映画『たかが世界の終わり』の概要:劇作家のルイは、自分の余命がいくばくもないことを家族に告げるため、12年ぶりに実家へ帰る。だが、苛立つ兄と戸惑う妹、息子を理解できないと言う母を目の前に話を切り出すことができない。
映画『たかが世界の終わり』の作品情報
上映時間:99分
ジャンル:ヒューマンドラマ
監督:グザヴィエ・ドラン
キャスト:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥ、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセル etc
映画『たかが世界の終わり』の登場人物(キャスト)
- ルイ(ギャスパー・ウリエル)
- ゲイの劇作家。家を出てから12年間家族に会っていなかったが、余命が短いことを伝えるために実家に帰る。
- アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)
- ルイの兄でカトリーヌの夫。口が悪く、常に苛立っている。
- カトリーヌ(マリオン・コティヤール)
- アントワーヌの妻。子供にルイと同じ名前をつけている。ルイが何を伝えにきたのか気づいている。
- シュザンヌ(レア・セドゥ)
- ルイの妹。突然帰ってきた兄に喜んでいるが戸惑いを隠せない。アントワーヌと仲が悪い。
- マルティーヌ(ナタリー・バイ)
- ルイの母。誰よりも家族の幸せを願っている。
映画『たかが世界の終わり』のネタバレあらすじ(ストーリー解説)
映画『たかが世界の終わり』のあらすじ【起】
劇作家のルイは12年ぶりに実家に帰るため飛行機に乗り、空港から家まではタクシーに乗った。彼の目的は家族に自分の余命が短いということを伝えることだった。実家に着くと家族が出迎えるが、妹のシュザンヌにはルイとの思い出がほとんどない。兄のアントワーヌはルイがいない間に結婚しており、妻がいた。妻のカトリーヌはルイとは初対面で、そのことに母は驚く。母のマルティーヌはルイの好物を用意し、おしゃれをして待っていた。
カトリーヌは、息子の一人にルイと彼の父親から取って同じ名前をつけたと話す。苛立っていたアントワーヌはそれを聞いて、ルイは子供の話に興味はないと妻をたしなめる。彼はシュザンヌのはりきった化粧と服装もけなす。ルイは前に家族で住んでいた家を見に行きたいと言うが、家族は廃墟のような家に行きたがるルイを理解できない。
シュザンヌはルイを自室に連れて行く。彼女はルイのことが載った雑誌や記事を集めていた。12年間帰ってこなかった兄を責めるシュザンヌは、ルイがどうして帰ってきたのか聞くが、妊娠したのかとふざけた質問をして話をそらしてしまう。
映画『たかが世界の終わり』のあらすじ【承】
カトリーヌは初めて会ったばかりのルイに対して義弟という実感がわかず、敬語で話してしまう。ルイは、カトリーヌが夫であるアントワーヌから自分について悪いことばかり聞いているのではないかと口にするが、夫は弟の話はほとんどしないと彼女は言う。アントワーヌが、自分がどのような生活を送っているのかルイは興味がないと思っていると話し、アントワーヌは間違っていないのかもしれないと感じる。彼女はルイに夫がどんな風に生計を立てているかを話す。
母のマルティーヌは、物置小屋で二人きりになるとルイの住所が変わっていることを指摘する。ルイは家族に現在の住所を教えていなかった。どうしてそのことを教えてくれなかったのかは理解できないが、ルイを愛していると母は言って息子を抱きしめる。マルティーヌはルイに兄妹を励ましてほしいとも頼む。彼女もルイが帰ってきた理由を聞くが、せっかくの話すチャンスにルイは余命のことを話すことができない。息子の表情から何かを察した母はそのまま話題を変える。
映画『たかが世界の終わり』のあらすじ【転】
庭での昼食中、アントワーヌとシュザンヌが口論を始める。シュザンヌは怒って席を立ち、母はアントワーヌを叱る。ルイも席を離れ、私物が置いてある物置部屋へ行く。その部屋で昔の恋人のことを思い出していると、カトリーヌがデザートの時間だと呼びに来る。彼女はなぜルイが12年ぶりに実家に帰ってきたのかに気づいており、後どのくらいかと尋ねる。ルイはカトリーヌの質問に驚く。彼女はルイが夫に話してくれることを期待する。
ルイはアントワーヌに話をしようと思い、彼がタバコを買いに行くと言って乗った車の助手席に乗り込む。車内で話を切り出せず、空港のカフェで時間を潰したことなど雑談を始めるルイに突っかかるアントワーヌ。ルイは怒り出すアントワーヌに呆れて黙るが、アントワーヌは強い口調でルイを批判するのをやめない。ルイがなぜ帰ってきたのかなど知りたくないと切り捨てる。家に着くとアントワーヌは、ルイの昔の恋人が癌で亡くなっていることを伝える。
