映画『空飛ぶタイヤ』の概要:赤松運送のトラックが事故を起こした。詳細を聞いた社長の徳郎は、走行中にトラックのタイヤが外れたのだと聞かされて驚く。赤松運送の整備不良が疑われる中、徳郎は販売元のホープ自動車の欠陥を疑い、独自調査を開始する。
映画『空飛ぶタイヤ』の作品情報
上映時間:120分
ジャンル:サスペンス
監督:本木克英
キャスト:長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子 etc
映画『空飛ぶタイヤ』の登場人物(キャスト)
- 赤松徳郎(長瀬智也)
- 赤松運送を継いだ二代目社長。社員を家族のように思っており、経営が傾いても誰もクビにしたくないと考えている。年齢はまだ若いが、先代から会社を支えてくれている年長者たちの力を借り、社長業に奮闘する。
- 沢田(ディーン・フジオカ)
- ホープ自動車販売部カスタマー戦略課課長。最初は赤松運送からの電話を煙たく感じていたが、社内の怪しい動きに疑念を持ち、独自に調査をしていく。出世願望が強い。
- 小牧(ムロツヨシ)
- ホープ自動車車両製造部所属。沢田が信頼する人物で、彼と共にホープ自動車のリコール隠しの現状に辿り着く。
- 杉本(中村蒼)
- ホープ自動車品質保証部係長。品証部で密かに行われているT会議に疑問を持ち、沢田達に協力する。
- 狩野(岸部一徳)
- ホープ自動車常務取締役。三年前にホープ自動車がリコール隠しで騒がれた際、発足された倫理委員会の指揮を執った。そのことで今の地位に出世した。
- 高幡(寺脇康文)
- 横浜港北警察署の刑事。横柄な態度を取るが、真実を追求する正義感を持っている。
映画『空飛ぶタイヤ』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『空飛ぶタイヤ』のあらすじ【起】
父親から会社を引き継いだ赤松徳郎。小さな整備工場から始まったが、今では運送会社に成長していた。整備課の門田は問題も多かったが、徳郎は誰もクビにしたくないと考えていた。そんな時、赤松運送の運転手が事故を起こしたと警察から連絡が入る。運転手に話を聞いた徳郎は、緩いカーブを走行中に、突然、タイヤが外れたのだと説明されて戸惑う。
外れたタイヤは飛び跳ね、近くを歩いていた親子を直撃。子供はかすり傷で済んだが、母親の柚木妙子は即死だった。トラックは販売元のホープ自動車に回収され、調査が行われることになった。
赤松運送の整備不良が疑われ、国交省の特別監査が入ることになった。問題のトラックの整備担当は門田だった。さすがの徳郎も今度ばかりは許せず、言い分も聞かずに門田をクビにしてしまう。だが、後日、門田のロッカーから正規のチェックリストよりも更に細かい独自のチェックリストが発見され、彼が原因でないことが分かる。徳郎は門田の元を訪れ、先日の非礼を詫び、社に戻ってきてくれるようお願いした。
新聞沙汰になったことで、取引先から手を引かれ、倒産の危機に陥る赤松運送。今まで融資を快諾していたホープ銀行からも了承してもらえなくなってしまう。ホープ自動車の調査が終わり、赤松運送の整備不良だという結果が出た。担当刑事の高幡はその結果を盾に、赤松運送を家宅捜索する。
徳郎は調査担当の沢田に何度も電話を掛けたが、無視され続けていた。整備課長の谷山は、一台だけタイヤが外れるのはおかしいと言う。そんな時、専務の宮代が以前にもホープ自動車のトラックが同様の事故を起こしていたという情報を持ってくる。徳郎は、事故を起こした野村陸運を訪ねた。野村陸運の社長は、ホープ自動車からハブの摩耗が原因でタイヤが外れたのだと説明を受けたという。話を聞くうちに、徳郎はホープ自動車のトラクターに構造上の欠陥があるのではないかと疑いだした。
映画『空飛ぶタイヤ』のあらすじ【承】
