この記事では、映画『アイガー・サンクション』の感想やレビューを紹介しています。数多くの映画を見てきた映画専門ライターによって、様々な視点で感想・レビューを執筆しておりますので、ぜひご覧ください。
映画『アイガー・サンクション』の作品情報
出典:Universal Pictures
製作年 | 1975年 |
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上映時間 | 128分 |
ジャンル | アクション ミステリー 犯罪 |
監督 | クリント・イーストウッド |
キャスト | クリント・イーストウッド ジョージ・ケネディ ヴォネッタ・マギー ジャック・キャシディ |
製作国 | アメリカ |
映画『アイガー・サンクション』のあらすじ
2度までもアイガーの岩壁に挑み、2度とも失敗している経験を持つジョナサン・ヘムロック(クリント・イーストウッド)は、今は登山家を断念し山小屋ふうの家に住んで絵の教師として静かに暮していた。彼はかつて抜群に腕のたつプロの殺し屋として国際的に活躍した男だった。そして美術マニアとしても知られ、稼いだ金の殆どを名画蒐集につぎ込んでいた。だがかなりのコレクションが完成した現在、危ない橋を渡って金を稼ぐ必要がなくなり、殺し屋稼業からも足を洗っていた。そんな彼のもとにCIAのチーフ“ドラゴン”(セイヤー・デイヴィッド)の使者が訪れ、“制裁”を依頼した。足を洗った彼を今一度仕事に引戻すために、ドラゴンはヘムロックがいやといえない餌を用意していた。(出典:映画.com)
映画『アイガー・サンクション』の感想・レビュー
劇場で見たくなる、見事なロケーション
まずなんといっても印象に残るのが、後半の舞台となる登山の名所であり難所、「アイガー北壁」のロケーションです。牧歌的な土地のはるか向こう側にそびえ立ち、野心的な登山者たちを惹きつけてやまない最大の難関。遠目から見ると美しく感じるのに、容赦なく登山者の命を奪ってしまう残酷さをも秘めている。
お話としてはミステリーで言うところの「フーダニット」=誰が犯人なのか?を追う展開なのですが、それより登場人物たちが無事に登頂できるかが心配になってきます。全編オールロケで捉えたその広大な山々の光景は、一度見たら目に焼き付いて離れません。機会があれば、ぜひ一度劇場の大きなスクリーンで「体感」してみたいと思わせてくれる、逸品です。
キレのいい、スタントなしのアクション
本作が公開されたのは1975年。監督・主演を務めたクリント・イーストウッドが1971年公開の『ダーティーハリー』で人気を博した数年後で、スタントなしの登山シーンなどキレのいいアクションを魅せてくれます。1990年代、『許されざる者』以降のイーストウッドは監督としてアカデミー作品賞候補になるような作品を手がけていきますが、この時期はまだエンターテイメント寄りだったように思われます。
物語はいわゆる「スパイもの」なのですが、これはシリーズ化された『007』シリーズや、当時テレビで大人気となっていた『スパイ大作戦』の影響があるかもしれません。そして本作でも、007シリーズを彷彿とさせるような「美女との絡み」があってニヤリとさせられます。
私が最初に観賞したのはまだ昭和の頃、小学校低学年の時。テレビの洋画劇場で家族と一緒に見たのですが、お茶の間に「美女とのベッドシーン」が流れると、どこか気まずい雰囲気が漂い始めたのを覚えています。母親は何かを思い出したように席を外したり、父親はわざと笑い声をあげたり。そんな小恥ずかしいような思い出と共に、印象に残っている映画です。
レアなジャンル「山岳スパイアクション」
スパイもの自体は『スパイ大作戦』や「007』シリーズで当時もすでにお馴染みでしたが、「難関の山岳が舞台」という映画は本作が公開された時期にはまだ相当珍しかったように思われます。その後はシルベスター・スタローン主演のヒット作『クリフハンガー』などがありますが、1970年代中盤に於いてはかなり「レアなジャンル」だったのではないでしょうか。
そして華やかな『スパイ大作戦』や『007』シリーズとは違い、本作は目立った「秘密兵器」などは登場しない「リアルなスパイアクション」となっています。同時期にはロバート・レッドフォード主演の『コンドル』というリアルなスパイもの映画も公開されており、小説の映画化という製作の経緯も本作と同様で、そういった作品に注目が集まった時期だったのかもしれません。
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