。シャオバイは腹の傷が開きながらも、チョンヤンが乗った人力車を引いて逃げた。アスーは殴られても殴られても必死にイエンの足にしがみつき、そのまま殺されてしまう。
孫文は会談を終え帰路についた。シャオバイはイエンに人力車に乗っているのが孫文ではないことを訴えるが、イエンは攻撃の手を止めず人力車を襲撃した。シャオバイは眼鏡が壊れてしまったせいで、前がよく見えなかった。その状況で必死に銃を撃ちイエンを射殺するが、時すでに遅かった。その場に追いついたユーリンは、我が子の遺体を抱き締め泣き崩れた。
それから様々な地で革命運動が蜂起し、1911年10月10日 武昌で蜂起したのを機に「辛亥革命」が成功し、清朝が倒された。
映画『孫文の義士団』の感想・評価・レビュー
革命の父と呼ばれる孫文を守るために行動を起こした男たちの物語。特別な技術や才能があるわけではない、言ってしまえば「名も無き」男たちが孫文を狙う暗殺者から彼を守ると言うストーリーは想像を遥かに超える感動の物語でした。
中国の歴史のことはあまり知りませんが、日本に滞在していたこともある孫文という人のことは何となく知っていました。彼が身の危険を顧みずに革命を起こそうと動き出した時、その裏側にはこんな物語があったのだと初めて知りました。
理由はどうであれ、彼を守るために戦った男たちの姿はとても勇ましく、美しいものでした。(女性 30代)
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