ホープ自動車のカスタマー戦略課に勤める沢田は、徳郎からの電話にうんざりしていた。だが、ある時、品証部の課長が赤松運送のことを尋ねてきたのが気になり、車両製造部の小牧に相談を持ちかけた。小牧が連れてきた研究員から、品証部でT会議というものが行われていることを知る。Tはタイヤの意味だった。その会議はリコール隠しについてのものだったため、沢田は憤慨するが、彼の動向に気がついた上司から、全て忘れろと釘を刺されてしまう。
徳郎は独自調査をすることに決めた。ハブは三ヵ月点検の必要性がない箇所だったが、門田のリストではチェックされていた。警察からリストが戻れば不備がないことを立証できる。問題はまだあり、ホープ自動車からハブが返却されていなかった。徳郎は沢田に電話し、ハブを返せと告げる。だが、品証部から返さないと言われていた沢田は、バラバラで機能しないため返すことはできないとしか答えられなかった。
沢田は小牧の力を借り、品証部のパソコンから不正アクセスしてT会議のメンバーを調べ上げる。そこにはホープ自動車の常務取締役・狩野の名前もあった。狩野はホープ銀行に200憶の支援を要請したが、担当の井崎は事業計画の杜撰さから簡単に稟議は出せなかった。
小牧から杉本を紹介された沢田。杉本は品証部だったがT会議に疑問を持っており、こちらの味方だった。彼は3年前のリコール隠しについて調べており、その時も今回にも狩野が関与していることを突き止めていた。
次第に沢田が厄介になってきた狩野は、彼が希望する商品開発部への異動をちらつかせ、黙らせようとする。心が揺らいだ沢田は、赤松運送の件を早急に解決しようと躍起になった。徳郎とハブの返却について会談した際、返却には時間がかかるので、その間、保証金として1憶円を支払うと提案した。金銭面で窮地に陥っていた赤松運送には、とても良い提案で、それだけあれば従業員たちを救うことができた。
映画『空飛ぶタイヤ』のあらすじ【転】
妙子の四十九日を訪れた徳郎たちだったが、否認を続ける姿を見た夫の雅史から、あなたたちは自分のことしか考えていない、それでも人間かと責められてしまう。去り際、妙子の息子が近づき、妙子を偲んで作られた冊子を渡された。妙子への想いが込められた冊子を読んだ徳郎。彼は1憶円の提案に心が揺らいでいたが、それを読んで断ることを決意する。後日、沢田と再度会談した時、徳郎は断りの言葉と共に冊子を渡し、それを読めば俺の気持ちが分かると言って去って行った。頭に来た沢田は、どうでもよくなり、後任に全てを任せると、誘いに乗って商品開発部へ異動していった。
徳郎の元には新聞記者の榎本が訪ねてきていた。彼女はホープ自動車のリコール隠しについての記事を書いていた。その記事が雑誌に掲載されれば、赤松運送の事故についても見直されるはずだったのだが、上からの圧力により掲載は見送られてしまう。
ホープ銀行から、今までの融資を全額返済してほしいと言われ、動揺する徳郎。自分の元を去って行く社員も現れ、更には、雅史から訴えられるという事態にまで陥ってしまう。赤松運送の倒産は、すぐ目の前に迫ってきていた。
悔しがる榎本は、徳郎に自分が調べたリストを渡した。そのリストは、過去にホープ自動車の車で事故を起こし、示談金をもらって泣き寝入りした会社のリストだった。徳郎はそのリストの会社を訪ね、全国を歩き回った。だが、どの会社も詳細を話そうとはしてくれない。しかし、ある会社で、徳郎と同じように独自調査した会社があると教えられる。徳郎は富山にあるその会社を訪れた。そこにはホープ自動車のトラクターに、構造上の欠陥があることを証明した独自の調査報告書が存在していた。それを公開できなかったのは、その会社の社長がホープ自動車出身だったからだそうだ。更に徳郎は、ホープ自動車が国交省に提出した調査報告書も渡される。彼はそれを大事に受け取り、自社へと戻って行った。
映画『空飛ぶタイヤ』の結末・ラスト(ネタバレ)