映画『たかが世界の終わり』の結末・ラスト(ネタバレ)
ルイとアントワーヌの二人が帰ってくると、家族はデザートの席についた。ルイは家族に話があると言って本題を切り出そうとする。彼は今度からはもっと家に帰ってくると言い、物置小屋で母から頼まれたように兄と妹を励ます。ルイがもう帰ると言うとアントワーヌは、ルイには用事があるから早く帰らないといけないと言い、無理やりルイを送っていこうとする。
弟を追い出そうとするアントワーヌに戸惑う家族。マルティーヌとシュザンヌはアントワーヌに対して怒り出し、家族は口論を始める。どうしても帰らなければいけないのなら自分がルイを送っていくと言うシュザンヌ。アントワーヌは、ルイが久しぶりに家族に会って疲れていると言い返す。
家族はルイを家の中に残して、庭先に出る。家族の喧嘩にどうすることもできないカトリーヌにルイは微笑む。結局、彼は家族に自分の病気と余命のことを話せず実家を去ることになる。ルイが家を出る時、一羽の鳥が家に飛び込んできて鳩時計の中に入ってしまう。鳥はそのまま死んでしまうのだった。
映画『たかが世界の終わり』の感想・評価・レビュー
こんな映画は今まで見たことがなかった。会話劇の映画には一抹の不安があったが、見事に不安を払拭し、心に大きな足跡を残した。
主人公の青年が十数年ぶりに家族に大事なことを告げに会いに行くのだが、内容はほとんど家の中の会話で進む。ただの会話のはずなのに、スピード感や先の読めない緊張感があり、すっかり心をつかまれてしまっただけでなく、会話でそれぞれの感情が見え隠れしており、泣かずにはいれなかった。
本当に、たかが世界の終わりと思ってしまう。もう二度とこんな映画には出会えないなと思わせてくれる。素晴らしいの一言。(女性 20代)
家族という小さな世界を、これほどまで苛烈に、鮮明に描いた映画を今まで観たことがなかった。とにかくひどく不器用な家族で、観ているこちらがもどかしくなるほどだ。全体的に台詞は少なく、視線や息遣いで場面の空気感を伝えてくる。表情のアップが特に多く「目は口ほどに物を言う」を映像にしているような感じだ。血の繋がりのある家族の間に漂う「暗黙の了解」の空気はルイの口を重くする。結局、血の繋がりのない義姉との会話が一番多いのも皮肉なものだなと思った。
全体を通して、ストーリーが分かりづらい。吹き替えがない仏映画のため、字幕が苦手な人や、すっきりとしない結末が好みでない人にはあまり向かないかもしれない。
かなりハイコンセプトな映画だが、このじっとりとした空気感をぜひ感じて欲しい。(女性 20代)
本作は、グザビエ・ドラン監督がジャン=リュック・ラガルスの戯曲『まさに世界の終わり』を原作に描いたヒューマンドラマ。
淡々と進んでいき少し難解に感じたが、重たくて悲しさや切なさが心に刺さる作品だ。
顔をアップにしたカメラワークによる目線や間の取り方から、家族の軋轢や登場人物たちの心情が繊細に伝わってきた。何よりも、分かりやすくないところに好感が持てた。
そして、若くしてこのような素晴らしい作品を作ったドラン監督に非常に興味を持った。(女性 20代)
家族という身近なものを題材にしているからこそ、深く考えさせられる作品だった。家族だから言いにくいこともあるし、家族だからこそ必要以上に厳しく当たってしまうことってあると思う。12年間帰らなかったルイは、もしかしたら家に居場所がないと感じていたのかもしれない。でも、余命があと僅かであることを会って伝えたいと思うほど、大切に思っていたのかなと感じた。もし余命のことを聞かされないままルイが亡くなったら、家族は深く傷ついてしまうのではないかと思う。悲しい終わり方だなと思った。(女性 30代)
家族を題材にした作品でありながら意外と辛辣な描写も多く、少しだけ胸がチクリと痛むような感覚になりました。家族だから言えないことや、家族だから言いすぎてしまうことってありますよね。それは家族に対する愛情や思いやりのせいなのですが、それが相手に伝わらないと関係がギクシャクしてしまったり…。この作品はまさにそんなもどかしい展開が続くので鑑賞後は少し疲れました。
家族でも性格は違うし、理解できない部分はありますよね。良くも悪くも、家族との関係を見つめ直すきっかけになりそうな作品です。(女性 30代)
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