二つの報告書を手にした徳郎は、高幡の元を訪れ、彼を信じて報告書を渡した。ホープ自動車で沢田の後任と会談した徳郎は、報告書を見せて追求していく。ホープ自動車側は動揺を隠せなかったが、そんな時、赤松運送にホープ銀行からの喪失通知書が届いた。いよいよ倒産を覚悟しなくてはならなくなる。
沢田は商品開発部に栄転したが、つまらない仕事ばかりをさせられていた。杉本は情報をリークしたことがバレ、大阪に転勤することが決まったが、去る前にT会議の情報が入ったノートパソコンを沢田に託した。沢田は徳郎から渡された妙子の冊子を開いた。その時、初めて人ひとりの命の重さを痛感し、考えを変える。
妙子の事故現場で顔を合わせた徳郎と沢田。沢田は国交省の報告書は握りつぶされるだろうと言ったが、徳郎は、俺は最後まで誰かを信じたいと呟いた。
赤松運送を畳むことを決意した徳郎。だが、その日の朝、ホープ自動車が道路運送車両法違反の疑いで家宅捜索されているというニュースが飛び込んでくる。徳郎が渡した資料で、高幡が動いたのだ。高幡は沢田から杉本のノートパソコンも受け取っていた。そのデータにより、狩野はリコール隠しに関与していることが証明され、窮地に立たされた。
徳郎は柚木家を訪ね、妙子の位牌に手を合わせることを許された。雅史は今までの非礼を詫び、訴えも取り下げたと徳郎に告げた。ホープ自動車が今までしてきたことを知りたいと言われた徳郎は、とうとうと語りだした。
一年後、妙子の事故現場に花を手向けにきた徳郎は、沢田と遭遇。徳郎には疑問があった。あの後、ホープ自動車は全てを暴かれたが、国交省への報告書だけではそれは不可能だった。もし可能だとすれば、内部告発者がいないと辻褄が合わない。徳郎はそのことを沢田に尋ねたが、沢田は何も知らないという口ぶりではぐらかした。徳郎は、あんな事件があったとしても組織に属する沢田を嫌悪したが、沢田は、それしか生きる道がないと答えた。二人は晴天の空を見上げると、それぞれの場所へと去って行った。
映画『空飛ぶタイヤ』の感想・評価・レビュー
池井戸潤の原作らしい熱い男たちがたくさん出てくる作品。ここまで上手くいくことは正直ありえないが、フィクションとして夢を見させてくれる気持ちよさはあった。だが正直、この世界は情熱や熱意よりも、全ては運で決まるものなのではないかと感じる方が強かった。倒産を免れること。欠陥車を購入してしまうこと。力になってくれる存在と巡りあうこと。出世すること。歩いている時、空飛ぶタイヤがぶち当たること。熱い思いを訴えながら、同時にそれらを根底から否定する毒が描かれていることが、とても評価できるポイントだと感じた。(MIHOシネマ編集部)
リアリティを感じる物語だったと思う。リコール隠しによって翻弄される人々のリアルな姿が、垣間見えた。事件なのか、事故なのか、赤松徳郎を中心に真実が明らかになっていく様子は、ドキドキと手に汗握る展開だった。
登場人物の中で、沢田は一見すると嫌な奴だが、とても現実味がある人物だったと思う。生きていくためには、簡単に会社を切り捨てることはできない。でも、苦しんでいる人を無視できるほど、悪人にもなれない。感情移入がしやすいキャラクターだった。(女性 30代)
予告編を見た時から気になっていて、公開初日に劇場で鑑賞した今作。池井戸潤原作の小説ということもあり、シナリオがとにかく秀逸で、実話をベースにしているという事もありリアリティを感じられました。
長瀬智也演じる赤松の作業着姿は男臭い演技をする彼の雰囲気にぴったりで、この作品の世界観を上手く作り上げていたと思います。
色々なラッキーが重なって結果的に上手くいったように見えてしまいますが、その裏側には先代の頃からの繋がりや、赤松の人柄など様々な要因が良い方向に導いてくれたのだろうと感じさせてくれました。(女性 30代)
みんなの感想・レビュー